国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律

法律第九十四号(平三・一〇・五)

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 上陸の手続の特例等(第三条―第七条)

 第三章 罰則(第八条―第十九条)

 第四章 没収に関する手続等の特例(第二十条―第二十三条)

 第五章 保全手続

  第一節 没収保全(第二十四条―第四十三条)

  第二節 追徴保全(第四十四条―第五十一条)

  第三節 雑則(第五十二条―第五十五条)

 第六章 没収及び追徴の裁判の執行及び保全についての国際共助手続(第五十六条―第七十条)

 第七章 雑則(第七十一条・第七十二条)

 附則

   第一章 総則

 (趣旨)

第一条 この法律は、薬物犯罪による不法収益等をはく奪すること等により、規制薬物に係る不正行為が行われる主要な要因を国際的な協力の下に除去することの重要性にかんがみ、並びに規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図り、及びこれに関する国際約束等の適確な実施を確保するため、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)、大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)、あへん法(昭和二十九年法律第七十一号)及び覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)に定めるもののほか、これらの法律その他の関係法律の特例その他必要な事項を定めるものとする。

 (定義)

第二条 この法律において「規制薬物」とは、麻薬及び向精神薬取締法に規定する麻薬及び向精神薬、大麻取締法に規定する大麻、あへん法に規定するあへん及びけしがら並びに覚せい剤取締法に規定する覚せい剤をいう。

2 この法律において「薬物犯罪」とは、次に掲げる罪(当該罪と他の罪とが刑法(明治四十年法律第四十五号)第五十四条第一項に規定する関係にある場合においては、当該他の罪を含む。)をいう。

 一 第八条、第十一条又は第十二条の罪

 二 麻薬及び向精神薬取締法第六十四条、第六十四条の二、第六十五条、第六十六条、第六十六条の三、第六十六条の四、第六十八条の二又は第六十九条の五の罪

 三 大麻取締法第二十四条、第二十四条の二又は第二十四条の七の罪

 四 あへん法第五十一条、第五十二条又は第五十四条の三の罪

 五 覚せい剤取締法第四十一条、第四十一条の二又は第四十一条の十一の罪

 六 麻薬及び向精神薬取締法第六十七条若しくは第六十九条の二、大麻取締法第二十四条の四、あへん法第五十三条又は覚せい剤取締法第四十一条の六の罪

 七 麻薬及び向精神薬取締法第六十八条若しくは第六十九条の四、大麻取締法第二十四条の六、あへん法第五十四条の二又は覚せい剤取締法第四十一条の九の罪

3 この法律において「不法収益」とは、薬物犯罪の犯罪行為により得た財産若しくは当該犯罪行為の報酬として得た財産又は前項第七号に掲げる罪に係る資金をいう。

4 この法律において「不法収益に由来する財産」とは、不法収益の果実として得た財産、不法収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他不法収益の保有又は処分に基づき得た財産をいう。

5 この法律において「不法収益等」とは、不法収益、不法収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。

   第二章 上陸の手続の特例等

 (上陸の手続の特例)

第三条 入国審査官は、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第五条第一項第六号に掲げる者である疑いのある外国人から入管法第六条第二項の申請があった場合において、法務大臣から、薬物犯罪の捜査に関し、当該外国人を上陸させることが必要であるとの検察官からの通報又は司法警察職員(麻薬取締官、麻薬取締員、警察官又は海上保安官に限る。次項、次条第一項及び第七条において同じ。)からの要請があった旨並びに規制薬物の散逸及び当該外国人の逃走を防止するための十分な監視体制が確保されていると認められる旨の連絡を受けているときは、入管法第九条第一項の規定にかかわらず、入管法第五条第一項第六号以外の事項について入管法第七条第一項の審査をした上、当該外国人の旅券に入管法第九条第一項の上陸許可の証印をすることができる。

2 入国審査官は、入管法第五条第一項第六号に掲げる者である疑いのある外国人につき入管法第十四条第一項、第十五条第一項若しくは第二項又は第十六条第一項の申請があった場合において、法務大臣から、薬物犯罪の捜査に関し、当該外国人を上陸させることが必要であるとの検察官からの通報又は司法警察職員からの要請があった旨並びに規制薬物の散逸及び当該外国人の逃走を防止するための十分な監視体制が確保されていると認められる旨の連絡を受けているときは、入管法第五条第一項第六号以外の事項について審査をした上、当該外国人の上陸を許可することができる。

3 入国審査官は、法務大臣から、第一項の規定による上陸許可の証印又は前項の規定による上陸の許可を受けている外国人について、引き続き本邦に在留させておくことが適当でないと認める旨の連絡を受けたときは、速やかに、当該外国人の本邦への上陸の時において当該外国人が入管法第五条第一項第六号に該当したか否かを審査しなければならない。

4 入国審査官は、前項の規定による審査により、同項に規定する外国人が入管法第五条第一項第六号に該当したと認めるときは、当該外国人についての第一項の規定による上陸許可の証印又は第二項の規定による上陸の許可を取り消すものとする。

 (税関手続の特例)

第四条 税関長は、関税法(昭和二十九年法律第六十一号)第六十七条(同法第七十五条において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による貨物の検査により、当該検査に係る貨物に規制薬物が隠匿されていることが判明した場合において、薬物犯罪の捜査に関し、当該規制薬物が外国に向けて送り出され、又は本邦に引き取られることが必要である旨の検察官又は司法警察職員からの要請があり、かつ、当該規制薬物の散逸を防止するための十分な監視体制が確保されていると認めるときは、当該要請に応ずるために次に掲げる措置をとることができる。ただし、当該措置をとることが関税法規の目的に照らし相当でないと認められるときは、この限りでない。

 一 当該貨物(当該貨物に隠匿されている規制薬物を除く。)について関税法第六十七条の規定により申告されたところに従って同条の許可を行うこと。

 二 その他当該要請に応ずるために必要な措置

2 前項(第一号を除く。)の規定は、関税法第七十六条第一項ただし書の規定による郵便物中にある信書以外の物の検査により、当該信書以外の物に規制薬物が隠匿されていることが判明した場合について準用する。この場合において、当該規制薬物については、同法第七十四条の規定は、適用しない。

 (金融機関等による疑わしい取引の届出)

第五条 銀行その他の政令で定める金融機関及びその他政令で定める者(以下「金融機関等」という。)は、政令で定める業務において収受した財産が不法収益等である疑いがある場合又は当該業務に係る取引の相手方が当該業務に関し第九条の罪に当たる行為を行っている疑いがあると認められる場合においては、速やかに、政令で定める事項を、文書で、主務大臣(政令で定める金融機関等にあっては、都道府県知事)に届け出なければならない。

2 前項の場合においては、金融機関等(その役員及び使用人を含む。)は、同項の規定による届出を行おうとすること又は行ったことを当該届出に係る取引の相手方又はその者の関係者に漏らしてはならない。

3 都道府県知事は、第一項の届出を受けたときは、速やかに、当該届出に係る文書の写しを主務大臣に送付しなければならない。

 (郵政大臣による疑わしい取引の記録)

第六条 郵政大臣は、郵便貯金の業務その他の政令で定める業務において収受した財産が不法収益等である疑いがある場合又は当該業務に係る取引の相手方が当該業務に関し第九条の罪に当たる行為を行っている疑いがあると認められる場合においては、速やかに、政令で定める事項を帳簿に記録するものとする。

 (閲覧等)

第七条 検察官、検察事務官、司法警察職員又は税関職員は、第五条第一項若しくは第三項の規定により主務大臣に届け出られ、若しくは送付された文書、同条第一項の規定により都道府県知事に届け出られた文書又は前条の規定により郵政大臣が記録した帳簿を閲覧し、又は謄写することができる。

   第三章 罰則

 (業として行う不法輸入等)

第八条 次に掲げる行為を業とした者(これらの行為と第十一条の罪に当たる行為を併せてすることを業とした者を含む。)は、無期又は五年以上の懲役及び一千万円以下の罰金に処する。

 一 麻薬及び向精神薬取締法第六十四条、第六十四条の二(所持に係る部分を除く。)、第六十五条、第六十六条(所持に係る部分を除く。)、第六十六条の三又は第六十六条の四(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。

 二 大麻取締法第二十四条又は第二十四条の二(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。

 三 あへん法第五十一条又は第五十二条(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。

 四 覚せい剤取締法第四十一条又は第四十一条の二(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。

 (不法収益等隠匿)

第九条 不法収益等の取得若しくは処分につき事実を仮装し、又は不法収益等を隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。不法収益の発生の原因につき事実を仮装した者も、同様とする。

2 前項の未遂罪は、罰する。

3 第一項の罪を犯す目的をもって、その予備をした者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 (不法収益等収受)

第十条 情を知って、不法収益等を収受した者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が不法収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者は、この限りでない。

 (規制薬物としての物品の輸入等)

第十一条 薬物犯罪(規制薬物の輸入又は輸出に係るものに限る。)を犯す意思をもって、規制薬物として交付を受け、又は取得した薬物その他の物品を輸入し、又は輸出した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

2 薬物犯罪(規制薬物の譲渡し、譲受け又は所持に係るものに限る。)を犯す意思をもって、薬物その他の物品を規制薬物として譲り渡し、若しくは譲り受け、又は規制薬物として交付を受け、若しくは取得した薬物その他の物品を所持した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 (あおり又は唆し)

第十二条 薬物犯罪(前条及びこの条の罪を除く。)、第九条の罪若しくは第十条の罪を実行すること又は規制薬物を濫用することを、公然、あおり、又は唆した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 (国外犯)

第十三条 第八条から第十条まで及び前条の罪は、刑法第二条の例に従う。

 (不法収益等の没収)

第十四条 次に掲げる財産は、これを没収する。ただし、第九条第一項若しくは第二項又は第十条の罪が不法収益又は不法収益に由来する財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産に係る場合において、これらの罪につき第三号から第五号までに掲げる財産の全部を没収することが相当でないと認められるときは、その一部を没収することができる。

 一 不法収益(第二条第二項第六号又は第七号に掲げる罪に係るものを除く。)

 二 不法収益に由来する財産(第二条第二項第六号又は第七号に掲げる罪に係る不法収益の保有又は処分に基づき得たものを除く。)

 三 第九条第一項若しくは第二項又は第十条の罪に係る不法収益等

 四 第九条第一項若しくは第二項又は第十条の犯罪行為より生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産

 五 前二号の財産の果実として得た財産、前二号の財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他前二号の財産の保有又は処分に基づき得た財産

2 前項の規定により没収すべき財産について、当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、同項の規定にかかわらず、これを没収しないことができる。

3 次に掲げる財産は、これを没収することができる。

 一 不法収益(第二条第二項第六号又は第七号に掲げる罪に係るものに限る。)

 二 不法収益に由来する財産(第二条第二項第六号又は第七号に掲げる罪に係る不法収益の保有又は処分に基づき得たものに限る。)

 三 第九条第三項の罪に係る不法収益等

 四 第九条第三項の犯罪行為より生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産

 五 前二号の財産の果実として得た財産、前二号の財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他前二号の財産の保有又は処分に基づき得た財産

 (不法収益等が混和した財産の没収)

第十五条 前条第一項各号又は第三項各号に規定する財産(以下「不法財産」という。)が不法財産以外の財産と混和した場合において、当該不法財産を没収すべきときは、当該混和により生じた財産(以下「混和財産」という。)のうち当該不法財産(当該混和に係る部分に限る。)の額又は数量に相当する部分を没収することができる。

 (没収の要件等)

第十六条 第十四条の規定による没収は、不法財産又は混和財産が犯人以外の者に帰属しない場合に限る。ただし、犯人以外の者が、犯罪の後情を知って当該不法財産又は混和財産を取得した場合(当該不法財産又は混和財産の取得が第十条ただし書に規定する不法収益等の収受に該当する場合を除く。)は、当該不法財産又は混和財産が犯人以外の者に帰属する場合であっても、これを没収することができる。

2 地上権、抵当権その他の権利がその上に存在する財産を第十四条の規定により没収する場合において、犯人以外の者が犯罪の前に当該権利を取得したとき、又は犯人以外の者が犯罪の後情を知らないで当該権利を取得したときは、これを存続させるものとする。

 (追徴)

第十七条 第十四条第一項の規定により没収すべき財産を没収することができないとき、又は同条第二項の規定によりこれを没収しないときは、その価額を犯人から追徴する。

2 第十四条第三項に規定する財産を没収することができないとき、又は当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、その価額を犯人から追徴することができる。

 (不法収益の推定)

第十八条 第八条の罪に係る不法収益については、同条各号に掲げる行為を業とした期間内に犯人が取得した財産であって、その価額が当該期間内における犯人の稼働の状況又は法令に基づく給付の受給の状況に照らし不相当に高額であると認められるものは、当該罪に係る不法収益と推定する。

 (両罰規定)

第十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第八条から第十二条までの罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。

   第四章 没収に関する手続等の特例

 (第三者の財産の没収手続等)

第二十条 不法財産である債権等(不動産及び動産以外の財産をいう。次条及び第二十三条において同じ。)が被告人以外の者(以下この条において「第三者」という。)に帰属する場合において、当該第三者が被告事件の手続への参加を許されていないときは、没収の裁判をすることができない。

2 薬物犯罪又は第九条若しくは第十条の罪(以下「薬物犯罪等」という。)に関し、この法律、麻薬及び向精神薬取締法その他の法令の規定により、地上権、抵当権その他の第三者の権利がその上に存在する財産を没収しようとする場合において、当該第三者が被告事件の手続への参加を許されていないときも、前項と同様とする。

3 地上権、抵当権その他の第三者の権利がその上に存在する財産を没収する場合において、第十六条第二項の規定により当該権利を存続させるときは、裁判所は、没収の言渡しと同時に、その旨を宣告しなければならない。

4 第十六条第二項の規定により存続させるべき権利について前項の宣告がない没収の裁判が確定したときは、当該権利を有する者で自己の責めに帰することのできない理由により被告事件の手続において権利を主張することができなかったものは、当該権利について、これを存続させるべき場合に該当する旨の裁判を請求することができる。

5 前項の裁判があったときは、刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)に定める処分された没収物に係る補償の例により、補償を行う。

6 第一項及び第二項に規定する財産の没収に関する手続については、この法律に特別の定めがあるもののほか、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和三十八年法律第百三十八号)の規定を準用する。

 (没収された債権等の処分等)

第二十一条 没収された債権等は、検察官がこれを処分しなければならない。

2 債権の没収の裁判が確定したときは、検察官は、当該債権の債務者に対し没収の裁判の裁判書の抄本を送付してその旨を通知するものとする。

 (没収の裁判に基づく登記等)

第二十二条 権利の移転について登記又は登録(以下「登記等」という。)を要する財産を没収する裁判に基づき権利の移転の登記等を関係機関に嘱託する場合において、没収により効力を失った処分の制限に係る登記等若しくは没収により消滅した権利の取得に係る登記等があり、又は当該没収に関して次章第一節の規定による没収保全命令若しくは附帯保全命令に係る登記等があるときは、併せてその抹消を嘱託するものとする。

 (刑事補償の特例)

第二十三条 債権等の没収の執行に対する刑事補償法による補償の内容については、同法第四条第六項の規定を準用する。

   第五章 保全手続

    第一節 没収保全

 (没収保全命令)

第二十四条 裁判所は、薬物犯罪等に係る被告事件に関し、この法律、麻薬及び向精神薬取締法その他の法令の規定により没収することができる財産(以下「没収対象財産」という。)に当たると思料するに足りる相当な理由があり、かつ、当該財産を没収するため必要があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、没収保全命令を発して、当該財産につき、この節の定めるところにより、その処分を禁止することができる。

2 裁判所は、地上権、抵当権その他の権利がその上に存在する財産について没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合において、当該権利が没収により消滅すると思料するに足りる相当な理由がある場合であって当該財産を没収するため必要があると認めるとき、又は当該権利が仮装のものであると思料するに足りる相当の理由があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、附帯保全命令を別に発して、当該権利の処分を禁止することができる。

3 没収保全命令又は附帯保全命令には、被告人の氏名、罪名、公訴事実の要旨、没収の根拠となるべき法令の条項、処分を禁止すべき財産又は権利の表示、これらの財産又は権利を有する者(名義人が異なる場合は、名義人を含む。)の氏名、発付の年月日その他最高裁判所規則で定める事項を記載し、裁判長又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。

4 裁判長は、急速を要する場合には、第一項若しくは第二項に規定する処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。

5 没収保全(没収保全命令による処分の禁止をいう。以下同じ。)に関する処分は、第一回公判期日までは裁判官が行う。この場合において、裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

6 没収保全がされた不動産又は動産については、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定により押収することを妨げない。

 (起訴前の没収保全命令)

第二十五条 裁判官は、前条第一項又は第二項に規定する理由及び必要があると認めるときは、公訴が提起される前であっても、検察官又は司法警察員(麻薬取締官、麻薬取締員、警察官又は海上保安官に限るものとし、警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。次項において同じ。)の請求により、同条第一項又は第二項に規定する処分をすることができる。

2 司法警察員は、その請求により没収保全命令又は附帯保全命令が発せられたときは、速やかに、関係書類を検察官に送付しなければならない。

3 第一項の規定による没収保全は、没収保全命令が発せられた日から三十日以内に当該保全がされた事件につき公訴が提起されないときは、その効力を失う。ただし、共犯に対して公訴が提起された場合において、その共犯に関し、当該財産につき前条第一項に規定する理由があるときは、この限りでない。

4 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、三十日ごとに、前項の期間を更新することができる。この場合において、更新の裁判は、検察官に告知された時にその効力を生ずる。

5 第一項又は前項の規定による請求は、請求する者の所属する官公署の所在地を管轄する地方裁判所の裁判官にしなければならない。

6 第一項又は第四項の規定による請求を受けた裁判官は、没収保全に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

7 検察官は、第一項の規定による没収保全が、公訴の提起があったためその効力を失うことがなくなるに至ったときは、その旨を没収保全命令を受けた者(被告人を除く。)に通知しなければならない。この場合において、その者の所在が分からないため、又はその他の理由によって、通知をすることができないときは、通知に代えて、その旨を検察庁の掲示場に七日間掲示して公告しなければならない。

 (没収保全に関する裁判の執行)

第二十六条 没収保全に関する裁判で執行を要するものは、検察官の指揮によって、これを執行する。

2 没収保全命令の執行は、当該命令により処分を禁止すべき財産を有する者にその謄本が送達される前であっても、することができる。

 (没収保全の効果)

第二十七条 没収保全がされた財産(以下「没収保全財産」という。)について当該保全がされた後にされた処分は、没収に関しては、その効果を生じない。ただし、第三十九条第一項の規定により没収の裁判をすることができない場合における同項に規定する手続(第四十二条第三項の規定により第三十九条第一項の規定を準用する手続を含む。)及び没収保全財産に対して実行することができる担保権の実行としての競売の手続による処分については、この限りでない。

 (代替金の納付)

第二十八条 裁判所は、没収保全財産を有する者の請求により、適当と認めるときは、決定をもって、当該没収保全財産に代わるものとして、その財産の価額に相当する金銭(以下「代替金」という。)の額を定め、その納付を許すことができる。

2 裁判所は、前項の請求について決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。

3 第一項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

4 代替金の納付があったときは、没収保全は、代替金についてされたものとみなす。

 (不動産の没収保全)

第二十九条 不動産(民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第四十三条第一項に規定する不動産及び同条第二項の規定により不動産とみなされるものをいう。以下この条(第七項を除く。)、次条、第三十一条及び第三十七条において同じ。)の没収保全は、その処分を禁止する旨の没収保全命令を発して行う。

2 前項の没収保全命令の謄本及び第二十五条第四項の規定による更新の裁判の裁判書の謄本(以下「更新の裁判の謄本」という。)は、不動産の所有者(民事執行法第四十三条第二項の規定により不動産とみなされる権利についてはその権利者とし、当該不動産又は権利に係る名義人が異なる場合は名義人を含む。)に送達しなければならない。

3 不動産の没収保全命令の執行は、没収保全の登記をする方法により行う。

4 前項の登記は、検察事務官が嘱託する。この場合において、嘱託は、検察官が没収保全命令の執行を指揮する書面に基づいて、これを行う。

5 不勤産の没収保全の効力は、没収保全の登記がされた時に生ずる。

6 不動産の没収保全の効力が生じたときは、検察官は、当該不動産の所在する場所に公示書を掲示する方法その他相当の方法により、その旨を公示する措置を執らなければならない。

7 不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の登記の後に没収保全の登記がされた場合において、その仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をするときは、没収保全の登記に係る処分の制限は、仮処分の登記に係る権利の取得又は消滅と抵触しないものとみなす。

8 民事執行法第四十六条第二項及び第四十八条第二項の規定は、不動産の没収保全について準用する。この場合において、同法第四十六条第二項中「債務者」とあるのは「没収保全財産を有する者」と、同法第四十八条第一項中「前項」とあるのは「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律第二十九条第四項」と、「執行裁判所」とあるのは「登記の嘱託をした検察事務官の所属する検察庁の検察官」と読み替えるものとする。

 (船舶等の没収保全)

第三十条 登記される船舶、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)の規定により登録を受けた飛行機若しくは回転翼航空機(第三十七条において単に「航空機」という。)、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)の規定により登録を受けた自動車(同条において単に「自動車」という。)又は建設機械抵当法(昭和二十九年法律第九十七号)の規定により登記を受けた建設機械(同条において単に「建設機械」という。)の没収保全については、不動産の没収保全の例による。

 (動産の没収保全)

第三十一条 動産(不動産及び前条に規定する物以外の物をいう。以下この条において同じ。)の没収保全は、その処分を禁止する旨の没収保全命令を発して行う。

2 前項の没収保全命令の謄本及び更新の裁判の謄本は、動産の所有者(名義人が異なる場合は、名義人を含む。)に送達しなければならない。

3 動産の没収保全の効力は、没収保全命令の謄本が所有者に送達された時に生ずる。

4 刑事訴訟法の規定による押収がされていない動産又は同法第百二十一条第一項の規定により、看守者を置き、若しくは所有者その他の者に保管させている動産について、没収保全の効力が生じたときは、検察官は、公示書をはり付ける方法その他相当の方法により、その旨を公示する措置を執らなければならない。

 (債権の没収保全)

第三十二条 債権の没収保全は、債権者(名義人が異なる場合は、名義人を含む。以下この条において同じ。)に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、及び債務者に対し債権者への弁済を禁止する旨の没収保全命令を発して行う。

2 前項の没収保全命令の謄本及び更新の裁判の謄本は、債権者及び債務者に送達しなければならない。

3 債権の没収保全の効力は、没収保全命令の謄本が債務者に送達された時に生ずる。

4 民事執行法第百五十条、第百五十六条第一項及び第三項並びに第百六十四条第四項の規定は、債権の没収保全について準用する。この場合において、同法第百五十条及び第百五十六条第一項中「差押え」とあり、及び同法第百五十条中「差押命令」とあるのは「没収保全」と、同条中「裁判所書記官は、申立てにより」とあるのは「検察事務官は、検察官が没収保全命令の執行を指揮する書面に基づいて」と、同法第百五十六条第一項及び第三項中「第三債務者」とあるのは「債務者」と、同項中「執行裁判所」とあるのは「没収保全命令を発した裁判所」と、同法第百六十四条第四項中「差し押さえられた債権」とあるのは「没収保全がされた債権」と、「支払又は供託」とあるのは「供託」と、「裁判所書記官は、申立てにより」とあるのは「検察事務官は、検察官が登記等の抹消の嘱託を指揮する書面に基づいて」と、「債権執行の申立てが取り下げられたとき、又は差押命令の取消決定が確定したときも」とあるのは「没収保全が効力を失ったとき、又は代替金が納付されたときも」と読み替えるものとする。

 (その他の財産権の没収保全)

第三十三条 第二十九条から前条までに規定する財産以外の財産権(以下この条において「その他の財産権」という。)の没収保全については、この条に特別の定めがあるもののほか、債権の没収保全の例による。

2 その他の財産権で債務者又はこれに準ずる者がないもの(次項に規定するものを除く。)の没収保全の効力は、没収保全命令が権利者に送達された時に生ずる。

3 第二十九条第三項から第五項まで及び第七項並びに民事執行法第四十八条第二項の規定は、その他の財産権で権利の移転について登記等を要するものについて準用する。この場合において、同項中「前項」とあるのは「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律第三十三条第三項において準用する第二十九条第四項」と、「執行裁判所」とあるのは「登記の嘱託をした検察事務官の所属する検察庁の検察官」と読み替えるものとする。

 (没収保全命令の取消し)

第三十四条 没収保全の理由若しくは必要がなくなったとき、又は没収保全の期間が不当に長くなったときは、裁判所は、検察官又は没収保全財産を有する者(その者が被告人であるときは、その弁護人を含む。)の請求により、又は職権で、決定をもって、没収保全命令を取り消さなければならない。

2 裁判所は、検察官の請求による場合を除き、前項の決定をするときは、検察官の意見を聴かなければならない。

 (没収保全命令の失効)

第三十五条 没収保全命令は、無罪、免訴若しくは公訴棄却(刑事訴訟法第三百三十八条第四号及び第三百三十九条第一項第一号の規定による場合を除く。)の裁判の告知があったとき、又は有罪の裁判の告知があった場合において没収の言渡しがなかったときは、その効力を失う。

2 刑事訴訟法第三百三十八条第四号又は第三百三十九条第一項第一号の規定による公訴棄却の裁判があった場合における没収保全の効力については、第二十五条第三項及び第四項の規定を準用する。この場合において、同条第三項中「没収保全命令が発せられた日」とあるのは、「公訴棄却の裁判が確定した日」と読み替えるものとする。

 (失効等の場合の措置)

第三十六条 没収保全が効力を失ったとき、又は代替金が納付されたときは、検察官は、速やかに、検察事務官に当該没収保全の登記等の抹消の嘱託をさせ、及び公示書の除去その他の必要な措置を執らなければならない。この場合において、没収保全の登記等の抹消の嘱託は、検察官がその嘱託を指揮する書面に基づいて、これを行う。

 (没収保全全財産に対する強制執行の手続の制限)

第三十七条 没収保全がされた後に、当該保全に係る不動産、船舶(民事執行法第百十二条に規定する船舶をいう。)、航空機、自動車若しくは建設機械に対し強制競売の開始決定がされた場合又は当該保全に係る動産(同法第百二十二条第一項に規定する動産をいう。第四十四条第二項において同じ。)に対し強制執行による差押えがされた場合には、強制執行による売却のための手続は、没収保全が効力を失った後、又は代替金が納付された後でなければ、することができない。

2 没収保全がされている債権(民事執行法第百四十三条に規定する債権をいう。以下同じ。)に対し強制執行による差押命令が発せられたときは、当該差押えをした債権者は、差押えに係る債権のうち没収保全がされた部分については、没収保全が効力を失った後、又は代替金が納付された後でなければ、取立て又は同法第百六十三条第一項の規定による請求をすることができない。

3 第一項の規定は、没収保全がされた後に強制執行による差押命令が発せられた債権で、条件付若しくは期限付であるもの又は反対給付に係ることその他の事由によりその取立てが困難であるものについて準用する。

4 没収保全がされているその他の財産権(民事執行法第百六十七条第一項に規定するその他の財産権をいう。)に対する強制執行については、没収保全がされている債権に対する強制執行の例による。

 (第三債務者の供託)

第三十八条 金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)の債務者(以下この条及び第四十二条において「第三債務者」という。)は、没収保全がされた後に当該保全に係る債権について強制執行による差押命令の送達を受けたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。

2 第三債務者は、前項の規定による供託をしたときは、その事情を没収保全命令を発した裁判所に届け出なければならない。

3 第一項の規定による供託がされた場合においては、執行裁判所は、供託された金銭のうち、没収保全がされた金銭債権の額に相当する部分については没収保全が効力を失ったとき又は代替金が納付されたときに、その余の部分については供託されたときに、配当又は弁済金の交付を実施しなければならない。

4 第一項及び第二項の規定は、強制執行による差押えがされている金銭債権について没収保全がされた場合における第三債務者の供託について準用する。この場合において、同項中「没収保全命令を発した裁判所」とあるのは、「執行裁判所」と読み替えるものとする。

5 第一項(前項において準用する場合を含む。)の規定による供託がされた場合における民事執行法第百六十五条の規定の適用については、同条第一号中「第百五十六条第一項」とあるのは、「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律第三十八条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)」とする。

 (強制執行に係る財産の没収の制限)

第三十九条 没収保全がされる前に強制競売の開始決定又は強制執行による差押えがされている財産については、没収の裁判をすることができない。ただし、差押債権者の債権が仮装のものであるとき、差押債権者が没収対象財産であることの情を知りながら強制執行の申立てをしたものであるとき、又は差押債権者が犯人であるときは、この限りでない。

2 没収対象財産の上に存在する地上権その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものについて、当該処分の禁止がされる前に強制競売の開始決定又は強制執行による差押えがされていた場合において、当該財産を没収するときは、その権利を存続させるものとし、没収の言渡しと同時に、その旨の宣告をしなければならない。ただし、差押債権者の債権が仮装のものであるとき、差押債権者が没収により当該権利が消滅することの情を知りながら強制執行の申立てをしたものであるとき、又は差押債権者が犯人であるときは、この限りでない。

3 強制競売の開始決定又は強制執行による差押えがされている財産について没収保全命令が発せられた場合における当該財産については、差押債権者(被告人である差押債権者を除く。)が被告事件の手続への参加を許されていないときは、没収の裁判をすることができない。前項に規定する場合における財産の没収についても、同様とする。

4 第二十条第四項及び第五項の規定は第二項の規定により存続させるべき権利について同項の宣告がない没収の裁判が確定した場合について、同条第六項の規定は前項の没収に関する手続について準用する。

 (強制執行の停止)

第四十条 裁判所は、強制競売の開始決定又は強制執行による差押えがされている財産について没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合において、前条第一項ただし書に規定する事由があると思料するに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、決定をもって、強制執行の停止を命ずることができる。

2 検察官が前項の決定の裁判書の謄本を執行裁判所に提出したときは、執行裁判所は、強制執行を停止しなければならない。この場合における民事執行法の規定の適用については、同法第三十九条第一項第七号の文書の提出があったものとみなす。

3 裁判所は、没収保全が効力を失ったとき、代替金が納付されたとき、第一項の理由がなくなったとき、又は強制執行の停止の期間が不当に長くなったときは、検察官若しくは差押債権者の請求により、又は職権で、決定をもって、同項の決定を取り消さなければならない。第三十四条第二項の規定は、この場合に準用する。

 (担保権の実行としての競売の手続との調整)

第四十一条 没収保全財産の上に存在する担保権で、当該保全がされた後に生じたもの又は附帯保全命令による処分の禁止がされたものの実行(差押えを除く。)は、没収保全若しくは附帯保全命令による処分の禁止が効力を失った後、又は代替金が納付された後でなければ、することができない。

2 担保権の実行としての競売の手続が開始された後に当該担保権について附帯保全命令が発せられた場合において、検察官が当該命令の謄本を提出したときは、執行裁判所は、その手続を停止しなければならない。この場合における民事執行法の規定の適用については、同法第百八十三条第一項第七号(同法第百八十九条、第百九十二条又は第百九十三条第二項において準用する場合を含む。)の文書の提出があったものとみなす。

 (その他の手続との調整)

第四十二条 第三十七条の規定は、没収保全がされている財産に対し滞納処分(国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)による滞納処分及びその例による滞納処分をいう。以下同じ。)による差押えがされた場合又は没収保全がされている財産を有する者について破産宣告若しくは和議の開始決定(以下この条において「破産宣告等」という。)がされた場合若しくは没収保全がされている財産を有する会社について更生手続開始の決定、整理開始の命令若しくは特別清算開始の命令(以下この条において「更生手続開始決定等」という。)がされた場合におけるこれらの手続の制限について準用する。

2 第三十八条の規定は没収保全がされている金銭債権に対し滞納処分による差押えがされた場合又は滞納処分による差押えがされている金銭債権について没収保全がされた場合における第三債務者の供託について、同条第一項、第二項及び第四項の規定は没収保全がされている金銭債権に対し仮差押えの執行がされた場合又は仮差押えの執行がされている金銭債権について没収保全がされた場合における第三債務者の供託について準用する。

3 第三十九条の規定は没収保全がされる前に当該保全に係る財産に対し仮差押えの執行がされていた場合又は没収対象財産の上に存在する地上権その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものについて当該処分の禁止がされる前に仮差押えの執行がされていた場合におけるこれらの財産の没収の制限について、同条第一項本文の規定は没収保全がされる前に当該保全に係る財産に対し滞納処分による差押えがされていた場合又は没収保全がされる前に当該保全に係る財産を有する者について破産宣告等がされていた場合若しくは没収保全がされる前に当該保全に係る財産を有する会社について更生手続開始決定等がされていた場合におけるこれらの財産の没収の制限について、同条第二項本文の規定は没収対象財産の上に存在する地上権その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものについて当該処分の禁止がされる前に滞納処分による差押えがされていた場合又は没収対象財産の上に存在する地上権その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものを有する者について当該処分の禁止がされる前に破産宣告等がされた場合若しくは没収対象財産の上に存在する地上権その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものを有する会社について当該処分の禁止がされる前に更生手続開始決定等がされていた場合におけるこれらの財産の没収の制限について準用する。

4 第四十条の規定は、仮差押えの執行がされている財産について没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合における強制執行の停止について準用する。

 (附帯保全命令の効力等)

第四十三条 附帯保全命令は、当該命令に係る没収保全が効力を有する間、その効力を有する。ただし、代替金が納付されたときは、この限りでない。

2 附帯保全命令による処分の禁止については、特別の定めがあるもののほか、没収保全に関する規定を準用する。

    第二節 追徴保全

 (追徴保全命令)

第四十四条 裁判所は、薬物犯罪等に係る被告事件に関し、第十七条の規定により追徴すべき場合に当たると思料するに足りる相当な理由がある場合において、追徴の裁判の執行をすることができなくなるおそれがあり、又はその執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、追徴保全命令を発して、被告人に対し、その財産の処分を禁止することができる。

2 追徴保全命令は、追徴の裁判の執行のため保全することを相当と認める金額(以下「追徴保全額」という。)を定め、特定の財産について発しなければならない。ただし、動産については、目的物を特定しないで発することができる。

3 追徴保全命令においては、処分を禁止すべき財産について、追徴保全命令の執行の停止を得るため、又は追徴保全命令の執行としてされた処分の取消しを得るために被告人が納付すべき金銭(以下「追徴保全解放金」という。)の額を定めなければならない。

4 追徴保全命令には、被告人の氏名、罪名、公訴事実の要旨、追徴の根拠となるべき法令の条項、追徴保全額、処分を禁止すべき財産の表示、追徴保全解放金の額、発付の年月日その他最高裁判所規則で定める事項を記載し、裁判長又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。

5 第二十四条第四項及び第五項の規定は、追徴保全(追徴保全命令による処分の禁止をいう。以下同じ。)について準用する。

 (起訴前の追徴保全命令)

第四十五条 裁判官は、前条第一項に規定する理由及び必要があると認めるときは、公訴が提起される前であっても、検察官の請求により、同項に規定する処分をすることができる。

2 第二十五条第三項本文及び第四項から第六項までの規定は、前項の規定による追徴保全について準用する。

 (追徴保全命令の執行)

第四十六条 追徴保全命令は、検察官の命令によってこれを執行する。この命令は、民事保全法(平成元年法律第九十一号)の規定による仮差押命令と同一の効力を有する。

2 追徴保全命令の執行は、追徴保全命令の謄本が被告人又は被疑者に送達される前であっても、これをすることができる。

3 追徴保全命令の執行は、この法律に特別の定めがあるもののほか、民事保全法その他仮差押えの執行の手続に関する法令の規定に従ってする。この場合において、これらの法令の規定において仮差押命令を発した裁判所が保全執行裁判所として管轄することとされる仮差押えの執行については、第一項の規定による命令を発した検察官の所属する検察庁の対応する裁判所が管轄する。

 (金銭債権の債務者の供託)

第四十七条 追徴保全命令に基づく仮差押えの執行がされた金銭債権の債務者が、当該債権の額に相当する額の金銭を供託したときは、債権者の供託金の還付請求権につき、当該仮差押えの執行がされたものとみなす。

2 前項の規定は、追徴保全解放金の額を超える部分に係る供託金については、これを適用しない。

 (追徴保全解放金の納付と追徴等の裁判の執行)

第四十八条 追徴保全解放金が納付された後に、追徴の裁判が確定したとき、又は仮納付の裁判の言渡しがあったときは、納付された金額の限度において追徴又は仮納付の裁判の執行があったものとみなす。

2 追徴の言渡しがあった場合において、納付された追徴保全解放金が追徴の金額を超えるときは、その超過額は、被告人に還付しなければならない。

 (追徴保全命令の取消し)

第四十九条 裁判所は、追徴保全の理由若しくは必要がなくなったとき、又は追徴保全の期間が不当に長くなったときは、検察官又は被告人若しくはその弁護人の請求により、又は職権で、決定をもって、追徴保全命令を取り消さなければならない。第三十四条第二項の規定は、この場合に準用する。

 (追徴保全命令の失効)

第五十条 追徴保全命令は、無罪、免訴若しくは公訴棄却(刑事訴訟法第三百三十八条第四号及び第三百三十九条第一項第一号の規定による場合を除く。)の裁判の告知があったとき、又は有罪の裁判の告知があった場合において追徴の言渡しがなかったときは、その効力を失う。

2 刑事訴訟法第三百三十八条第四号又は第三百三十九条第一項第一号の規定による公訴棄却の裁判があった場合における追徴保全命令の効力については、第三十五条第二項の規定を準用する。

 (追徴保全命令が失効した場合の措置)

第五十一条 追徴保全命令が効力を失ったとき、又は追徴保全解放金が納付されたときは、検察官は、速やかに、第四十六条第一項の規定によりした命令を取り消し、かつ、追徴保全命令に基づく仮差押えの執行の停止又は既にした仮差押えの執行の取消しのため、必要な措置を執らなければならない。

    第三節 雑則

 (送達)

第五十二条 没収保全又は追徴保全(追徴保全命令に基づく仮差押えの執行を除く。以下この節において同じ。)に関する書類の送達については、最高裁判所規則に特別の定めがある場合を除き、民事訴訟に関する法令の規定を準用する。この場合において、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第百七十八条第三項に規定する公示送達以外の公示送達については、その経過により送達の効力が生ずる期間は、同法第百八十条第一項本文及び第二項の規定にかかわらず、七日間とする。

 (上訴提起期間中の処分等)

第五十三条 上訴の提起期間内の事件でまだ上訴の提起がないもの又は上訴中の事件で訴訟記録が上訴裁判所に到達していないものについて、没収保全又は追徴保全に関する処分をすべき場合には、原裁判所がこれをしなければならない。

 (不服申立て)

第五十四条 没収保全又は追徴保全に関して裁判所のした決定に対しては、抗告をすることができる。ただし、没収又は追徴すべき場合に該当すると思料するに足りる相当な理由がないこと(第二十四条第二項の規定による決定に関しては同項に規定する理由がないことを、第四十条第一項(第四十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に関しては第四十条第一項に規定する理由がないことを含む。)を理由としてすることはできない。

2 没収保全又は追徴保全に関して裁判官のした裁判に不服がある者は、その裁判官の所属する裁判所にその裁判の取消し又は変更を請求することができる。前項ただし書の規定は、この場合に準用する。

3 前項の規定による不服申立てに関する手続については、刑事訴訟法第四百二十九条第一項に規定する裁判官の裁判の取消し又は変更の請求に係る手続の例による。

 (準用)

第五十五条 没収保全及び追徴保全に関する手続については、この法律に特別の定めがあるもののほか、刑事訴訟法の規定を準用する。

   第六章 没収及び追徴の裁判の執行及び保全についての国際共助手続

 (共助の実施)

第五十六条 薬物犯罪等に当たる行為に係る外国の刑事事件に関して、当該外国から、条約に基づき、没収若しくは追徴の確定裁判の執行又は没収若しくは追徴のための財産の保全の共助の要請があったときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、その要請に係る共助をするものとする。

 一 共助犯罪(共助の要請において犯されたとされている犯罪をいう。以下同じ。)について、日本国の法令によれば刑罰を科すことができないと認められるとき。

 二 共助犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。

 三 没収の確定裁判の執行の共助又は没収のための保全の共助については、要請に係る財産が日本国の法令によれば共助犯罪について没収の裁判をし、又は没収保全をすることができる財産に当たるものでないとき。

 四 追徴の確定裁判の執行の共助又は追徴のための保全の共助については、日本国の法令によれば共助犯罪について要請に係る追徴の裁判をし、又は追徴保全をすることができる場合に当たるものでないとき。

 五 没収の確定裁判の執行の共助については要請に係る財産を有し又はその財産の上に地上権、抵当権その他の権利を有すると思料するに足りる相当な理由のある者が、追徴の確定裁判の執行の共助については当該裁判を受けた者が、自己の責めに帰することのできない理由により、当該裁判に係る手続において自己の権利を主張することができなかったと認められるとき。

 六 没収又は追徴のための保全の共助については、要請国の裁判所若しくは裁判官のした没収若しくは追徴のための保全の裁判に基づく要請である場合又は没収若しくは追徴の裁判の確定後の要請である場合を除き、第二十四条第一項又は第四十四条第一項に規定する理由がないと認められるとき。

2 地上権、抵当権その他の権利がその上に存在する財産に係る没収の確定裁判の執行の共助をするに際し、日本国の法令により当該財産を没収するとすれば当該権利を存続させるべき場合に当たるときは、これを存続させるものとする。

 (追徴とみなす没収)

第五十七条 不法財産に代えて、その価額が不法財産の価額に相当する財産であって当該裁判を受けた者が有するものを没収する確定裁判の執行に係る共助の要請にあっては、当該確定裁判は、この法律による共助の実施については、その者から当該財産の価額を追徴する確定裁判とみなす。

2 前項の規定は、不法財産に代えて、その価額が不法財産の価額に相当する財産を没収するための保全に係る共助の要請について準用する。

 (要請の受理)

第五十八条 共助の要請の受理は、外務大臣が行う。ただし、緊急その他特別の事情がある場合において、外務大臣が同意したときは、法務大臣が行うものとする。

 (裁判所の審査)

第五十九条 共助の要請が没収又は追徴の確定裁判の執行に係るものであるときは、検察官は、栽判所に対し、共助をすることができる場合に該当するかどうかについて審査の請求をしなければならない。

2 裁判所は、審査の結果、審査の請求が不適法であるときは、これを却下する決定をし、共助の要請に係る確定裁判の全部若しくは一部について共助することができる場合に該当するとき、又はその全部について共助をすることができない場合に該当するときは、それぞれその旨の決定をしなければならない。

3 裁判所は、没収の確定裁判の執行の共助の要請につき共助をすることができる場合に該当する旨の決定をする場合において、第五十六条第二項の規定により存続させなければならない権利があるときは、当該権利を存続させる旨の決定を同時にしなければならない。

4 裁判所は、追徴の確定裁判の執行の共助の要請につき、共助をすることができる場合に該当する旨の決定をするときは、追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。

5 第一項の規定による審査においては、共助の要請に係る確定裁判の当否を審査することができない。

6 第一項の規定による審査に関しては、次に掲げる者(以下「利害関係人」という。)が当該審査請求事件の手続への参加を許されていないときは、共助をすることができる場合に該当する旨の決定をすることができない。

 一 没収の確定裁判の執行の共助については、要請に係る財産を有し、若しくはその財産の上に地上権、抵当権その他の権利を有すると思料するに足りる相当な理由のある者又はこれらの財産若しくは権利について没収保全がされる前に強制競売の開始決定、強制執行による差押え若しくは仮差押えの執行がされている場合における差押債権者若しくは仮差押債権者

 二 追徴の確定裁判の執行の共助については、当該裁判を受けた者

7 裁判所は、審査の請求について決定をするときは、検察官及び審査請求事件の手続への参加を許された者(以下「参加人」という。)の意見を聴かなければならない。

8 裁判所は、参加人が口頭で意見を述べたい旨を申し出たとき、又は裁判所において証人若しくは鑑定人を尋問するときは、公開の法廷において審問期日を開き、参加人に当該期日に出頭する機会を与えなければならない。この場合において、参加人が出頭することができないときは、審問期日に代理人を出頭させ、又は書面により意見を述べる機会を与えたことをもって、参加人に出頭する機会を与えたものとみなす。

9 検察官は、前項の審問期日の手続に立ち会うことができる。

 (抗告)

第六十条 検察官及び参加人は、審査の請求に係る決定に対し、抗告をすることができる。

2 抗告裁判所の決定に対しては、刑事訴訟法第四百五条各号に定める事由があるときは、最高裁判所に特に抗告をすることができる。

3 前二項の抗告の提起期間は、十四日とする。

 (決定の効力)

第六十一条 没収又は追徴の確定裁判の執行の共助の要請につき共助をすることができる場合に該当する旨の決定が確定したときは、当該没収又は追徴の確定裁判は、共助の実施に関しては、日本国の裁判所が言い渡した没収又は追徴の確定裁判とみなす。

 (決定の取消し)

第六十二条 没収又は追徴の確定裁判の執行の共助の要請につき共助をすることができる場合に該当する旨の決定が確定した場合において、当該要請に係る確定裁判が取り消されたときその他その効力がなくなったときは、裁判所は、検察官又は利害関係人の請求により、決定をもって、共助をすることができる場合に該当する旨の決定を取り消さなければならない。

2 前項の取消しの決定が確定したときは、刑事補償法に定める没収又は追徴の執行による補償の例により、補償を行う。

3 第六十条の規定は、第一項の請求に係る決定について準用する。

 (没収保全の請求)

第六十三条 共助の要請が没収のための保全に係るものであるときは、検察官は、裁判官に、没収保全命令を発して要請に係る財産につきその処分を禁止することを請求しなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、附帯保全命令を発して当該財産の上に存在する地上権、抵当権その他の権利の処分を禁止することを請求することができる。

2 第五十九条第一項の審査の請求があった後は、没収保全に関する処分は、審査の請求を受けた裁判所が行う。

 (追徴保全の請求)

第六十四条 共助の要請が追徴のための保全に係るものであるときは、検察官は、裁判官に、追徴保全命令を発して、追徴の裁判を受けるべき者に対しその財産の処分を禁止することを請求しなければならない。

2 前条第二項の規定は、追徴保全に関する処分について準用する。

 (公訴提起前の保全の期間)

第六十五条 没収又は追徴のための保全の共助の要請が公訴の提起されていない事件に関してされた場合において、没収保全命令又は追徴保全命令が発せられた日から四十五日以内に要請国から当該事件につき公訴が提起された旨の通知がないときは、当該没収保全又は追徴保全命令は、その効力を失う。

2 要請国から、前項の期間内に公訴を提起できないことについてやむを得ない事由がある旨理由を付して通知があったときは、裁判官は、検察官の請求により、三十日間を限り、保全の期間を更新することができる。更新された期間内に公訴を提起できないことについてやむを得ない事由がある旨理由を付して通知があったときも、同様とする。

 (手続の取消し)

第六十六条 共助の要請を撤回する旨の通知があったときは、検察官は、速やかに、審査、没収保全若しくは追徴保全の請求を取り消し、又は没収保全命令若しくは追徴保全命令の取消しを請求しなければならない。

2 前項の請求があったときは、裁判所又は裁判官は、速やかに、没収保全命令又は追徴保全命令を取り消さなければならない。

 (事実の取調べ)

第六十七条 裁判所又は裁判官は、この章の規定による審査をし、又は没収保全若しくは追徴保全に関する処分をするため必要があるときは、事実の取調べをすることができる。この場合においては、証人を尋問し、検証を行い、又は鑑定、通訳若しくは翻訳を命ずることができる。

 (検察官の処分)

第六十八条 検察官は、この章の規定による没収保全若しくは追徴保全の請求又は没収保全命令若しくは追徴保全命令の執行に関して必要があると認めるときは、関係人の出頭を求めてこれを取り調べ、鑑定を嘱託し、実況見分をし、書類その他の物の所有者、所持者若しくは保管者にその物の提出を求め、公務所若しくは公私の団体に照会して必要な事項の報告を求め、又は裁判官の発する令状により、差押え、捜索若しくは検証をすることができる。

2 検察官は、検察事務官に前項の処分をさせることができる。

 (管轄裁判所)

第六十九条 この章の規定による審査、没収保全若しくは追徴保全又は令状の発付の請求は、請求する検察官の所属する検察庁の所在地を管轄する地方裁判所又はその裁判官にしなければならない。

 (準用)

第七十条 この章に特別の定めがあるもののほか、裁判所若しくは裁判官のする審査、処分若しくは令状の発付、検察官若しくは検察事務官のする処分又は裁判所の審査への利害関係人の参加については前二章、刑事訴訟法(第一編第二章及び第五章から第十三章まで、第二編第一章、第三編第一章及び第四章並びに第七編に限る。)、刑事訴訟費用に関する法令及び刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法の規定を、共助の要請を受理した場合における措置については国際捜査共助法(昭和五十五年法律第六十九号)第四条、第五条第一項(第一号に係る部分に限る。)及び第七条第一項並びに逃亡犯罪人引渡法(昭和二十八年法律第六十八号)第三条(第二号に係る部分を除く。)、第八条第二項及び第十一条第一項及び第二項の規定を、それぞれその性質に反しない限り、準用する。

   第七章 雑則

 (政令等への委任)

第七十一条 この法律に定めるもののほか、没収保全と滞納処分との手続の調整について必要な事項で、滞納処分に関するものは、政令で定める。

2 この法律に定めるもののほか、第二十条の規定による第三者の参加及び裁判に関する手続、第五章に規定する没収保全及び追徴保全に関する手続並びに前章に規定する国際共助手続について必要な事項(前項に規定する事項を除く。)は、最高裁判所が定める。

 (経過措置)

第七十二条 この法律の規定に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができる。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (経過措置)

2 第九条及び第十条の規定は、この法律の施行前にした麻薬及び向精神薬取締法等の一部を改正する法律(平成三年法律第九十三号。以下この項において「法律第九十三号」という。)による改正前の麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法又は覚せい剤取締法の罪に当たる行為(日本国外でした行為であって日本国内でしたとしたならばこれらの罪に当たるものを含む。)であって、この法律の施行後にしたとしたならば薬物犯罪に当たるもの(以下この項において「薬物犯罪行為」という。)により得た財産若しくは薬物犯罪行為の報酬として得た財産並びにこの法律の施行前にした法律第九十三号による改正前の麻薬及び向精神薬取締法第六十八条若しくは第六十九条の四、大麻取締法第二十四条の五、あへん法第五十四条の二又は覚せい剤取締法第四十一条の七(同法第四十一条の二第一項第五号及び第六号に係る部分を除く。)の罪に当たる行為(日本国外でした行為であって日本国内でしたとしたならばこれらの罪に当たるものを含む。)により提供された資金に関してこの法律の施行後にした行為に対しても、適用する。この場合においては、これらの財産及び資金は、不法収益とみなす。

3 第五章の規定は、前項に規定する財産又は資金で、刑法その他の法令の規定により没収することができる物の没収のための保全及びこれらの法令の規定によりその価額を追徴することができる場合における追徴のための保全についても、適用する。この場合において、第二十四条第一項中「この法律」とあるのは「麻薬及び向精神薬取締法等の一部を改正する法律による改正前の麻薬及び向精神薬取締法」と、第四十四条第一項中「第十七条」とあるのは「刑法第十九条ノ二」とする。

4 第六章の規定は、この法律の施行前に犯された犯罪でこの法律の施行後に犯されたとしたならば薬物犯罪に当たるものに係る外国からの共助の要請についても、適用する。

 (入管法の一部改正)

5 出入国管理及び難民認定法の一部を次のように改正する。

  第二十四条第四号チ中「覚せい剤取締法」の下に「、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)」を加える。

 (株券等の保管及び振替に関する法律の一部改正)

6 株券等の保管及び振替に関する法律(昭和五十九年法律第三十号)の一部を次のように改正する。

  第三十八条の見出しを「(民事執行等)」に改め、同条中「並びに競売」を「、競売並びに没収保全」に改める。

(法務・外務・大蔵・厚生・郵政・内閣総理大臣署名) 

法令一覧(年度別)に戻る