ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
法律第六十五号(平一三・六・二二)
目次
第一章 総則(第一条―第七条)
第二章 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の規制等(第八条―第十二条)
第三章 雑則(第十三条―第二十三条)
第四章 罰則(第二十四条―第二十七条)
附則
第一章 総則
(目的等)
第一条 この法律は、ポリ塩化ビフェニルが難分解性の性状を有し、かつ、人の健康及び生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質であること並びに我が国においてポリ塩化ビフェニル廃棄物が長期にわたり処分されていない状況にあることにかんがみ、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管、処分等について必要な規制等を行うとともに、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理のための必要な体制を速やかに整備することにより、その確実かつ適正な処理を推進し、もって国民の健康の保護及び生活環境の保全を図ることを目的とする。
2 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理については、この法律に定めるもののほか、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃棄物処理法」という。)の定めるところによる。
(定義)
第二条 この法律において「ポリ塩化ビフェニル廃棄物」とは、ポリ塩化ビフェニル、ポリ塩化ビフェニルを含む油又はポリ塩化ビフェニルが塗布され、染み込み、付着し、若しくは封入された物が廃棄物(廃棄物処理法第二条第一項に規定する廃棄物をいう。)となったもの(環境に影響を及ぼすおそれの少ないものとして政令で定めるものを除く。)をいう。
2 この法律において「事業者」とは、第十三条を除き、その事業活動に伴ってポリ塩化ビフェニル廃棄物を保管する事業者をいう。
(事業者の責務)
第三条 事業者は、そのポリ塩化ビフェニル廃棄物を自らの責任において確実かつ適正に処理しなければならない。
(ポリ塩化ビフェニルを製造した者等の責務)
第四条 ポリ塩化ビフェニルを製造した者及びポリ塩化ビフェニルが使用されている製品を製造した者(以下「ポリ塩化ビフェニル製造者等」という。)は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理が円滑に推進されるよう、国及び地方公共団体が実施する施策に協力しなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第五条 国は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物に関する情報の収集、整理及び活用、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理に関する技術開発の推進、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を確保するための体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
2 都道府県は、当該都道府県の区域内におけるポリ塩化ビフェニル廃棄物の状況を把握するとともに、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理が行われるように必要な措置を講ずることに努めなければならない。
3 国、都道府県及び市町村は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理の推進に関する国民、事業者及びポリ塩化ビフェニル製造者等の理解を深めるよう努めなければならない。
(ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画)
第六条 環境大臣は、廃棄物処理法第五条の二第一項に規定する基本方針に即して、環境省令で定めるところにより、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を総合的かつ計画的に推進するための基本的な計画(以下「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」という。)を定めなければならない。
2 ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の発生量、保管量及び処分量の見込み
二 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理施設の整備その他ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を確保するために必要な体制に関する事項
三 前二号に掲げるもののほか、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理の推進に関し必要な事項
3 環境大臣は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理計画)
第七条 都道府県又は政令で定める市(以下「都道府県等」という。)は、廃棄物処理法第五条の三第一項に規定する廃棄物処理計画及びポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画に即して、その区域(都道府県にあっては、当該都道府県の区域内にある当該政令で定める市の区域を除く。次項において同じ。)内におけるポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理に関する計画(以下「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理計画」という。)を定めなければならない。
2 ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理計画には、環境省令で定める基準に従い、当該都道府県等の区域内におけるポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理に関し、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の発生量、保管量及び処分量の見込み
二 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理の体制の確保に関する事項
三 前二号に掲げるもののほか、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理の推進に関し必要な事項
3 都道府県等は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
第二章 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の規制等
(保管等の届出)
第八条 事業者及びポリ塩化ビフェニル廃棄物を処分(再生することを含む。第二十一条を除き、以下同じ。)する者(以下「事業者等」という。)は、毎年度、環境省令で定めるところにより、そのポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管及び処分の状況に関し、環境省令で定める事項を都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長とする。以下同じ。)に届け出なければならない。
(保管等の状況の公表)
第九条 都道府県知事は、毎年度、環境省令で定めるところにより、前条のポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管及び処分の状況を公表するものとする。
(期間内の処分)
第十条 事業者は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理の体制の整備の状況その他の事情を勘案して政令で定める期間内に、そのポリ塩化ビフェニル廃棄物を自ら処分し、又は処分を他人に委託しなければならない。
(譲渡し及び譲受けの制限)
第十一条 何人も、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理に支障を及ぼすおそれがないものとして環境省令で定める場合のほか、ポリ塩化ビフェニル廃棄物を譲り渡し、又は譲り受けてはならない。
(承継)
第十二条 事業者について相続、合併又は分割(その保管するポリ塩化ビフェニル廃棄物に係る事業の全部を承継させるものに限る。)があったときは、相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により当該事業を承継すべき相続人を選定したときは、その者)、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割によりその事業の全部を承継した法人は、その事業者の地位を承継する。
2 前項の規定により事業者の地位を承継した者は、その承継があった日から三十日以内に、環境省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
第三章 雑則
(ポリ塩化ビフェニル使用製品に係る措置)
第十三条 環境大臣は、ポリ塩化ビフェニルが使用されている製品を使用する事業を所管する大臣に対し、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理について都道府県等が当該製品を使用する事業者の協力を得ることができるよう、必要な措置を講ずることを要請することができる。
(指導及び助言)
第十四条 都道府県知事は、事業者に対し、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理の実施を確保するために必要な指導及び助言をすることができる。
(協力の要請)
第十五条 環境大臣は、ポリ塩化ビフェニル製造者等に対し、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を円滑に推進するための資金の出えんその他の必要な協力を求めるよう努めるものとする。
(改善命令)
第十六条 環境大臣又は都道府県知事は、事業者が第十条の規定に違反した場合において、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理の実施を確保するため必要があると認めるときは、当該事業者に対し、期限を定めて、当該ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処分その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
2 前項の規定による命令をするときは、環境省令で定める事項を記載した命令書を交付しなければならない。
(報告の徴収)
第十七条 環境大臣又は都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、事業者等に対し、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管又は処分に関し、必要な報告を求めることができる。
(立入検査等)
第十八条 環境大臣又は都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、事業者等の事務所、事業場その他の場所に立ち入り、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管又は処分に関し、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度においてポリ塩化ビフェニル廃棄物を無償で収去させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(緊急時における環境大臣の事務執行)
第十九条 第十六条第一項、第十七条又は前条第一項の規定による環境大臣による命令、報告の徴収又はその職員による立入検査若しくは収去は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物が確実かつ適正に処分されないことにより人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることを防止するため緊急の必要があると認められる場合に行うものとする。
(国の措置)
第二十条 国は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理施設の整備を推進し、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理の確保を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(再審査請求)
第二十一条 第十六条第一項の規定により保健所を設置する市又は特別区の長がした処分についての審査請求の裁決に不服のある者は、環境大臣に対して再審査請求をすることができる。
(事務の区分)
第二十二条 第十六条、第十七条及び第十八条第一項の規定により都道府県、保健所を設置する市又は特別区が行うこととされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。
(経過措置)
第二十三条 この法律の規定に基づき、命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
第四章 罰則
第二十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第十一条の規定に違反して、ポリ塩化ビフェニル廃棄物を譲り渡し、又は譲り受けた者
二 第十六条第一項の規定による命令に違反した者
第二十五条 第八条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第二十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第十二条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第十七条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
三 第十八条第一項の規定による検査又は収去を拒み、妨げ、又は忌避した者
第二十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(検討)
第二条 政府は、この法律の施行後十年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(経過措置)
第三条 この法律の規定により特別区の長が管理し、及び執行することとされている事務のうち、政令で定めるものについては、当分の間、都知事が管理し、及び執行するものとする。
(政令への委任)
第四条 前条に定めるもののほか、この法律の施行に関して必要な経過措置は、政令で定める。
(環境・内閣総理大臣署名)