日本労働協会法
法律第百三十二号(昭三三・五・二)
目次
第一章 総則(第一条―第八条)
第二章 役員及び理事会並びに職員(第九条―第二十一条)
第三章 評議員会(第二十二条―第二十四条)
第四章 業務(第二十五条)
第五章 財務及び会計(第二十六条―第三十四条)
第六章 雑則(第三十五条―第三十八条)
第七章 罰則(第三十九条―第四十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 日本労働協会は、労働問題について研究を行うとともに、広く労働者及び使用者並びに国民一般の労働問題に関する理解と良識をつちかうことを目的とする。
(法人格)
第二条 日本労働協会(以下「協会」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 協会は、主たる事務所を東京都に置く。
2 協会は、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(基金)
第四条 協会の基金は、十五億円とし、経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律(昭和三十三年法律第 号)第十条第五号の規定により、政府がその全額を出資するものとする。
2 前項の基金については、経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律の定めるところによらなければならない。
(定款)
第五条 協会は、定款をもつて次の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 基金及び資産に関する事項
五 役員及び理事会に関する事項
六 評議員会及び評議員に関する事項
七 業務及びその執行に関する事項
八 会計に関する事項
九 定款の変更に関する事項
2 定款の変更は、労働大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(登記)
第六条 協会は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第七条 協会でない者は、日本労働協会という名称又はこれに類似する名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)、第五十条(法人の住所)及び第六十七条第二項(主務官庁の検査権)の規定は、協会について準用する。
第二章 役員及び理事会並びに職員
(役員)
第九条 協会に、役員として、会長一人、理事五人以内及び監事二人以内を置く。
(理事会の設置及び任務)
第十条 協会に、理事会を置く。
2 理事会は、会長及び理事をもつて組織する。
3 理事会は、業務運営の基本方針、この法律により労働大臣の認可又は承認を受けなければならない事項その他定款で定める重要事項を審議し、決定する。
(理事会の会議)
第十一条 理事会は、会長が招集する。
2 会長は、理事会の議長となり、会務を総理する。
3 理事会は、会長及び理事の過半数の出席がなければ、その議事を開き、議決することができない。
4 理事会の議事は、出席した会長及び理事の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
(役員の職務及び権限)
第十二条 会長は、協会を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、会長の定めるところにより、会長を補佐して協会の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行う。
3 監事は、協会の業務を監査する。
(役員の任命)
第十三条 会長及び監事は労働大臣が、理事は会長が労働大臣の認可を受けて、それぞれ、労働問題に関し、公正な判断をすることができ、かつ、深い学識経験を有する者のうちから任命する。
2 会長及び理事の任命については、そのうちの二人以上が同一の政党に属することとなつてはならない。
(役員の任期)
第十四条 会長及び理事の任期は、四年とし、監事の任期は、二年とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十五条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。
一 国務大臣、国会議員、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長
二 政府又は地方公共団体の職員(教育公務員で政令で定めるもの及び非常勤の者を除く。)
三 政党の役員
(役員の解任)
第十六条 労働大臣又は会長は、それぞれその任命に係る役員が前条各号の一に該当するに至つたとき、又はその行為によつて第十三条第二項の規定に抵触するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 労働大臣又は会長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しない非行があると認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 会長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、労働大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第十七条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、労働大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第十八条 協会と会長との利益が相反する事項については、会長は、代表権を有しない。この場合には、監事が協会を代表する。
(代理人の選任)
第十九条 会長は、理事会の決議により、理事又は協会の職員のうちから、従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(職員の任命)
第二十条 協会の職員は、会長が任命する。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第二十一条 役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 評議員会
(評議員会)
第二十二条 協会に、評議員会を置く。
2 評議員会は、十五人以内の評議員をもつて組織する。
3 評議員会は、理事会の諮問に応じて、協会の業務に関する重要事項を審議する。
(評議員)
第二十三条 評議員は、協会の目的を達成するために必要な学識経験を有する者のうちから、労働大臣が任命する。
2 評議員の任期は、二年とする。
3 評議員は、再任されることができる。
4 労働大臣は、評議員が心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき、又は評議員たるに適しない非行があると認めるときは、その評議員を解任することができる。
(評議員会の会議)
第二十四条 評議員会は、会長が招集する。
2 評議員会に、評議員の互選による議長を置く。議長は、会務を総理する。
3 評議員会は、評議員の過半数の出席がなければ、その議事を開き、議決することができない。
4 評議員会の議事は、出席評議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第四章 業務
(業務の範囲)
第二十五条 協会は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 労働問題に関する研究及び資料の整備を行うこと。
二 労働問題に関し出版及び放送を行うこと。
三 労働問題に関する講座を開設すること。
四 労働組合及び使用者団体等の行う労働教育活動に対して援助を行うこと。
五 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するために必要な業務を行うこと。
第五章 財務及び会計
(事業年度)
第二十六条 協会の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終る。
(予算等の認可)
第二十七条 協会は、毎事業年度、予算及び事業計画を作成し、事業年度開始前に労働大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(決算)
第二十八条 協会は、毎事業年度の決算を翌年度の五月三十一日までに完結しなければならない。
(財務諸表)
第二十九条 協会は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、決算完結後一月以内に労働大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 協会は、前項の規定により財務諸表を労働大臣に提出するときは、予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添附しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第三十条 協会は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 協会は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(一時借入金)
第三十一条 協会は、労働大臣の認可を受けて、一時借入金をすることができる。
2 前項の規定による一時借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができない金額に限り、労働大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた一時借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(余裕金の運用)
第三十二条 協会は、業務上の余裕金については、銀行その他労働大臣の指定する金融機関への預金又は郵便貯金にするほか、これを他に運用してはならない。
(財産の処分等の制限)
第三十三条 協会は、労働省令で定める重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、労働大臣の認可を受けなければならない。
(労働省令への委任)
第三十四条 この法律に規定するもののほか、協会の財務及び会計に関し必要な事項は、労働省令で定める。
第六章 雑則
(監督)
第三十五条 協会は、労働大臣が監督する。
2 労働大臣は、この法律の適正な施行を確保するため特に必要があると認めるときは、協会に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
3 前項の規定による命令は、協会の業務の運営の自主性に不当に干渉するものであつてはならない。
(報告)
第三十六条 労働大臣は、必要があると認めるときは、協会に対して業務又は財産の状況に関し報告をさせることができる。
(大蔵大臣との協議)
第三十七条 労働大臣は、次の場合には、大蔵大臣と協議しなければならない。
一 第二十七条又は第三十一条第一項若しくは第二項ただし書の規定による認可をしようとするとき。
二 第二十九条第一項の規定による承認をしようとするとき。
三 第三十四条の規定により労働省令を定めようとするとき。
(解散)
第三十八条 協会の解散については、別に法律で定める。
第七章 罰則
第三十九条 第八条において準用する民法第六十七条第二項の規定に違反して検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は第三十六条の規定に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告をした場合は、その行為をした協会の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。
第四十条 次の各号の一に掲げる違反があつた場合は、その行為をした協会の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により労働大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第六条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十五条に規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第三十二条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十五条第二項の規定による労働大臣の命令に違反したとき。
第四十一条 第七条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(協会の設立)
第二条 労働大臣は、協会の会長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された会長又は監事となるべき者は、協会の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ会長又は監事に任命されたものとする。
第三条 労働大臣は、設立委員を命じて、協会の設立に関する事務を処理させる。
2 設立委員は、定款を作成して、労働大臣の認可を受けなければならない。
3 設立委員は、前項の認可を受けたときは、政府に対し、出資金の払込の請求をしなければならない。
4 設立委員は、出資金の払込があつた日において、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者に引き継がなければならない。
第四条 附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者は、前条第四項の規定による事務の引継を受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
2 協会は、前項の規定による設立の登記をすることによつて成立する。
(経過規定)
第五条 第七条の規定は、この法律の施行の際現に日本労働協会に類似する名称を使用している者で、この法律の施行後三月以内に労働大臣の許可を受けたものには適用しない。
2 この法律の施行の際現に日本労働協会という名称又はこれに類似する名称を使用している者(前項の許可を受けた者を除く。)は、この法律の施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。この場合において、第七条の規定は、当該期間内は、これらの者には適用しない。
第六条 協会の最初の事業年度は、第二十六条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和三十四年三月三十一日に終るものとする。
第七条 協会の最初の事業年度の予算及び事業計画については、第二十七条中「事業年度開始前に」とあるのは、「協会の成立後遅滞なく」と読み替えるものとする。
(登録税法の一部改正)
第八条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「労働福祉事業団」の下に「、日本労働協会」を、「労働福祉事業団法」の下に「、日本労働協会法」を加える。
(印紙税法の一部改正)
第九条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第五条第六号ノ十一ノ二の次に次の一号を加える。
六ノ十一ノ三 日本労働協会ノ発スル証書、帳簿
(所得税法の一部改正)
第十条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十号中「日本放送協会」の下に「、日本労働協会」を加える。
(法人税法の一部改正)
第十一条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第四条第三号中「日本放送協会」の下に「、日本労働協会」を加える。
(地方税法の一部改正)
第十二条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の四第一項第三号中「日本放送協会」の下に「、日本労働協会」を加える。
(労働省設置法の一部改正)
第十三条 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第四条第十九号の二の次に次の一号を加える。
十九の三 日本労働協会法(昭和三十三年法律第百三十二号)に基いて、日本労働協会に対し、認可、承認その他監督を行うこと。
第七条中第六号を第七号とし、第五号の次に次の一号を加える。
六 日本労働協会の監督その他日本労働協会法の施行に関すること。
(内閣総理・法務・大蔵・労働大臣署名)