近畿圏整備法

法律第百二十九号(昭三八・七・一〇)

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 近畿圏整備本部(第三条−第五条)

 第三章 近畿圏整備審議会(第六条・第七条)

 第四章 近畿圏整備計画(第八条−第十条)

 第五章 近畿圏整備計画に基づく事業の実施(第十一条−第二十二条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、近畿圏の整備に関する総合的な計画を策定し、その実施を推進することにより、首都圏と並ぶわが国の経済、文化等の中心としてふさわしい近畿圏の建設とその秩序ある発展を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律で「近畿圏」とは、福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県及び和歌山県の区域(政令で定める区域を除く。)を一体とした広域をいう。

2 この法律で「近畿圏整備計画」とは、近畿圏の建設とその秩序ある発展を図るため必要な近畿圏の整備及び開発に関する計画をいう。

3 この法律で「既成都市区域」とは、大阪市、神戸市及び京都市の区域並びにこれらと連接する都市の区域のうち、産業及び人口の過度の集中を防止し、かつ、都市の機能の維持及び増進を図る必要がある市街地の区域で、政令で定めるものをいう。

4 この法律で「近郊整備区域」とは、既成都市区域の近郊で、第十一条第一項の規定により指定された区域をいう。

5 この法律で「都市開発区域」とは、既成都市区域及び近郊整備区域以外の近畿圏の地域のうち第十二条第一項の規定により指定された区域をいう。

6 この法律で「保全区域」とは、近畿圏の地域内において文化財を保存し、緑地を保全し、又は観光資源を保全し、若しくは開発する必要がある区域で、第十四条第一項の規定により指定されたものをいう。

   第二章 近畿圏整備本部

 (設置)

第三条 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条第一項の規定に基づいて、総理府の機関として、近畿圏整備本部(以下「本部」という。)を設置する。

 (所掌事務)

第四条 本部の所掌事務は、次のとおりとする。

 一 近畿圏整備計画の立案及びその立案のため必要な調査を行なうこと。

 二 近畿圏整備計画の実施に関して必要な関係行政機関相互の連絡調整を図ること。

 三 近畿園整備計画の実施を推進すること。

 四 その他近畿圏整備計画に関し、内閣総理大臣の権限に属する事務を処理すること。

 (組織)

第五条 本部の長は、近畿圏整備長官とし、国務大臣をもつて充てる。

2 近畿圏整備長官は、本部の事務を統括し、所部の職員の服務を監督する。

3 本部に、次長その他の職員を置く。

4 この法律に定めるもののほか、本部の組織に関し必要な事項は、政令で定める。

   第三章 近畿圏整備審議会

 (設置及び所掌事務)

第六条 総理府に、附属機関として、近畿圏整備審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じ、近畿圏整備計画の策定及び実施に関する重要事項その他審議会の権限に属させられた事項について調査審議する。

3 審議会は、近畿圏整備計画の策定及び実施に関する重要事項について内閣総理大臣に意見を述べることができる。


 (組織及び運営)

第七条 審議会は、次に掲げる者につき、内閣総理大臣が任命する委員四十三人以内で組織する。

一 関係行政機関の職員

十一人以内

二 関係府県の知事及び関係指定都市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市をいう。以下同じ。)の市長

十一人以内

三 関係府県及び関係指定都市の議会の議長

十一人以内

四 関係市の市長(関係指定都市の市長を除く。)を代表する者

一人

五 関係市の議会の議長(関係指定都市の議会の議長を除く。)を代表する者

一人

六 関係町村の町村長を代表する者

一人

七 関係町村の議会の議長を代表する者

一人

八 学識経験のある者

六人以内

2 審議会の委員は、非常勤とする。

3 学識経験のある者のうちから任命される審議会の委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の審議会の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

4 前項の審議会の委員は、再任されることができる。

5 この法律に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

   第四章 近畿圏整備計画

 (近畿圏整備計画の内容)

第八条 近畿圏整備計画は、基本整備計画及び事業計画とする。

2 基本整備計画には、近畿圏における人口の規模及び配分、産業の配置、土地、水その他の資源の保全及び開発、都市の整備及び開発、交通体系の確立等に関する総合的、かつ、基本的な方針を定めるとともに、当該方針に基づき、近郊整備区域、都市開発区域及び保全区域の指定に関する事項並びに産業基盤施設、国土保全施設、住宅及び生活環境施設、教育施設、観光施設その他の施設で、広域性を有し、かつ、根幹となるべきものとして政令で定めるものに関する整備及び開発に関する計画を定めるものとする。

3 事業計画は、基本整備計画の実施のため必要な毎年度の事業で、政令で定めるものについての計画とする。

4 近畿圏整備計画は、文化財の保存について適切な考慮が払われたものでなければならない。

 (近畿圏整備計画の立案及び決定)

第九条 近畿圏整備長官は、近畿圏整備計画を立案するについて必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係のある事業を営む者(以下「関係事業者」という。)に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。

2 近畿圏整備計画は、内閣総理大臣が、関係府県、関係指定都市及び審議会の意見をきくとともに、関係行政機関の長に協議して決定するものとする。この場合において、内閣総理大臣は、関係府県、関係指定都市及び審議会の意見に基づく必要な措置について、適切な考慮を払わなければならない。

3 内閣総理大臣は、近畿圏整備計画を決定したときは、これを関係行政機関の長及び関係地方公共団体に送付するとともに、総理府令の定めるところにより公表しなければならない。

4 前項の規定により公表された事項に関し利害関係を有する者は、公表の日から三十日以内に、総理府令の定めるところにより内閣総理大臣に意見を申し出ることができる。

5 前項の規定による申出があつたときは、内閣総理大臣は、その申出を考慮して必要な措置を講じなければならない。

 (近畿圏整備計画の変更)

第十条 近畿圏整備計画は、情勢の推移により適当でなくなつたとき、その他これを変更することが適当であると認められるときは、変更することができる。

2 前条の規定は、近畿圏整備計画の変更について準用する。

   第五章 近畿圏整備計画に基づく事業の実施

 (近郊整備区域の指定)

第十一条 内閣総理大臣は、既成都市区域の近郊で、当談既成都市区域の市街地の無秩序な拡大を防止するため、計画的に市街地として整備する必要がある区域を近郊整備区域として指定することができる。

2 内閣総理大臣は、近郊整備区域を指定しようとするときは、関係地方公共団体及び審議会の意見をきくとともに、関係行政機関の長に協議しなければならない。

3 近郊整備区域の指定は、内閣総理大臣が総理府令の定めるところにより告示することによつて、その効力を生ずる。

 (都市開発区域の指定)

第十二条 内閣総理大臣は、既成都市区域への産業及び人口の過度の集中傾向を緩和し、近畿圏の地域内の産業及び人口の適正な配置を図るため必要があると認めるときは、既成都市区域及び近郊整備区域以外の近畿圏の地域のうち、工業都市、住居都市その他の都市として開発することを必要とする区域を都市開発区域として指定することができる。

2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の都市開発区域の指定について準用する。

 (近郊整備区域等の整備等に関する法律)

第十三条 前二条に定めるもののほか、近郊整備区域内及び都市開発区域内における宅地の造成その他近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関し必要な事項は、別に法律で定める。

 (保全区域の指定)

第十四条 内閣総理大臣は、近畿圏の地域内において文化財を保存し、緑地を保全し、又は観光資源を保全し、若しくは開発する必要があると認める区域を保全区域として指定することができる。

2 第十一条第二項及び第三項の規定は、前項の保全区域の指定について準用する。

 (工場、学校等制限区域)

第十五条 既成都市区域への産業及び人口の過度の集中を防止し、都市環境の整備及び改善を図るため、大規模な工場、学校その他人口の増大をもたらす原因となる施設の新設又は増設を制限する必要があるときは、別に法律で定めるところにより、当談施設の新設又は増設を制限する必要がある既成都市区域内の区域を工場、学校等制限区域として指定することができる。

2 工場、学校等制限区域内における施設の新設又は増設の制限に関し必要な事項は、別に法律で定める。

 (事業の実施)

第十六条 事業計画に基づく事業は、この法律に定めるもののほか、当該事業に関する法律(これに基づく命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体又は関係事業者が実施するものとする。

 (協力及び勧告)

第十七条 関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係事業者は、基本整備計画及び事業計画の実施に関し、できる限り協力しなければならない。

2 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体又は関係事業者に対し、基本整備計画又は事業計画の実施に関し勧告し、及びその勧告によつて採られた措置その他基本整備計画又は事業計画の実施に関する状況について報告を求めることができる。


 (基本整備計画に関する施策の立案及び勧告)

第十八条 内閣総理大臣は、近畿圏の建設とその秩序ある発展を図るため特に必要があると認めるときは、審議会の意見をきいて基本整備計画に関する総合的な施策を立案し、これに基づいて関係行政機関の長及び関係地方公共団体に対し、勧告し、及びその勧告によつて採られた措置について報告を求めることができる。

 (国の普通財産の譲渡)

第十九条 国は、事業計画に基づく事業の用に供するため必要があると認めるときは、その事業の執行に要する費用を負担する地方公共団体に対し、普通財産を譲渡することができる。


 (近畿圏整備計画の実施に要する経費)

第二十条 政府は、近畿圏整備計画を実施するため必要な資金の確保を図り、かつ、国の財政の許す範囲内において、その実施を促進することに努めなければならない。

 (企業債)

第二十一条 地方公共団体が事業計画に基づいて行なう地方公営企業法(昭和二十七年法律第二百九十二号)に規定する地方公営企業の建設、改良等に要する資金に充てるための地方債で内閣総理大臣と自治大臣とが協議して定めるものについては、同法附則第二項の規定の適用がある間は、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、地方自治法第二百五十条に規定する許可を与えるものとする。

 (北陸地方開発促進計画との調整)

第二十二条 北陸地方開発促進計画と近畿圏整備計画との調整は、内閣総理大臣が北陸地方開発審議会及び審議会の意見をきいて行なうものとする。


   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、附則第五項の規定は、政令で定める日から施行する。

2 前項ただし書に規定する政令は、近畿圏整備計画が四国地方開発促進計画のうち特にこれと密接な関連を有するものについて十分考慮して作成された後、これに基づく事業と四国地方開発促進計画に基づく事業との実施がともに円滑に行なわれるような時期において、定めるものとする。

 (総理府設置法の一部改正)

3 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。

  目次中「第十六条」を「第十六条・第十六条の二」に改める。

 第十五条第一項の表中

北陸地方開発審議会

北陸地方開発促進法(昭和三十五年法律第百七十一号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行なうこと。

近畿圏整備法(昭和三十八年法律第百二十九号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行なうこと。

北陸地方開発審議会

北陸地方開発促進法(昭和三十五年法律第百七十一号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行なうこと。

近畿圏整備審議会

に改める。

 第十六条の見出しを「(日本学術会議)」に改め、第二章第三節中同条の次に次の一条を加える。

 (近畿圏整備本部)

第十六条の二 総理府の機関として、近畿圏整備本部を置く。

2 近畿圏整備本部は、近畿圏の整備に関する総合的な計画を策定し、その実施を推進するための機関とする。

3 近畿圏整備本部の組織及び所掌事務については、近畿圏整備法の定めるところによる。

  第十九条第四項中「外局」を「機関」に改める。

  第二十三条中「委員並びに」を「委員、」に改め、「議員」の下に「並びに近畿圏整備長官」を加える。

  附則第六項を附則第七項とし、附則第五項の次に次の一項を加える。

 6 当分の間、第二十三条に規定する定員は、同条及び前項の規定による定数に二十人を加えたものとする。


 (国土総合開発法の一部改正)

4 国土総合開発法(昭和二十五年法律第二百五号)の一部を次のように改正する。

  第十四条第二項中「又は北陸地方開発促進計画」を「、北陸地方開発促進計画又は近畿圏整備計画」に改める。


 (四国地方開発促進法の一部改正)

5 四国地方開発促進法(昭和三十五年法律第六十三号)の一部を次のように改正する。

  第二条中「、高知県及び和歌山県」を「及び高知県」に改める。

  第六条第一項中「三十二人以内」を「三十一人以内」に改め、同条第二項第四号中「五人」を「四人」に改める。


 (水資源開発促進法の一部改正)

6 水資源開発促進法(昭和三十六年法律第二百十七号)の一部を次のように改正する。

  第十一条に次の一項を加える。

 3 近畿圏整備計画と基本計画との調整は、内閣総理大臣が近畿圏整備審議会と審議会の意見をきいて行なうものとする。

(内閣総理・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・労働・建設・自治大臣署名)

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