景観法

法律第百十号(平一六・六・一八)

目次

 第一章 総則(第一条―第七条)

 第二章 景観計画及びこれに基づく措置

  第一節 景観計画の策定等(第八条―第十五条)

  第二節 行為の規制等(第十六条―第十八条)

  第三節 景観重要建造物等

   第一款 景観重要建造物の指定等(第十九条―第二十七条)

   第二款 景観重要樹木の指定等(第二十八条―第三十五条)

   第三款 管理協定(第三十六条―第四十二条)

   第四款 雑則(第四十三条―第四十六条)

  第四節 景観重要公共施設の整備等(第四十七条―第五十四条)

  第五節 景観農業振興地域整備計画等(第五十五条―第五十九条)

  第六節 自然公園法の特例(第六十条)

 第三章 景観地区等

  第一節 景観地区

   第一款 景観地区に関する都市計画(第六十一条)

   第二款 建築物の形態意匠の制限(第六十二条―第七十一条)

   第三款 工作物等の制限(第七十二条・第七十三条)

  第二節 準景観地区(第七十四条・第七十五条)

  第三節 地区計画等の区域内における建築物等の形態意匠の制限(第七十六条)

  第四節 雑則(第七十七条―第八十条)

 第四章 景観協定(第八十一条―第九十一条)

 第五章 景観整備機構(第九十二条―第九十六条)

 第六章 雑則(第九十七条―第九十九条)

 第七章 罰則(第百条―第百七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、我が国の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 良好な景観は、美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな生活環境の創造に不可欠なものであることにかんがみ、国民共通の資産として、現在及び将来の国民がその恵沢を享受できるよう、その整備及び保全が図られなければならない。

2 良好な景観は、地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動等との調和により形成されるものであることにかんがみ、適正な制限の下にこれらが調和した土地利用がなされること等を通じて、その整備及び保全が図られなければならない。

3 良好な景観は、地域の固有の特性と密接に関連するものであることにかんがみ、地域住民の意向を踏まえ、それぞれの地域の個性及び特色の伸長に資するよう、その多様な形成が図られなければならない。

4 良好な景観は、観光その他の地域間の交流の促進に大きな役割を担うものであることにかんがみ、地域の活性化に資するよう、地方公共団体、事業者及び住民により、その形成に向けて一体的な取組がなされなければならない。

5 良好な景観の形成は、現にある良好な景観を保全することのみならず、新たに良好な景観を創出することを含むものであることを旨として、行われなければならない。

 (国の責務)

第三条 国は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、良好な景観の形成に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 国は、良好な景観の形成に関する啓発及び知識の普及等を通じて、基本理念に対する国民の理解を深めるよう努めなければならない。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、良好な景観の形成の促進に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その区域の自然的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (事業者の責務)

第五条 事業者は、基本理念にのっとり、土地の利用等の事業活動に関し、良好な景観の形成に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する良好な景観の形成に関する施策に協力しなければならない。

 (住民の責務)

第六条 住民は、基本理念にのっとり、良好な景観の形成に関する理解を深め、良好な景観の形成に積極的な役割を果たすよう努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する良好な景観の形成に関する施策に協力しなければならない。

 (定義等)

第七条 この法律において「景観行政団体」とは、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下この項において「指定都市」という。)の区域にあっては指定都市、同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下この項において「中核市」という。)の区域にあっては中核市、その他の区域にあっては都道府県をいう。ただし、指定都市及び中核市以外の市町村であって、都道府県に代わって第二章第一節から第四節まで、第四章及び第五章の規定に基づく事務を処理することにつきあらかじめその長が都道府県知事と協議し、その同意を得た市町村の区域にあっては、当該市町村をいう。

2 この法律において「建築物」とは、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第一号に規定する建築物をいう。

3 この法律において「屋外広告物」とは、屋外広告物法(昭和二十四年法律第百八十九号)第二条第一項に規定する屋外広告物をいう。

4 この法律において「公共施設」とは、道路、河川、公園、広場、海岸、港湾、漁港その他政令で定める公共の用に供する施設をいう。

5 この法律において「国立公園」とは自然公園法(昭和三十二年法律百六十一号)第二条第二号に規定する国立公園を、「国定公園」とは同条第三号に規定する国定公園をいう。

6 この法律において「都市計画区域」とは都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第二項に規定する都市計画区域を、「準都市計画区域」とは同項に規定する準都市計画区域をいう。

7 第一項ただし書の規定により景観行政団体となる市町村は、当該規定に基づき景観行政団体となる日の三十日前までに、国土交通省令・農林水産省令・環境省令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。

   第二章 景観計画及びこれに基づく措置

    第一節 景観計画の策定等

 (景観計画)

第八条 景観行政団体は、都市、農山漁村その他市街地又は集落を形成している地域及びこれと一体となって景観を形成している地域における次の各号のいずれかに該当する土地(水面を含む。以下この項、第十一条及び第十四条第二項において同じ。)の区域について、良好な景観の形成に関する計画(以下「景観計画」という。)を定めることができる。

 一 現にある良好な景観を保全する必要があると認められる土地の区域

 二 地域の自然、歴史、文化等からみて、地域の特性にふさわしい良好な景観を形成する必要があると認められる土地の区域

 三 地域間の交流の拠点となる土地の区域であって、当該交流の促進に資する良好な景観を形成する必要があると認められるもの

 四 住宅市街地の開発その他建築物若しくはその敷地の整備に関する事業が行われ、又は行われた土地の区域であって、新たに良好な景観を創出する必要があると認められるもの

 五 地域の土地利用の動向等からみて、不良な景観が形成されるおそれがあると認められる土地の区域

2 景観計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 景観計画の区域(以下「景観計画区域」という。)

 二 景観計画区域における良好な景観の形成に関する方針

 三 良好な景観の形成のための行為の制限に関する事項

 四 第十九条第一項の景観重要建造物又は第二十八条第一項の景観重要樹木の指定の方針(当該景観計画区域内にこれらの指定の対象となる建造物又は樹木がある場合に限る。)

 五 次に掲げる事項のうち、良好な景観の形成のために必要なもの

  イ 屋外広告物の表示及び屋外広告物を掲出する物件の設置に関する行為の制限に関する事項

  ロ 当該景観計画区域内の道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路、河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)による河川、都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)による都市公園、海岸保全区域等(海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第二条第三項に規定する海岸保全区域等をいう。以下同じ。)に係る海岸、港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)による港湾、漁港漁場整備法(昭和二十五年法律第百三十七号)による漁港、自然公園法による公園事業(国又は同法第九条第二項に規定する公共団体が執行するものに限る。)に係る施設その他政令で定める公共施設(以下「特定公共施設」と総称する。)であって、良好な景観の形成に重要なもの(以下「景観重要公共施設」という。)の整備に関する事項

  ハ 景観重要公共施設に関する次に掲げる基準であって、良好な景観の形成に必要なもの

   (1) 道路法第三十二条第一項又は第三項の許可の基準

   (2) 河川法第二十四条、第二十五条、第二十六条第一項又は第二十七条第一項(これらの規定を同法第百条第一項において準用する場合を含む。)の許可の基準

   (3) 都市公園法第五条第一項又は第六条第一項若しくは第三項の許可の基準

   (4) 海岸法第七条第一項、第八条第一項、第三十七条の四又は第三十七条の五の許可の基準

   (5) 港湾法第三十七条第一項の許可の基準

   (6) 漁港漁場整備法第三十九条第一項の許可の基準

  ニ 第五十五条第一項の景観農業振興地域整備計画の策定に関する基本的な事項

  ホ 自然公園法第十三条第三項、第十四条第三項又は第二十四条第三項の許可(政令で定める行為に係るものに限る。)の基準であって、良好な景観の形成に必要なもの(当該景観計画区域に国立公園又は国定公園の区域が含まれる場合に限る。)

 六 その他国土交通省令・農林水産省令・環境省令で定める事項

3 前項第三号の行為の制限に関する事項には、政令で定める基準に従い、次に掲げるものを定めなければならない。

 一 第十六条第一項第四号の条例で同項の届出を要する行為を定める必要があるときは、当該条例で定めるべき行為

 二 次に掲げる制限であって、第十六条第三項若しくは第六項又は第十七条第一項の規定による規制又は措置の基準として必要なもの

  イ 建築物又は工作物(建築物を除く。以下同じ。)の形態又は色彩その他の意匠(以下「形態意匠」という。)の制限

  ロ 建築物又は工作物の高さの最高限度又は最低限度

  ハ 壁面の位置の制限又は建築物の敷地面積の最低限度

  ニ その他第十六条第一項の届出を要する行為ごとの良好な景観の形成のための制限

4 景観計画は、全国総合開発計画、首都圏整備計画、近畿圏整備計画、中部圏開発整備計画、北海道総合開発計画、沖縄振興計画、地方総合開発計画、都府県総合開発計画その他の国土計画又は地方計画に関する法律に基づく計画及び道路、河川、鉄道、港湾、空港等の施設に関する国の計画との調和が保たれるものでなければならない。

5 景観計画は、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第十五条第一項に規定する環境基本計画(当該景観計画区域について公害防止計画が定められているときは、当該公害防止計画を含む。)との調和が保たれるものでなければならない。

6 都市計画区域について定める景観計画は、都市計画法第六条の二第一項の都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に適合するものでなければならない。

7 市町村である景観行政団体が定める景観計画は、議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想に即するとともに、都市計画区域又は準都市計画区域について定めるものにあっては、都市計画法第十八条の二第一項の市町村の都市計画に関する基本的な方針に適合するものでなければならない。

8 景観計画に定める第二項第五号ロ及びハに掲げる事項は、景観重要公共施設の種類に応じて、政令で定める公共施設の整備又は管理に関する方針又は計画に適合するものでなければならない。

9 第二項第五号ニに掲げる事項を定める景観計画は、同項第一号、第二号及び第五号ニに掲げる事項並びに同項第六号に掲げる事項のうち農林水産省令で定める事項に係る部分については、農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)第四条第一項の農業振興地域整備基本方針に適合するとともに、市町村である景観行政団体が定めるものにあっては、農業振興地域整備計画(同法第八条第一項の規定により定められた農業振興地域整備計画をいう。以下同じ。)に適合するものでなければならない。

10 景観計画に定める第二項第五号ホに掲げる事項は、自然公園法第二条第五号に規定する公園計画に適合するものでなければならない。

 (策定の手続)

第九条 景観行政団体は、景観計画を定めようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

2 景観行政団体は、景観計画を定めようとするときは、都市計画区域又は準都市計画区域に係る部分について、あらかじめ、都道府県都市計画審議会(市町村である景観行政団体に市町村都市計画審議会が置かれているときは、当該市町村都市計画審議会)の意見を聴かなければならない。

3 都道府県である景観行政団体は、景観計画を定めようとするときは、あらかじめ、関係市町村の意見を聴かなければならない。

4 景観行政団体は、景観計画に前条第二項第五号ロ又はハに掲げる事項を定めようとするときは、あらかじめ、当該事項について、国土交通省令・農林水産省令・環境省令で定めるところにより、当該景観重要公共施設の管理者(景観行政団体であるものを除く。)に協議し、その同意を得なければならない。

5 景観行政団体は、景観計画に前条第二項第五号ホに掲げる事項を定めようとするときは、あらかじめ、当該事項について、国立公園等管理者(国立公園にあっては環境大臣、国定公園にあっては都道府県知事をいう。以下同じ。)に協議し、その同意を得なければならない。

6 景観行政団体は、景観計画を定めたときは、その旨を告示し、国土交通省令・農林水産省令・環境省令で定めるところにより、これを当該景観行政団体の事務所において公衆の縦覧に供しなければならない。

7 前各項の規定は、景観行政団体が、景観計画を定める手続に関する事項(前各項の規定に反しないものに限る。)について、条例で必要な規定を定めることを妨げるものではない。

8 前各項の規定は、景観計画の変更について準用する。

 (特定公共施設の管理者による要請)

第十条 特定公共施設の管理者は、景観計画を策定し、又は策定しようとする景観行政団体に対し、当該景観計画に係る景観計画区域(景観計画を策定しようとする景観行政団体に対しては、当該景観行政団体が策定しようとする景観計画に係る景観計画区域となるべき区域)内の当該管理者の管理に係る特定公共施設について、これを景観重要公共施設として当該景観計画に第八条第二項第五号ロ又はハに掲げる事項を定めるべきことを要請することができる。この場合においては、当該要請に係る景観計画の部分の素案を添えなければならない。

2 景観計画に定められた景観重要公共施設の管理者は、景観行政団体に対し、当該景観計画について、第八条第二項第五号ロ又はハに掲げる事項の追加又は変更を要請することができる。前項後段の規定は、この場合について準用する。

3 景観行政団体は、前二項の要請があった場合には、これを尊重しなければならない。

 (住民等による提案)

第十一条 第八条第一項に規定する土地の区域のうち、一体として良好な景観を形成すべき土地の区域としてふさわしい一団の土地の区域であって政令で定める規模以上のものについて、当該土地の所有権又は建物の所有を目的とする対抗要件を備えた地上権若しくは賃借権(臨時設備その他一時使用のために設定されたことが明らかなものを除く。以下「借地権」という。)を有する者(以下この条において「土地所有者等」という。)は、一人で、又は数人が共同して、景観行政団体に対し、景観計画の策定又は変更を提案することができる。この場合においては、当該提案に係る景観計画の素案を添えなければならない。

2 まちづくりの推進を図る活動を行うことを目的として設立された特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項の特定非営利活動法人若しくは民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人又はこれらに準ずるものとして景観行政団体の条例で定める団体は、前項に規定する土地の区域について、景観行政団体に対し、景観計画の策定又は変更を提案することができる。同項後段の規定は、この場合について準用する。

3 前二項の規定による提案(以下「計画提案」という。)は、当該計画提案に係る景観計画の素案の対象となる土地(国又は地方公共団体の所有している土地で公共施設の用に供されているものを除く。以下この項において同じ。)の区域内の土地所有者等の三分の二以上の同意(同意した者が所有するその区域内の土地の地積と同意した者が有する借地権の目的となっているその区域内の土地の地積との合計が、その区域内の土地の総地積と借地権の目的となっている土地の総地積との合計の三分の二以上となる場合に限る。)を得ている場合に、国土交通省令・農林水産省令・環境省令で定めるところにより、行うものとする。

 (計画提案に対する景観行政団体の判断等)

第十二条 景観行政団体は、計画提案が行われたときは、遅滞なく、当該計画提案を踏まえて景観計画の策定又は変更をする必要があるかどうかを判断し、当該景観計画の策定又は変更をする必要があると認めるときは、その案を作成しなければならない。

 (計画提案を踏まえた景観計画の案の都道府県都市計画審議会等への付議)

第十三条 景観行政団体は、前条の規定により計画提案を踏まえて景観計画の策定又は変更をしようとする場合において、その策定又は変更が当該計画提案に係る景観計画の素案の内容の一部を実現することとなるものであるときは、第九条第二項の規定により当該景観計画の案について意見を聴く都道府県都市計画審議会又は市町村都市計画審議会に対し、当該計画提案に係る景観計画の素案を提出しなければならない。

 (計画提案を踏まえた景観計画の策定等をしない場合にとるべき措置)

第十四条 景観行政団体は、第十二条の規定により同条の判断をした結果、計画提案を踏まえて景観計画の策定又は変更をする必要がないと決定したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を、当該計画提案をした者に通知しなければならない。

2 景観行政団体は、都市計画区域又は準都市計画区域内の土地について前項の通知をしようとするときは、あらかじめ、都道府県都市計画審議会(市町村である景観行政団体に市町村都市計画審議会が置かれているときは、当該市町村都市計画審議会)に当該計画提案に係る景観計画の素案を提出してその意見を聴かなければならない。

 (景観協議会)

第十五条 景観計画区域における良好な景観の形成を図るために必要な協議を行うため、景観行政団体、景観計画に定められた景観重要公共施設の管理者及び第九十二条第一項の規定により指定された景観整備機構(当該景観行政団体が都道府県であるときは関係市町村を、当該景観計画区域に国立公園又は国定公園の区域が含まれるときは国立公園等管理者を含む。以下この項において「景観行政団体等」という。)は、景観協議会(以下この条において「協議会」という。)を組織することができる。この場合において、景観行政団体等は、必要と認めるときは、協議会に、関係行政機関及び観光関係団体、商工関係団体、農林漁業団体、電気事業、電気通信事業、鉄道事業等の公益事業を営む者、住民その他良好な景観の形成の促進のための活動を行う者を加えることができる。

2 協議会は、必要があると認めるときは、その構成員以外の関係行政機関及び事業者に対し、意見の表明、説明その他の必要な協力を求めることができる。

3 第一項前段の協議を行うための会議において協議がととのった事項については、協議会の構成員は、その協議の結果を尊重しなければならない。

4 前三項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

    第二節 行為の規制等

 (届出及び勧告等)

第十六条 景観計画区域内において、次に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令(第四号に掲げる行為にあっては、景観行政団体の条例。以下この条において同じ。)で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を景観行政団体の長に届け出なければならない。

 一 建築物の新築、増築、改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更(以下「建築等」という。)

 二 工作物の新設、増築、改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更(以下「建設等」という。)

 三 都市計画法第四条第十二項に規定する開発行為その他政令で定める行為

 四 前三号に掲げるもののほか、良好な景観の形成に支障を及ぼすおそれのある行為として景観計画に従い景観行政団体の条例で定める行為

2 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項のうち、国土交通省令で定める事項を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を景観行政団体の長に届け出なければならない。

3 景観行政団体の長は、前二項の規定による届出があった場合において、その届出に係る行為が景観計画に定められた当該行為についての制限に適合しないと認めるときは、その届出をした者に対し、その届出に係る行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することができる。

4 前項の勧告は、第一項又は第二項の規定による届出のあった日から三十日以内にしなければならない。

5 前各項の規定にかかわらず、国の機関又は地方公共団体が行う行為については、第一項の届出をすることを要しない。この場合において、当該国の機関又は地方公共団体は、同項の届出を要する行為をしようとするときは、あらかじめ、景観行政団体の長にその旨を通知しなければならない。

6 景観行政団体の長は、前項後段の通知があった場合において、良好な景観の形成のため必要があると認めるときは、その必要な限度において、当該国の機関又は地方公共団体に対し、景観計画に定められた当該行為についての制限に適合するようとるべき措置について協議を求めることができる。

7 次に掲げる行為については、前各項の規定は、適用しない。

 一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの

 二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為

 三 景観重要建造物について、第二十二条第一項の規定による許可を受けて行う行為

 四 景観計画に第八条第二項第五号ロに掲げる事項が定められた景観重要公共施設の整備として行う行為

 五 景観重要公共施設について、第八条第二項第五号ハ(1)から(6)までに規定する許可(景観計画にその基準が定められているものに限る。)を受けて行う行為

 六 第五十五条第二項第一号の区域内の農用地区域(農業振興地域の整備に関する法律第八条第二項第一号に規定する農用地区域をいう。)内において同法第十五条の十五第一項の許可を受けて行う同項に規定する開発行為

 七 国立公園又は国定公園の区域内において、第八条第二項第五号ホに規定する許可(景観計画にその基準が定められているものに限る。)を受けて行う行為

 八 第六十一条第一項の景観地区(次号において「景観地区」という。)内で行う建築物の建築等

 九 景観計画に定められた工作物の建設等の制限のすべてについて第七十二条第二項の景観地区工作物制限条例による制限が定められている場合における当該景観地区内で行う工作物の建設等

 十 地区計画等(都市計画法第四条第九項に規定する地区計画等をいう。以下同じ。)の区域(地区整備計画(同法第十二条の五第二項第三号に規定する地区整備計画をいう。以下同じ。)、特定建築物地区整備計画(密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律(平成九年法律第四十九号)第三十二条第二項第二号に規定する特定建築物地区整備計画をいう。以下同じ。)、防災街区整備地区整備計画(同項第三号に規定する防災街区整備地区整備計画をいう。以下同じ。)、沿道地区整備計画(幹線道路の沿道の整備に関する法律(昭和五十五年法律第三十四号)第九条第二項第二号に規定する沿道地区整備計画をいう。以下同じ。)又は集落地区整備計画(集落地域整備法(昭和六十二年法律第六十三号)第五条第三項に規定する集落地区整備計画をいう。以下同じ。)が定められている区域に限る。)内で行う土地の区画形質の変更、建築物の新築、改築又は増築その他の政令で定める行為

 十一 その他政令又は景観行政団体の条例で定める行為

 (変更命令等)

第十七条 景観行政団体の長は、良好な景観の形成のために必要があると認めるときは、特定届出対象行為(前条第一項第一号又は第二号の届出を要する行為のうち、当該景観行政団体の条例で定めるものをいう。第七項及び次条第一項において同じ。)について、景観計画に定められた建築物又は工作物の形態意匠の制限に適合しないものをしようとする者又はした者に対し、当該制限に適合させるため必要な限度において、当該行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを命ずることができる。この場合においては、前条第三項の規定は、適用しない。

2 前項の処分は、前条第一項又は第二項の届出をした者に対しては、当該届出があった日から三十日以内に限り、することができる。

3 第一項の処分は、前条第一項又は第二項の届出に係る建築物若しくは工作物又はこれらの部分の形態意匠が政令で定める他の法令の規定により義務付けられたものであるときは、当該義務の履行に支障のないものでなければならない。

4 景観行政団体の長は、前条第一項又は第二項の届出があった場合において、実地の調査をする必要があるとき、その他第二項の期間内に第一項の処分をすることができない合理的な理由があるときは、九十日を超えない範囲でその理由が存続する間、第二項の期間を延長することができる。この場合においては、同項の期間内に、前条第一項又は第二項の届出をした者に対し、その旨、延長する期間及び延長する理由を通知しなければならない。

5 景観行政団体の長は、第一項の処分に違反した者又はその者から当該建築物又は工作物についての権利を承継した者に対して、相当の期限を定めて、景観計画に定められた建築物又は工作物の形態意匠の制限に適合させるため必要な限度において、その原状回復を命じ、又は原状回復が著しく困難である場合に、これに代わるべき必要な措置をとることを命ずることができる。

6 前項の規定により原状回復又はこれに代わるべき必要な措置(以下この条において「原状回復等」という。)を命じようとする場合において、過失がなくて当該原状回復等を命ずべき者を確知することができないときは、景観行政団体の長は、その者の負担において、当該原状回復等を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、当該原状回復等を行うべき旨及びその期限までに当該原状回復等を行わないときは、景観行政団体の長又はその命じた者若しくは委任した者が当該原状回復等を行う旨をあらかじめ公告しなければならない。

7 景観行政団体の長は、第一項の規定の施行に必要な限度において、同項の規定により必要な措置をとることを命ぜられた者に対し、当該措置の実施状況その他必要な事項について報告をさせ、又は景観行政団体の職員に、当該建築物の敷地若しくは当該工作物の存する土地に立ち入り、特定届出対象行為の実施状況を検査させ、若しくは特定届出対象行為が景観に及ぼす影響を調査させることができる。

8 第六項の規定により原状回復等を行おうとする者及び前項の規定により立入検査又は立入調査をする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があった場合においては、これを提示しなければならない。

9 第七項の規定による立入検査又は立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (行為の着手の制限)

第十八条 第十六条第一項又は第二項の規定による届出をした者は、景観行政団体がその届出を受理した日から三十日(特定届出対象行為について前条第四項の規定により同条第二項の期間が延長された場合にあっては、その延長された期間)を経過した後でなければ、当該届出に係る行為(根切り工事その他の政令で定める工事に係るものを除く。第百二条第四号において同じ。)に着手してはならない。ただし、特定届出対象行為について前条第一項の命令を受け、かつ、これに基づき行う行為については、この限りでない。

2 景観行政団体の長は、第十六条第一項又は第二項の規定による届出に係る行為について、良好な景観の形成に支障を及ぼすおそれがないと認めるときは、前項本文の期間を短縮することができる。

    第三節 景観重要建造物等

     第一款 景観重要建造物の指定等

 (景観重要建造物の指定)

第十九条 景観行政団体の長は、景観計画に定められた景観重要建造物の指定の方針(次条第三項において「指定方針」という。)に即し、景観計画区域内の良好な景観の形成に重要な建造物(これと一体となって良好な景観を形成している土地その他の物件を含む。以下この節において同じ。)で国土交通省令で定める基準に該当するものを、景観重要建造物として指定することができる。

2 景観行政団体の長は、前項の規定による指定をしようとするときは、あらかじめ、当該建造物の所有者(所有者が二人以上いるときは、その全員。次条第二項及び第二十一条第一項において同じ。)の意見を聴かなければならない。

3 第一項の規定は、文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)の規定により国宝、重要文化財、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建造物については、適用しない。

 (景観重要建造物の指定の提案)

第二十条 景観計画区域内の建造物の所有者は、当該建造物について、良好な景観の形成に重要であって前条第一項の国土交通省令で定める基準に該当するものであると認めるときは、国土交通省令で定めるところにより、景観行政団体の長に対し、景観重要建造物として指定することを提案することができる。この場合において、当該建造物に当該提案に係る所有者以外の所有者がいるときは、あらかじめ、その全員の合意を得なければならない。

2 第九十二条第一項の規定により指定された景観整備機構(以下この節及び第五節において「景観整備機構」という。)は、景観計画区域内の建造物について、良好な景観の形成に重要であって前条第一項の国土交通省令で定める基準に該当するものであると認めるときは、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ当該建造物の所有者の同意を得て、景観行政団体の長に対し、景観重要建造物として指定することを提案することができる。

3 景観行政団体の長は、前二項の規定による提案に係る建造物について、指定方針、前条第一項の国土交通省令で定める基準等に照らし、景観重要建造物として指定する必要がないと判断したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を、当該提案をした者に通知しなければならない。

 (指定の通知等)

第二十一条 景観行政団体の長は、第十九条第一項の規定により景観重要建造物を指定したときは、直ちに、その旨その他国土交通省令で定める事項を、当該景観重要建造物の所有者(当該指定が前条第二項の規定による提案に基づくものであるときは、当該景観重要建造物の所有者及び当該提案に係る景観整備機構)に通知しなければならない。

2 景観行政団体は、第十九条第一項の規定による景観重要建造物の指定があったときは、遅滞なく、条例又は規則で定めるところにより、これを表示する標識を設置しなければならない。

 (現状変更の規制)

第二十二条 何人も、景観行政団体の長の許可を受けなければ、景観重要建造物の増築、改築、移転若しくは除却、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更をしてはならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの及び非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。

2 景観行政団体の長は、前項の許可の申請があった場合において、その申請に係る行為が当該景観重要建造物の良好な景観の保全に支障があると認めるときは、同項の許可をしてはならない。

3 景観行政団体の長は、第一項の許可の申請があった場合において、当該景観重要建造物の良好な景観の保全のため必要があると認めるときは、許可に必要な条件を付することができる。

4 第一項の規定にかかわらず、国の機関又は地方公共団体が行う行為については、同項の許可を受けることを要しない。この場合において、当該国の機関又は地方公共団体は、その行為をしようとするときは、あらかじめ、景観行政団体の長に協議しなければならない。

 (原状回復命令等)

第二十三条 景観行政団体の長は、前条第一項の規定に違反した者又は同条第三項の規定により許可に付された条件に違反した者がある場合においては、これらの者又はこれらの者から当該景観重要建造物についての権利を承継した者に対して、相当の期限を定めて、当該景観重要建造物の良好な景観を保全するため必要な限度において、その原状回復を命じ、又は原状回復が著しく困難である場合に、これに代わるべき必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。

2 前項の規定により原状回復又はこれに代わるべき必要な措置(以下この条において「原状回復等」という。)を命じようとする場合において、過失がなくて当該原状回復等を命ずべき者を確知することができないときは、景観行政団体の長は、その者の負担において、当該原状回復等を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、当該原状回復等を行うべき旨及びその期限までに当該原状回復等を行わないときは、景観行政団体の長又はその命じた者若しくは委任した者が当該原状回復等を行う旨をあらかじめ公告しなければならない。

3 前項の規定により原状回復等を行おうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があった場合においては、これを提示しなければならない。

 (損失の補償)

第二十四条 景観行政団体は、第二十二条第一項の許可を受けることができないために損失を受けた景観重要建造物の所有者に対して、通常生ずべき損失を補償する。ただし、当該許可の申請に係る行為をするについて、他の法律(法律に基づく命令及び条例を含む。)で行政庁の許可その他の処分を受けるべきことを定めているもの(当該許可その他の処分を受けることができないために損失を受けた者に対して、その損失を補償すべきことを定めているものを除く。)がある場合において、当該許可その他の処分の申請が却下されたとき、又は却下されるべき場合に該当する場合における当該許可の申請に係る行為については、この限りでない。

2 前項の規定による損失の補償については、景観行政団体の長と損失を受けた者が協議しなければならない。

3 前項の規定による協議が成立しない場合においては、景観行政団体の長又は損失を受けた者は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。

 (景観重要建造物の所有者の管理義務等)

第二十五条 景観重要建造物の所有者及び管理者は、その良好な景観が損なわれないよう適切に管理しなければならない。

2 景観行政団体は、条例で、景観重要建造物の良好な景観の保全のため必要な管理の方法の基準を定めることができる。

 (管理に関する命令又は勧告)

第二十六条 景観行政団体の長は、景観重要建造物の管理が適当でないため当該景観重要建造物が滅失し若しくは毀損するおそれがあると認められるとき、又は前条第二項の規定に基づく条例が定められている場合にあっては景観重要建造物の管理が当該条例に従って適切に行われていないと認められるときは、当該景観重要建造物の所有者又は管理者に対し、管理の方法の改善その他管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。

 (指定の解除)

第二十七条 景観行政団体の長は、景観重要建造物について、第十九条第三項に規定する建造物に該当するに至ったとき、又は滅失、毀損その他の事由によりその指定の理由が消滅したときは、遅滞なく、その指定を解除しなければならない。

2 景観行政団体の長は、景観重要建造物について、公益上の理由その他特別な理由があるときは、その指定を解除することができる。

3 第二十一条第一項の規定は、前二項の規定による景観重要建造物の指定の解除について準用する。

     第二款 景観重要樹木の指定等

 (景観重要樹木の指定)

第二十八条 景観行政団体の長は、景観計画に定められた景観重要樹木の指定の方針(次条第三項において「指定方針」という。)に即し、景観計画区域内の良好な景観の形成に重要な樹木で国土交通省令(都市計画区域外の樹木にあっては、国土交通省令・農林水産省令。以下この款において同じ。)で定める基準に該当するものを、景観重要樹木として指定することができる。

2 景観行政団体の長は、前項の規定による指定をしようとするときは、あらかじめ、その指定をしようとする樹木の所有者(所有者が二人以上いるときは、その全員。次条第二項及び第三十条第一項において同じ。)の意見を聴かなければならない。

3 第一項の規定は、文化財保護法の規定により特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された樹木については、適用しない。

 (景観重要樹木の指定の提案)

第二十九条 景観計画区域内の樹木の所有者は、当該樹木について、良好な景観の形成に重要であって前条第一項の国土交通省令で定める基準に該当するものであると認めるときは、国土交通省令で定めるところにより、景観行政団体の長に対し、景観重要樹木として指定することを提案することができる。この場合において、当該樹木に当該提案に係る所有者以外の所有者がいるときは、あらかじめ、その全員の合意を得なければならない。

2 景観整備機構は、景観計画区域内の樹木について、良好な景観の形成に重要であって前条第一項の国土交通省令で定める基準に該当するものであると認めるときは、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ当該樹木の所有者の同意を得て、景観行政団体の長に対し、景観重要樹木として指定することを提案することができる。

3 景観行政団体の長は、前二項の規定による提案に係る樹木について、指定方針、前条第一項の国土交通省令で定める基準等に照らし、景観重要樹木として指定する必要がないと判断したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を、当該提案をした者に通知しなければならない。

 (指定の通知等)

第三十条 景観行政団体の長は、第二十八条第一項の規定により景観重要樹木を指定したときは、直ちに、その旨その他国土交通省令で定める事項を、当該景観重要樹木の所有者(当該指定が前条第二項の規定による提案に基づくものであるときは、当該景観重要樹木の所有者及び当該提案に係る景観整備機構)に通知しなければならない。

2 景観行政団体は、第二十八条第一項の規定による景観重要樹木の指定があったときは、遅滞なく、条例又は規則で定めるところにより、これを表示する標識を設置しなければならない。

 (現状変更の規制)

第三十一条 何人も、景観行政団体の長の許可を受けなければ、景観重要樹木の伐採又は移植をしてはならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの及び非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。

2 第二十二条第二項から第四項までの規定は、前項の許可について準用する。この場合において、同条第二項及び第三項中「景観重要建造物」とあるのは、「景観重要樹木」と読み替えるものとする。

 (原状回復命令等についての準用)

第三十二条 第二十三条の規定は、前条第一項の規定に違反した者又は同条第二項において準用する第二十二条第三項の規定により許可に付された条件に違反した者がある場合について準用する。この場合において、第二十三条第一項中「景観重要建造物」とあるのは、「景観重要樹木」と読み替えるものとする。

2 第二十四条の規定は、前条第一項の許可を受けることができないために受けた景観重要樹木の所有者の損失について準用する。

 (景観重要樹木の所有者の管理義務等)

第三十三条 景観重要樹木の所有者及び管理者は、その良好な景観が損なわれないよう適切に管理しなければならない。

2 景観行政団体は、条例で、景観重要樹木の管理の方法の基準を定めることができる。

 (管理に関する命令又は勧告)

第三十四条 景観行政団体の長は、景観重要樹木の管理が適当でないため当該景観重要樹木が滅失し若しくは枯死するおそれがあると認められるとき、又は前条第二項の規定に基づく条例が定められている場合にあっては景観重要樹木の管理が当該条例に従って適切に行われていないと認められるときは、当該景観重要樹木の所有者又は管理者に対し、管理の方法の改善その他管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。

 (指定の解除)

第三十五条 景観行政団体の長は、景観重要樹木について、第二十八条第三項に規定する樹木に該当するに至ったとき、又は滅失、枯死その他の事由によりその指定の理由が消滅したときは、遅滞なく、その指定を解除しなければならない。

2 景観行政団体の長は、景観重要樹木について、公益上の理由その他特別な理由があるときは、その指定を解除することができる。

3 第三十条第一項の規定は、前二項の規定による景観重要樹木の指定の解除について準用する。

     第三款 管理協定

 (管理協定の締結等)

第三十六条 景観行政団体又は景観整備機構は、景観重要建造物又は景観重要樹木の適切な管理のため必要があると認めるときは、当該景観重要建造物又は景観重要樹木の所有者(所有者が二人以上いるときは、その全員。第四十二条第一項において同じ。)と次に掲げる事項を定めた協定(以下「管理協定」という。)を締結して、当該景観重要建造物又は景観重要樹木の管理を行うことができる。

 一 管理協定の目的となる景観重要建造物(以下「協定建造物」という。)又は管理協定の目的となる景観重要樹木(以下「協定樹木」という。)

 二 協定建造物又は協定樹木の管理の方法に関する事項

 三 管理協定の有効期間

 四 管理協定に違反した場合の措置

2 管理協定の内容は、次の各号に掲げる基準のいずれにも適合するものでなければならない。

 一 協定建造物又は協定樹木の利用を不当に制限するものでないこと。

 二 前項第二号から第四号までに掲げる事項について国土交通省令(都市計画区域外の協定樹木に係る管理協定にあっては、国土交通省令・農林水産省令。以下この款において同じ。)で定める基準に適合するものであること。

3 景観整備機構が管理協定を締結しようとするときは、あらかじめ、景観行政団体の長の認可を受けなければならない。

 (管理協定の縦覧等)

第三十七条 景観行政団体又はその長は、それぞれ管理協定を締結しようとするとき、又は前条第三項の規定による管理協定の認可の申請があったときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、当該管理協定を当該公告の日から二週間関係人の縦覧に供さなければならない。

2 前項の規定による公告があったときは、関係人は、同項の縦覧期間満了の日までに、当該管理協定について、景観行政団体又はその長に意見書を提出することができる。

 (管理協定の認可)

第三十八条 景観行政団体の長は、第三十六条第三項の規定による管理協定の認可の申請が、次の各号のいずれにも該当するときは、当該管理協定を認可しなければならない。

 一 申請手続が法令に違反しないこと。

 二 管理協定の内容が、第三十六条第二項各号に掲げる基準のいずれにも適合するものであること。

 (管理協定の公告)

第三十九条 景観行政団体又はその長は、それぞれ管理協定を締結し、又は前条の認可をしたときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、かつ、当該管理協定の写しを当該景観行政団体の事務所に備えて公衆の縦覧に供しなければならない。

 (管理協定の変更)

第四十条 第三十六条第二項及び第三項並びに前三条の規定は、管理協定において定められた事項の変更について準用する。

 (管理協定の効力)

第四十一条 第三十九条(前条において準用する場合を含む。)の規定による公告があった管理協定は、その公告があった後において当該協定建造物又は協定樹木の所有者となった者に対しても、その効力があるものとする。

 (緑地管理機構の業務の特例)

第四十二条 都市緑地法(昭和四十八年法律第七十二号)第六十八条第一項の規定により指定された緑地管理機構であって同法第六十九条第一号イの業務を行うもの(以下この節において「緑地管理機構」という。)は、景観重要樹木の適切な管理のため必要があると認めるときは、同条各号に掲げる業務のほか、当該景観重要樹木の所有者と管理協定を締結して、当該景観重要樹木の管理及びこれに附帯する業務を行うことができる。

2 前項の場合においては、都市緑地法第七十条中「又はニ(1)に掲げる業務」とあるのは、「若しくはニ(1)に掲げる業務又は景観法第四十二条第一項に規定する業務」とする。

3 第三十六条第二項及び第三項並びに第三十七条から前条までの規定は、前二項の規定により緑地管理機構が業務を行う場合について準用する。

     第四款 雑則

 (所有者の変更の場合の届出)

第四十三条 景観重要建造物又は景観重要樹木の所有者が変更したときは、新たに所有者となった者は、遅滞なく、その旨を景観行政団体の長に届け出なければならない。

 (台帳)

第四十四条 景観行政団体の長は、景観重要建造物又は景観重要樹木に関する台帳を作成し、これを保管しなければならない。

2 前項の台帳の作成及び保管に関し必要な事項は、国土交通省令(都市計画区域外の景観重要樹木に関する台帳にあっては、国土交通省令・農林水産省令)で定める。

 (報告の徴収)

第四十五条 景観行政団体の長は、必要があると認めるときは、景観重要建造物又は景観重要樹木の所有者に対し、景観重要建造物又は景観重要樹木の現状について報告を求めることができる。

 (助言又は援助)

第四十六条 景観重要建造物の所有者は景観行政団体又は景観整備機構に対し、景観重要樹木の所有者は景観行政団体又は景観整備機構若しくは緑地管理機構に対し、それぞれ景観重要建造物又は景観重要樹木の管理に関し必要な助言又は援助を求めることができる。

    第四節 景観重要公共施設の整備等

 (景観重要公共施設の整備)

第四十七条 景観計画に第八条第二項第五号ロの景観重要公共施設の整備に関する事項が定められた場合においては、当該景観重要公共施設の整備は、当該景観計画に即して行われなければならない。

 (電線共同溝の整備等に関する特別措置法の特例)

第四十八条 景観計画に景観重要公共施設として定められた道路法による道路(以下「景観重要道路」という。)に関する電線共同溝の整備等に関する特別措置法(平成七年法律第三十九号)第三条の規定の適用については、同条第一項中「その安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備を図るため」とあるのは「景観計画(景観法第八条第一項に規定する景観計画をいう。)に即し、その景観の整備と安全な交通の確保を図るため」と、「特に必要である」とあるのは「必要である」と、同条第二項中「市町村を除く。)」とあるのは「市町村を除く。)、当該指定に係る道路の存する区域において景観行政団体(景観法第七条第一項に規定する景観行政団体をいう。以下同じ。)である都道府県(当該指定に係る道路の道路管理者が都道府県である場合の当該都道府県及び次項の規定による要請をした都道府県を除く。)」と、同条第三項中「市町村」とあるのは「市町村又は景観行政団体である都道府県」とする。

 (道路法の特例)

第四十九条 景観計画に第八条第二項第五号ハ(1)の許可の基準に関する事項が定められた景観重要道路についての道路法第三十三条、第三十六条第二項及び第八十七条第一項の規定の適用については、同法第三十三条及び第三十六条第二項中「政令で定める基準」とあるのは「政令で定める基準及び景観法第八条第一項に規定する景観計画に定められた同条第二項第五号ハ(1)の許可の基準」と、同法第八十七条第一項中「円滑な交通を確保する」とあるのは「円滑な交通を確保し、又は良好な景観を形成する」とする。

 (河川法の規定による許可の特例)

第五十条 景観計画に第八条第二項第五号ハ(2)の許可の基準が定められた景観重要公共施設である河川法による河川(以下この条において「景観重要河川」という。)の河川区域(同法第六条第一項(同法第百条第一項において準用する場合を含む。)に規定する河川区域をいう。)内の土地における同法第二十四条、第二十五条、第二十六条第一項又は第二十七条第一項(これらの規定を同法第百条第一項において準用する場合を含む。)の規定による許可を要する行為については、当該景観重要河川の河川管理者(同法第七条(同法第百条第一項において準用する場合を含む。)に規定する河川管理者をいう。)は、当該行為が当該景観計画に定められた同号ハ(2)の許可の基準に適合しない場合には、これらの規定による許可をしてはならない。

 (都市公園法の規定による許可の特例等)

第五十一条 景観計画に第八条第二項第五号ハ(3)の許可の基準(都市公園法第五条第一項の許可に係るものに限る。以下この項において同じ。)が定められた景観重要公共施設である同法による都市公園(以下この条において「景観重要都市公園」という。)における同法第五条第一項の許可を要する行為については、当該景観重要都市公園の公園管理者(同項に規定する公園管理者をいう。)は、当該行為が当該景観計画に定められた同号ハ(3)の許可の基準に適合しない場合には、同項の許可をしてはならない。

2 景観計画に第八条第二項第五号ハ(3)の許可の基準(都市公園法第六条第一項又は第三項の許可に係るものに限る。)が定められた景観重要都市公園についての同法第七条の規定の適用については、同条中「政令で定める技術的基準」とあるのは、「政令で定める技術的基準及び景観法第八条第一項に規定する景観計画に定められた同条第二項第五号ハ(3)の許可の基準」とする。

 (海岸法の特例等)

第五十二条 景観計画に第八条第二項第五号ハ(4)の許可の基準(海岸法第七条第一項又は第八条第一項の許可に係るものに限る。)が定められた景観重要公共施設である海岸保全区域等に係る海岸(次項において「景観重要海岸」という。)についての同法第七条第二項及び第八条第二項の規定の適用については、同法第七条第二項中「及ぼすおそれがある」とあるのは「及ぼすおそれがあり、又は景観法第八条第一項に規定する景観計画に定められた同条第二項第五号ハ(4)の許可の基準(前項の許可に係るものに限る。)に適合しないものである」と、同法第八条第二項中「前条第二項」とあるのは「景観法第五十二条第一項の規定により読み替えて適用する前条第二項」と、「準用する」とあるのは「準用する。この場合において、同条第二項中「前項の許可に係るもの」とあるのは、「次条第一項の許可に係るもの」と読み替えるものとする」とする。

2 景観計画に第八条第二項第五号ハ(4)の許可の基準(海岸法第三十七条の四又は第三十七条の五の許可に係るものに限る。以下この項において同じ。)が定められた景観重要海岸の一般公共海岸区域(同法第二条第二項に規定する一般公共海岸区域をいう。)内における同法第三十七条の四又は第三十七条の五の許可を要する行為については、当該景観重要海岸の海岸管理者(同法第二条第三項に規定する海岸管理者をいう。)は、当該行為が当該景観計画に定められた同号ハ(4)の許可の基準に適合しない場合には、これらの規定による許可をしてはならない。

 (港湾法の特例)

第五十三条 景観計画に第八条第二項第五号ハ(5)の許可の基準が定められた景観重要公共施設である港湾法による港湾についての同法第三十七条第二項の規定の適用については、同項中「又は第三条の三第九項」とあるのは「若しくは第三条の三第九項」と、「与えるものである」とあるのは「与えるものであり、又は景観法第八条第一項に規定する景観計画に定められた同条第二項第五号ハ(5)の許可の基準に適合しないものである」とする。

 (漁港漁場整備法の特例)

第五十四条 景観計画に第八条第二項第五号ハ(6)の許可の基準が定められた景観重要公共施設である漁港漁場整備法による漁港についての同法第三十九条第二項及び第三項の規定の適用については、同条第二項中「又は漁港」とあるのは「若しくは漁港」と、「与える」とあるのは「与え、又は景観法第八条第一項に規定する景観計画に定められた同条第二項第五号ハ(6)の許可の基準に適合しない」と、同条第三項中「保全上」とあるのは「保全上又は良好な景観の形成上」とする。

    第五節 景観農業振興地域整備計画等

 (景観農業振興地域整備計画)

第五十五条 市町村は、第八条第二項第五号ニに掲げる基本的な事項が定められた景観計画に係る景観計画区域のうち農業振興地域(農業振興地域の整備に関する法律第六条第一項の規定により指定された地域をいう。)内にあるものについて、農業振興地域整備計画を達成するとともに、景観と調和のとれた良好な営農条件を確保するため、その地域の特性にふさわしい農用地(同法第三条第一号に規定する農用地をいう。以下同じ。)及び農業用施設その他の施設の整備を一体的に推進する必要があると認める場合には、景観農業振興地域整備計画を定めることができる。

2 景観農業振興地域整備計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 景観農業振興地域整備計画の区域

 二 前号の区域内における景観と調和のとれた土地の農業上の利用に関する事項

 三 第一号の区域内における農業振興地域の整備に関する法律第八条第二項第二号、第二号の二及び第四号に掲げる事項

3 景観農業振興地域整備計画は、景観計画及び農業振興地域整備計画に適合するとともに、農業振興地域の整備に関する法律第四条第三項に規定する計画との調和が保たれたものであり、かつ、前項第一号の区域の自然的経済的社会的諸条件を考慮して、当該区域において総合的に農業の振興を図るため必要な事項を一体的に定めるものでなければならない。

4 農業振興地域の整備に関する法律第八条第四項前段、第十条第二項、第十一条(第八項後段を除く。)、第十二条並びに第十三条第一項前段及び第四項の規定は、景観農業振興地域整備計画について準用する。この場合において、同法第十一条第一項中「当該農業振興地域整備計画のうち農用地利用計画」とあるのは「当該景観農業振興地域整備計画(景観法第五十五条第一項の規定により定められた景観農業振興地域整備計画をいう。以下同じ。)」と、同条第二項中「農用地利用計画に係る農用地区域内」とあるのは「景観農業振興地域整備計画に係る景観法第五十五条第二項第一号の区域内」と、「当該農用地利用計画」とあるのは「当該景観農業振興地域整備計画」と、「同項」とあるのは「前項」と、同条第九項中「農用地区域」とあるのは「景観法第五十五条第二項第一号の区域」と、同条第十項中「農用地等としての利用に供する」とあるのは「景観農業振興地域整備計画に従つて利用する」と、同法第十三条第一項前段中「農業振興地域整備基本方針」とあるのは「景観法第八条第一項の景観計画若しくは農業振興地域整備計画」と、「変更により、前条第一項の規定による基礎調査の結果により」とあるのは「変更により」と読み替えるものとする。

 (土地利用についての勧告)

第五十六条 市町村長は、前条第二項第一号の区域内にある土地が景観農業振興地域整備計画に従って利用されていない場合において、景観農業振興地域整備計画の達成のため必要があるときは、その土地の所有者又はその土地について所有権以外の権原に基づき使用及び収益をする者に対し、その土地を当該景観農業振興地域整備計画に従って利用すべき旨を勧告することができる。

2 市町村長は、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わないとき、又は従う見込みがないと認めるときは、その者に対し、その土地を景観農業振興地域整備計画に従って利用するためその土地について所有権又は使用及び収益を目的とする権利を取得しようとする者で市町村長の指定を受けたものとその土地についての所有権の移転又は使用及び収益を目的とする権利の設定若しくは移転に関し協議すべき旨を勧告することができる。

 (農地法の特例)

第五十七条 前条第二項に規定する場合において、同項の規定により景観整備機構が指定されたときは、農業委員会(農業委員会等に関する法律(昭和二十六年法律第八十八号)第三条第五項の規定により農業委員会を置かない市町村にあっては、市町村長)又は都道府県知事は、前条第二項の勧告に係る協議がととのったことによりその勧告を受けた者がその勧告に係る農地又は採草放牧地(農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二条第一項に規定する農地又は採草放牧地をいう。以下同じ。)につき当該景観整備機構のために使用貸借による権利又は賃借権を設定しようとするときは、農地法第三条第二項(第二号の二、第四号、第五号、第七号及び第八号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、同条第一項の許可をすることができる。

2 前条第二項の勧告に係る協議がととのったことにより景観整備機構のために使用貸借による権利又は賃借権が設定されている農地については、農地法第六条第一項の規定は、適用しない。

3 前条第二項の勧告に係る協議がととのったことにより景観整備機構のために賃借権が設定されている農地又は採草放牧地の賃貸借については、農地法第十九条本文並びに第二十条第一項本文、第七項及び第八項の規定は、適用しない。

 (農業振興地域の整備に関する法律の特例)

第五十八条 都道府県知事は、農業振興地域の整備に関する法律第十五条の十五第一項の許可をしようとする場合において、同項に規定する開発行為に係る土地が第五十五条第二項第一号の区域内にあるときは、当該開発行為が同法第十五条の十五第四項各号のいずれかに該当するほか、当該開発行為により当該開発行為に係る土地を景観農業振興地域整備計画に従って利用することが困難となると認めるときは、これを許可してはならない。

2 前項の許可についての農業振興地域の整備に関する法律第十五条の十五第五項の規定の適用については、同項中「農業上の利用を確保するために」とあるのは、「農業上の利用又は景観法第五十五条第一項の規定により定められた景観農業振興地域整備計画に従つた利用を確保するために」とする。

 (市町村森林整備計画の変更)

第五十九条 市町村は、森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第十条の六第二項及び第三項に規定する場合のほか、その区域内にある同法第五条第一項の規定によりたてられた地域森林計画の対象とする森林につき、景観計画に即してその公益的機能の維持増進を図ることが適当と認める場合には、同法第十条の五第一項の規定によりたてられた市町村森林整備計画の一部を変更することができる。

2 前項の規定による変更は、森林法第十条の六第三項の規定によりしたものとみなす。

    第六節 自然公園法の特例

第六十条 第八条第二項第五号ホに掲げる事項が定められた景観計画に係る景観計画区域内における自然公園法第十三条第四項、第十四条第四項及び第二十四条第四項の規定の適用については、これらの規定中「環境省令で定める基準」とあるのは、「環境省令で定める基準及び景観法第八条第一項に規定する景観計画に定められた同条第二項第五号ホの許可の基準」とする。

   第三章 景観地区等

    第一節 景観地区

     第一款 景観地区に関する都市計画

第六十一条 市町村は、都市計画区域又は準都市計画区域内の土地の区域については、市街地の良好な景観の形成を図るため、都市計画に、景観地区を定めることができる。

2 景観地区に関する都市計画には、都市計画法第八条第三項第一号及び第三号に掲げる事項のほか、第一号に掲げる事項を定めるとともに、第二号から第四号までに掲げる事項のうち必要なものを定めるものとする。この場合において、これらに相当する事項が定められた景観計画に係る景観計画区域内においては、当該都市計画は、当該景観計画による良好な景観の形成に支障がないように定めるものとする。

 一 建築物の形態意匠の制限

 二 建築物の高さの最高限度又は最低限度

 三 壁面の位置の制限

 四 建築物の敷地面積の最低限度

     第二款 建築物の形態意匠の制限

 (建築物の形態意匠の制限)

第六十二条 景観地区内の建築物の形態意匠は、都市計画に定められた建築物の形態意匠の制限に適合するものでなければならない。ただし、政令で定める他の法令の規定により義務付けられた建築物又はその部分の形態意匠にあっては、この限りでない。

 (計画の認定)

第六十三条 景観地区内において建築物の建築等をしようとする者は、あらかじめ、その計画が、前条の規定に適合するものであることについて、申請書を提出して市町村長の認定を受けなければならない。当該認定を受けた建築物の計画を変更して建築等をしようとする場合も、同様とする。

2 市町村長は、前項の申請書を受理した場合においては、その受理した日から三十日以内に、申請に係る建築物の計画が前条の規定に適合するかどうかを審査し、審査の結果に基づいて当該規定に適合するものと認めたときは、当該申請者に認定証を交付しなければならない。

3 市町村長は、前項の規定により審査をした場合において、申請に係る建築物の計画が前条の規定に適合しないものと認めたとき、又は当該申請書の記載によっては当該規定に適合するかどうかを決定することができない正当な理由があるときは、その旨及びその理由を記載した通知書を同項の期間内に当該申請者に交付しなければならない。

4 第二項の認定証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築等の工事(根切り工事その他の政令で定める工事を除く。第百一条第三号において同じ。)は、することができない。

5 第一項の申請書、第二項の認定証及び第三項の通知書の様式は、国土交通省令で定める。

 (違反建築物に対する措置)

第六十四条 市町村長は、第六十二条の規定に違反した建築物があるときは、建築等工事主(建築物の建築等をする者をいう。以下同じ。)、当該建築物の建築等の工事の請負人(請負工事の下請人を含む。以下この章において同じ。)若しくは現場管理者又は当該建築物の所有者、管理者若しくは占有者に対し、当該建築物に係る工事の施工の停止を命じ、又は相当の期限を定めて当該建築物の改築、修繕、模様替、色彩の変更その他当該規定の違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。

2 市町村長は、前項の規定による処分をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。

3 前項の標識は、第一項の規定による処分に係る建築物又はその敷地内に設置することができる。この場合においては、同項の規定による処分に係る建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。

4 第一項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができず、かつ、その違反を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市町村長又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。

5 前項の措置を行おうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があった場合においては、これを提示しなければならない。

 (違反建築物の設計者等に対する措置)

第六十五条 市町村長は、前条第一項の規定による処分をした場合においては、国土交通省令で定めるところにより、当該処分に係る建築物の設計者、工事監理者(建築士法(昭和二十五年法律第二百二号)第二条第六項に規定する工事監理をする者をいう。以下同じ。)若しくは工事の請負人又は当該建築物について宅地建物取引業(宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)第二条第二号に規定する宅地建物取引業をいう。以下同じ。)に係る取引をした宅地建物取引業者(同条第三号に規定する宅地建物取引業者をいう。以下同じ。)の氏名又は名称及び住所その他国土交通省令で定める事項を、建築士法、建設業法(昭和二十四年法律第百号)又は宅地建物取引業法の定めるところによりこれらの者を監督する国土交通大臣又は都道府県知事に通知しなければならない。

2 国土交通大臣又は都道府県知事は、前項の規定による通知を受けた場合においては、遅滞なく、当該通知に係る者について、建築士法、建設業法又は宅地建物取引業法による業務の停止の処分その他必要な措置を講ずるものとし、その結果を同項の規定による通知をした市町村長に通知しなければならない。

 (国又は地方公共団体の建築物に対する認定等に関する手続の特例)

第六十六条 国又は地方公共団体の建築物については、第六十三条から前条までの規定は適用せず、次項から第五項までに定めるところによる。

2 景観地区内の建築物の建築等をしようとする者が国の機関又は地方公共団体(以下この条において「国の機関等」という。)である場合においては、当該国の機関等は、当該工事に着手する前に、その計画を市町村長に通知しなければならない。

3 市町村長は、前項の通知を受けた場合においては、当該通知を受けた日から三十日以内に、当該通知に係る建築物の計画が第六十二条の規定に適合するかどうかを審査し、審査の結果に基づいて、当該規定に適合するものと認めたときにあっては当該通知をした国の機関等に対して認定証を交付し、当該規定に適合しないものと認めたとき、又は当該規定に適合するかどうかを決定することができない正当な理由があるときにあってはその旨及びその理由を記載した通知書を当該通知をした国の機関等に対して交付しなければならない。

4 第二項の通知に係る建築物の建築等の工事(根切り工事その他の政令で定める工事を除く。)は、前項の認定証の交付を受けた後でなければ、することができない。

5 市町村長は、国又は地方公共団体の建築物が第六十二条の規定に違反すると認める場合においては、直ちに、その旨を当該建築物を管理する国の機関等に通知し、第六十四条第一項に規定する必要な措置をとるべきことを要請しなければならない。

 (条例との関係)

第六十七条 第六十三条第二項及び前条第三項の規定は、市町村が、これらの規定による認定の審査の手続について、これらの規定に反しない限り、条例で必要な規定を定めることを妨げるものではない。

 (工事現場における認定の表示等)

第六十八条 景観地区内の建築物の建築等の工事の施工者は、当該工事現場の見やすい場所に、国土交通省令で定めるところにより、建築等工事主、設計者(その者の責任において、設計図書を作成した者をいう。以下同じ。)、工事施工者(建築物に関する工事の請負人又は請負契約によらないで自らその工事をする者をいう。以下同じ。)及び工事の現場管理者の氏名又は名称並びに当該工事に係る計画について第六十三条第二項又は第六十六条第三項の規定による認定があった旨の表示をしなければならない。

2 景観地区内の建築物の建築等の工事の施工者は、当該工事に係る第六十三条第二項又は第六十六条第三項の規定による認定を受けた計画の写しを当該工事現場に備えて置かなければならない。

 (適用の除外)

第六十九条 第六十二条から前条までの規定は、次に掲げる建築物については、適用しない。

 一 第十九条第一項の規定により景観重要建造物として指定された建築物

 二 文化財保護法の規定により国宝、重要文化財、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建築物

 三 文化財保護法第八十三条の三第一項の伝統的建造物群保存地区内にある建築物

 四 第二号に掲げる建築物であったものの原形を再現する建築物で、市町村長がその原形の再現がやむを得ないと認めたもの

 五 前各号に掲げるもののほか、良好な景観の形成に支障を及ぼすおそれが少ない建築物として市町村の条例で定めるもの

2 景観地区に関する都市計画が定められ、又は変更された際現に存する建築物又は現に建築等の工事中の建築物が、第六十二条の規定に適合しない場合又は同条の規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物又はその部分に対しては、同条から前条までの規定は、適用しない。

3 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物又はその部分に対しては、適用しない。

 一 景観地区に関する都市計画の変更前に第六十二条の規定に違反している建築物又はその部分

 二 景観地区に関する都市計画が定められ、又は変更された後に増築、改築又は移転の工事に着手した建築物

 三 景観地区に関する都市計画が定められ、又は変更された後に外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更の工事に着手した建築物の当該工事に係る部分

 (形態意匠の制限に適合しない建築物に対する措置)

第七十条 市町村長は、前条第二項の規定により第六十二条から第六十八条までの規定の適用を受けない建築物について、その形態意匠が景観地区における良好な景観の形成に著しく支障があると認める場合においては、当該市町村の議会の同意を得た場合に限り、当該建築物の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の期限を定めて、当該建築物の改築、模様替、色彩の変更その他都市計画において定められた建築物の形態意匠の制限に適合するために必要な措置をとることを命ずることができる。この場合においては、市町村は、当該命令に基づく措置によって通常生ずべき損害を時価によって補償しなければならない。

2 前項の規定によって補償を受けることができる者は、その補償金額に不服がある場合においては、政令で定めるところにより、その決定の通知を受けた日から一月以内に土地収用法第九十四条第二項の規定による収用委員会の裁決を求めることができる。

 (報告及び立入検査)

第七十一条 市町村長は、この款の規定の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、建築物の所有者、管理者若しくは占有者、建築等工事主、設計者、工事監理者若しくは工事施工者に対し、建築物の建築等に関する工事の計画若しくは施工の状況に関し報告させ、又はその職員に、建築物の敷地若しくは工事現場に立ち入り、建築物、建築材料その他建築物に関する工事に関係がある物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

     第三款 工作物等の制限

 (工作物の形態意匠等の制限)

第七十二条 市町村は、景観地区内の工作物について、政令で定める基準に従い、条例で、その形態意匠の制限、その高さの最高限度若しくは最低限度又は壁面後退区域(当該景観地区に関する都市計画において壁面の位置の制限が定められた場合における当該制限として定められた限度の線と敷地境界線との間の土地の区域をいう。第四項において同じ。)における工作物(土地に定着する工作物以外のものを含む。同項において同じ。)の設置の制限を定めることができる。この場合において、これらの制限に相当する事項が定められた景観計画に係る景観計画区域内においては、当該条例は、当該景観計画による良好な景観の形成に支障がないように定めるものとする。

2 前項前段の規定に基づく条例(以下「景観地区工作物制限条例」という。)で工作物の形態意匠の制限を定めたものには、第六十三条、第六十四条、第六十六条、第六十八条及び前条の規定の例により、当該条例の施行に必要な市町村長による計画の認定、違反工作物に対する違反是正のための措置その他の措置に関する規定を定めることができる。

3 前項の規定は、第六十三条第二項及び第六十六条第三項の規定の例により景観地区工作物制限条例に定めた市町村長の認定の審査の手続について、これらの規定に反しない限り、当該条例で必要な規定を定めることを妨げるものではない。

4 工作物の高さの最高限度若しくは最低限度又は壁面後退区域における工作物の設置の制限を定めた景観地区工作物制限条例には、第六十四条及び前条の規定の例により、当該条例の施行に必要な違反工作物に対する違反是正のための措置その他の措置に関する規定を定めることができる。

5 景観地区工作物制限条例には、市町村長は、当該条例の規定により第六十四条第一項の処分に相当する処分をしたときは、当該処分に係る工作物の工事の請負人の氏名又は名称及び住所その他国土交通省令で定める事項を、建設業法の定めるところにより当該請負人を監督する国土交通大臣又は都道府県知事に通知しなければならない旨を定めることができる。

6 国土交通大臣又は都道府県知事は、前項の規定に基づく景観地区工作物制限条例の規定により同項の通知を受けた場合においては、遅滞なく、当該通知に係る請負人について、建設業法による業務の停止の処分その他必要な措置を講ずるものとし、その結果を当該通知をした市町村長に通知しなければならない。

 (開発行為等の制限)

第七十三条 市町村は、景観地区内において、都市計画法第四条第十二項に規定する開発行為(次節において「開発行為」という。)その他政令で定める行為について、政令で定める基準に従い、条例で、良好な景観を形成するため必要な規制をすることができる。

2 都市計画法第五十一条の規定は、前項の規定に基づく条例の規定による処分に対する不服について準用する。

    第二節 準景観地区

 (準景観地区の指定)

第七十四条 市町村は、都市計画区域及び準都市計画区域外の景観計画区域のうち、相当数の建築物の建築が行われ、現に良好な景観が形成されている一定の区域について、その景観の保全を図るため、準景観地区を指定することができる。

2 市町村は、準景観地区を指定しようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、当該準景観地区の区域の案を、当該準景観地区を指定しようとする理由を記載した書面を添えて、当該公告から二週間公衆の縦覧に供しなければならない。

3 前項の規定による公告があったときは、住民及び利害関係人は、同項の縦覧期間満了の日までに、縦覧に供された準景観地区の区域の案について、市町村に意見書を提出することができる。

4 市町村は、第一項の規定により準景観地区を指定しようとするときは、あらかじめ、前項の規定により提出された意見書の写しを添えて、都道府県知事に協議し、その同意を得なければならない。

5 準景観地区の指定は、国土交通省令で定めるところにより、公告することにより行う。

6 前各項の規定は、準景観地区の変更について準用する。

 (準景観地区内における行為の規制)

第七十五条 市町村は、準景観地区内における建築物又は工作物について、景観地区内におけるこれらに対する規制に準じて政令で定める基準に従い、条例で、良好な景観を保全するため必要な規制(建築物については、建築基準法第六十八条の九第二項の規定に基づく条例により行われるものを除く。)をすることができる。

2 市町村は、準景観地区内において、開発行為その他政令で定める行為について、政令で定める基準に従い、条例で、良好な景観を保全するため必要な規制をすることができる。

3 都市計画法第五十一条の規定は、前項の規定に基づく条例の規定による処分に対する不服について準用する。

    第三節 地区計画等の区域内における建築物等の形態意匠の制限

第七十六条 市町村は、地区計画等の区域(地区整備計画、特定建築物地区整備計画、防災街区整備地区整備計画、沿道地区整備計画又は集落地区整備計画において、建築物又は工作物(以下この条において「建築物等」という。)の形態意匠の制限が定められている区域に限る。)内における建築物等の形態意匠について、政令で定める基準に従い、条例で、当該地区計画等において定められた建築物等の形態意匠の制限に適合するものとしなければならないこととすることができる。

2 前項の規定による制限は、建築物等の利用上の必要性、当該区域内における土地利用の状況等を考慮し、当該地区計画等の区域の特性にふさわしい良好な景観の形成を図るため、合理的に必要と認められる限度において行うものとする。

3 第一項の規定に基づく条例(以下「地区計画等形態意匠条例」という。)には、第六十三条、第六十四条、第六十六条、第六十八条及び第七十一条の規定の例により、当該条例の施行のため必要な市町村長による計画の認定、違反建築物又は違反工作物に対する違反是正のための措置その他の措置に関する規定を定めることができる。

4 前項の規定は、第六十三条第二項及び第六十六条第三項の規定の例により地区計画等形態意匠条例に定めた市町村長の認定の審査の手続について、これらの規定に反しない限り、当該条例で必要な規定を定めることを妨げるものではない。

5 地区計画等形態意匠条例には、市町村長は、当該条例の規定により第六十四条第一項の処分に相当する処分をしたときは、当該処分が建築物の建築等に係る場合にあっては当該処分に係る建築物の設計者、工事監理者若しくは工事の請負人又は当該建築物について宅地建物取引業に係る取引をした宅地建物取引業者の氏名又は名称及び住所その他国土交通省令で定める事項を建築士法、建設業法又は宅地建物取引業法の定めるところによりこれらの者を監督する国土交通大臣又は都道府県知事に、当該処分が工作物の建設等に係る場合にあっては当該処分に係る工作物の工事の請負人の氏名又は名称及び住所その他国土交通省令で定める事項を建設業法の定めるところにより当該請負人を監督する国土交通大臣又は都道府県知事に、それぞれ通知しなければならない旨を定めることができる。

6 国土交通大臣又は都道府県知事は、前項の規定に基づく地区計画等形態意匠条例の規定により同項の通知を受けた場合においては、遅滞なく、当該通知に係る者について、建築士法、建設業法又は宅地建物取引業法による業務の停止の処分その他必要な措置を講ずるものとし、その結果を当該通知をした市町村長に通知しなければならない。

    第四節 雑則

 (仮設建築物又は仮設工作物に対する制限の緩和)

第七十七条 非常災害があった場合において、その発生した区域又はこれに隣接する区域で市町村長が指定するものの内においては、災害により破損した建築物若しくは工作物の応急の修繕又は次の各号のいずれかに該当する応急仮設建築物の建築等若しくは応急仮設工作物の建設等若しくは設置でその災害が発生した日から一月以内にその工事に着手するものについては、この章の規定は、適用しない。

 一 国、地方公共団体又は日本赤十字社が災害救助のために建築等又は建設等若しくは設置をするもの

 二 被災者が自ら使用するために建築等をする建築物でその延べ面積が政令で定める規模以内のもの

2 災害があった場合において建築等又は建設等若しくは設置をする停車場、郵便局、官公署その他これらに類する公益上必要な用途に供する応急仮設建築物若しくは応急仮設工作物又は工事を施工するために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場その他これらに類する仮設建築物若しくは仮設工作物については、この章の規定は、適用しない。

3 前二項の応急仮設建築物の建築等又は応急仮設工作物の建設等若しくは設置をした者は、その工事を完了した後三月を超えてこの章の規定の適用を受けないで当該建築物又は工作物を存続しようとする場合においては、その超えることとなる日前に、市町村長の許可を受けなければならない。ただし、当該許可の申請をした場合において、その超えることとなる日前に当該申請に対する処分がされないときは、当該処分がされるまでの間は、なおこの章の規定の適用を受けないで当該建築物又は工作物を存続することができる。

4 市町村長は、前項の許可の申請があった場合において、良好な景観の形成に著しい支障がないと認めるときは、二年以内の期間を限って、その許可をすることができる。

5 市町村長は、第三項の許可の申請があった場合において、良好な景観の形成のため必要があると認めるときは、許可に必要な条件を付することができる。

 (国土交通大臣及び都道府県知事の勧告、助言又は援助)

第七十八条 市町村長は、都道府県知事又は国土交通大臣に対し、この章の規定の適用に関し必要な助言又は援助を求めることができる。

2 国土交通大臣及び都道府県知事は、市町村長に対し、この章の規定の適用に関し必要な勧告、助言又は援助をすることができる。

 (市町村長に対する指示等)

第七十九条 国土交通大臣は、市町村長がこの章の規定若しくは当該規定に基づく命令の規定に違反し、又はこれらの規定に基づく処分を怠っている場合において、国の利害に重大な関係がある建築物に関し必要があると認めるときは、当該市町村長に対して、期限を定めて、必要な措置をとるべきことを指示することができる。

2 市町村長は、正当な理由がない限り、前項の規定により国土交通大臣が行った指示に従わなければならない。

3 国土交通大臣は、市町村長が正当な理由がなく、所定の期限までに、第一項の規定による指示に従わない場合においては、正当な理由がないことについて社会資本整備審議会の確認を得た上で、自ら当該指示に係る必要な措置をとることができる。

 (書類の閲覧)

第八十条 市町村長は、第六十三条第一項の認定その他この章の規定並びに当該規定に基づく命令及び条例の規定による処分に関する書類であって国土交通省令で定めるものについては、国土交通省令で定めるところにより、閲覧の請求があった場合には、これを閲覧させなければならない。

   第四章 景観協定

 (景観協定の締結等)

第八十一条 景観計画区域内の一団の土地(公共施設の用に供する土地その他の政令で定める土地を除く。)の所有者及び借地権を有する者(土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)第九十八条第一項(大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和五十年法律第六十七号。以下「大都市住宅等供給法」という。)第八十三条において準用する場合を含む。以下この章において同じ。)の規定により仮換地として指定された土地にあっては、当該土地に対応する従前の土地の所有者及び借地権を有する者。以下この章において「土地所有者等」という。)は、その全員の合意により、当該土地の区域における良好な景観の形成に関する協定(以下「景観協定」という。)を締結することができる。ただし、当該土地(土地区画整理法第九十八条第一項の規定により仮換地として指定された土地にあっては、当該土地に対応する従前の土地)の区域内に借地権の目的となっている土地がある場合においては、当該借地権の目的となっている土地の所有者の合意を要しない。

2 景観協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 景観協定の目的となる土地の区域(以下「景観協定区域」という。)

 二 良好な景観の形成のための次に掲げる事項のうち、必要なもの

  イ 建築物の形態意匠に関する基準

  ロ 建築物の敷地、位置、規模、構造、用途又は建築設備に関する基準

  ハ 工作物の位置、規模、構造、用途又は形態意匠に関する基準

  ニ 樹林地、草地等の保全又は緑化に関する事項

  ホ 屋外広告物の表示又は屋外広告物を掲出する物件の設置に関する基準

  ヘ 農用地の保全又は利用に関する事項

  ト その他良好な景観の形成に関する事項

 三 景観協定の有効期間

 四 景観協定に違反した場合の措置

3 景観協定においては、前項各号に掲げるもののほか、景観計画区域内の土地のうち、景観協定区域に隣接した土地であって、景観協定区域の一部とすることにより良好な景観の形成に資するものとして景観協定区域の土地となることを当該景観協定区域内の土地所有者等が希望するもの(以下「景観協定区域隣接地」という。)を定めることができる。

4 景観協定は、景観行政団体の長の認可を受けなければならない。

 (認可の申請に係る景観協定の縦覧等)

第八十二条 景観行政団体の長は、前条第四項の規定による景観協定の認可の申請があったときは、国土交通省令・農林水産省令で定めるところにより、その旨を公告し、当該景観協定を当該公告の日から二週間関係人の縦覧に供さなければならない。

2 前項の規定による公告があったときは、関係人は、同項の縦覧期間満了の日までに、当該景観協定について、景観行政団体の長に意見書を提出することができる。

 (景観協定の認可)

第八十三条 景観行政団体の長は、第八十一条第四項の規定による景観協定の認可の申請が、次の各号のいずれにも該当するときは、当該景観協定を認可しなければならない。

 一 申請手続が法令に違反しないこと。

 二 土地、建築物又は工作物の利用を不当に制限するものでないこと。

 三 第八十一条第二項各号に掲げる事項(当該景観協定において景観協定区域隣接地を定める場合にあっては、当該景観協定区域隣接地に関する事項を含む。)について国土交通省令・農林水産省令で定める基準に適合するものであること。

2 建築基準法第四条第一項の建築主事を置かない市町村である景観行政団体の長は、第八十一条第二項第二号ロに掲げる事項を定めた景観協定について前項の認可をしようとするときは、前条第二項の規定により提出された意見書の写しを添えて、都道府県知事に協議し、その同意を得なければならない。

3 景観行政団体の長は、第一項の認可をしたときは、国土交通省令・農林水産省令で定めるところにより、その旨を公告し、かつ、当該景観協定の写しを当該景観行政団体の事務所に備えて公衆の縦覧に供するとともに、景観協定区域である旨を当該区域内に明示しなければならない。

 (景観協定の変更)

第八十四条 景観協定区域内における土地所有者等(当該景観協定の効力が及ばない者を除く。)は、景観協定において定めた事項を変更しようとする場合においては、その全員の合意をもってその旨を定め、景観行政団体の長の認可を受けなければならない。

2 前二条の規定は、前項の変更の認可について準用する。

 (景観協定区域からの除外)

第八十五条 景観協定区域内の土地(土地区画整理法第九十八条第一項の規定により仮換地として指定された土地にあっては、当該土地に対応する従前の土地)で当該景観協定の効力が及ばない者の所有するものの全部又は一部について借地権が消滅した場合においては、当該借地権の目的となっていた土地(同項の規定により仮換地として指定された土地に対応する従前の土地にあっては、当該土地についての仮換地として指定された土地)は、当該景観協定区域から除外されるものとする。

2 景観協定区域内の土地で土地区画整理法第九十八条第一項の規定により仮換地として指定されたものが、同法第八十六条第一項の換地計画又は大都市住宅等供給法第七十二条第一項の換地計画において当該土地に対応する従前の土地についての換地として定められず、かつ、土地区画整理法第九十一条第三項(大都市住宅等供給法第八十二条において準用する場合を含む。)の規定により当該土地に対応する従前の土地の所有者に対してその共有持分を与えるように定められた土地としても定められなかったときは、当該土地は、土地区画整理法第百三条第四項(大都市住宅等供給法第八十三条において準用する場合を含む。)の公告があった日が終了した時において当該景観協定区域から除外されるものとする。

3 前二項の規定により景観協定区域内の土地が当該景観協定区域から除外された場合においては、当該借地権を有していた者又は当該仮換地として指定されていた土地に対応する従前の土地に係る土地所有者等(当該景観協定の効力が及ばない者を除く。)は、遅滞なく、その旨を景観行政団体の長に届け出なければならない。

4 第八十三条第三項の規定は、前項の規定による届出があった場合その他景観行政団体の長が第一項又は第二項の規定により景観協定区域内の土地が当該景観協定区域から除外されたことを知った場合について準用する。

 (景観協定の効力)

第八十六条 第八十三条第三項(第八十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定による認可の公告のあった景観協定は、その公告のあった後において当該景観協定区域内の土地所有者等となった者(当該景観協定について第八十一条第一項又は第八十四条第一項の規定による合意をしなかった者の有する土地の所有権を承継した者を除く。)に対しても、その効力があるものとする。

 (景観協定の認可の公告のあった後景観協定に加わる手続等)

第八十七条 景観協定区域内の土地の所有者(土地区画整理法第九十八条第一項の規定により仮換地として指定された土地にあっては、当該土地に対応する従前の土地の所有者)で当該景観協定の効力が及ばないものは、第八十三条第三項(第八十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定による認可の公告があった後いつでも、景観行政団体の長に対して書面でその意思を表示することによって、当該景観協定に加わることができる。

2 景観協定区域隣接地の区域内の土地に係る土地所有者等は、第八十三条第三項(第八十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定による認可の公告があった後いつでも、当該土地に係る土地所有者等の全員の合意により、景観行政団体の長に対して書面でその意思を表示することによって、景観協定に加わることができる。ただし、当該土地(土地区画整理法第九十八条第一項の規定により仮換地として指定された土地にあっては、当該土地に対応する従前の土地)の区域内に借地権の目的となっている土地がある場合においては、当該借地権の目的となっている土地の所有者の合意を要しない。

3 景観協定区域隣接地の区域内の土地に係る土地所有者等で前項の意思を表示したものに係る土地の区域は、その意思の表示のあった時以後、景観協定区域の一部となるものとする。

4 第八十三条第三項の規定は、第一項又は第二項の規定による意思の表示があった場合について準用する。

5 景観協定は、第一項又は第二項の規定により当該景観協定に加わった者がその時において所有し、又は借地権を有していた当該景観協定区域内の土地(土地区画整理法第九十八条第一項の規定により仮換地として指定された土地にあっては、当該土地に対応する従前の土地)について、前項において準用する第八十三条第三項の規定による公告のあった後において土地所有者等となった者(当該景観協定について第二項の規定による合意をしなかった者の有する土地の所有権を承継した者及び前条の規定の適用がある者を除く。)に対しても、その効力があるものとする。

 (景観協定の廃止)

第八十八条 景観協定区域内の土地所有者等(当該景観協定の効力が及ばない者を除く。)は、第八十一条第四項又は第八十四条第一項の認可を受けた景観協定を廃止しようとする場合においては、その過半数の合意をもってその旨を定め、景観行政団体の長の認可を受けなければならない。

2 景観行政団体の長は、前項の認可をしたときは、その旨を公告しなければならない。

 (土地の共有者等の取扱い)

第八十九条 土地又は借地権が数人の共有に属するときは、第八十一条第一項、第八十四条第一項、第八十七条第一項及び第二項並びに前条第一項の規定の適用については、合わせて一の所有者又は借地権を有する者とみなす。

 (一の所有者による景観協定の設定)

第九十条 景観計画区域内の一団の土地(第八十一条第一項の政令で定める土地を除く。)で、一の所有者以外に土地所有者等が存しないものの所有者は、良好な景観の形成のため必要があると認めるときは、景観行政団体の長の認可を受けて、当該土地の区域を景観協定区域とする景観協定を定めることができる。

2 景観行政団体の長は、前項の規定による景観協定の認可の申請が第八十三条第一項各号のいずれにも該当し、かつ、当該景観協定が良好な景観の形成のため必要であると認める場合に限り、当該景観協定を認可するものとする。

3 第八十三条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による認可について準用する。

4 第二項の規定による認可を受けた景観協定は、認可の日から起算して三年以内において当該景観協定区域内の土地に二以上の土地所有者等が存することとなった時から、第八十三条第三項の規定による認可の公告のあった景観協定と同一の効力を有する景観協定となる。

 (借主等の地位)

第九十一条 景観協定に定める事項が建築物又は工作物の借主の権限に係る場合においては、その景観協定については、当該建築物又は工作物の借主を土地所有者等とみなして、この章の規定を適用する。

2 景観協定に農用地の保全又は利用に関する事項を定める場合においては、その景観協定については、当該農用地につき地上権、永小作権、質権、賃借権、使用貸借による権利その他の使用及び収益を目的とする権利を有する者を土地所有者等とみなして、この章の規定を適用する。

   第五章 景観整備機構

 (指定)

第九十二条 景観行政団体の長は、民法第三十四条の法人又は特定非営利活動促進法第二条第二項の特定非営利活動法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、景観整備機構(以下「機構」という。)として指定することができる。

2 景観行政団体の長は、前項の規定による指定をしたときは、当該機構の名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。

3 機構は、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を景観行政団体の長に届け出なければならない。

4 景観行政団体の長は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。

 (機構の業務)

第九十三条 機構は、次に掲げる業務を行うものとする。

 一 良好な景観の形成に関する事業を行う者に対し、当該事業に関する知識を有する者の派遣、情報の提供、相談その他の援助を行うこと。

 二 管理協定に基づき景観重要建造物又は景観重要樹木の管理を行うこと。

 三 景観重要建造物と一体となって良好な景観を形成する広場その他の公共施設に関する事業若しくは景観計画に定められた景観重要公共施設に関する事業を行うこと又はこれらの事業に参加すること。

 四 前号の事業に有効に利用できる土地で政令で定めるものの取得、管理及び譲渡を行うこと。

 五 第五十五条第二項第一号の区域内にある土地を景観農業振興地域整備計画に従って利用するため、委託に基づき農作業を行い、並びに当該土地についての権利を取得し、及びその土地の管理を行うこと。

 六 良好な景観の形成に関する調査研究を行うこと。

 七 前各号に掲げるもののほか、良好な景観の形成を促進するために必要な業務を行うこと。

 (機構の業務に係る公有地の拡大の推進に関する法律の特例)

第九十四条 公有地の拡大の推進に関する法律(昭和四十七年法律第六十六号)第四条第一項の規定は、機構に対し、前条第四号に掲げる業務の用に供させるために同項に規定する土地を有償で譲り渡そうとする者については、適用しない。

 (監督等)

第九十五条 景観行政団体の長は、第九十三条各号に掲げる業務の適正かつ確実な実施を確保するため必要があると認めるときは、機構に対し、その業務に関し報告をさせることができる。

2 景観行政団体の長は、機構が第九十三条各号に掲げる業務を適正かつ確実に実施していないと認めるときは、機構に対し、その業務の運営の改善に関し必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

3 景観行政団体の長は、機構が前項の規定による命令に違反したときは、第九十二条第一項の規定による指定を取り消すことができる。

4 景観行政団体の長は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。

 (情報の提供等)

第九十六条 国及び関係地方公共団体は、機構に対し、その業務の実施に関し必要な情報の提供又は指導若しくは助言をするものとする。

   第六章 雑則

 (権限の委任)

第九十七条 この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その一部を地方整備局長又は北海道開発局長に委任することができる。

 (政令への委任)

第九十八条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。

 (経過措置)

第九十九条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

   第七章 罰則

第百条 第十七条第五項の規定による景観行政団体の長の命令又は第六十四条第一項の規定による市町村長の命令に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第百一条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

 一 第十七条第一項の規定による景観行政団体の長の命令又は第七十条第一項の規定による市町村長の命令に違反した者

 二 第六十三条第一項の規定に違反して、申請書を提出せず、又は虚偽の申請書を提出した者

 三 第六十三条第四項の規定に違反して、建築物の建築等の工事をした者

 四 第七十七条第三項の規定に違反して、応急仮設建築物又は応急仮設工作物を存続させた者

第百二条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 第十六条第一項又は第二項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第十七条第七項又は第七十一条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 三 第十七条第七項の規定による立入検査若しくは立入調査又は第七十一条第一項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

 四 第十八条第一項の規定に違反して、届出に係る行為に着手した者

 五 第二十二条第一項又は第三十一条第一項の規定に違反して、行為をした者

 六 第二十二条第三項(第三十一条第二項において準用する場合を含む。)の規定により許可に付された条件に違反した者

 七 第二十三条第一項(第三十二条第一項において準用する場合を含む。)の規定による景観行政団体の長の命令に違反した者

 八 第六十八条の規定に違反して、認定があった旨の表示をせず、又は認定を受けた計画の写しを備えて置かなかった者

第百三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

第百四条 第二十六条又は第三十四条の規定による景観行政団体の長の命令に違反した者は、三十万円以下の過料に処する。

第百五条 第四十五条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。

第百六条 第四十三条の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、五万円以下の過料に処する。

第百七条 第七十二条第一項、第七十三条第一項、第七十五条第一項若しくは第二項又は第七十六条第一項の規定に基づく条例には、これに違反した者に対し、五十万円以下の罰金に処する旨の規定を設けることができる。

   附 則

 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第三章の規定は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(農林水産・国土交通臨時代理・環境・内閣総理大臣署名) 

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