配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律
法律第六十四号(平一六・六・二)
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(平成十三年法律第三十一号)の一部を次のように改正する。
目次中「第一章 総則(第一条・第二条)」を
「 |
第一章 総則(第一条・第二条) |
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第一章の二 基本方針及び基本計画(第二条の二・第二条の三) |
」 |
に、「第九条」を「第九条の二」に改める。
前文中「行為」の下に「をも含む重大な人権侵害」を加え、「その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を行う」を「を加える」に改める。
第一条第一項を次のように改める。
この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。
第一条第二項中「(配偶者からの暴力を受けた後婚姻を解消した者であって、当該配偶者であった者から引き続き生命又は身体に危害を受けるおそれがあるものを含む。)」を削り、同条に次の一項を加える。
3 この法律にいう「配偶者」には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み、「離婚」には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が、事実上離婚したと同様の事情に入ることを含むものとする。
第二条中「防止し、被害者を保護する」を「防止するとともに、被害者の自立を支援することを含め、その適切な保護を図る」に改める。
第一章の次に次の一章を加える。
第一章の二 基本方針及び基本計画
(基本方針)
第二条の二 内閣総理大臣、国家公安委員会、法務大臣及び厚生労働大臣(以下この条及び次条第四項において「主務大臣」という。)は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針(以下この条及び次条第一項において「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項につき、次条第一項の基本計画の指針となるべきものを定めるものとする。
一 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な事項
二 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の内容に関する事項
三 その他配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項
3 主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
4 主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(基本計画)
第二条の三 都道府県は、基本方針に即して、当該都道府県における配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する基本的な計画(以下この条において「基本計画」という。)を定めなければならない。
2 基本計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な方針
二 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施内容に関する事項
三 その他配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項
3 都道府県は、基本計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 主務大臣は、都道府県に対し、基本計画の作成のために必要な助言その他の援助を行うよう努めなければならない。
第三条第三項を同条第四項とし、同条第二項中「(被害者に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動を受けた者を含む。以下この章及び第七条において同じ。)」を削り、同項第三号中「及び第五条」を「、第五条及び第八条の三」に改め、同項第四号中「促進するため」の下に「、就業の促進、住宅の確保、援護等に関する制度の利用等について」を、「提供」の下に「、助言、関係機関との連絡調整」を加え、同項第五号中「提供」の下に「、助言、関係機関への連絡」を加え、同項第六号中「提供」の下に「、助言、関係機関との連絡調整」を加え、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、当該市町村が設置する適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにすることができる。
第三条に次の一項を加える。
5 配偶者暴力相談支援センターは、その業務を行うに当たっては、必要に応じ、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るための活動を行う民間の団体との連携に努めるものとする。
第六条第一項中「配偶者からの暴力」の下に「(配偶者又は配偶者であった者からの身体に対する暴力に限る。以下この章において同じ。)」を加える。
第七条中「第三条第二項」を「第三条第三項」に改める。
第八条の次に次の二条を加える。
(警察本部長等の援助)
第八条の二 警視総監若しくは道府県警察本部長(道警察本部の所在地を包括する方面を除く方面については、方面本部長。第十五条第三項において同じ。)又は警察署長は、配偶者からの暴力を受けている者から、配偶者からの暴力による被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該配偶者からの暴力を受けている者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該被害を自ら防止するための措置の教示その他配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な援助を行うものとする。
(福祉事務所による自立支援)
第八条の三 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める福祉に関する事務所(次条において「福祉事務所」という。)は、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)、母子及び寡婦福祉法(昭和三十九年法律第百二十九号)その他の法令の定めるところにより、被害者の自立を支援するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第九条中「社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める福祉に関する事務所等の」を「福祉事務所等都道府県又は市町村の関係機関その他の」に改め、第三章中同条の次に次の一条を加える。
(苦情の適切かつ迅速な処理)
第九条の二 前条の関係機関は、被害者の保護に係る職員の職務の執行に関して被害者から苦情の申出を受けたときは、適切かつ迅速にこれを処理するよう努めるものとする。
第十条中「が更なる配偶者からの暴力」を「(配偶者からの身体に対する暴力を受けた者に限る。以下この章において同じ。)が配偶者からの更なる身体に対する暴力(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。第十二条第一項第二号において同じ。)」に改め、「、当該配偶者」の下に「(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者。以下この条、同項第三号及び第十八条第一項において同じ。)」を加え、同条第一号中「はいかいすることを禁止する」を「はいかいしてはならない」に改め、同条第二号中「二週間」を「二月間」に改め、「退去すること」の下に「及び当該住居の付近をはいかいしてはならないこと」を加え、同条に次の一項を加える。
2 前項本文に規定する場合において、被害者がその成年に達しない子(以下この項及び第十二条第一項第三号において単に「子」という。)と同居しているときであって、配偶者が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めるときは、前項第一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、当該配偶者に対し、命令の効力が生じた日以後、同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間、当該子の住居(被害者及び当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この項において同じ。)、就学する学校その他の場所において当該子の身辺につきまとい、又は当該子の住居、就学する学校その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとする。ただし、当該子が十五歳以上であるときは、その同意がある場合に限る。
第十一条第一項中「前条」を「前条第一項」に改め、「(以下「保護命令」という。)」及び「(以下「保護命令事件」という。)」を削り、同条第二項中「保護命令」を「前条第一項の規定による命令」に改め、同項第二号中「配偶者からの暴力」を「配偶者からの身体に対する暴力」に改める。
第十二条第一項中「保護命令」を「第十条の規定による命令(以下「保護命令」という。)」に改め、同項第一号中「配偶者からの暴力」を「配偶者からの身体に対する暴力」に改め、同項第二号中「更なる配偶者からの暴力」を「配偶者からの更なる身体に対する暴力」に改め、「足りる」の下に「申立ての時における」を加え、同項第三号中「配偶者からの暴力」を「配偶者からの身体に対する暴力(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力を含む。)」に改め、「関して」の下に「前三号に掲げる事項について」を加え、同号を同項第四号とし、同項第二号の次に次の一号を加える。
三 第十条第二項の規定による命令の申立てをする場合にあっては、被害者が当該同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情
第十二条第二項中「同項第三号」を「同項第四号」に、「及び第二号」を「から第三号まで」に改める。
第十三条中「保護命令事件」を「保護命令の申立てに係る事件」に改める。
第十四条第二項中「第十二条第一項第三号」を「第十二条第一項第四号」に改める。
第十五条第三項中「(道警察本部の所在地を包括する方面を除く方面については、方面本部長)」を削る。
第十六条第五項中「、第三項」の下に「及び第四項」を加え、「及び」を「並びに」に改め、同項を同条第七項とし、同条第四項中「前項」を「前二項」に改め、同項を同条第五項とし、同項の次に次の一項を加える。
6 抗告裁判所が第十条第一項第一号の規定による命令を取り消す場合において、同条第二項の規定による命令が発せられているときは、抗告裁判所は、当該命令をも取り消さなければならない。
第十六条第三項の次に次の一項を加える。
4 前項の規定により第十条第一項第一号の規定による命令の効力の停止を命ずる場合において、同条第二項の規定による命令が発せられているときは、裁判所は、当該命令の効力の停止をも命じなければならない。
第十七条第一項前段中「第十条第一号に掲げる事項に係る」を「当該」に改め、同項後段中「同号に掲げる事項に係る保護命令」を「第十条第一項第一号又は第二項の規定による命令にあっては同号の規定による命令」に、「が経過した場合」を「を経過した後において、同条第一項第二号の規定による命令にあっては当該命令が効力を生じた日から起算して二週間を経過した後」に、「当該保護命令」を「これらの命令」に改め、同条第二項中「前項」を「前二項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 前条第六項の規定は、第十条第一項第一号の規定による命令を発した裁判所が前項の規定により当該命令を取り消す場合について準用する。
第十八条を次のように改める。
(第十条第一項第二号の規定による命令の再度の申立て)
第十八条 第十条第一項第二号の規定による命令が発せられた後に当該発せられた命令の申立ての理由となった身体に対する暴力と同一の事実を理由とする同号の規定による命令の再度の申立てがあったときは、裁判所は、配偶者と共に生活の本拠としている住居から転居しようとする被害者がその責めに帰することのできない事由により当該発せられた命令の効力が生ずる日から起算して二月を経過する日までに当該住居からの転居を完了することができないことその他の同号の規定による命令を再度発する必要があると認めるべき事情があるときに限り、当該命令を発するものとする。ただし、当該命令を発することにより当該配偶者の生活に特に著しい支障を生ずると認めるときは、当該命令を発しないことができる。
2 前項の申立てをする場合における第十二条の規定の適用については、同条第一項各号列記以外の部分中「次に掲げる事項」とあるのは「第一号、第二号及び第四号に掲げる事項並びに第十八条第一項本文の事情」と、同項第四号中「前三号に掲げる事項」とあるのは「第一号及び第二号に掲げる事項並びに第十八条第一項本文の事情」と、同条第二項中「同項第一号から第三号までに掲げる事項」とあるのは「同項第一号及び第二号に掲げる事項並びに第十八条第一項本文の事情」とする。
第二十条中「及び第十八条第二項」を「(第十八条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」に改める。
第二十三条第一項中「踏まえ、被害者の」の下に「国籍、障害の有無等を問わずその」を加える。
第二十四条後段を削る。
第二十七条第一項第一号中「第三条第二項」を「第三条第三項」に改め、同項第二号中「第三条第二項第三号」を「第三条第三項第三号」に、「同条第三項」を「同条第四項」に改める。
第三十条中「第十二条第一項」の下に「(第十八条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」を加える。
附則第二条中「配偶者からの暴力」を「配偶者からの身体に対する暴力」に、「申立てに係る保護命令事件」を「保護命令の申立てに係る事件」に、「第十二条第一項第三号」を「第十二条第一項第四号」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行前にしたこの法律による改正前の配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(次項において「旧法」という。)第十条の規定による命令の申立てに係る同条の規定による命令に関する事件については、なお従前の例による。
2 旧法第十条第二号の規定による命令が発せられた後に当該命令の申立ての理由となった身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものと同一の事実を理由とするこの法律による改正後の配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下「新法」という。)第十条第一項第二号の規定による命令の申立て(この法律の施行後最初にされるものに限る。)があった場合における新法第十八条第一項の規定の適用については、同項中「二月」とあるのは、「二週間」とする。
(検討)
第三条 新法の規定については、この法律の施行後三年を目途として、新法の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
(内閣総理・法務・厚生労働大臣署名)