株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律
法律第二十二号(昭四九・四・二)
目次
第一章 総則(第一条)
第二章 資本の額が五億円以上の株式会社に関する特例(第二条−第二十一条)
第三章 資本の額が一億円以下の株式会社に関する特例(第二十二条−第二十七条)
第四章 罰則(第二十八条−第三十条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 この法律は、資本の額が五億円以上の株式会社及び資本の額が一億円以下の株式会社における監査等に関し商法(明治三十二年法律第四十八号)の特例を定めるものとする。
第二章 資本の額が五億円以上の株式会社に関する特例
(会計監査人の監査)
第二条 資本の額が五億円以上の株式会社(以下この章において「会社」という。)は、商法第二百八十一条第一項第一号、第二号及び第四号に掲げる書類並びにその附属明細書について、監査役の監査のほか、会計監査人の監査を受けなければならない。
(会計監査人の選任)
第三条 会計監査人は、監査役の過半数の同意を得て、取締役会の決議をもつて選任する。
2 会計監査人を選任したときは、取締役は、その旨を株主総会に報告しなければならない。
(会計監査人の資格)
第四条 会計監査人は、公認会計士(外国公認会計士を含む。)又は監査法人でなければならない。
2 次に掲げる者は、会計監査人となることができない。
一 会社又はその親会社若しくは子会社(商法第二百七十四条ノ三に規定する親会社又は子会社をいう。以下同じ。)の取締役、監査役又は使用人
二 業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者
三 監査法人でその社員のうちに第一号又は前号に掲げる者があるもの
(会計監査人の職務を行なうベき社員の指名)
第五条 会計監査人に選任された監査法人は、その職務を行なうべき社員を指名し、これを会社に通知しなければならない。
(会計監査人の解任)
第六条 会計監査人は、監査役の過半数の同意を得て、取締役会の決議をもつて解任することができる。
2 会計監査人を解任したときは、取締役は、その旨及び解任の理由を株主総会に報告しなければならない。
3 解任された会計監査人が前項の株主総会の会日の三日前までに会社に対して書面で解任についての意見を通知したときは、取締役は、その意見の要旨を株主総会に報告しなければならない。
(会計監査人の権限等)
第七条 会計監査人は、何時でも、会社の会計の帳簿及び書類の閲覧若しくは謄写をし、又は取締役に対して会計に関する報告を求めることができる。
2 会計監査人は、その職務を行なうため必要があるときは、会社の業務及び財産の状況を調査することができる。
3 会計監査人は、その職務を行なうため必要があるときは、子会社に対して会計に関する報告を求めることができる。
4 商法第二百七十四条ノ三第三項及び第四項の規定は、前項の場合について準用する。
5 会計監査人は、その職務を行なうにあたつて第四条第二項第一号又は第二号に掲げる者を使用してはならない。
(取締役の不正行為等を発見した場合の会計監査人の報告義務)
第八条 会計監査人がその職務を行なうに際して取締役の職務遂行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、その会計監査人は、これを監査役に報告しなければならない。
(会計監査人の損害賠償責任)
第九条 会計監査人がその任務を怠つたことにより会社に損害を生じさせたときは、その会計監査人は、会社に対し連帯して損害賠償の責めに任ずる。
第十条 会計監査人が重要な事項について第十三条第一項の監査報告書又は第十五条第二項の監査報告書に虚偽の記載をしたことにより第三者に損害を生じさせたときは、その会計監査人は、その第三者に対し連帯して損害賠償の責めに任ずる。ただし、その職務を行なうについて注意を怠らなかつたことを証明したときは、この限りでない。
(会計監査人、取締役及び監査役の連帯責任)
第十一条 会計監査人が会社又は第三者に対して損害賠償の責めに任ずべき場合において、取締役又は監査役もその責めに任ずべきときは、その会計監査人、取締役及び監査役は、連帯責務者とする。
(計算書類等の提出期限)
第十二条 取締役は、定時総会の会日の八週間前までに、商法第二百八十一条第一項各号に掲げる書類を監査役及び会計監査人に提出しなければならない。
(会計監査人の監査報告書)
第十三条 会計監査人は、前条の書類を受領した日から四週間以内に、監査報告書を監査役及び取締役に提出しなければならない。
2 前項の監査報告書には、商法第二百八十一条ノ三第二項第一号から第四号まで、第六号及び第九号に掲げる事項を記載しなければならない。
3 監査役は、会計監査人に対して、第一項の監査報告書につき説明を求めることができる。
(監査役の監査報告書)
第十四条 監査役は、前条第一項の監査報告書を受領した日から一週間以内に、監査報告書を取締役に提出し、かつ、その謄本を会計監査人に送付しなければならない。
2 前項の監査報告書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、その旨及び理由並びに自己の監査の方法の概要又は結果
二 会計以外の業務の監査の方法の概要
三 商法第二百八十一条ノ三第二項第五号及び第七号から第九号までに掲げる事項
(計算書類等の附属明細書の監査)
第十五条 取締役は、定時総会の会日の四週間前までに、商法第二百八十一条第一項の附属明細書を監査役及び会計監査人に提出しなければならない。
2 会計監査人は、前項の書類を受領した日から二週間以内に、これに関する監査報告書を監査役及び取締役に提出しなければならない。
3 監査役は、前項の監査報告書を受領した日から一週間以内に、第一項の書類に関する監査報告書を取締役に提出しなければならない。この場合において、会計監査人の報告を相当と認めたときは、監査役の監査報告書には、その旨を記載すれば足りる。
(監査報告書の備置き等)
第十六条 商法第二百八十二条の規定は、会計監査人の監査報告書について準用する。
(定時総会の招集通知への監査報告書謄本の添附)
第十七条 定時総会の招集の通知には、第十三条第一項の監査報告書の謄本及び第十四条第一項の監査報告書の謄本を添附しなければならない。
(定時総会における会計監査人の意見陳述)
第十八条 第二条の書類が法令又は定款に適合するかどうかについて会計監査人が監査役と意見を異にするときは、会計監査人(会計監査人が監査法人であるときは、その職務を行なうべき社員。次項において同じ。)は、定時総会に出席して意見を述べることができる。
2 定時総会において会計監査人の出席を求める決議があつたときは、会計監査人は、定時総会に出席して意見を述べなければならない。
(商法の適用除外)
第十九条 会社については、商法第二百八十一条ノ二から第二百八十一条ノ四までの規定は、適用しない。
(資本の額が増減した場合の経過措置)
第二十条 会社の資本の額が五億円未満となつた場合においては、その後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時までは、第二条から前条までの規定を適用する。
第二十一条 会社以外の株式会社の資本の額が五億円以上となつた場合においては、その後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時までは、第二条から第十九条までの規定にかかわらず、なお従前の例による。
第三章 資本の額が一億円以下の株式会社に関する特例
(監査役の職務及び権限)
第二十二条 資本の額が一億円以下の株式会社(以下この章において「会社」という。)の監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする会計に関する書類を調査し、株主総会にその意見を報告しなければならない。
2 監査役は、何時でも、会計の帳簿及び書類の閲覧若しくは謄写をし、又は取締役に対して会計に関する報告を求めることができる。
3 監査役は、その職務を行なうため必要があるときは、会社の業務及び財産の状況を調査することができる。
4 前三項の規定は、会社の清算の場合について準用する。
(計算書類又び監査報告書の提出期限)
第二十三条 取締役は、定時総会の会日の五週間前までに、商法第二百八十一条第一項各号に掲げる書類を監査役に提出しなければならない。
2 監査役は、前項の書類を受領した日から四週間以内に、監査報告書を取締役に提出しなければならない。
(会社と取締役との間の訴えについての会社代表)
第二十四条 会社が取締役に対し、又は取締役が会社に対して訴えを提起する場合には、その訴えについては、取締役会が定める者が会社を代表する。
2 株主総会は、前項の規定にかかわらず、会社を代表すべき者を定めることができる。
3 前二項の規定は、会社の清算人について準用する。
(商法の適用除外)
第二十五条 会社については、商法第二百四十七条第一項、第二百四十九条第一項ただし書、第二百五十二条、第二百五十三条第二項、第二百五十九条ノ二、第二百五十九条ノ三、第二百六十条ノ三、第二百六十条ノ四第二項、第二百七十四条、第二百七十四条ノ二、第二百七十五条、第二百七十五条ノ二、第二百七十五条ノ四、第二百八十条ノ十五第二項、第二百八十条ノ十六、第二百八十一条ノ二、第二百八十一条ノ三、第二百八十三条第二項、第三百八十条第二項及び第三項、第三百八十一条第一項、第四百十五条、第四百二十八条第二項、第四百三十条第二項(第二百三十八条、第二百七十六条、第二百七十八条及び第二百八十四条の規定を準用する部分を除く。)、第四百三十一条第一項、第四百三十二条(第四百三十一条第一項に係る部分に限る。)並びに第四百五十二条第一項の規定中株式会社の監査役に関する規定は、適用しない。
(資本の額が増減した場合の経過措置)
第二十六条 会社の資本の額が一億円をこえることとなつた場合においては、その後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時までは、第二十二条から前条までの規定を適用する。
2 前項の場合においては、監査役は、同項の定時総会の終結の時に退任する。
第二十七条 会社以外の株式会社の資本の額が一億円以下となつた場合においては、その後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時までは、第二十二条から第二十五条までの規定にかかわらず、なお従前の例による。
第四章 罰則
第二十八条 会計監査人がその職務に関し不正の請託を受け、賄賂を収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 会計監査人が監査法人である場合においては、会計監査人の職務を行なう社員がその職務に関し不正の請託を受け、賄賂を収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。会計監査人が監査法人である場合において、その社員が会計監査人の職務に関し不正の請託を受け、会計監査人に賄賂を収受させ、又はその供与を要求し、若しくは約束したときも同様とする。
3 前二項の場合において、収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第二十九条 前条第一項又は第二項に規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罰を犯した者が自首したときは、その刑を減軽又は免除することができる。
第三十条 商法第四百九十八条第一項に掲げる者又は会計監査人若しくはその職務を行なうべき社員が次の各号の一に該当するときは、三十万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
一 定時総会の会日の八週間前までに会計監査人の選任手続をしなかつたとき。
二 第六条第二項又は第三項の規定により株主総会に報告するにあたり、虚偽の陳述をし、又は事実を隠したとき。
三 正当の理由がなく、第七条第一項又は第二十二条第二項の規定による帳簿又は書類の閲覧又は謄写を拒んだとき。
四 第七条第二項、同条第四項において準用する商法第二百七十四条ノ三第三項又は第二十二条第三項の規定による調査を妨げたとき。
五 この法律の規定による監査報告書に記載すべき事項を記載せず、又は虚偽の記載をしたとき。
六 第十六条において準用する商法第二百八十二条第一項の規定に違反して、監査報告書を備え置かなかつたとき。
七 正当の理由がなく、第十六条において準用する商法第二百八十二条第二項の規定による書類の閲覧又はその謄本若しくは抄本の交付を拒んだとき。
八 第十七条の規定に違反して、定時総会の招集通知に監査報告書の謄本を添附しなかつたとき。
九 第十八条第一項又は第二項の規定により定時総会において意見を述べるにあたり、虚偽の陳述をし、又は事実を隠したとき。
2 有限会社法(昭和十三年法律第七十四号)第七十七条第一項又は第二項に規定する者が、第七条第四項において準用する商法第二百七十四条ノ三第三項の規定による調査を妨げたときも、前項と同様とする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
2 第二章の規定は、証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第百九十三条の二第一項の規定の適用を受ける株式会社(以下「証券取引法適用会社」という。)については、この法律の施行後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時まで、証券取引法適用会社でない株式会社のうち、銀行、信託会社、保険会社又は公共工事の前払金保証事業に関する法律(昭和二十七年法律第百八十四号)第二条第四項に規定する保証事業会社(以下「銀行等」と総称する。)以外のもので資本の額が十億円以上のものについては、昭和五十年一月一日前及び同日以後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時まで、銀行等で資本の額が十億円以上のものについては、昭和五十一年一月一日前及び同日以後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時まで、証券取引法適用会社でない株式会社で資本の額が十億円未満のものについては、別に法律で定める日前及び同日以後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時までは、それぞれ適用しない。
3 前項の規定により第二章の規定の適用を受けない株式会社がその適用を受けることとなつた場合においても、その後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時までは、なお同章の規定を適用しない。
4 第三章中監査役に関する規定は、商法の一部を改正する法律(昭和四十九年法律第二十一号)附則第七条第一項の規定が適用される監査役については、適用しない。
(法務・内閣総理大臣署名)