裁判所法等の一部を改正する法律
法律第百二十号(平一六・六・一八)
(裁判所法の一部改正)
第一条 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)の一部を次のように改正する。
第五十七条第二項中「工業所有権」を「知的財産」に、「を掌る」を「その他他の法律において定める事務をつかさどる」に改める。
(民事訴訟法の一部改正)
第二条 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の一部を次のように改正する。
目次中「第二節 専門委員(第九十二条の二─第九十二条の七)」を
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第二節 専門委員等 |
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第一款 専門委員(第九十二条の二─第九十二条の七) |
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第二款 知的財産に関する事件における裁判所調査官の事務等(第九十二条の八・第九十二条の九) |
」 |
に改める。
第一編第五章第二節の節名を次のように改める。
第二節 専門委員等
第一編第五章第二節中第九十二条の二の前に次の款名を付する。
第一款 専門委員
第一編第五章第二節中第九十二条の七の次に次の一款を加える。
第二款 知的財産に関する事件における裁判所調査官の事務等
(知的財産に関する事件における裁判所調査官の事務)
第九十二条の八 裁判所は、必要があると認めるときは、高等裁判所又は地方裁判所において知的財産に関する事件の審理及び裁判に関して調査を行う裁判所調査官に、当該事件において次に掲げる事務を行わせることができる。この場合において、当該裁判所調査官は、裁判長の命を受けて、当該事務を行うものとする。
一 次に掲げる期日又は手続において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すこと。
イ 口頭弁論又は審尋の期日
ロ 争点又は証拠の整理を行うための手続
ハ 文書の提出義務又は検証の目的の提示義務の有無を判断するための手続
ニ 争点又は証拠の整理に係る事項その他訴訟手続の進行に関し必要な事項についての協議を行うための手続
二 証拠調べの期日において、証人、当事者本人又は鑑定人に対し直接に問いを発すること。
三 和解を試みる期日において、専門的な知見に基づく説明をすること。
四 裁判官に対し、事件につき意見を述べること。
(知的財産に関する事件における裁判所調査官の除斥及び忌避)
第九十二条の九 第二十三条から第二十五条までの規定は、前条の事務を行う裁判所調査官について準用する。
2 前条の事務を行う裁判所調査官について除斥又は忌避の申立てがあったときは、その裁判所調査官は、その申立てについての決定が確定するまでその申立てがあった事件に関与することができない。
(民事訴訟費用等に関する法律の一部改正)
第三条 民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の一部を次のように改正する。
別表第一の一七の項ホ中「又は人事訴訟法」を「、人事訴訟法」に改め、「第三十九条第一項の規定による申立て」の下に「、特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第百五条の四第一項若しくは第百五条の五第一項の規定による申立て、著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第百十四条の六第一項若しくは第百十四条の七第一項の規定による申立て又は不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第六条の四第一項若しくは第六条の五第一項の規定による申立て」を加える。
(特許法の一部改正)
第四条 特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)の一部を次のように改正する。
第六十五条第五項中「及び第百四条から第百五条の二まで」を「、第百四条から第百五条の二まで、第百五条の四から第百五条の七まで及び第百六十八条第三項から第六項まで」に改める。
第百四条の二の次に次の一条を加える。
(特許権者等の権利行使の制限)
第百四条の三 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。
2 前項の規定による攻撃又は防御の方法については、これが審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
第百五条第三項中「前二項」を「前三項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 裁判所は、前項の場合において、第一項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあつては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。以下同じ。)、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。
第百五条の三の次に次の四条を加える。
(秘密保持命令)
第百五条の四 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第二条第四項に規定する営業秘密をいう。以下同じ。)について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があつた場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第一号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。
一 既に提出され若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ若しくは取り調べられるべき証拠(第百五条第三項の規定により開示された書類又は第百五条の七第四項の規定により開示された書面を含む。)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。
二 前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。
2 前項の規定による命令(以下「秘密保持命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 秘密保持命令を受けるべき者
二 秘密保持命令の対象となるべき営業秘密を特定するに足りる事実
三 前項各号に掲げる事由に該当する事実
3 秘密保持命令が発せられた場合には、その決定書を秘密保持命令を受けた者に送達しなければならない。
4 秘密保持命令は、秘密保持命令を受けた者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずる。
5 秘密保持命令の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
(秘密保持命令の取消し)
第百五条の五 秘密保持命令の申立てをした者又は秘密保持命令を受けた者は、訴訟記録の存する裁判所(訴訟記録の存する裁判所がない場合にあつては、秘密保持命令を発した裁判所)に対し、前条第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至つたことを理由として、秘密保持命令の取消しの申立てをすることができる。
2 秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判があつた場合には、その決定書をその申立てをした者及び相手方に送達しなければならない。
3 秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
4 秘密保持命令を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。
5 裁判所は、秘密保持命令を取り消す裁判をした場合において、秘密保持命令の取消しの申立てをした者又は相手方以外に当該秘密保持命令が発せられた訴訟において当該営業秘密に係る秘密保持命令を受けている者があるときは、その者に対し、直ちに、秘密保持命令を取り消す裁判をした旨を通知しなければならない。
(訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)
第百五条の六 秘密保持命令が発せられた訴訟(すべての秘密保持命令が取り消された訴訟を除く。)に係る訴訟記録につき、民事訴訟法第九十二条第一項の決定があつた場合において、当事者から同項に規定する秘密記載部分の閲覧等の請求があり、かつ、その請求の手続を行つた者が当該訴訟において秘密保持命令を受けていない者であるときは、裁判所書記官は、同項の申立てをした当事者(その請求をした者を除く。第三項において同じ。)に対し、その請求後直ちに、その請求があつた旨を通知しなければならない。
2 前項の場合において、裁判所書記官は、同項の請求があつた日から二週間を経過する日までの間(その請求の手続を行つた者に対する秘密保持命令の申立てがその日までにされた場合にあつては、その申立てについての裁判が確定するまでの間)、その請求の手続を行つた者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせてはならない。
3 前二項の規定は、第一項の請求をした者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせることについて民事訴訟法第九十二条第一項の申立てをした当事者のすべての同意があるときは、適用しない。
(当事者尋問等の公開停止)
第百五条の七 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟における当事者等が、その侵害の有無についての判断の基礎となる事項であつて当事者の保有する営業秘密に該当するものについて、当事者本人若しくは法定代理人又は証人として尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによつては当該事項を判断の基礎とすべき特許権又は専用実施権の侵害の有無についての適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。
2 裁判所は、前項の決定をするに当たつては、あらかじめ、当事者等の意見を聴かなければならない。
3 裁判所は、前項の場合において、必要があると認めるときは、当事者等にその陳述すべき事項の要領を記載した書面の提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書面の開示を求めることができない。
4 裁判所は、前項後段の書面を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書面を開示することができる。
5 裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。
第百六十八条に次の二項を加える。
5 裁判所は、前項の規定によりその特許権についての審判の請求があつた旨の通知を受けた場合において、当該訴訟において第百四条の三第一項の規定による攻撃又は防御の方法を記載した書面がその通知前に既に提出され、又はその通知後に最初に提出されたときは、その旨を特許庁長官に通知するものとする。
6 特許庁長官は、前項に規定する通知を受けたときは、裁判所に対し、当該訴訟の訴訟記録のうちその審判において審判官が必要と認める書面の写しの送付を求めることができる。
第百八十六条第一項第三号中「(不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第二条第四項に規定する営業秘密をいう。)」を削る。
第二百条の次に次の一条を加える。
(秘密保持命令違反の罪)
第二百条の二 秘密保持命令に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第二百一条第二号中「又は第百九十八条」を「、第百九十八条又は前条第一項」に改め、同条に次の一項を加える。
2 前項の場合において、当該行為者に対してした前条第二項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。
(実用新案法の一部改正)
第五条 実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
第三十条中「明示義務」の下に「、特許権者等の権利行使の制限」を、「認定」の下に「、秘密保持命令、秘密保持命令の取消し、訴訟記録の閲覧等の請求の通知等、当事者尋問等の公開停止」を加える。
第四十条の前の見出しを削り、同条に見出しとして「(訴訟との関係)」を付し、同条に次の二項を加える。
5 裁判所は、前項の規定によりその実用新案権についての審判の請求があつた旨の通知を受けた場合において、当該訴訟において第三十条において準用する特許法第百四条の三第一項の規定による攻撃又は防御の方法を記載した書面がその通知前に既に提出され、又はその通知後に最初に提出されたときは、その旨を特許庁長官に通知するものとする。
6 特許庁長官は、前項に規定する通知を受けたときは、裁判所に対し、当該訴訟の訴訟記録のうちその審判において審判官が必要と認める書面の写しの送付を求めることができる。
第四十条の二を削る。
第四十五条第一項中「及び第四十条の二」を削る。
第六十条の次に次の一条を加える。
(秘密保持命令違反の罪)
第六十条の二 第三十条において準用する特許法第百五条の四第一項の規定による命令に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第六十一条第一号中「第五十六条」の下に「又は前条第一項」を加え、同条に次の一項を加える。
2 前項の場合において、当該行為者に対してした前条第二項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。
(意匠法の一部改正)
第六条 意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)の一部を次のように改正する。
第四十一条中「第百六条」を「第百五条の六」に改め、「明示義務」の下に「、特許権者等の権利行使の制限」を加え、「及び」を「、秘密保持命令、秘密保持命令の取消し及び訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)及び第百六条(」に改める。
第七十三条の次に次の一条を加える。
(秘密保持命令違反の罪)
第七十三条の二 第四十一条において準用する特許法第百五条の四第一項の規定による命令に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第七十四条第一号中「第六十九条」の下に「又は前条第一項」を加え、同条に次の一項を加える。
2 前項の場合において、当該行為者に対してした前条第二項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。
(商標法の一部改正)
第七条 商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第十三条の二第五項中「第百五条、第百五条の二及び第百六条」を「第百四条の三から第百五条の二まで、第百五条の四から第百五条の六まで及び第百六条、第五十六条第一項において準用する特許法第百六十八条第三項から第六項まで」に改める。
第三十九条中「及び第百四条の二から第百六条まで」を「、第百四条の二から第百五条の六まで」に改め、「明示義務」の下に「、特許権者等の権利行使の制限」を加え、「及び信用回復の措置」を「、秘密保持命令、秘密保持命令の取消し及び訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)及び第百六条(信用回復の措置」に改める。
第六十八条第三項中「第三十五条」の下に「、第三十九条において準用する特許法第百四条の三」を加える。
第八十一条の次に次の一条を加える。
(秘密保持命令違反の罪)
第八十一条の二 第三十九条において準用する特許法第百五条の四第一項の規定(第十三条の二第五項において準用する場合を含む。)による命令に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第八十二条第二号中「又は第八十条」を「、第八十条又は前条第一項」に改め、同条に次の一項を加える。
2 前項の場合において、当該行為者に対してした前条第二項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。
(不正競争防止法の一部改正)
第八条 不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)の一部を次のように改正する。
第六条第三項中「前二項」を「前三項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 裁判所は、前項の場合において、第一項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあっては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。以下同じ。)、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。
第六条の三の次に次の四条を加える。
(秘密保持命令)
第六条の四 裁判所は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があった場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第一号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。
一 既に提出され若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ若しくは取り調べられるべき証拠(第六条第三項の規定により開示された書類又は第六条の七第四項の規定により開示された書面を含む。)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。
二 前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。
2 前項の規定による命令(以下「秘密保持命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 秘密保持命令を受けるべき者
二 秘密保持命令の対象となるべき営業秘密を特定するに足りる事実
三 前項各号に掲げる事由に該当する事実
3 秘密保持命令が発せられた場合には、その決定書を秘密保持命令を受けた者に送達しなければならない。
4 秘密保持命令は、秘密保持命令を受けた者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずる。
5 秘密保持命令の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
(秘密保持命令の取消し)
第六条の五 秘密保持命令の申立てをした者又は秘密保持命令を受けた者は、訴訟記録の存する裁判所(訴訟記録の存する裁判所がない場合にあっては、秘密保持命令を発した裁判所)に対し、前条第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、秘密保持命令の取消しの申立てをすることができる。
2 秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判があった場合には、その決定書をその申立てをした者及び相手方に送達しなければならない。
3 秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
4 秘密保持命令を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。
5 裁判所は、秘密保持命令を取り消す裁判をした場合において、秘密保持命令の取消しの申立てをした者又は相手方以外に当該秘密保持命令が発せられた訴訟において当該営業秘密に係る秘密保持命令を受けている者があるときは、その者に対し、直ちに、秘密保持命令を取り消す裁判をした旨を通知しなければならない。
(訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)
第六条の六 秘密保持命令が発せられた訴訟(すべての秘密保持命令が取り消された訴訟を除く。)に係る訴訟記録につき、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第九十二条第一項の決定があった場合において、当事者から同項に規定する秘密記載部分の閲覧等の請求があり、かつ、その請求の手続を行った者が当該訴訟において秘密保持命令を受けていない者であるときは、裁判所書記官は、同項の申立てをした当事者(その請求をした者を除く。第三項において同じ。)に対し、その請求後直ちに、その請求があった旨を通知しなければならない。
2 前項の場合において、裁判所書記官は、同項の請求があった日から二週間を経過する日までの間(その請求の手続を行った者に対する秘密保持命令の申立てがその日までにされた場合にあっては、その申立てについての裁判が確定するまでの間)、その請求の手続を行った者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせてはならない。
3 前二項の規定は、第一項の請求をした者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせることについて民事訴訟法第九十二条第一項の申立てをした当事者のすべての同意があるときは、適用しない。
(当事者尋問等の公開停止)
第六条の七 不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟における当事者等が、その侵害の有無についての判断の基礎となる事項であって当事者の保有する営業秘密に該当するものについて、当事者本人若しくは法定代理人又は証人として尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該事項を判断の基礎とすべき不正競争による営業上の利益の侵害の有無についての適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。
2 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者等の意見を聴かなければならない。
3 裁判所は、前項の場合において、必要があると認めるときは、当事者等にその陳述すべき事項の要領を記載した書面の提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書面の開示を求めることができない。
4 裁判所は、前項後段の書面を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書面を開示することができる。
5 裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。
第十四条第一項第六号の次に次の一号を加える。
六の二 秘密保持命令に違反した者
第十四条第二項中「第六号」を「第六号の二」に改める。
第十五条を次のように改める。
第十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して本条の罰金刑を科する。
一 前条第一項第一号、第二号又は第七号 三億円以下の罰金刑
二 前条第一項第六号の二 一億円以下の罰金刑
2 前項の場合において、当該行為者に対してした前条第一項第六号の二の罪に係る同条第二項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。
(著作権法の一部改正)
第九条 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。
第百十四条の三第一項中「裁判所は」の下に「、著作者人格権」を、「出版権」の下に「、実演家人格権」を加え、同条第三項中「前二項」を「前三項」に改め、「規定は」の下に「、著作者人格権」を、「出版権」の下に「、実演家人格権」を加え、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 裁判所は、前項の場合において、第一項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあつては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。第百十四条の六第一項において同じ。)、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。
第百十四条の五の次に次の三条を加える。
(秘密保持命令)
第百十四条の六 裁判所は、著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第二条第四項に規定する営業秘密をいう。以下同じ。)について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があつた場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第一号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。
一 既に提出され若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ若しくは取り調べられるべき証拠(第百十四条の三第三項の規定により開示された書類を含む。)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。
二 前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。
2 前項の規定による命令(以下「秘密保持命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 秘密保持命令を受けるべき者
二 秘密保持命令の対象となるべき営業秘密を特定するに足りる事実
三 前項各号に掲げる事由に該当する事実
3 秘密保持命令が発せられた場合には、その決定書を秘密保持命令を受けた者に送達しなければならない。
4 秘密保持命令は、秘密保持命令を受けた者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずる。
5 秘密保持命令の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
(秘密保持命令の取消し)
第百十四条の七 秘密保持命令の申立てをした者又は秘密保持命令を受けた者は、訴訟記録の存する裁判所(訴訟記録の存する裁判所がない場合にあつては、秘密保持命令を発した裁判所)に対し、前条第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至つたことを理由として、秘密保持命令の取消しの申立てをすることができる。
2 秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判があつた場合には、その決定書をその申立てをした者及び相手方に送達しなければならない。
3 秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
4 秘密保持命令を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。
5 裁判所は、秘密保持命令を取り消す裁判をした場合において、秘密保持命令の取消しの申立てをした者又は相手方以外に当該秘密保持命令が発せられた訴訟において当該営業秘密に係る秘密保持命令を受けている者があるときは、その者に対し、直ちに、秘密保持命令を取り消す裁判をした旨を通知しなければならない。
(訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)
第百十四条の八 秘密保持命令が発せられた訴訟(すべての秘密保持命令が取り消された訴訟を除く。)に係る訴訟記録につき、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第九十二条第一項の決定があつた場合において、当事者から同項に規定する秘密記載部分の閲覧等の請求があり、かつ、その請求の手続を行つた者が当該訴訟において秘密保持命令を受けていない者であるときは、裁判所書記官は、同項の申立てをした当事者(その請求をした者を除く。第三項において同じ。)に対し、その請求後直ちに、その請求があつた旨を通知しなければならない。
2 前項の場合において、裁判所書記官は、同項の請求があつた日から二週間を経過する日までの間(その請求の手続を行つた者に対する秘密保持命令の申立てがその日までにされた場合にあつては、その申立てについての裁判が確定するまでの間)、その請求の手続を行つた者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせてはならない。
3 前二項の規定は、第一項の請求をした者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせることについて民事訴訟法第九十二条第一項の申立てをした当事者のすべての同意があるときは、適用しない。
第百二十二条の次に次の一条を加える。
第百二十二条の二 秘密保持命令に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
第百二十三条第一項中「及び第百二十一条の二」を「、第百二十一条の二及び前条」に改める。
第百二十四条第一項中第二号を第三号とし、第一号の次に次の一号を加える。
二 第百二十二条の二 一億円以下の罰金刑
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十七年四月一日から施行する。
(経過措置の原則)
第二条 この法律による改正後の裁判所法、民事訴訟法、民事訴訟費用等に関する法律、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、不正競争防止法及び著作権法の規定(罰則を除く。)は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、この法律による改正前のこれらの法律の規定により生じた効力を妨げない。
(特許法等の一部改正に伴う経過措置)
第三条 次に掲げる規定は、この法律の施行前に、訴訟の完結した事件、第二審である高等裁判所又は地方裁判所における口頭弁論が終結した事件及び簡易裁判所の判決又は地方裁判所が第一審としてした判決に対して上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をした事件については、適用しない。
一 第四条の規定による改正後の特許法(以下この条及び附則第五条第二項において「新特許法」という。)第百四条の三及び第百五条の四から第百五条の六までの規定(新特許法、第五条の規定による改正後の実用新案法(第三号において「新実用新案法」という。)、第六条の規定による改正後の意匠法(次号において「新意匠法」という。)及び第七条の規定による改正後の商標法(同号において「新商標法」という。)において準用する場合を含む。)
二 新特許法第百六十八条第五項及び第六項の規定(新特許法、新意匠法及び新商標法において準用する場合を含む。)
三 新実用新案法第四十条第五項及び第六項の規定(新実用新案法第四十五条第一項において読み替えて準用する新特許法第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)
四 第八条の規定による改正後の不正競争防止法第六条の四から第六条の六までの規定
五 第九条の規定による改正後の著作権法第百十四条の六から第百十四条の八までの規定
(平成五年旧実用新案法の一部改正)
第四条 特許法等の一部を改正する法律(平成五年法律第二十六号。以下この条及び附則第六条において「平成五年特許法等改正法」という。)附則第四条第一項の規定によりなおその効力を有するものとされた平成五年特許法等改正法第三条の規定による改正前の実用新案法(次条において「平成五年旧実用新案法」という。)の一部を次のように改正する。
第十三条の三第四項中「及び第百五条(訴訟手続の中止及び書類の提出)」を「(訴訟手続の中止)、裁判所法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第百二十号)第四条の規定による改正後の特許法(以下「平成十六年改正特許法」という。)第百四条の二から第百五条の二まで(具体的態様の明示義務、特許権者等の権利行使の制限、書類の提出等及び損害計算のための鑑定)、第百五条の四から第百五条の七まで(秘密保持命令、秘密保持命令の取消し、訴訟記録の閲覧等の請求の通知等及び当事者尋問等の公開停止)及び第百六十八条第三項から第六項まで(訴訟との関係)」に改める。
第三十条中「措置)」の下に「並びに平成十六年改正特許法第百五条の四から第百五条の七まで(秘密保持命令、秘密保持命令の取消し、訴訟記録の閲覧等の請求の通知等及び当事者尋問等の公開停止)」を加える。
第四十八条の十三の見出しを「(特許法等の準用)」に改め、同条第二項中「特許法第百八十四条の十」を「第十三条の三第二項から第四項まで及び特許法第百八十四条の十第一項」に改める。
第五十条の二中「第十三条の三第四項」の下に「(第四十八条の十三第二項において準用する場合を含む。)」を加え、同条の表中
「 |
第四十五条 |
特許法第百七十四条第一項 |
特許法第百五十九条第三項 |
|
第四十八条の十三第二項 |
特許法第百八十四条の十第二項 |
特許法第六十五条の三第四項 |
」 |
を
「 |
第四十五条 |
特許法第百七十四条第一項 |
特許法第百五十九条第三項 |
」 |
に改める。
第五十六条第一項及び第二項中「三十万円」を「三百万円」に改め、同条第三項を次のように改める。
3 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第五十七条及び第五十八条中「十万円」を「百万円」に改める。
第六十条中「五万円」を「五十万円」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(秘密保持命令違反の罪)
第六十条の二 第十三条の三第四項(第四十八条の十三第二項において準用する場合を含む。)及び第三十条においてそれぞれ準用する平成十六年改正特許法第百五条の四第一項の規定による命令に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第六十一条中「第五十六条第一項若しくは第二項、第五十七条又は第五十八条」を「次の各号に掲げる規定」に、「又は人に対し、」を「に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して」に改め、同条に次の各号を加える。
一 第五十六条第一項又は前条第一項 一億円以下の罰金刑
二 第五十六条第二項 三百万円以下の罰金刑
三 第五十七条又は第五十八条 三千万円以下の罰金刑
第六十一条に次の一項を加える。
2 前項の場合において、当該行為者に対してした第五十六条第三項又は前条第二項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。
(平成五年旧実用新案法の一部改正に伴う経過措置)
第五条 この法律による改正後の平成五年旧実用新案法の規定(罰則を除く。)は、次項に定める場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、この法律による改正前の平成五年旧実用新案法の規定により生じた効力を妨げない。
2 次に掲げる規定は、この法律の施行前に、訴訟の完結した事件、第二審である高等裁判所又は地方裁判所における口頭弁論が終結した事件及び簡易裁判所の判決又は地方裁判所が第一審としてした判決に対して上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をした事件については、適用しない。
一 この法律による改正後の平成五年旧実用新案法第十三条の三第四項(この法律による改正後の平成五年旧実用新案法第四十八条の十三第二項において準用する場合を含む。)において準用する新特許法第百四条の三、第百五条の四から第百五条の六まで並びに第百六十八条第五項及び第六項の規定
二 この法律による改正後の平成五年旧実用新案法第三十条において準用する新特許法第百五条の四から第百五条の六までの規定
(平成五年特許法等改正法の一部改正)
第六条 平成五年特許法等改正法の一部を次のように改正する。
附則第四条第二項中「及び特許法等の一部を改正する法律(平成十一年法律第四十一号。以下「平成十一年改正法」という。)の施行後にした行為に対する罰則の適用」を削り、同項の表第五十六条第一項及び第二項の項から第六十一条の項までを削る。
(弁理士法の一部改正)
第七条 弁理士法(平成十二年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。
第八条第三号中「第十四条」を「第十四条第一項第一号から第六号まで若しくは第七号」に改める。
(内閣総理・法務臨時代理・文部科学・経済産業大臣署名)