工場排水等の規制に関する法律

法律第百八十二号(昭三三・一二・二五)

 (目的)

第一条 この法律は、製造業等における事業活動に伴つて発生する汚水等の処理を適切にすることにより、公共用水域の水質の保全を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「製造業等」とは、製造業(物品の加工修理業を含む。)及びガス供給業並びにこれらに類する事業であつて政令で定めるものをいう。

2 この法律において「特定施設」とは、製造業等の用に供する施設のうち、汚水又は廃液(以下「汚水等」という。)を排出するものであつて政令で定めるものをいう。

3 この法律において「汚水処理施設」とは、特定施設から排出される汚水等を処理するための施設及びこれに附属する施設をいう。

4 この法律において「工場排水等」とは、特定施設を設置する工場又は事業場から公共用水域に排出される水をいう。

5 この法律において「公共用水域」とは、公共用水域の水質の保全に関する法律(昭和三十三年法律第百八十一号)第三条第一項に規定する公共用水域をいう。

6 この法律において「水質基準」とは、公共用水域の水質の保全に関する法律第三条第二項に規定する水質基準をいう。

7 この法律において「指定水域」とは、公共用水域の水質の保全に関する法律第五条第一項に規定する指定水域をいう。

 (水質の保全)

第三条 特定施設を設置している者は、その特定施設から排出される汚水等の処理を適切にし、公共用水域の水質の保全に心掛けなければならない。


 (特定施設の設置等の届出)

第四条 工場排水等を指定水域に排出する者は、特定施設を設置し、又は変更しようとするとき(政令で定める軽微な変更をしようとするときを除く。)は、あらかじめ、主務省令で定めるところにより、次の事項を主務大臣に届け出なければならない。

 一 氏名又は名称及び住所

 二 工場又は事業場の名称及び所在地

 三 特定施設の種類

 四 特定施設の設置又は変更に関する計画

 五 特定施設の使用の方法

 六 汚水等の処理の方法

 七 工場排水等の水質

 八 その他主務省令で定める事項


 (経過措置)

第五条 一の水域が指定水域となつた際現に特定施設を設置している者(設置の工事をしている者を含む。以下この条において同じ。)であつて工場排水等を当該指定水域に排出するもの又は一の施設が特定施設となつた際現にその施設を設置している者であつて工場排水等を指定水域に排出するものは、当該水域が指定水域となつた日又は当該施設が特定施設となつた日から三十日以内に、主務省令で定めるところにより、前条各号(第四号を除く。)に掲げる事項を主務大臣に届け出なければならない。


 (特定施設の使用の方法等の変更の届出)

第六条 第四条又は前条の規定による届出をした者は、その届出に係る第四条第五号又は第六号に掲げる事項を変更しようとするときは、あらかじめ、主務省令で定めるところにより、次の事項を主務大臣に届け出なければならない。ただし、工場排水等の水質の変更を伴わない場合その他政令で定める場合は、この限りでない。

 一 特定施設の使用の方法又は汚水等の処理の方法

 二 工場排水等の水質


 (汚水等の処理の方法の計画の変更等の命令)

第七条 主務大臣は、第四条又は前条の規定による届出があつた場合において、工場排水等の水質が当該指定水域に係る水質基準に適合しないと認めるときは、その届出を受理した日から六十日以内に限り、その届出をした者に対し、汚水等の処理の方法に関する計画の変更を命ずることができる。

2 主務大臣は、第四条の規定による届出があつた場合において、工場排水等の水質が当該指定水域に係る水質基準に適合せず、かつ、前項の規定による命令によつては当該工場排水等の水質を当該水質基準に適合させることが著しく困難であると認めるときは、その届出を受理した日から六十日以内に限り、その届出をした者に対し、特定施設の設置又は変更に関する計画の変更又は廃止を命ずることができる。


 (実施の制限)

第八条 第四条又は第六条の規定による届出をした者は、その届出が受理された日から六十日を経過した後でなければ、その届出に係る特定施設を設置し、若しくは変更し、又は特定施設の使用の方法若しくは汚水等の処理の方法を変更してはならない。

2 主務大臣は、必要があると認めるときは、前項の期間を短縮することができる。


 (使用開始の届出)

第九条 第四条又は第六条の規定による届出をした者は、その届出に係る特定施設又は汚水処理施設の設置又は変更の工事をした場合において、その工事に係る施設の全部又は一部の使用を開始したときは、その日から十五日以内に、その旨を主務大臣に届け出なければならない。


 (氏名の変更等の届出)

第十条 第四条又は第五条の規定による届出をした者は、その届出に係る第四条第一号、第二号若しくは第八号に掲げる事項に変更があつたとき、又はその届出に係る特定施設の使用を廃止したときは、その日から十五日以内に、その旨を主務大臣に届け出なければならない。


 (承継)

第十一条 第四条又は第五条の規定による届出をした者からその届出に係る特定施設を譲り受け又は借り受けた者は、当該特定施設に係る当該届出をした者の地位を承継する。

2 第四条又は第五条の規定による届出をした者について相続又は合併があつたときは、相続人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、当該届出をした者の地位を承継する。

3 前二項の規定により第四条又は第五条の規定による届出をした者の地位を承継した者は、その日から十五日以内に、その旨を主務大臣に届け出なければならない。


 (汚水等の処理の方法の改善等の命令)

第十二条 主務大臣は、工場排水等の水質が当該指定水域に係る水質基準に適合しないと認めるときは、その工場排水等を指定水域に排出する者に対し、期限を定めて、汚水等の処理の方法の改善、特定施設の使用の一時停止その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。


 (水質の測定)

第十三条 工場排水等を指定水域に排出する者であつて政令で定めるものは、主務省令で定めるところにより、その工場排水等の水質を測定し、その結果を記録しておかなければならない。


 (立入検査)

第十四条 主務大臣は、指定水域の水質の保全を図るために必要な限度において、その職員に、工場排水等を指定水域に排出する者の工場又は事業場に立ち入り、その者の帳簿書類、特定施設、汚水処理施設その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。


 (報告の徴収)

第十五条 主務大臣は、公共用水域の水質の保全を図るために必要な限度において、特定施設を設置している者に対し、その特定施設の状況、汚水等の処理の方法又は工場排水等の水質に関し報告をさせることができる。


 (国の援助)

第十六条 国は、汚水処理施設の設置を促進し、公共用水域の水質の保全に資するため、汚水処理施設の設置又は改善につき必要な資金の確保、技術的な助言その他の援助に努めるものとする。


 (技術の研究)

第十七条 主務大臣は、特定施設から排出される汚水等の処理を適切にするため、これに関する技術の研究を推進し、その成果の普及に努めるものとする。


 (異議の申立)

第十八条 この法律の規定によつてした処分に対して不服のある者は、その処分のあつたことを知つた日から三十日以内に、その旨を記載した書面をもつて、主務大臣に異議の申立をすることができる。ただし、処分の日から六十日を経過したときは、異議の申立をすることができない。

第十九条 主務大臣は、前条の異議の申立があつたときは、異議の申立をした者に対し、相当な期間をおいて予告をした上、公開による聴聞を行わなければならない。

2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。

3 聴聞に際しては、異議の申立をした者及び利害関係人に対し、その事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。

第二十条 主務大臣は、前条の聴聞をした後、文書をもつて決定をし、その写を異議の申立をした者に送付しなければならない。


 (主務大臣)

第二十一条 この法律において主務大臣は、特定施設の種類ごとに政令で定めるところにより、大蔵大臣、厚生大臣、農林大臣、通商産業大臣又は運輸大臣とする。

2 この法律において、主務省令は、大蔵省令、厚生省令、農林省令、通商産業省令、運輸省令とする。


 (権限の委任)

第二十二条 この法律により主務大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、地方支分部局の長又は都道府県知事に行わせることができる。


 (罰則)

第二十三条 第七条第一項若しくは第二項又は第十二条の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

第二十四条 第四条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、五万円以下の罰金に処する。

第二十五条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。

 一 第五条又は第六条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第八条第一項の規定に違反した者

 三 第十三条の規定による記録をせず、又は虚偽の記録をした者

 四 第十四条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

 五 第十五条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

第二十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

第二十七条 第九条、第十条又は第十一条第三項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、一万円以下の過料に処する。


   附 則


 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。


 (運輪省設置法の一部改正)

2 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。

  第二十七条第一項第十五号及び第五十一条第一項第十五号中「流通及び消費の増進、改善及び調整」を「流通及び消費並びにこれらの陸運機器の生産に関する事業」に改める。

  第二十八条第一項第十四号中「生産」の下に「及び生産に関する事業」を加える。


 (地方税法の一部改正)

3 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第三百四十八条第二項中第六号の次に次の一号を加える。

  六の二 工場排水等の規制に関する法律(昭和三十三年法律第百八十二号)第二条第一項に規定する製造業等の公共の被害防止のためにする同条第三項に規定する汚水処理施設

(内閣総理・大蔵・厚生・農林・通商産業・運輸大臣署名) 

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