新市町村建設促進法

法律第百六十四号(昭三一・六・三○)

目次

 第一章 総則(第一条―第四条)

 第二章 新市町村建設計画の実施(第五条―第十条)

 第三章 新市町村建設計画の実施の促進(第十一条―第二十条)

 第四章 他の法律の特例(第二十一条―第二十五条)

 第五章 町村合併に伴う争論の処理及び未合併町村の町村合併の推進(第二十六条―第二十九条)

 第六章 補則(第三十条・第三十一条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、町村合併を行つた市町村の新市町村建設計画の実施を促進して、新市町村の健全な発展を図り、あわせて未合併町村の町村合併を強力に推進することにより、地方自治の本旨の充分な実現に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「新市町村」とは、町村合併により設置され、又は他の市町村の区域の全部若しくは一部を編入した市町村で、新市町村建設計画の実施に当るものをいう。

2 この法律において「新市町村建設計画」とは、町村合併促進法(昭和二十八年法律第二百五十八号)第六条第一項の新町村建設計画(同法第三十四条の規定(同法第三十七条第五項の規定により準用される同法第三十四条の規定を含む。)により新町村建設計画とみなされる計画及び同法第三十五条から第三十七条(第五項を除く。)までの規定により同法の規定が適用され、又は準用される市町村の建設に関する計画を含む。)をいう。

3 この法律において「町村合併」とは、二以上の市町村の区域の全部若しくは一部をもつて市町村を置き、又は市町村の区域の全部若しくは一部を他の市町村に編入することで、町村の数の減少を伴うものをいう。

4 この法律において「従前の市町村」とは、町村合併によりその区域の全部又は一部が新市町村の区域の一部となつた市町村をいう。

5 この法律において「未合併町村」とは、町村合併促進法第四条第一項の町村合併促進審議会の審議を経て定められた町村合併に関する計画において町村合併をすることが必要であるとされた町村で、当該計画に基く町村合併をしていないものをいう。

 (新市町村建設の基本)

第三条 新市町村は、基礎的な地方公共団体としての機能を充分に発揮して住民の福祉を増進するため、その地域の自然的、経済的、文化的その他の条件に即して総合的にその建設を進めることを基本方針として、すみやかにその一体性を確立し、組織及び運営の合理化を図り、健全な財政運営に努め、町村合併によつて強化された能力に応じてその建設を計画的かつ効果的に進めなければならない。

第四条 新市町村の関係機関及びその区域内の公共的団体等は、相互に協力して新市町村のすみやかな建設に努めなければならない。

2 新市町村の住民は、相互に融和し、一の地方公共団体の住民たるの自覚をもつて、進んでその負担を分任して新市町村の建設に当らなければならない。

   第二章 新市町村建設計画の実施

 (新市町村建設計画の調整等)

第五条 新市町村は、その建設を第三条の趣旨に適合して進めるため、必要があると認めるときは、新市町村建設計画の調整(新市町村建設計画の実施のための年度別計画の変更又は作成をいう。以下同じ。)をし、又はこれを変更するものとする。

2 新市町村は、前項の規定により新市町村建設計画の調整をするに当つては、行政機関、施設等の統合、事務処理の組織、職員の構成及び配置等の適正化並びに事務処理の方法の改善等その組織及び運営の合理化に努め、これにより経費の節減を図つて、新市町村建設計画に掲げる事業の財源を確保するようにしなければならない。

第六条 新市町村は、新市町村建設計画の調整をしようとするときは、新市町村建設審議会の審議及び議会の議決を経なければならない。この場合において、新市町村は、あらかじめ都道府県知事に協議しなければならない。

2 新市町村は、前項の規定により新市町村建設計画の調整をしたときは、直ちにその調整した計画を都道府県知事に提出しなければならない。

3 都道府県知事は、前項の規定により新市町村建設計画の提出があつたときは、直ちにその意見を付けて、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。

4 内閣総理大臣は、前項の規定により新市町村建設計画及び意見の提出があつたときは、直ちにこれを国の関係行政機関の長に通知しなければならない。

5 前各項の規定は、新市町村建設計画の変更につき準用する。

 (支所又は出張所の統合等)

第七条 新市町村で支所又は出張所を設けているものは、地勢、交通その他の事情に照らして、支所又は出張所の廃止又は統合に関する計画を定め、なるべくすみやかにその実現を図らなければならない。この場合において、住民の利便が低下することとならないように、事務処理の方法を改善し、連絡、通信及び交通の施設を整備する等適当な考慮を払わなければならない。

 (小学校及び中学校の統合等)

第八条 新市町村は、その設置する小学校又は中学校で経営の合理化と教育効果の向上を図るため規模を適正化することが適当と認められるものがある場合においては、地勢、交通、通学距離その他の事情を考慮して、小学校又は中学校の統合並びにこれに伴う校舎の転用及び通学区域(児童又は生徒の就学すべき学校の指定の基準とされている区域をいう。以下同じ。)の変更に関する計画を定め、これを実現するように努めなければならない。

2 新市町村は、小学校又は中学校の統合を行わない場合においても、小学校又は中学校の施設の状況及び児童又は生徒の通学の利便を考慮して、必要があると認めるときは、小学校又は中学校の通学区域の変更の措置を講じなければならない。

 (公共的団体等の統合)

第九条 新市町村の区域内の公共的団体等は、当該公共的団体等の目的の達成及び機能の発揮に寄与すると認められる場合には、新市町村の一体性のすみやかな確立に資するため、その統合整備を図るように努めなければならない。ただし、法令の規定により当該公共的団体等を監督する主務大臣がその統合整備について別段の定をした場合は、この限りでない。

 (新市町村建設審議会)

第十条 新市町村は、市町村長の諮問に応じて、新市町村建設計画の調整その他その実施に関し必要な調査及び審議を行わせるため、条例で新市町村建設審議会を置くことができる。

2 新市町村建設審議会の委員は、条例で定めるところにより、当該市町村の議会の議員、教育委員会の委員、農業委員会の委員その他の職員、公共的団体等の役員及び職員並びに学識経験を有する者のうちから、市町村長が任命する。

   第三章 新市町村建設計画の実施の促進

 (新市町村建設計画の調整の促進のための補助金)

第十一条 国は、新市町村建設計画の調整を促進するため必要があるときは、予算の範囲内において、新市町村及び関係都道府県に対して補助金を交付することができる。

 (新市町村建設計画の実施の促進等のため国の行う措置)

第十二条 国は、新市町村の組織及び運営の合理化を促進するため必要があるときは、予算の範囲内において、新市町村建設計画に掲げる次の事項について、新市町村に対して補助金を交付することができる。

 一 支所又は出張所の廃止又は統合に伴い直接必要となる通信及び連絡の施設の整備

 二 小学校若しくは中学校の統合又は通学区域の変更のため必要な校舎の新築、改築又は増築

 三 支所若しくは出張所の廃止若しくは統合又は小学校若しくは中学校の統合に伴い直接必要となる道路、橋その他の土木施設の整備

 四 前三号に掲げるもののほか、新市町村の一体性を確保し、その組織及び運営を合理化するため特に必要な施設の整備

2 国は、新市町村が行う小学校又は中学校の校舎の新築、改築又は増築のための事業に対して負担金又は補助金を交付するに当つては、当該小学校若しくは中学校の統合又は通学区域の合理化を積極的に促進するように配慮しなければならない。

第十三条 国は、新市町村建設計画の実施を促進するため、法令及び予算の範囲内において、事情の許す限り、新市町村建設計画に掲げる次の事項に係る財政上の援助について、新市町村のために優先的な取扱をするものとする。

 一 小学校又は中学校の校舎の新築、改築又は増築その他教育文化施設の整備

 二 消防自動車の購入その他消防施設の整備

 三 病院、診療所、隔離病舎、水道施設その他の衛生施設の整備

 四 授産施設、保育所その他の厚生施設の整備

 五 公営住宅の整備

 六 道路、橋又はトンネルの新設その他土木施設(土木工事の用に供する重要な機械及び器具を含む。)の整備

 七 開田、開畑、干拓、かんがい排水施設の整備その他の土地改良

 八 有線放送施設その他の通信施設の整備

 九 渡船その他の交通施設の整備

 十 前各号に掲げるもののほか、新市町村の永久の利益となるべき事業

2 国は、新市町村建設計画の実施を促進するため、法令及び予算の範囲内において、次に掲げる措置について、新市町村のために特別の配慮をするものとする。

 一 新市町村建設計画に掲げる水道事業、自動車運送事業、軌道事業その他公営企業に係る許可、認可その他の処分

 二 新市町村建設計画に掲げる事業に要する経費の財源とするための地方債を起すことの許可

 三 国有財産(国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第二条に規定する国有財産をいう。)の貸付、交換、売払及び譲与並びにこれに対する私権の設定

 四 新市町村の基本財産の造成のため必要な国有林野(国有林野法(昭和二十六年法律第二百四十六号)第二条に規定する国有林野をいう。以下同じ。)の売払、同法に定める部分林の設定、同法に定める部分林の造林についての補助金の交付及び公有林野等官行造林法(大正九年法律第七号)第一条の契約

 五 前各号に掲げるもののほか、国の行政機関の行う処分で政令で定めるもの

3 国は、新市町村建設計画の実施を促進するため、法令及び予算の範囲内において、事情の許す限り、次に掲げる国の行う事業の実施について、新市町村のため優先的な措置を講ずるものとする。

 一 道路の建設、河川の改修、漁港の修築その他の土木事業

 二 前号に掲げるもののほか、政令で定める事業

 (国の地方行政機関の所管区域)

第十四条 国は、国の地方行政機関(駐在機関を含む。)の所管区域が新市町村の区域を基礎とすることとなるように、事情の許す限りすみやかに必要な措置を講じなければならない。

 (都道府県の行う措置)

第十五条 都道府県は、新市町村建設計画の実施を促進するため、前三条の趣旨に従い、必要な措置を講ずるものとする。

2 都道府県は、新市町村の事務処理の能率をたかめるため、新市町村の求めに応じて、新市町村に対して当該都道府県の職員を派遣し、新市町村の職員の研修を行う等必要な協力をしなければならない。

3 前項の規定により派遣する職員の給与その他の身分取扱に関し必要な事項は、政令で定める。

 (公共企業体の協力等)

第十六条 日本国有鉄道、日本電信電話公社その他の公共企業体(公共企業体等労働関係法(昭和二十三年法律第二百五十七号)第二条第一項第一号に掲げる公共企業体をいう。)は、新市町村に係るその業務の運営に関し、新市町村の建設に資するため必要な措置を、事情の許す限りすみやかに講ずるようにしなければならない。

2 国は、日本電信電話公社が前項の趣旨に従い公衆電気通信法(昭和二十八年法律第九十七号)第二十九条の規定による加入区域の変更等必要な措置を計画的に講ずるため、日本電信電話公社が必要とする資金の融通について配慮しなければならない。

 (内閣総理大臣の助言、勧告その他の措置)

第十七条 内閣総理大臣は、新市町村建設計画の調整その他その実施に関して、新市町村及び都道府県に対し、助言又は勧告をし、その他適切な措置を講ずるものとする。

2 内閣総理大臣は、新市町村建設促進中央審議会(以下「中央審議会」という。)の意見をきいて、新市町村建設計画の調整又は実施に関する必要な基準を定めることができる。

3 内閣総理大臣は、前二項の措置を講じようとするときは、国の関係行政機関が所掌する事務に関する事項については、あらかじめ当該行政機関の長に協議しなければならない。

 (新市町村建設促進中央審議会)

第十八条 中央審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じて、新市町村建設計画の調整その他その実施の促進及び未合併町村の町村合併の推進に関し必要な事項を調査審議する。

2 中央審議会は、委員二十五人以内で組織する。

3 委員は、関係行政機関の職員、地方公共団体の議会の議員及び長並びに学識経験を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。

4 前三項に定めるもののほか、中央審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

 (都道府県知事の助言、勧告その他の措置)

第十九条 都道府県知事は、新市町村建設計画が第三条の趣旨に適合し、かつ、当該市町村の区域に係る都道府県の総合的な開発計画及び近隣市町村の新市町村建設計画と調和がとれることとなるように、新市町村建設計画の調整その他その実施に関して、新市町村に対し必要な助言又は勧告をし、その他適切な措置を講ずるものとする。

2 都道府県知事は、第十七条第二項の基準に基き、新市町村建設促進審議会を設置する都道府県にあつてはその意見をきいて、新市町村建設計画の調整又は実施に関する必要な基準を定めることができる。

3 都道府県知事は、毎年度の当初において、前年度中の新市町村建設計画の実施の状況をとりまとめて公表するとともに、これを内閣総理大臣に報告しなければならない。

 (新市町村建設促進審議会)

第二十条 都道府県は、都道府県知事の諮問に応じて、新市町村建設計画の調整その他その実施の促進及び未合併町村の町村合併の推進に関し必要な調査及び審議を行わせるため、条例で新市町村建設促進審議会を置くことができる。

2 新市町村建設促進審議会の委員は、二十人以内とし、条例で定めるところにより、国の地方行政機関の職員、当該都道府県の職員、当該都道府県の区域内の市町村の議会の議員及び長、公共的団体等の役員及び職員並びに学識経験を有する者のうちから、都道府県知事が任命する。

   第四章 他の法律の特例

 (地方財政法の特例)

第二十一条 新市町村が行う新市町村建設計画に掲げる事業で当該市町村の永久の利益となるべきものについては、地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条第一項ただし書の規定にかかわらず、地方債をもつてその財源とすることができる。

 (地方税法の特例)

第二十二条 新市町村は、従前の市町村の相互の間に地方税の賦課に関し著しい不均衡があるため、又は町村合併により承継した基本財産の価額若しくは負債の額につき従前の市町村相互の間において著しい差異があるため、その全区域にわたつて均一の課税をすることが著しく衡平を欠くと認められる場合においては、町村合併の行われた日の属する年度及びこれに続く三箇年度に限り、その衡平を欠く程度を限度として、不均一の課税をすることができる。

 (地方交付税法の特例)

第二十三条 国が地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところにより毎年度交付する地方交付税の額を算定するに当つては、新市町村については、同法第十三条に定めるもののほか、町村合併に伴い臨時に増加する行政に要する経費の需要を基礎として、総理府令で定めるところにより、同法に定める基準財政需要額の測定単位の数値を補正するものとする。

2 国は、小学校又は中学校の統合を行つた新市町村に交付すべき地方交付税の額を算定するに当つては、その統合に伴い必要となる経費が含まれることとなるように配慮するものとする。

 (国有財産特別措置法の特例)

第二十四条 国は、国有財産特別措置法(昭和二十七年法律第二百十九号)第三条第一項各号に掲げる場合のほか、新市町村が新市町村建設計画の実施に当り当該市町村の永久の利益となるべき施設の用に供する場合においては、町村合併後五箇年間に限り、同法に規定する普通財産を当該市町村に譲渡し、又は貸し付けることができる。

2 前項の規定による譲渡又は貸付に関しては、同項に規定する場合を国有財産特別措置法第三条第一項各号に掲げる場合に該当するものとみなして同法の規定を適用する。

 (国有林野法の特例)

第二十五条 国は、新市町村建設計画による基本財産の造成のため必要があると認められる場合においては、町村合併後五箇年間に限り、新市町村の区域に係る国有林野を国土の保安上及び国有林野の経営上必要なものを除くほか、当該市町村に売り払い、又はその所有する林野と交換することができる。

2 前項の規定による売払の条件については、売払代金の支払を、売払後五箇年間はすえ置き、その後二十箇年以内の年賦償還とするほか、政令で定めるところによるものとする。

3 新市町村は、第一項の規定により売払を受けた林野の経営については、あらかじめ国の承認を受けて定めた施業計画によらなければならない。

4 新市町村は、第一項の規定により売払を受けた林野の立木の伐採若しくは売払又は当該林野の売払をするには、あらかじめ国の承認を受けなければならない。

5 新市町村は、前項の売払に係る代金を収入したときは、第二項の売払代金の支払に充てなければならない。

6 新市町村は、第一項の規定により売払又は交換を受けた林野の管理については、なるべくその住民の生業に資するように配慮しなければならない。

7 国は、国有林野整備臨時措置法(昭和二十六年法律第二百四十七号)の規定により国有林野の売払を受けた市町村が新市町村となつた場合又は同法の規定により売払を受けた林野が町村合併により新市町村に引き継がれた場合においては、第二項の規定及び同項の規定に基く政令の規定に準じて、その売払の条件を改めることができる。

8 第三項から第六項までの規定は、前項の規定により売払の条件が改められた場合においては、同項の新市町村につき準用する。この場合において、第三項及び第四項中「第一項」とあるのは「国有林野整備臨時措置法」と、第五項中「第二項の売払代金」とあるのは「国有林野整備臨時措置法の規定により売払を受けた林野の支払代金」と、第六項中「第一項」とあるのは「国有林野整備臨時措置法」と読み替えるものとする。

   第五章 町村合併に伴う争論の処理及び未合併町村の町村合併の推進

 (町村合併に伴う争論のあつせん、調停及び裁定)

第二十六条 都道府県知事は、町村合併に伴い市町村の名称、事務所の位置、財産処分等に関し争論がある場合においては、この法律に特別の定のあるものを除くほか、争論の解決のため、町村合併調整委員にあつせんを行わせ、又はこれをその調停に付することができる。

2 町村合併調整委員は、五人以内とし、都道府県知事が新市町村建設促進審議会の委員のうちから任命する。

3 町村合併調整委員は、調停案を作成して、これを当事者に示し、その受諾を勧告するとともに、その調停案に理由を付けて公表することができる。

4 第一項の調停は、当事者が調停案を受諾して、その旨を記載した文書を都道府県知事に提出した時に成立するものとする。

5 町村合併調整委員は、第一項の規定によるあつせん又は調停による解決の見込がないと認めるときは、あつせん又は調停を打ち切り、その経過を都道府県知事に報告するものとする。

6 都道府県知事は、前項の規定による報告を受けた場合において、当該市町村の一体性を保持しその運営の正常化を図るため特に必要があると認めるときに限り、町村合併調整委員の意見をきいて当該争論の裁定をすることができる。

7 前項の規定による裁定は、文書をもつてし、その理由を付けて当事者に交付するとともに、都道府県知事がその要旨を告示しなければならない。

8 第一項の争論に係る市町村の名称、事務所の位置又は財産処分について第六項の規定による裁定があつたときは、それぞれ地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の規定による市町村の名称、事務所の位置又は財産処分についての関係市町村の条例の制定、議会の議決又は長の処分があつたものとみなし、その効力は、前項の規定による告示により生ずる。

9 第一項から第七項までの規定は、町村合併に関し市町村の名称、事務所の位置又は財産処分について争論がある場合に準用する。この場合において、第六項中「市町村の一体性を保持しその運営の正常化を図るため」とあるのは、「未合併町村の町村合併を推進するため」と読み替えるものとする。

 (市町村の境界変更に関するあつせん、調停及び投票)

第二十七条 都道府県知事は、新市町村の区域のうち従前の市町村の一部の地域又は新市町村に隣接する市町村の一部の地域に係る市町村の境界変更で新市町村とこれに隣接する市町村との間におけるものに関し争論があり、かつ、そのため関係市町村の一体性又はその相互の間の正常な関係が著しくそこなわれていると認めるときは、昭和三十二年三月三十一日までの間は、町村合併調整委員にあつせんを行わせ、又はこれをその調停に付することができる。

2 前条第三項及び第四項の規定は前項の調停につき、同条第五項の規定は前項のあつせん又は調停につき、それぞれ準用する。この場合において、同条第三項及び第四項中「当事者」とあるのは、「関係市町村」と読み替えるものとする。

3 前項の規定において準用する前条第四項の規定により第一項の調停が成立した場合において、当該調停において関係市町村の境界変更を行うものとされているときは、当該境界変更について地方自治法第七条第一項の規定による関係市町村の申請があつたものとみなす。

4 第二項の規定において準用する前条第四項の規定により第一項の調停が成立した場合において、当該調停において関係市町村の境界変更を当該地域内の選挙人の投票に基いて定めるものとされているときは、都道府県知事は、当該境界変更に関し、これを選挙人の投票に付することを当該市町村の選挙管理委員会に対し請求するものとする。

5 都道府県知事は、第二項の規定において準用する前条第五項の規定による報告を受けた場合において、地勢、交通、経済事情その他の事情に照らし、当該地域に係る市町村の境界変更をその地域内の選挙人の投票に基いて定めることが適当であると認めるときは、新市町村建設促進審議会の意見をきき、境界変更に関し投票を行うべき区域を示して、これを当該区域内の選挙人の投票に付することを当該市町村の選挙管理委員会に対し請求することができる。

6 市町村の選挙管理委員会は、第四項又は前項の請求があつたときは、政令で定めるところにより、請求のあつた日から三十日以内に第四項又は前項の投票に付さなければならない。

7 第四項又は第五項の請求があつた日から三十日以内に前項の投票が行われなかつたときは、前項の規定にかかわらず、都道府県の選挙管理委員会は、都道府県知事の請求に基き、政令で定めるところにより、当該請求のあつた日から三十日以内に当該請求に基く区域に係る市町村の境界変更に関し、これをその区域内の選挙人の投票に付さなければならない。

8 都道府県知事は、前項の請求については、あらかじめ内閣総理大臣に協議した上投票を行うべき区域を示して、第四項又は第五項の請求があつた日から九十日以内にこれを行わなければならない。

9 市町村の選挙管理委員会又は都道府県の選挙管理委員会は、それぞれ第六項又は第七項の投票の結果が判明したときは、直ちにこれを告示するとともに、都道府県知事に届け出なければならない。

10 第六項又は第七項の投票において当該区域に係る市町村の境界変更につき有効投票の三分の二以上の賛成があつた場合において、前項の規定による届出があつたときは、当該区域に係る市町村の境界変更に関し地方自治法第七条第一項の規定による関係市町村の申請があつたものとみなす。

11 政令で特別の定をするものを除くほか、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)中普通地方公共団体の議会の議員の選挙に関する規定(罰則を含む。)は、第六項及び第七項の投票につき準用する。

12 第三項の規定によりみなされる申請又は第六項若しくは第七項の投票に基く市町村の境界変更による市町村の区域の変動があつた場合には、その市町村の区域の変動を町村合併に伴う町村の区域の変動とみなして、町村合併促進法第二十条の規定を準用する。

13 内閣総理大臣は、都道府県の境界にわたる市町村の境界変更については、第一項、第四項又は第五項の規定の例により、あつせん、調停又は投票の請求をすることができる。この場合においては、政令で特別の定をするものを除くほか、前条第二項から第五項までの規定並びに第三項及び第六項から前項までの規定を準用する。

 (町村合併に関する都道府県知事の勧告等)

第二十八条 都道府県知事は、未合併町村の規模が適正を欠き、かつ、地勢、交通、経済事情その他の事情に照らし、町村合併を行うことが関係市町村の基礎的な地方公共団体としての機能の充分な発揮と住民の福祉の増進のため必要であると認めるときは、昭和三十二年三月三十一日までの間において、新市町村建設促進審議会の意見をきき、内閣総理大臣に協議して、あらたに当該市町村に係る町村合併に関する計画を定め、これを関係市町村に勧告しなければならない。

2 都道府県知事は、前項の勧告をした日から九十日以内に当該勧告を受けた市町村から当該勧告に基く町村合併に関する地方自治法第七条第一項の規定による申請がない場合において、特に必要があると認めるときは、新市町村建設促進審議会の意見をきいて、当該市町村に係る町村合併に関し、投票を行うべき区域を示して、これを当該市町村又はその一部の区域内の選挙人の投票に付することを当該市町村の選挙管理委員会に対し請求することができる。

3 前条第六項から第十一項までの規定は、前項の投票につき準用する。この場合において、同条第六項中「第四項又は前項」とあるのは「第二十八条第二項」と、同条第七項中「第四項又は第五項」とあるのは「第二十八条第二項」と、「市町村の境界変更」とあるのは「町村合併」と、同条第八項中「第四項又は第五項」とあるのは「第二十八条第二項」と、同条第十項中「市町村の境界変更につき有効投票の三分の二以上」とあるのは「町村合併につき選挙人の過半数」と、「市町村の境界変更に関し」とあるのは「町村合併に関し」と、「関係市町村」とあるのは「当該市町村」と読み替えるものとする。

4 第一項の勧告又は第二項の投票に基く町村合併については、町村合併促進法第十一条の六、第十八条から第二十条の二まで、第二十二条から第二十三条の二まで及び第二十四条の規定の例による。この場合においては、新市町村建設促進審議会の意見をもつて同法第二十三条の二第二項及び第四項の町村合併促進審議会の意見に代えるものとする。

5 第一項の勧告又は第二項の投票に基いて町村合併が行われた場合において、当該町村合併により設置され、又は他の市町村の区域の全部若しくは一部を編入した市町村が、町村合併促進法第六条の規定の例により、町村合併に伴い必要な市町村の建設に関する計画を定めたときは、当該市町村の建設に関する計画を新市町村建設計画と、その計画の実施に当る市町村を新市町村とみなして、この法律の規定を適用する。

 (町村合併に関する内閣総理大臣の勧告等)

第二十九条 内閣総理大臣は、前条第一項の勧告を受けた市町村で当該勧告を受けた日から四箇月以内に町村合併を行わないものがある場合において、都道府県知事の申請があつたときは、中央審議会の意見をきいて、関係市町村に対して町村合併の勧告をすることができる。

2 前項の規定による内閣総理大臣の勧告があつた場合において、当該町村がなお町村合併を行わないときは、小規模町村であることにより行われる国の財政上の援助措置は、当該町村については行われないことがあるものとする。

3 前条第一項の勧告を受けた市町村に係る町村合併に関し地方自治法第七条第一項の申請があつた日から四箇月以内に同項の規定による都道府県知事の処分が行われない場合においては、内閣総理大臣は、同項の規定にかかわらず、中央審議会の意見をきいて、関係市町村の規模を適正化するため特に必要があると認めるときに限り、政令で定めるところにより、当該申請に係る町村合併の処分を行うことができる。この場合において、当該処分が郡の境界にわたつて町村を設置するものであるときは、内閣総理大臣は、あわせて当該町村の属すべき郡の区域を定めるものとする。

4 内閣総理大臣は、前項の規定による処分をしたときは、直ちにその旨を告示するとともに、これを国の関係行政機関の長に通知しなければならない。

5 第三項の規定による処分は、前項の規定による告示によりその効力を生ずる。

6 第三項前段の規定による処分は、地方自治法第七条第一項の規定による処分とみなし、第三項後段の規定による処分は、同法第二百五十九条第三項の規定による処分とみなす。

7 前条第四項及び第五項の規定は、第一項の勧告に基く町村合併及び第三項前段の規定による処分に基く町村合併につき準用する。

8 第三項、第六項及び前項の規定は、地方自治法第七条第三項の規定による関係市町村の申請があつた日から四箇月以内に同項の規定による関係都道府県の申請が行われない場合に準用する。この場合において、第三項中「同項の規定にかかわらず」とあるのは「地方自治法第七条第三項の規定にかかわらず」と、「町村合併の処分」とあるのは「境界の変更の処分」と、第六項中「第七条第一項」とあるのは「第七条第三項」と、第七項中「町村合併」とあるのは「境界の変更」と読み替えるものとする。

   第六章 補則

 (町村合併促進法失効前の申請に係る町村合併についての適用関係)

第三十条 町村合併促進法が効力を失うまでに同法第二条第一項の町村合併(同法第三十六条及び第三十七条の規定により町村合併とみなされるものを含む。)の処分につき地方自治法第七条第一項の規定により申請をしている市町村について、町村合併促進法が効力を失つた後、地方自治法第七条第一項の規定による処分が行われた場合において、当該市町村が町村合併促進法第六条の規定の例により町村合併に伴い必要な市町村の建設に関する計画を定めているときは、当該市町村の建設に関する計画を新市町村建設計画と、その計画の実施に当る市町村を新市町村とみなして、この法律の規定を適用する。

2 第二十八条第四項の規定は、前項の町村合併につき準用する。

 (政令への委任)

第三十一条 この法律の実施のための手続その他その施行に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第二十八条及び第二十九条の規定は、昭和三十一年十月一日から施行する。

2 この法律中、第二十九条第八項の規定は、昭和三十三年三月三十一日に、その他の規定は、この法律の施行(前項本文の規定による施行をいう。以下同じ。)の日から起算して五箇年を経過した時にその効力を失う。ただし、その時までに第二十五条第一項の規定により国有林野の売払を受けた新市町村及び同条第八項の規定の適用を受けた新市町村については同条第三項から第六項までの規定、その時までに第二十七条第十二項の規定又は第二十八条第四項の規定(第二十九条第七項の規定(同条第八項の規定により準用される同条第七項の規定を含む。)又は第三十条第二項の規定により準用される第二十八条第四項の規定を含む。以下この項において同じ。)の適用を受けた市町村の区域の変動、町村合併又は境界の変更については第二十七条第十二項又は第二十八条第四項の規定は、その時以後も、なおその効力を有するものとし、昭和三十一年四月一日から同年九月三十日までの間に行われた町村合併により設置され、又は他の市町村の区域の全部若しくは一部を編入した新市町村については、第二十一条の規定は、昭和三十七年三月三十一日までその効力を有するものとする。

3 この法律に定める新市町村建設促進審議会の職務は、昭和三十一年九月三十日までの間は、町村合併促進法第四条第一項の町村合併促進審議会が行う。

4 この法律の施行前に改正前の町村合併促進法(この法律附則第十項の規定による改正前の町村合併促進法をいう。以下同じ。)第十四条の規定によりされた不均一の課税は、この法律第二十二条の規定によりされた不均一の課税とみなす。

5 新市町村につき第二十三条の規定を適用して算定される地方交付税の額が改正前の町村合併促進法第十五条の規定の例により算定される地方交付税の額に満たないときは、当該年度において当該市町村に交付すべき地方交付税の額は、町村合併の行われた日(町村合併促進法第三十四条の規定(同法第三十六条又は第三十七条第一項若しくは第五項の規定により準用される同法第三十四条の規定を含む。)により建設に関する計画を定めた新市町村については当該計画を定めた日)の属する年度及びこれに続く五箇年度に限り、改正前の町村合併促進法第十五条の規定の例により算定した額とする。

6 この法律の施行前に改正前の町村合併促進法第十七条第一項の規定によりされた国有林野の売払については、これをこの法律第二十五条第一項の規定によりされた売払とみなして同条第二項から第六項までの規定を適用する。

7 昭和三十一年九月三十日までの間は、第二十六条第二項中「新市町村建設促進審議会の委員」とあるのは、「町村合併促進法第四条第一項の町村合併促進審議会の委員」と読み替えるものとする。

8 この法律の施行前に改正前の町村合併促進法第十一条の三第三項の規定によりされた請求については、これをこの法律第二十七条第五項の規定によりされた請求とみなし、同条第六項中「請求があつた日」とあるのは「この法律の施行の日」と、同条第七項及び第八項中「第四項又は第五項の請求があつた日」とあるのは「この法律の施行の日」として、同条第六項から第十二項までの規定を適用する。

9 この法律の施行前に改正前の町村合併促進法第十一条の三第四項において準用する同法第十一条第三項の規定によりされた投票については、なお従前の例による。

10 町村合併促進法の一部を次のように改正する。

  第八条第二項を削る。

  第十一条の三を次のように改める。

 第十一条の三 削除

  第十一条の四中「、第十一条の二第四項又は前条第一項」を「又は第十一条の二第四項」に改める。

  第十二条から第十七条までを次のように改める。

 第十二条から第十七条まで 削除

  第二十六条を次のように改める。

 第二十六条 削除

  第二十九条から第三十一条までを次のように改める。

 第二十九条から第三十一条まで 削除

  第三十四条中「第十一条の三、第十三条、第十五条から第十七条まで、」、「第二十六条、」、「、第二十九条、第三十条(第二十七条に係る部分を除く。)、第三十一条」及び「、第十三条及び第十五条中「町村合併の行われた日の属する年度及びこれに続く五箇年度」とあるのは「町村合併の行われた日の属する年度及びこれに続く五箇年度のうち新町村建設計画を定めた日の属する年度以後の年度」とそれぞれ」を削る。

  第三十五条第一項ただし書を削る。

  第三十七条第一項各号列記以外の部分中「第三号から第六号まで」を「第五号及び第六号」に改め、同項第五号及び第六号中「十万」を「十五万」に改め、同条第二項中「第三十五条第一項但書の規定は前項の場合において、同条第二項の規定は」を「第三十五条第二項の規定は、」に改め、同条第五項ただし書を削る。

  附則に次の一項を加える。

 3 前項本文の規定にかかわらず、第二十条の規定は、新市町村建設促進法(昭和三十一年法律第百六十四号)第二十七条第十二項の規定の適用については、この法律が前項本文の規定により効力を失つた後においても、なおその効力を有する。

11 自治庁設置法(昭和二十七年法律第二百六十一号)の一部を次のように改正する。

  第二十三条の次に次の一条を加える。

 第二十三条の二 自治庁に、新市町村建設促進中央審議会を置く。

 2 新市町村建設促進中央審議会の所掌事務、組織、委員の任命その他の事項については、新市町村建設促進法(昭和三十一年法律第百六十四号)の定めるところによる。

(内閣総理・大蔵・農林大臣署名) 

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