株式会社科学研究所法

法律第百六十号(昭三〇・八・一一)

 (研究所の目的)

第一条 株式会社科学研究所は、わが国産業の振興および発展に寄与するため、科学技術の向上に必要な事業を営むことを目的とする株式会社とする。

 (株式)

第二条 株式会社科学研究所(以下「研究所」という。)の株式は、額面株式とする。

2 研究所の株式は、記名株式とする。

3 研究所は、商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百四条の規定にかかわらず、定款で定めるところにより、次の各号に掲げる者が議決権の三分の一以上を占めることとならないようにするため、株式の譲渡を制限することができる。

 一 日本の国籍を有しない人

 二 外国又は外国の公共団体若しくはこれに準ずるもの

 三 外国の法令に基いて設立された法人その他の団体

 四 法人であつて、前三号に掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の三分の一以上若しくは議決権の三分の一以上を占めるもの

4 前項の規定により株式の譲渡を制限する定をしたときは、その定を登記しなければならない。

 (政府の出資)

第三条 政府は、予算の範囲内において、研究所に対して出資することができる。

 (商号の使用制限)

第四条 研究所以外の者は、その商号中に株式会社科学研究所という文字を使用してはならない。

 (取締役及び監査役の人数)

第五条 研究所の取締役は、七人以内、監査役は、二人以内とする。

 (代表取締役等の選定等の決議)

第六条 研究所の代表取締役の選定及び解職並びに監査役の選任及び解任の決議は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

 (代表取締役の兼職制限)

第七条 研究所の代表取締役は、他の報酬のある職務又は営業に従事してはならない。ただし、通商産業大臣の承認を受けたときは、この限りでない。

 (事業の範囲)

第八条 研究所は、その目的を達成するため、次の事業を営むものとする。

 一 科学技術に関する試験研究

 二 前号の事業に係る成果の普及

 三 前二号に掲げるもののほか、研究所の目的を達成するために必要な事業

2 研究所は、前項第三号に掲げる事業を営もうとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。

 (事業計画等)

第九条 研究所は、毎営業年度の開始前に、その営業年度の事業計画、資金計画及び収支予算を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これらを変更しようとするときも、同様とする。

2 通商産業大臣は、前項の認可にあたつては、研究所における研究の自主性を不当に拘束しないように考慮して、これをするものとする。

 (重要な財産の譲渡等)

第十条 研究所は、通商産業省令で定める重要な財産を譲渡し、担保に供し、又は有償で取得しようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。

 (社債の募集及び資金の借入)

第十一条 研究所は、社債を募集し、又は弁済期限が一年をこえる資金を借り入れようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。

 (社債発行限度の特例)

第十二条 研究所は、商法第二百九十七条の規定による制限をこえて、社債を募集することができる。ただし、資本及び準備金の総額又は最終の貸借対照表により研究所に現存する純財産額のいずれか少い額の二倍をこえてはならない。

 (一般担保)

第十三条 研究所の社債権者は、研究所の財産について他の債権者に先だつて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

2 前項の先取特権の順位は、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。

 (補助金の交付)

第十四条 政府は、研究所に対し、予算の範囲内において、第八条第一項第一号の事業を行うために必要な費用の一部を補助金として交付することができる。

 (定款の変更等)

第十五条 研究所の定款の変更、利益金の処分、合併及び解散の決議は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

 (財産日録等の提出)

第十六条 研究所は、毎営業年度終了後三月以内に、その営業年度の財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びに営業報告書を通商産業大臣に提出しなければならない。

 (監督)

第十七条 研究所は、通商産業大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。

2 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、研究所に対し、業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (協議)

第十八条 通商産業大臣は、第九条から第十一条まで又は第十五条(研究所の定款の変更の決議に係るものについては、研究所が発行する株式の総数を変更するものに限る。)の認可をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。

 (報告及び検査)

第十九条 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、研究所からその業務若しくは経理の状況に関する報告を徴し、又はその職員に、研究所の営業所、事務所その他の事業場に立入り、業務若しくは経理の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (罰則)

第二十条 研究所の取締役、監査役その他の職員が、その職務に関して、わいろを収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、三年以下の懲役に処する。これによつて不正の行為をし、又は相当の行為をしなかつたときは、五年以下の懲役に処する。

2 前項の場合において、収受したわいろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。

第二十一条 前条第一項のわいろを供与し、又はその申込若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

2 前項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。

第二十二条 第十九条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五万円以下の罰金に処する。

第二十三条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした研究所の取締役は、三十万円以下の過料に処する。

 一 第九条第一項の規定に違反して、事業計画、資金計画又は収支予算の認可を受けなかつたとき。

 二 第十条の規定に違反して、財産を譲渡し、担保に供し、又は有償で取得したとき。

 三 第十一条の規定に違反して、社債を募集し、又は資金を借り入れたとき。

 四 第十六条の規定に違反して、財産目録、貸借対照表、損益計算書若しくは営業報告書を提出せず、又は不実の記載をしたこれらの書類を提出したとき。

 五 第十七条第二項の規定による命令に違反したとき。

第二十四条 第八条第二項の規定に違反した場合には、その違反行為をした研究所の取締役は、五万円以下の過料に処する。

第二十五条 第四条の規定に違反した者は、五万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (研究所の設立)

2 通商産業大臣は、設立委員を命じ、研究所の設立に関して発起人の職務を行わせる。

3 設立委員は、定款を作成して、通商産業大臣の認可を受けなければならない。

4 通商産業大臣は、前項の認可をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。

5 昭和二十七年八月四日設立された株式会社科学研究所(以下「旧研究所」という。)は、研究所の設立委員の任命後二月以内に商法第三百四十三条に規定する株主総会の決議を得て、研究所に対してその営業の全部を出資することができる。

6 旧研究所が前項の出資をする場合においては、旧研究所の株主は、その所有する株式の数に比例して、研究所の株式引受人となる。

7 前項の規定により引き受けることとなる研究所の株式に一株に満たないものがある者の所有する旧研究所の株式については、設立委員は、商法第三百七十九条第一項に規定する処分をすることができる。

8 旧研究所は、附則第五項の決議があつた後は、その財産を善良な管理者の注意をもつて管理しなければならない。

9 附則第五項の規定により旧研究所が出資する営業の価格は、臨時に通商産業省に置く評価審査会が決定する。

10 前項の評価審査会は、委員七人をもつて組織する。

11 旧研究所は、附則第五項の出資をする場合においては、研究所の成立の時において、解散するものとし、その権利及び義務は、研究所に承継されるものとする。この場合においては、商法第百七十七条第三項の規定は、適用しない。

12 前項の場合において、旧研究所の株式を目的とする質権は、附則第六項の規定により旧研究所の株主が受けるべき株式又は附則第七項の処分により旧研究所の株主に交付すべき金銭の上に存在する。

13 商法第二百九条第四項の規定は、前項の質権に準用する。

14 株式申込証には、附則第三項の定款の認可の年月日を記載しなければならない。

15 附則第六項の規定により旧研究所の株主が研究所の設立に際して発行する株式の総数を引き受けた場合においても、研究所の設立は、募集設立に関する商法の規定によるものとする。

16 商法第百六十七条及び第百八十一条の規定は、研究所の設立については適用しない。

17 附則第二項から前項までに規定するもののほか、附則第九項の評価審査会、研究所の設立及び旧研究所の解散に関して必要な事項は、政令で定める。

 (商号についての経過規定)

18 第四条の規定は、この法律の施行の際現にその商号中に株式会社科学研究所という文字を使用している者については、研究所の成立後六月間は、適用しない。

 (事業計画等についての経過規定)

19 研究所の成立の日の属する営業年度の事業計画、資金計画及び収支予算については、第九条中「毎営業年度の開始前に」とあるのは、「研究所の成立後遅滞なく」と読み替えるものとする。

 (租税特別措置法の改正)

20 租税特別措置法(昭和二十一年法律第十五号)の一部を次のように改正する。

 第十条の五の次に次の一条を加える。

第十条の六 株式会社科学研究所が、左の各号に掲げる事項について、登記を受ける場合における登録税は、これを免除する。ただし、資本の金額又は増加資本の金額のうち、政府の出資及び株式会社科学研究所法附則第五項の出資に係る部分に限る。

 一 会社の設立

 二 会社の資本増加

 (工業技術院設置法の改正)

21 工業技術院設置法(昭和二十三年法律第二百七号)の一部を次のように改正する。

 第三条第四号の二の次に次の一号を加える。

 四の三 株式会社科学研究所に関する事務を処理すること。

 第六条に次の一号を加える。

 五 株式会社科学研究所に関する事項

(法務・大蔵・通商産業・内閣総理大臣署名) 

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