中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律

法律第三十三号(平一八・四・二六)

 (目的)

第一条 この法律は、中小企業によるものづくり基盤技術に関する研究開発及びその成果の利用を促進するための措置を講ずることにより、中小企業のものづくり基盤技術の高度化を図り、もって我が国製造業の国際競争力の強化及び新たな事業の創出を通じて、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 (定義等)

第二条 この法律において「中小企業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。

 一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であって、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種及び第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

 二 資本金の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、卸売業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

 三 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、サービス業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

 四 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であって、小売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

 五 資本金の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であって、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの

 六 企業組合

 七 協業組合

 八 事業協同組合、事業協同小組合、商工組合、協同組合連合会その他の特別の法律により設立された組合及びその連合会であって、政令で定めるもの

2 この法律において「特定ものづくり基盤技術」とは、ものづくり基盤技術振興基本法(平成十一年法律第二号)第二条第一項に規定するものづくり基盤技術のうち、当該技術を用いて行う事業活動の相当部分が中小企業者によって行われるものであって、中小企業者がその高度化を図ることが我が国製造業の国際競争力の強化又は新たな事業の創出に特に資するものとして経済産業大臣が指定するものをいう。

3 この法律において「特定研究開発等」とは、特定ものづくり基盤技術に関する研究開発を行うこと及びその成果を利用することをいう。

4 経済産業大臣は、第二項の特定ものづくり基盤技術を指定し、又はこれを変更しようとするときは、製造業を所管する大臣に協議するとともに、中小企業政策審議会の意見を聴かなければならない。

5 経済産業大臣は、第二項の特定ものづくり基盤技術を指定し、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 (特定ものづくり基盤技術高度化指針)

第三条 経済産業大臣は、中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針(以下「特定ものづくり基盤技術高度化指針」という。)を定めなければならない。

2 特定ものづくり基盤技術高度化指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 特定ものづくり基盤技術の高度化全般にわたる基本的な事項

 二 個々の特定ものづくり基盤技術ごとに、達成すべき高度化目標

 三 個々の特定ものづくり基盤技術ごとに、高度化目標の達成に資する特定研究開発等の実施方法

 四 個々の特定ものづくり基盤技術ごとに、特定研究開発等を実施するに当たって配慮すべき事項

3 前条第四項及び第五項の規定は、第一項の特定ものづくり基盤技術高度化指針の策定及び変更について準用する。

 (特定研究開発等計画の認定)

第四条 中小企業者は、特定ものづくり基盤技術の高度化を図るために単独で又は共同で行おうとする特定研究開発等に関する計画(中小企業者が第二条第一項第六号から第八号までに掲げる組合若しくは連合会を設立し、又は合併し、若しくは出資して会社を設立しようとする場合にあっては、その組合若しくは連合会又はその合併若しくは出資により設立される会社(合併後存続する会社を含む。)が行う特定研究開発等に関するものを含む。以下「特定研究開発等計画」という。)を作成し、経済産業省令で定めるところにより、これを経済産業大臣に提出して、その特定研究開発等計画が適当である旨の認定を受けることができる。この場合において、中小企業者が共同で特定研究開発等計画を作成した場合にあっては、経済産業省令で定めるところにより、代表者を定め、これを経済産業大臣に届け出るものとする。

2 特定研究開発等計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 特定ものづくり基盤技術の高度化を図るための特定研究開発等の目標

 二 特定研究開発等の内容及び実施期間

 三 特定研究開発等の実施に協力する事業者、大学その他の研究機関、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)その他の者(以下「協力者」という。)がある場合は、当該協力者の名称及び住所並びにその代表者の氏名並びにその協力の内容

 四 特定研究開発等を実施するために必要な資金の額及びその調達方法

3 経済産業大臣は、第一項の認定の申請があった場合において、当該申請に係る特定研究開発等計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。

 一 前項第一号から第三号までに掲げる事項が特定ものづくり基盤技術高度化指針に照らして適切なものであること。

 二 前項第二号に掲げる事項が遂行可能なものであること。

 三 前項第三号及び第四号に掲げる事項が特定研究開発等の適切かつ確実な遂行に資するものであること。

 (特定研究開発等計画の変更等)

第五条 前条第一項の認定を受けた中小企業者は、当該認定に係る特定研究開発等計画を変更しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣の認定を受けなければならない。

2 経済産業大臣は、前条第一項の認定に係る特定研究開発等計画(前項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定計画」という。)に従って特定研究開発等が行われていないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。

3 前条第三項の規定は、第一項の認定について準用する。

 (資金の確保)

第六条 国は、認定計画に従って行われる特定研究開発等に必要な資金の確保に努めるものとする。

 (中小企業信用保険法の特例)

第七条 中小企業信用保険法(昭和二十五年法律第二百六十四号)第三条第一項に規定する普通保険(以下「普通保険」という。)、同法第三条の二第一項に規定する無担保保険(以下「無担保保険」という。)又は同法第三条の三第一項に規定する特別小口保険(以下「特別小口保険」という。)の保険関係であって、特定研究開発等関連保証(同法第三条第一項、第三条の二第一項又は第三条の三第一項に規定する債務の保証であって、認定計画に従って行われる特定研究開発等に必要な資金に係るものをいう。以下同じ。)を受けた中小企業者に係るものについての次の表の上欄に掲げる同法の規定の適用については、これらの規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。

第三条第一項

保険価額の合計額が

中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律第七条第一項に規定する特定研究開発等関連保証(以下「特定研究開発等関連保証」という。)に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ

第三条の二第一項及び第三条の三第一項

保険価額の合計額が

特定研究開発等関連保証に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ

第三条の二第三項

当該借入金の額のうち

特定研究開発等関連保証及びその他の保証ごとに、それぞれ当該借入金の額のうち

 

当該債務者

特定研究開発等関連保証及びその他の保証ごとに、当該債務者

第三条の三第二項

当該保証をした

特定研究開発等関連保証及びその他の保証ごとに、それぞれ当該保証をした

 

当該債務者

特定研究開発等関連保証及びその他の保証ごとに、当該債務者

2 中小企業信用保険法第三条の八第一項に規定する新事業開拓保険の保険関係であって、特定研究開発等関連保証を受けた中小企業者に係るものについての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項中「二億円」とあるのは「三億円(中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律第五条第二項に規定する認定計画に従つて行われる特定研究開発等に必要な資金(以下「特定研究開発等資金」という。)以外の資金に係る債務の保証に係る保険関係については、二億円)」と、「四億円」とあるのは「六億円(特定研究開発等資金以外の資金に係る債務の保証に係る保険関係については、四億円)」と、同条第二項中「二億円」とあるのは「三億円(特定研究開発等資金以外の資金に係る債務の保証に係る保険関係については、二億円)」とする。

3 普通保険の保険関係であって、特定研究開発等関連保証に係るものについての中小企業信用保険法第三条第二項及び第五条の規定の適用については、同法第三条第二項中「百分の七十」とあり、及び同法第五条中「百分の七十(無担保保険、特別小口保険、売掛金債権担保保険、公害防止保険、エネルギー対策保険、海外投資関係保険、新事業開拓保険及び特定社債保険にあつては、百分の八十)」とあるのは、「百分の八十」とする。

4 普通保険、無担保保険又は特別小口保険の保険関係であって、特定研究開発等関連保証に係るものについての保険料の額は、中小企業信用保険法第四条の規定にかかわらず、保険金額に年百分の二以内において政令で定める率を乗じて得た額とする。

 (中小企業投資育成株式会社法の特例)

第八条 中小企業投資育成株式会社は、中小企業投資育成株式会社法(昭和三十八年法律第百一号)第五条第一項各号に掲げる事業のほか、次に掲げる事業を行うことができる。

 一 中小企業者が認定計画に従って特定研究開発等を行うために資本金の額が三億円を超える株式会社を設立する際に発行する株式の引受け及び当該引受けに係る株式の保有

 二 中小企業者のうち資本金の額が三億円を超える株式会社が認定計画に従って特定研究開発等を行うために必要とする資金の調達を図るために発行する株式、新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)又は新株予約権付社債等(中小企業投資育成株式会社法第五条第一項第二号に規定する新株予約権付社債等をいう。以下同じ。)の引受け及び当該引受けに係る株式、新株予約権(その行使により発行され、又は移転された株式を含む。)又は新株予約権付社債等(新株予約権付社債等に付された新株予約権の行使により発行され、又は移転された株式を含む。)の保有

2 前項第一号の規定による株式の引受け及び当該引受けに係る株式の保有並びに同項第二号の規定による株式、新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)又は新株予約権付社債等の引受け及び当該引受けに係る株式、新株予約権(その行使により発行され、又は移転された株式を含む。)又は新株予約権付社債等(新株予約権付社債等に付された新株予約権の行使により発行され、又は移転された株式を含む。)の保有は、中小企業投資育成株式会社法の適用については、それぞれ同法第五条第一項第一号及び第二号の事業とみなす。

 (特許料等の特例)

第九条 特許庁長官は、認定計画に従って行われる特定研究開発等の成果に係る特許発明(当該認定計画における特定研究開発等の実施期間の終了日から起算して二年以内に出願されたものに限る。)について、特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第百七条第一項の規定による第一年から第六年までの各年分の特許料を納付すべき者が次に掲げる者であって当該特定研究開発等を行う中小企業者であるときは、政令で定めるところにより、特許料を軽減し若しくは免除し、又はその納付を猶予することができる。

 一 その特許発明の発明者

 二 その特許発明が特許法第三十五条第一項に規定する従業者等(以下「従業者等」という。)がした同項に規定する職務発明(以下「職務発明」という。)であって、契約、勤務規則その他の定めによりあらかじめ同項に規定する使用者等(以下「使用者等」という。)に特許を受ける権利を承継させることが定められている場合において、その従業者等から特許を受ける権利を承継した使用者等

2 特許庁長官は、認定計画に従って行われる特定研究開発等の成果に係る発明(当該認定計画における特定研究開発等の実施期間の終了日から起算して二年以内に出願されたものに限る。)に関する自己の特許出願について、その出願審査の請求をする者が次に掲げる者であって当該特定研究開発等を行う中小企業者であるときは、政令で定めるところにより、特許法第百九十五条第二項の規定により納付すべき出願審査の請求の手数料を軽減し、又は免除することができる。

 一 その発明の発明者

 二 その発明が従業者等がした職務発明であって、契約、勤務規則その他の定めによりあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を承継させることが定められている場合において、その従業者等から特許を受ける権利を承継した使用者等

 (国の施策)

第十条 国は、中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化を促進するため、中小企業者と大学、高等専門学校等との連携による人材の育成、知的財産の適切な保護及び活用、研究開発の成果の取扱いに係る取引慣行の改善その他必要な施策を総合的に推進するよう努めるものとする。

 (指導及び助言)

第十一条 国は、認定計画に従って行われる特定研究開発等の適確な実施に必要な指導及び助言を行うものとする。

 (報告の徴収)

第十二条 経済産業大臣は、認定計画に従って特定研究開発等を行う者に対し、認定計画の実施状況について報告を求めることができる。

 (権限の委任)

第十三条 この法律に規定する経済産業大臣の権限は、経済産業省令で定めるところにより、経済産業局長に委任することができる。

 (罰則)

第十四条 第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 (中小企業基本法の一部改正)

第三条 中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)の一部を次のように改正する。

  第二十七条第三項中「及び流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成十七年法律第八十五号)」を「、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成十七年法律第八十五号)及び中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律(平成十八年法律第三十三号)」に改める。

(経済産業・内閣総理大臣署名) 

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