昭和二十九年の台風及び冷害の被害農林業者に対する資金の融通に関する特別措置法

法律第二百二十一号(昭二九・一二・一五)

 (目的)

第一条 この法律は、昭和二十九年の台風第五号、台風第十二号、台風第十三号、台風第十四号若しくは台風第十五号(以下「台風」という。)又は同年の冷害(以下「冷害」という。)によつて損失を受けた農林業者に対する資金の融通を円滑にする措置を講じて、その経営の安定に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律で「被害農業者」とは、農業をおもな業務とする者であつて、台風及び冷害による農作物又は繭の減収がその農作物又は繭の平年の収穫量の百分の三十以上であり、かつ、台風及び冷害による農作物及び繭の減収による損失額がその者の農業による平年の総収入額の百分の十以上である旨の市町村長(全部事務組合又は役場事務組合のある地では、組合管理者。以下同じ。)の認定を受けたものをいい、「被害林業者」とは、林業をおもな業務とする者であつて、台風及び冷害による薪炭、木材、林業用種苗その他の林産物の損失額がその者の林業による平年の総収入額の百分の十以上である旨又は台風により炭がまその他政令で定める林業施設が破損したため著しい被害を被つた旨の市町村長の認定を受けたものをいう。

2 この法律で「経営資金」とは、農業協同組合若しくは森林組合(以下「組合」という。)又は金融機関が被害農業者又は被害林業者(以下「被害農林業者」という。)に対し、種苗、肥料、飼料、薬剤、薪炭原木等の購入資金、炭がまの構築資金その他農業経営又は林業経営に必要な資金(土地改良区の賦課金の納入のために必要な資金を含む。)として昭和三十年七月三十一日までに貸し付ける資金で次の各号に該当するものをいう。

 一 市町村長が認定する損失額を基準として政令の定めるところにより算出される額又は七万円(北海道にあつては十五万円)のどちらか低い額(牛又は馬を所有する被害農業者に貸し付けられる場合には、その額に更に三万円を加えた額)の範囲内のものであること。

 二 償還期限が政令の定めるところにより五年以内のものであること。

 三 利率が、次のイ又はロに該当する被害農林業者であつて台風及び冷害による農作物、繭又は林産物の減収による損失額がその者の農業又は林業による平年の総収入額の百分の五十以上である旨の市町村長の認定を受けたもの及び開拓地における被害農林業者に貸し付けられる場合は年三分五厘以内、その他の場合は年六分五厘以内のものであること。

  イ 昭和二十八年六月及び七月の水害並びに同年八月及び九月の風水害による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和二十八年法律第二百三十四号)の規定により利率年三分五厘以内の条件で同法にいう経営資金又は施設復旧資金の貸付を受けた者

  ロ 昭和二十八年における冷害による被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和二十八年法律第二百七十四号)の規定により利率年三分五厘以内の条件で同法にいう経営資金の貸付を受けた者

 (国庫補助)

第三条 政府は、都道府県に対し、予算の範囲内で次に掲げる経費の全部又は一部を補助する。

 一 都道府県が、農業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関に対しその貸し付けた経営資金(農業協同組合が農業協同組合連合会又は農林中央金庫から借り入れた資金をもつて貸し付けたものを除く。第三号、第五号及び第七号において同じ。)につき利子補給を行う場合にその利子補給に要する経費

 二 都道府県が、農業協同組合連合会若しくは森林組合連合会(以下「連合会」という。)又は農林中央金庫との契約により、当該連合会又は農林中央金庫が経営資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるために貸し付けた資金につき、当該連合会又は農林中央金庫に対し利子補給を行う場合にその利子補給に要する経費

 三 市町村が、農業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関に対し、その貸し付けた経営資金につき利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合にその補助に要する経費

 四 市町村が、連合会又は農林中央金庫との契約により、当該連合会又は農林中央金庫が、経営資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるために貸し付けた資金につき、当該連合会又は農林中央金庫に対し利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合にその補助に要する経費

 五 市町村が、農業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関が経営資金を貸し付けたことによつて受けた損失をこれに対し補償するのに要する経費の四分の三以内を都道府県が補助する場合にその補助に要する経費

 六 市町村が、連合会又は農林中央金庫との契約により、当該連合会又は農林中央金庫が、経営資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるための資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、当該連合会又は農林中央金庫に対し補償するのに要する経費の四分の三以内を都道府県が補助する場合にその補助に要する経費

 七 都道府県が、農業協同組合その他の金融機関との契約により当該金融機関が経営資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、農林大臣の承認を得て、当該金融機関に対し補償する場合にその損失補償に要する経費

 八 都道府県が、連合会又は農林中央金庫との契約により、当該連合会又は農林中央金庫が、経営資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるための資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、農林大臣の承認を得て、当該連合会又は農林中央金庫に対し補償する場合にその損失補償に要する経費

2 前項第五号から第八号までの契約には、次の各号の事項を含まなければならない。

 一 当該契約の当事者である組合、連合会及び農林中央金庫その他の金融機関(以下「融資機関」という。)は、当該契約により損失補償を受けた後も、善良な管理者の注意をもつて当該融資に係る債権の回収に努めなければならないこと。

 二 融資機関は、当該契約により損失補償を受けた後に当該融資に係る債権の回収によつて得た金額のうちから、債権行使のために必要とした費用を控除し、残額があるときは、これで当該融資について損失補償を受けない損失をうめ、なお残額があるときは、当該契約により都道府県又は市町村から受けた損失補償の金額に達するまでの金額を当該都道府県又は当該市町村に納付しなければならないこと。

3 第一項第五号から第八号までの損失は、融資元本の償還期限の到来後三月を経過してもなお元本又は利子(政令で定める遅延利子を含む。)の全部又は一部が回収されなかつた場合のその回収されなかつた金額とする。

第四条 前条第一項の規定により政府が都道府県に対し補助する場合のその補助に係る同項各号の経営資金の総額は、百億円を限度とする。

2 前条第一項の規定により政府が都道府県に対して交付する補助金は、同項第一号から第四号までの経費については、第二条第二項第三号の規定により利率が年三分五厘以内に定められている資金に係るものにあつては当該利子補給額から当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年二分五厘の割合で計算した額を控除した額又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年五分五厘の割合で計算した額のどちらか低い額の範囲内、利率が年六分五厘以内に定められている資金に係るものにあつては当該利子補給額の二分の一に相当する額又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年二分五厘の割合で計算した額のどちらか低い額の範囲内とし、前条第一項第五号から第八号までの経費については、当該損失補償額の二分の一に相当する額又は当該損失補償の対象となつた貸付金の総額の百分の二十に相当する額のどちらか低い額の範囲内とする。

 (政府への納付金)

第五条 第三条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、融資機関から同条第二項第二号の契約事項による納付金を受けたときは、その一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。

2 第三条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、その都道府県から補助金の交付を受けた市町村が融資機関から同条第二項第二号の契約事項によつて納付金を受けたときは、その全部又は一部をその市町村が都道府県から補助を受けた割合に応じてその市町村から納付させ、その納付金の全部又は一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。

 (補助金の打切又は返還)

第六条 政府は、都道府県若しくはその補助を受けた市町村がこの法律若しくはこの法律に基く命令に違反したとき、又は都道府県若しくは市町村と第三条第一項第五号から第八号までの契約を結んだ融資機関が同条第二項各号の契約事項に違反したときは、その都道府県に対し交付すべき補助金の全部若しくは一部を交付せず、又は既に交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 昭和二十八年台風第二号による被害農家及び被害漁家に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和二十八年法律第百八十七号)の一部を次のように改正する。

  第二条に次の一項を加える。

 3 農業協同組合その他の金融機関が、被害農家で昭和二十九年の台風及び冷害の被害農林業者に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和二十九年法律第二百二十一号)第二条第一項の被害農業者にも該当することとなつたものに対し、その者が貸付を受けている経営資金の償還に充てるための資金として、政令で定める額の範囲内において、償還期限三年以内及び利率年六分五厘以内の条件で昭和三十年三月三十一日までに貸し付ける資金は、これを経営資金とみなす。

3 昭和二十八年六月及び七月の水害並びに同年八月及び九月の風水害による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する特別措置法の一部を次のように改正する。

  第二条に次の一項を加える。

 6 農業協同組合、森林組合又は金融機関が、被害農業者又は被害林業者で昭和二十九年の台風及び冷害の被害農林業者に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和二十九年法律第二百二十一号)第二条第一項の被害農業者又は被害林業者にも該当することとなつたものに対し、その者が貸付を受けている経営資金の償還に充てるための資金として、政令で定める額の範囲内において、償還期限が政令の定めるところにより四年以内及び利率が年六分五厘以内(指定地域における被害農業者又は被害林業者に貸し付けられる場合は年三分五厘以内、開拓地における農業経営に必要な資金として貸し付けた経営資金の償還に充てるために貸し付けられる場合は年五分五厘以内)の条件で昭和三十年三月三十一日までに貸し付ける資金は、これを経営資金とみなす。

 第四条第二項但書中「第二条第三項」を「第二条第三項第三号又は第六項」に、「同条第三項又は第四項第一号」を「同条第三項第三号、第四項第一号又は第六項」に改める。

4 昭和二十八年における冷害による被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法の一部を次のように改正する。

  第二条に次の一項を加える。

 2 農業協同組合、森林組合又は金融機関が、被害農家で昭和二十九年の台風及び冷害の被害農林業者に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和二十九年法律第二百二十一号)第二条第一項の被害農業者にも該当することとなつたものに対し、その者が貸付を受けている経営資金の償還に充てるための資金として、政令で定める額の範囲内において、政令の定めるところにより償還期限四年以内及び利率年六分五厘(前項第三号の市町村又は開拓地区の区域内における被害農家に貸し付けられる場合は年三分五厘、その他の被害農家で開拓者であるものに貸し付けられる場合は年五分五厘)以内の条件で昭和三十年五月三十一日までに貸し付ける資金は、これを経営資金とみなす。

  第四条第二項但書中「第二条」を「第二条第一項第三号又は第二項」に、「同条」を「同条第一項第三号又は第二項」に改める。

(大蔵・農林・内閣総理大臣署名) 

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