児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律

法律第三十号(平一六・四・一四)

第一条 児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)の一部を次のように改正する。

  第一条中「児童虐待が児童の」の下に「人権を著しく侵害し、その」を、「与える」の下に「とともに、我が国における将来の世代の育成にも懸念を及ぼす」を、「禁止、」の下に「児童虐待の予防及び早期発見その他の」を、「保護」の下に「及び自立の支援」を加える。

  第二条中「対し、次に掲げる行為をすること」を「ついて行う次に掲げる行為」に改め、同条第三号中「放置」の下に「、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置」を加え、同条第四号中「児童に」を「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に」に改める。

  第四条第一項中「早期発見及び児童虐待を受けた児童の迅速かつ適切な保護」を「予防及び早期発見、迅速かつ適切な児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援(児童虐待を受けた後十八歳となった者に対する自立の支援を含む。第三項及び次条第二項において同じ。)並びに児童虐待を行った保護者に対する親子の再統合の促進への配慮その他の児童虐待を受けた児童が良好な家庭的環境で生活するために必要な配慮をした適切な指導及び支援」に、「関係機関及び民間団体」を「関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間」に改め、「強化」の下に「、民間団体の支援」を加え、「努めるものとする」を「努めなければならない」に改め、同条第四項中「家族の関係」を「家庭的環境」に改め、同項を同条第六項とし、同条第三項中「ため」の下に「、児童の人権」を加え、「努めるものとする」を「努めなければならない」に改め、同項を同条第四項とし、同項の次に次の一項を加える。

 5 国及び地方公共団体は、児童虐待の予防及び早期発見のための方策、児童虐待を受けた児童のケア並びに児童虐待を行った保護者の指導及び支援のあり方、学校の教職員及び児童福祉施設の職員が児童虐待の防止に果たすべき役割その他児童虐待の防止等のために必要な事項についての調査研究及び検証を行うものとする。

  第四条第二項中「に対し専門的知識に基づく適切な保護を」を「の保護及び自立の支援を専門的知識に基づき適切に」に改め、「職員」の下に「、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援の職務に携わる者」を加え、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。

 2 国及び地方公共団体は、児童相談所等関係機関の職員及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者が児童虐待を早期に発見し、その他児童虐待の防止に寄与することができるよう、研修等必要な措置を講ずるものとする。

  第五条の見出し中「早期発見」を「早期発見等」に改め、同条中「学校」を「学校、児童福祉施設、病院その他児童の福祉に業務上関係のある団体及び学校」に改め、同条に次の二項を加える。

児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律

 3 学校及び児童福祉施設は、児童及び保護者に対して、児童虐待の防止のための教育又は啓発に努めなければならない。

  第六条第一項中「受けた」を「受けたと思われる」に、「児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十五条の規定により」を「福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して福祉事務所若しくは児童相談所に」に改め、同条第二項中「児童虐待を受けた児童を発見した場合における児童福祉法第二十五条」を「第一項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。

 2 前項の規定による通告は、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十五条の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。

  第七条中「児童虐待を受けた児童に係る児童福祉法第二十五条」を「前条第一項」に改める。

  第八条中「児童虐待を受けた児童について児童福祉法第二十五条の規定による通告又は同法」を「第六条第一項の規定による通告又は児童福祉法」に、「速やかに、」を「必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の手段により」に改め、同条に次の一項を加える。

 2 前項の児童の安全の確認又は一時保護を行う児童相談所は、速やかにこれを行うよう努めなければならない。

  第十条の見出しを「(警察署長に対する援助要請等)」に改め、同条中「第八条の規定による」を「児童相談所長は、第八条第一項の」に、「、同条の一時保護又は前条第一項の規定による立入り及び調査若しくは質問をしようとする者は」を「又は一時保護を行おうとする場合において」に、「警察官の」を「当該児童の住所又は居所の所在地を管轄する警察署長に対し」に改め、同条に後段として次のように加える。

   都道府県知事が、前条第一項の規定による立入り及び調査又は質問をさせようとする場合についても、同様とする。

  第十条に次の二項を加える。

 2 児童相談所長又は都道府県知事は、児童の安全の確認及び安全の確保に万全を期する観点から、必要に応じ適切に、前項の規定により警察署長に対し援助を求めなければならない。

 3 警察署長は、第一項の規定による援助の求めを受けた場合において、児童の生命又は身体の安全を確認し、又は確保するため必要と認めるときは、速やかに、所属の警察官に、同項の職務の執行を援助するために必要な警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)その他の法令の定めるところによる措置を講じさせるよう努めなければならない。

  第十一条の見出しを「(児童虐待を行った保護者に対する指導)」に改め、同条第二項を同条第三項とし、同条第一項を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。

   児童虐待を行った保護者について児童福祉法第二十七条第一項第二号の規定により行われる指導は、親子の再統合への配慮その他の児童虐待を受けた児童が良好な家庭的環境で生活するために必要な配慮の下に適切に行われなければならない。

  第十二条の見出し中「制限」を「制限等」に改め、同条中「児童福祉法第二十八条の規定により同法第二十七条第一項第三号の措置」を「児童福祉法第二十七条第一項第三号の措置(以下「施設入所等の措置」という。)(同法第二十八条の規定によるものに限る。)」に改め、同条の次に次の一条を加える。

 第十二条の二 児童虐待を受けた児童について施設入所等の措置(児童福祉法第二十八条の規定によるものを除く。)が採られた場合において、当該児童虐待を行った保護者が当該児童の引渡し又は当該児童との面会若しくは通信を求め、かつ、これを認めた場合には再び児童虐待が行われ、又は児童虐待を受けた児童の保護に支障をきたすと認めるときは、児童相談所長は、次項の報告を行うに至るまで、同法第三十三条第一項の規定により児童に一時保護を行うことができる。

 2 児童相談所長は、前項の一時保護を行った場合には、速やかに、児童福祉法第二十六条第一項第一号の規定に基づき、同法第二十八条の規定による施設入所等の措置を要する旨を都道府県知事に報告しなければならない。

  第十三条中「児童福祉法第二十七条第一項第三号の措置」及び「同項第三号の措置」を「施設入所等の措置」に、「同項第二号の措置」を「児童福祉法第二十七条第一項第二号の措置」に、「同項第二号の指導」を「同号の指導」に改め、同条の次に次の一条を加える。

  (児童虐待を受けた児童等に対する支援)

 第十三条の二 市町村は、児童福祉法第二十四条第三項の規定により保育所に入所する児童を選考する場合には、児童虐待の防止に寄与するため、特別の支援を要する家庭の福祉に配慮をしなければならない。

 2 国及び地方公共団体は、児童虐待を受けた児童がその年齢及び能力に応じ充分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。

 3 国及び地方公共団体は、居住の場所の確保、進学又は就業の支援その他の児童虐待を受けた者の自立の支援のための施策を講じなければならない。

第二条 児童虐待の防止等に関する法律の一部を次のように改正する。

  第六条第一項中「福祉事務所」を「市町村、都道府県の設置する福祉事務所」に改める。

  第八条第二項中「前項の児童の安全の確認又は一時保護を行う児童相談所」を「前二項の児童の安全の確認、児童相談所への送致又は一時保護を行う者」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。

   市町村又は都道府県の設置する福祉事務所が第六条第一項の規定による通告を受けたときは、市町村又は福祉事務所の長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の手段により当該児童の安全の確認を行うよう努めるとともに、必要に応じ児童福祉法第二十五条の七第一項第一号若しくは第二項第一号又は第二十五条の八第一号の規定による児童相談所への送致を行うものとする。

  第十条第一項中「第八条第一項」を「第八条第二項」に改める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成十六年十月一日から施行する。ただし、第二条の規定は児童福祉法の一部を改正する法律(平成十六年法律第▼▼▼号)附則第一条第三号に掲げる規定の施行の日から、附則第三条の規定は同法の施行の日から施行する。

 (検討)

第二条 児童虐待の防止等に関する制度に関しては、この法律の施行後三年以内に、児童の住所又は居所における児童の安全の確認又は安全の確保を実効的に行うための方策、親権の喪失等の制度のあり方その他必要な事項について、この法律による改正後の児童虐待の防止等に関する法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

 (児童福祉法の一部を改正する法律の一部改正)

第三条 児童福祉法の一部を改正する法律の一部を次のように改正する。

  附則第十条のうち児童虐待の防止等に関する法律第八条の改正規定中「第八条」を「第八条第一項」に改める。

(内閣総理・法務・厚生労働大臣署名) 

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