角膜及び 腎臓の移植に関する法律
法律第六十三号(昭五四・一二・一八)
(この法律の趣旨)
第一条 この法律は、角膜移植術による視力障害者の視力の回復及び 腎臓移植術による 腎臓機能障害者に対する 腎臓機能の付与に資するため、死体から眼球又は 腎臓を摘出すること等につき必要な事項を規定するものとする。
(医師の責務)
第二条 医師は、角膜又は 腎臓の移植を行うに当たつては、診療上必要な注意をしなければならない。
(眼球又は 腎臓の摘出)
第三条 医師は、視力障害者の視力の回復を図る目的で行われる角膜移植術に使用されるための眼球を、死体から摘出することができる。
2 医師は、 腎臓機能障害者に 腎臓機能を付与する目的で行われる 腎臓移植術に使用されるための 腎臓を、死体から摘出することができる。
3 医師は、第一項又は前項の規定による死体からの眼球又は 腎臓の摘出をしようとするときは、あらかじめ、その遺族の書面による承諾を受けなければならない。ただし、死亡した者が生存中にその眼球又は 腎臓の摘出について書面による承諾をしており、かつ、医師がその旨を遺族に告知し、遺族がその摘出を拒まないとき、又は遺族がないときは、この限りでない。
(摘出してはならない場合)
第四条 医師は、変死体又は変死の疑いのある死体から、眼球又は 腎臓を摘出してはならない。
(礼意の保持)
第五条 第三条の規定により死体から眼球又は 腎臓を摘出するに当たつては、礼意を失わないように特に注意しなければならない。
(省令への委任)
第六条 この法律に定めるもののほか、第三条の規定による眼球又は 腎臓の摘出及び同条の規定により摘出した眼球又は 腎臓の取扱いに関し必要な事項は、厚生省令で定める。
(使用しなかつた部分の眼球又は 腎臓の処理)
第七条 病院又は診療所の管理者は、第三条の規定により死体から摘出した眼球又は 腎臓であつて、角膜移植術又は 腎臓移植術に使用しなかつた部分の眼球又は 腎臓を、厚生省令で定めるところにより処理しなければならない。
(眼球又は 腎臓のあつせんの許可)
第八条 業として死体の眼球又は 腎臓の提供のあつせんをしようとするときは、厚生省令で定めるところにより、厚生大臣の許可を受けなければならない。
(罰則)
第九条 第七条の規定に違反した者は、十万円以下の罰金に処する。
第十条 第八条の規定に違反した者は、六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、同項の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行する。
(角膜移植に関する法律の廃止)
2 角膜移植に関する法律(昭和三十三年法律第六十四号)は、廃止する。
(経過措置)
3 この法律の施行前に前項の規定による廃止前の角膜移植に関する法律(以下「旧法」という。)第二条の規定による遺族の書面による承諾を受けている場合の視力障害者の視力の回復を図るための角膜移植術を行う必要があるときに行う死体からの眼球の摘出については、なお従前の例による。
4 旧法第二条の規定による眼球の摘出(前項に規定する眼球の摘出を除く。)及び同条の規定により摘出した眼球の取扱い並びに同条の規定により摘出した眼球であつて角膜移植術に使用しなかつた部分の眼球の処理については、なお従前の例による。
5 この法律の施行の際現に旧法第七条の規定により眼球の提供のあつせんの許可を受けている者は、第八条の規定により眼球の提供のあつせんの許可を受けた者とみなす。
6 この法律の施行前にした行為及び附則第四項の規定により従前の例によることとされる旧法第六条の規定による角膜移植術に使用しなかつた部分の眼球の処理に係るこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(厚生省設置法の一部改正)
7 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第四十二号の三中「角膜移植に関する法律(昭和三十三年法律第六十四号)」を「角膜及び 腎臓の移植に関する法律(昭和五十四年法律第六十三号)」に、「基き」を「基づき」に、「眼球」を「眼球又は 腎臓」に改める。
第十条第二号の四中「角膜移植に関する法律」を「角膜及び 腎臓の移植に関する法律」に改める。
(厚生・内閣総理大臣署名)