毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律

法律第百六十二号(昭三〇・八・一二)

 毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)の一部を次のように改正する。

 第二条に次の一項を加える。

3 この法律で「特定毒物」とは、毒物であつて、別表第三に掲げるものをいう。

 第三条第三項ただし書中「販売業者」を「販売業者(以下「毒物劇物営業者」という。)に改め、同条の次に次の一条を加える。

第三条の二 毒物若しくは劇物の製造業者又は学術研究のため特定毒物を製造し、若しくは使用することができる者として厚生大臣の許可を受けた者(以下「特定毒物研究者」という。)でなければ、特定毒物を製造してはならない。

2 毒物若しくは劇物の輸入業者又は特定毒物研究者でなければ、特定毒物を輸入してはならない。

3 特定毒物研究者又は特定毒物を使用することができる者として品目ごとに政令で指定する者(以下「特定毒物使用者」という。)でなければ、特定毒物を使用してはならない。ただし、毒物又は劇物の製造業者が毒物又は劇物の製造のために特定毒物を使用するときは、この限りでない。

4 特定毒物研究者は、特定毒物を学術研究以外の用途に供してはならない。

5 特定毒物使用者は、特定毒物を品目ごとに政令で定める用途以外の用途に供してはならない。

6 毒物劇物営業者、特定毒物研究者又は特定毒物使用者でなければ、特定毒物を譲り渡し、又は譲り受けてはならない。

7 前項に規定する者は、同項に規定する者以外の者に特定毒物を譲り渡し、又は同項に規定する者以外の者から特定毒物を譲り受けてはならない。

8 毒物劇物営業者又は特定毒物研究者は、特定毒物使用者に対し、その者が使用することができる特定毒物以外の特定毒物を譲り渡してはならない。

9 毒物劇物営業者又は特定毒物研究者は、保健衛生上の危害を防止するため政令で特定毒物について品質、着色又は表示の基準が定められたときは、当該特定毒物については、その基準に適合するものでなければ、これを特定毒物使用者に譲り渡してはならない。

10 毒物劇物営業者、特定毒物研究者又は特定毒物使用者でなければ、特定毒物を所持してはならない。

11 特定毒物使用者は、その使用することができる特定毒物以外の特定毒物を譲り受け、又は所持してはならない。

 第四条の見出しを「(営業の登録)」に改める。

 第五条中「適合しないと認めるとき」の下に「、又はその者が第十九条第二項若しくは第三項の規定により登録を取り消され、取消の日から起算して二年を経過していないものであるとき」を加え、同条第一号、第二号及び第五号中「劇物が」の下に「飛散し、」を加え、同条に次の一号を加える。

 六 製造業の登録にあつては、製造所の作業場の構造は、毒物又は劇物が作業場の外に飛散し、漏れ、しみ出、若しくは流れ出、又は地下にしみ込むおそれがないものであること。

 第六条の次に次の一条を加える。

 (特定毒物研究者の許可)

第六条の二 特定毒物研究者の許可を受けようとする者は、主たる研究所の所在地の都道府県知事を経て、厚生大臣に申請書を出さなければならない。

2 厚生大臣は、毒物に関し相当の知識を持ち、かつ、学術研究上特定毒物を製造し、又は使用することを必要とする者でなければ、特定毒物研究者の許可を与えてはならない。

3 厚生大臣は、次に掲げる者には、特定毒物研究者の許可を与えないことができる。

 一 精神病者又は麻薬、大麻、あへん若しくは覚せい剤の中毒者

 二 おし、つんぼ、盲又は色盲の者

 三 毒物若しくは劇物又は薬事に関する罪を犯し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して三年を経過していない者

 四 第十九条第三項の規定により許可を取り消され、取消の日から起算して二年を経過していない者

 第七条第一項中「第四条の登録を受けて、毒物又は劇物の製造業、輸入業又は販売業を営む者(以下「毒物劇物営業者」という。)」を「毒物劇物営業者」に改める。

 第八条第二項第二号中「若しくはあへん」を「、あへん若しくは覚せい剤」に、同項第三号中「又は盲」を「、盲又は色盲」に、同項第四号中「懲役に処せられた者」を「罰金以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して三年を経過していない者」に改め、同条に次の二項を加える。

4 前項の規定により限定された課目につき毒物劇物取扱者試験に合格した者は、農業上必要な毒物又は劇物のみを取り扱う製造所、営業所又は店舗においてのみ事業管理人となることができる。

5 前二項の規定は、厚生大臣が指定する毒物又は劇物を取り扱う者について準用する。

 第九条を次のように改める。

 (登録の変更)

第九条 毒物劇物営業者は、登録を受けた毒物又は劇物以外の毒物又は劇物を製造し、輸入し、又は販売しようとするときは、あらかじめ、第六条第二号に掲げる事項につき登録の変更を受けなければならない。

2 第四条第二項及び第三項の規定は、登録の変更について準用する。

 第十条に次の二項を加える。

2 特定毒物研究者は、左の各号の一に該当する場合には、三十日以内に、厚生大臣にその旨を届け出なければならない。

 一 氏名又は住所を変更したとき。

 二 当該研究を廃止したとき。

3 第一項第三号又は前項第二号の場合において、その届出があつたときは、当該登録又は許可は、その効力を失う。

 第十一条中「毒物劇物営業者」の下に「及び特定毒物研究者」を加え、同条第一項中「紛失し、」の下に「飛散し、」を加える。

 第十二条第一項及び第三項中「毒物劇物営業者」の下に「及び特定毒物研究者」を加える。

 第十五条第二号中「若しくは大麻」を「、大麻、あへん若しくは覚せい剤」に改め、同条の次に次の一条を加える。

 (廃棄)

第十五条の二 毒物又は劇物は、廃棄の方法について政令で定める技術上の基準に従わなければ、廃棄してはならない。

 第十六条を次のように改める。

 (特定毒物の取扱等)

第十六条 保健衛生上の危害を防止するため必要があるときは、政令で、特定毒物の運搬、貯蔵その他の取扱について、技術上の基準を定めることができる。

2 保健衛生上の危害を防止するため特に必要があるときは、政令で、次に掲げる事項を定めることができる。

 一 特定毒物が附着している物又は特定毒物を含有する物の取扱に関する技術上の基準

 二 特定毒物を含有する物の製造業者又は輸入業者が一定の品質又は着色の基準に適合するものでなければ、特定毒物を含有する物を販売し、又は授与してはならない旨

 三 特定毒物を含有する物の製造業者、輸入業者又は販売業者が特定毒物を含有する物を販売し、又は授与する場合には、一定の表示をしなければならない旨

 第十七条第一項中「毒物劇物営業者」の下に「又は特定毒物研究者」を、「店舗」の下に「、研究所」を加える。

 第十九条の見出しを「(登録の取消等)」に、同条第三項中「毒物又は劇物の製造業又は輸入業の登録を受けている者」を「毒物若しくは劇物の製造業若しくは輸入業の登録を受けている者又は特定毒物研究者」に、「その登録」を「その登録若しくは特定毒物研究者の許可」に、同条第四項中「毒物又は劇物の製造業者又は輸入業者」を「毒物若しくは劇物の製造業者若しくは輸入業者又は特定毒物研究者」に改める。

 第二十条第一項中「前条第三項」を「前条第二項又は第三項」に、「毒物劇物営業者」を「毒物劇物営業者若しくは特定毒物研究者」に、同条第二項及び第三項中「毒物劇物営業者」を「毒物劇物営業者又は特定毒物研究者」に改め、同条に次の一項を加える。

4 厚生大臣又は都道府県知事は、その毒物劇物営業者若しくは特定毒物研究者又はその代理人が正当の理由がなくて出頭しないときは、聴聞を行わないで前条第二項又は第三項の処分を行うことができる。

 第二十一条を次のように改める。

 (登録が失効した場合等の措置)

第二十一条 毒物劇物営業者、特定毒物研究者又は特定毒物使用者は、その営業の登録若しくは特定毒物研究者の許可が効力を失い、又は特定毒物使用者でなくなつたときは、十五日以内に、毒物若しくは劇物の製造業者若しくは輸入業者又は特定毒物研究者にあつては厚生大臣に、毒物若しくは劇物の販売業者又は特定毒物使用者にあつては都道府県知事に、現に所有する特定毒物の品名及び数量を届け出なければならない。

2 前項の規定により届出をしなければならない者については、これらの者がその届出をしなければならないこととなつた日から起算して五十日以内に同項の特定毒物を毒物劇物営業者、特定毒物研究者又は特定毒物使用者に譲り渡す場合に限り、その譲渡及び譲受については、第三条の二第六項及び第七項の規定を適用せず、また、その者の前項の特定毒物の所持については、同期間に限り、第三条の二第十項の規定を適用しない。

3 毒物劇物営業者又は特定毒物研究者であつた者が前項の期間内に第一項の特定毒物を譲り渡す場合においては、第三条の二第八項及び第九項の規定の適用については、その者は、毒物劇物営業者又は特定毒物研究者であるものとみなす。

4 前三項の規定は、毒物劇物営業者、特定毒物研究者又は特定毒物使用者が死亡し、又は法人たるこれらの者が合併によつて消滅した場合に、その相続人若しくは相続人に代つて相続財産を管理する者又は合併後存続し、若しくは合併により設立された法人の代表者について準用する。

 第二十二条の見出しを「(営業者及び特定毒物研究者以外の者に対する準用)」に、同条中「第十一条第一項」を「第十一条」に、「、第十七条並びに前条」を「並びに第十七条」に、「毒物劇物営業者」を「毒物劇物営業者及び特定毒物研究者」に改め、同条に次の一項を加える。

2 厚生大臣又は都道府県知事は、前項の者が同項で準用する第十一条の規定に違反していると認めるときは、その者に対し、相当の期間を定めて、必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。

 第二十四条第一号中「第三条」を「第三条又は第三条の二」に、同条第二号中「第二十二条」を「第二十二条第一項」に改め、同条第五号を次のように改める。

 五 第十五条の二の規定に違反した者

 第二十四条の次に次の一条を加える。

第二十四条の二 第二十二条第二項の規定による命令に違反した者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 第二十五条第一号中「第十条第三号」を「第十条第一項第三号又は第二項第二号」に、同条第三号及び第四号中「第二十二条」を「第二十二条第一項」に、同条第五号中「第二十一条(第二十二条で準用する場合を含む。)」を「第二十一条第一項(同条第四項で準用する場合を含む。)」に改める。

 第二十六条中「前二条」を「前三条」に改め、同条の次に次の一条を加える。

第二十七条 第十六条の規定に基く政令には、その政令に違反した者を二年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する旨の規定及び法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関してその政令の違反行為をしたときはその行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金を科する旨の規定を設けることができる。

 別表第一第十号中「モノフルオール醋酸」を「モノフルオール酢酸」に改め、同表中第十一号を第十九号とし、第十号の次に次の八号を加える。

 十一 テトラエチルピロホスフエイト及びこれを含有する製剤

 十二 ヘキサエチルテトラホスフエイト及びこれを含有する製剤

 十三 ジエチルパラニトロフエニルチオホスフエイト及びこれを含有する製剤

 十四 ジメチルパラニトロフエニルチオホスフエイト及びこれを含有する製剤

 十五 エチルパラニトロフエニルチオノべンゼンホスホネイト及びこれを含有する製剤

 十六 パラクロルフエニルジアゾチオウレア、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤

 十七 二―クロル―四―メチル―六―ジメチルアミノピリミジン、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤

 十八 オクタメチルピロホスホルアミド及びこれを含有する製剤

 別表第二第二十号中「クロル醋酸」を「クロル酢酸」に、同表第四十号中「パラフエニレンヂアミン、パラトルイレンヂアミン」を「パラフエニレンジアミン、パナトルイレンジアミン」に改め、同表中第五十三号を第五十八号とし、第五十二号の次に次の五号を加える。

 五十三 ブロムメチル

 五十四 二―四―ジニトロ―六―シクロヘキシルフエノール及びこれを含有する製剤。ただし、二―四―ジニトロ―六―シクロヘキシルフエノール一五%以下を含有する製剤を除く。

 五十五 ぺンタクロルフエノール、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤。ただし、ペンタクロルフエノールとして五%以下を含有するものを除く。

 五十六 二―イソプロピル―四―メチルピリミジル―六―ジエチルチオホスフエイト及びこれを含有する製剤

 五十七 ジクロルベンジル酸、その化合物及びこれらのいずれかを含有する製剤。ただし、ジクロルベンジル酸として一五%以下を含有するものを除く。

 別表第二の次に別表第三として次のように加える。

別表第三

 一 四エチル鉛

 二 モノフルオール酢酸、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤

 三 ヂエチルパラニトロフエニルチオホスフエイト及びこれを含有する製剤

 四 ジメチルパラニトロフエニルチオホスフエイト及びこれを含有する製剤

 五 パラクロルフエニルジアゾチオウレア、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤

 六 二―クロル―四―メチル―六―ジメチルアミノピリミジン、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤

 七 オクタメチルピロホスホルアミド及びこれを含有する製剤

 八 前各号に掲げる毒物のほか、これらと同等以上の毒性を有する毒物であつて政令で定めるもの

   附 則

1 この法律は、公布の日から起算して五十日を経過した日から施行する。

2 この法律の施行の際現に事業管理人の業務に従事している者であつて、この法律の施行前に毒物若しくは劇物又は薬事に関する罪を犯し、罰金に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から起算してこの法律の施行の際まだ三年を経過していないものの事業管理人となる資格については、その者が当該製造所、営業所又は店舗において引き続きその業務に従事する場合に限り、第八条第二項第四号の改正規定にかかわらず、なお従前の例による。

3 この法律の施行前にした違反行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(厚生・内閣総理大臣署名) 

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