国立国会図書館から引用

価格の補正について

昭和23年6月22日 閣議決定

第一 補正の基本方針
 生産の維持増強をはかり、流通の円滑を確保するため、又、赤字金融の面からするインフレーション促進のおそれを取り除くため、現行価格体系設定後の経済事情の変化に即応し、この際、これに所要の補正を加えることとする。補正に当っては、その財政、企業及び家計に及ぼす影響を国民経済全体の見地から総合調整して財政及び企業経営の健全性の維持、回復をはかり、又、最近の実質賃金水準を維持することを目途として、公定価格の引上げを最少限度に止めることを基本方針とする。
第二 補正の方式
 一、価格水準が循環的に急上昇するを防止して、価格水準の引上げを最少限度に止め、且つ、価格相互間の均衡を保つため、生産費が異常に高い若干の基礎物資の需要者価格の引上げは、これを現行価格の概ね七割に止める。この方針に従って左の措置をとる。
  (1) 石炭の特定産業(従来と同様に、海運業並びにガス、コークス、銑鉄、普通鋼鋼林、同半製品、ソーダ灰、苛性ソーダ及び硫安製造業とする。)向け需要者価格は、屯当り千円(現行六百円の約七割上げ)基準によって算定した価格とする。
  (2) 製鋼用銑鉄は現行の約二割上げ、鋳物用銑鉄、普通鋼鋼材、同半製品、硫安、石灰窒素、過燐酸石灰、ソーダ灰及び苛性ソーダの需要者価格は現行の七割上げ(昭和九年から同十一年の価格水準の百十倍)とする。ただし、本年春肥の需要者価格は現行にすえ置く。
  (3) なお、電気銅の需要者価格は現行の約十割上げ(昭和九年から同十一年の価格水準の百三十五倍)とし、アルミニューム、鉛地金及び亜鉛の需要者価格は、電気銅及びこれらの金属の需要者価格相互間に適当な均衡を保たせるように、これを定める。
  (4) 以上の需要者価格と供給者価格との差額を調整するため、今回の補正以後昭和二十三年度末までに支出する価格調整補給金として四百三十億円を予定する。
 二、価格決定の方式は、現行価格体系におけると同様に、鉱工業品等については原価計算により、農産物等についてはいわゆるパリティー計算によることを原則とする。生産量又は操業度及び労務、原材料等の原単位は、既往の実績を検討した上、本年度の計画を基礎としたものによる。さらに、品質向上のねらい、国際価格、国内市場価格の推移等をも勘案し、総合的に最も適正な価格とする。
 三、価格の算定に織り込む賃金の水準は勤労所得税の軽減を行うこととし、全国工業平均において概ね最近の実質賃金水準を維持するに足る賃金の支払資金を確保することを目途として、全国工業平均月三千七百円とする。それぞれの価格の算定に繊り込む賃金は、現行価格体系における暫定業種別平均賃金に昨年十月の事業所調査等に基く新しい資料によって修正を加えたものによって算定する。実際賃金がこの算定賃金をこえている業種については、算定賃金の織り込みでは必要な労務の維持が著しく困難と認められる場合に限って、業種別賃金相互の均衡をあまり破らない範囲内において算定賃金に弾力性をもたせることを考慮する。
第三 補正価格の維持
 わが国経済の現段階においては、物価安定の基礎条件は必ずしも充分整っているとはいえないげれども、インフレーションの進行を最少限度に止め、できる限り速かに物価の安定を実現するため、政府は全国民の協力を得て、補正価格の維持にあらゆる努力をかたむける。即ち、食糧、石炭その他重要物資及び生活必需品の増産計画の達成、その公正なる配給の確保、財政の実行上にもおける健全化、融資の健全化等、物資及び通貨の両面からする対策を強力に推進し、物価安定、経済復興の速かな実現を期する。

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