特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律

法律第百六十六号(平一六・一二・一〇)

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 特別障害給付金の支給(第三条―第十六条)

 第三章 不服申立て(第十七条)

 第四章 雑則(第十八条―第三十六条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情にかんがみ、障害基礎年金等の受給権を有していない障害者に特別障害給付金を支給することにより、その福祉の増進を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「特定障害者」とは、次の各号のいずれかに該当する者であって、国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)の規定による障害基礎年金その他障害を支給事由とする政令で定める給付を受ける権利を有していないものをいう。

 一 疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」といい、昭和六十一年三月三十一日以前にあるものに限る。)において国民年金法等の一部を改正する法律(昭和六十年法律第三十四号)第一条の規定による改正前の国民年金法第七条第二項第七号又は第八号に該当し、かつ、同法附則第六条第一項の規定による被保険者でなかった者であって、その傷病により現に国民年金法第三十条第二項に規定する障害等級(以下「障害等級」という。)に該当する程度の障害の状態にあるもの(当該傷病による障害と当該傷病の初診日以前に初診日のある傷病による障害とを併合して障害等級に該当する程度の障害の状態にあるものを含み、六十五歳に達する日の前日までにおいて障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったものに限る。次号において同じ。)

 二 疾病にかかり、又は負傷し、かつ、当該傷病に係る初診日(昭和六十一年四月一日から平成三年三月三十一日までの間にあるものに限る。)において国民年金法等の一部を改正する法律(平成元年法律第八十六号)第一条の規定による改正前の国民年金法第七条第一項第一号イに該当し、かつ、同法附則第五条第一項の規定による被保険者でなかった者であって、その傷病により現に障害等級に該当する程度の障害の状態にあるもの

   第二章 特別障害給付金の支給

 (特別障害給付金の支給)

第三条 国は、特定障害者に対し、特別障害給付金を支給する。

2 前項の規定にかかわらず、特別障害給付金は、特定障害者が次の各号のいずれかに該当するとき(第二号に該当する場合にあっては、厚生労働省令で定める場合に限る。)は、支給しない。

 一 日本国内に住所を有しないとき。

 二 監獄、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されているとき。

 (特別障害給付金の額)

第四条 特別障害給付金は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、四万円(障害の程度が障害等級の一級に該当する特定障害者にあっては、五万円)とする。

 (特別障害給付金の額の自動改定)

第五条 前条に規定する特別障害給付金の額については、総務省において作成する年平均の全国消費者物価指数(以下「物価指数」という。)が平成十六年(この項の規定による特別障害給付金の額の改定の措置が講じられたときは、直近の当該措置が講じられた年の前年)の物価指数を超え、又は下回るに至った場合においては、その上昇し、又は低下した比率を基準として、その翌年の四月以降の当該特別障害給付金の額を改定する。

2 前項の規定による特別障害給付金の額の改定の措置は、政令で定める。

 (認定)

第六条 特定障害者は、特別障害給付金の支給を受けようとするときは、六十五歳に達する日の前日までに、社会保険庁長官に対し、その受給資格及び特別障害給付金の額について認定の請求をしなければならない。

2 前項の認定を受けた者が、特別障害給付金の支給要件に該当しなくなった後再びその要件に該当するに至った場合において、その該当するに至った後の期間に係る特別障害給付金の支給を受けようとするときも、認定の請求の期限に係る部分を除き、同項と同様とする。

3 前二項の規定による認定の請求は、当該請求をする者の住所地の市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)を経由してしなければならない。

 (支給期間及び支払期月)

第七条 特別障害給付金の支給は、特定障害者が前条第一項又は第二項の規定による認定の請求をした日の属する月の翌月から始め、特別障害給付金を支給すべき事由が消滅した日の属する月で終わる。

2 特定障害者が災害その他やむを得ない理由により前条第一項又は第二項の規定による認定の請求をすることができなかった場合において、その理由がやんだ後十五日以内にその請求をしたときは、特別障害給付金の支給は、前項の規定にかかわらず、特定障害者がやむを得ない理由により認定の請求をすることができなくなった日の属する月の翌月から始める。

3 特別障害給付金は、毎年二月、四月、六月、八月、十月及び十二月の六期に、それぞれの前月までの分を支払う。ただし、前支払期月に支払うべきであった特別障害給付金又は支給すべき事由が消滅した場合におけるその期の特別障害給付金は、その支払期月でない月であっても、支払うものとする。

 (特別障害給付金の額の改定時期)

第八条 特別障害給付金の支給を受けている者につき、障害の程度が増進した場合における特別障害給付金の額の改定は、その者がその改定後の額につき認定の請求をした日の属する月の翌月から行う。

2 前条第二項の規定は、前項の改定について準用する。

3 特別障害給付金の支給を受けている者につき、障害の程度が低下した場合における特別障害給付金の額の改定は、その低下した日の属する月の翌月から行う。

 (支給の制限)

第九条 特別障害給付金は、特定障害者の前年の所得が、その者の所得税法(昭和四十年法律第三十三号)に規定する控除対象配偶者及び扶養親族(以下「扶養親族等」という。)の有無及び数に応じて、政令で定める額を超えるときは、その年の八月から翌年の七月までは、政令で定めるところにより、その額の全部又は二分の一に相当する部分を支給しない。

第十条 震災、風水害、火災その他これらに類する災害により、自己又は所得税法に規定する控除対象配偶者若しくは扶養親族の所有に係る住宅、家財又は政令で定めるその他の財産につき被害金額(保険金、損害賠償金等により補充された金額を除く。)がその価格のおおむね二分の一以上である損害を受けた者(以下「被災者」という。)がある場合においては、その損害を受けた月から翌年の七月までの特別障害給付金については、その損害を受けた年の前年又は前々年における当該被災者の所得に関しては、前条の規定を適用しない。

2 前項の規定により同項に規定する期間に係る特別障害給付金が支給された場合において、当該被災者の当該損害を受けた年の所得が、その者の扶養親族等の有無及び数に応じて、前条の政令で定める額を超えるときは、当該被災者に支給された特別障害給付金で同項に規定する期間に係るものに相当する金額の全部又は二分の一に相当する部分を国に返還しなければならない。

第十一条 第九条及び前条第二項に規定する所得の範囲及びその額の計算方法は、政令で定める。

第十二条 故意に障害又はその直接の原因となった事故を生じさせた者の当該障害については、これを支給事由とする特別障害給付金は、支給しない。

第十三条 故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくはその原因となった事故を生じさせ、又は障害の程度を増進させた者の当該障害については、これを支給事由とする特別障害給付金は、その額の全部又は一部を支給しないことができる。

第十四条 特別障害給付金は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、その額の全部又は一部を支給しないことができる。

 一 特定障害者が、正当な理由がなくて、第二十八条第一項の規定による命令に従わず、又は同項の規定による当該職員の質問に応じなかったとき。

 二 特定障害者が、正当な理由がなくて、第二十八条第二項の規定による命令に従わず、又は同項の規定による当該職員の診断を拒んだとき。

第十五条 特別障害給付金の支給を受けている者が、正当な理由がなくて、第二十七条第一項の規定による届出をせず、又は書類その他の物件を提出しないときは、特別障害給付金の支払を一時差し止めることができる。

 (支給の調整)

第十六条 特別障害給付金は、特定障害者が国民年金法の規定による老齢基礎年金その他政令で定める給付を受けることができるときは、政令で定めるところにより、その額の全部又は一部を支給しない。ただし、当該給付の全額につきその支給が停止されているときは、この限りでない。

   第三章 不服申立て

第十七条 社会保険庁長官のした特別障害給付金の支給に関する処分は、国民年金法に基づく処分とみなして、同法第百一条及び第百一条の二の規定並びに社会保険審査官及び社会保険審査会法(昭和二十八年法律第二百六号)の規定を適用する。

   第四章 雑則

 (国民年金保険料の免除に関する特例)

第十八条 特別障害給付金の支給を受けている者であって国民年金の被保険者であるものに係る国民年金法第九十条及び第九十条の二の規定の適用に関し必要な事項については、同法の規定にかかわらず、政令で特別の定めをすることができる。

 (費用の負担)

第十九条 特別障害給付金の支給に要する費用は、その全額を国庫が負担する。

2 国庫は、毎年度、予算の範囲内で、特別障害給付金に関する事務の執行に要する費用を負担する。

 (事務費の交付)

第二十条 国は、政令で定めるところにより、市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対し、市町村長がこの法律又はこの法律に基づく政令の規定によって行う事務の処理に必要な費用を交付する。

 (時効)

第二十一条 特別障害給付金の支給を受ける権利は、五年を経過したときは、時効によって消滅する。

 (不正利得の徴収)

第二十二条 偽りその他不正の手段により特別障害給付金の支給を受けた者があるときは、社会保険庁長官は、国税徴収の例により、その者から、その支給を受けた額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。

2 国民年金法第九十六条第一項から第五項まで、第九十七条及び第九十八条の規定は、前項の規定による徴収金の徴収について準用する。

 (受給権の保護)

第二十三条 特別障害給付金の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

 (公課の禁止)

第二十四条 租税その他の公課は、特別障害給付金として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。

 (期間の計算)

第二十五条 この法律又はこの法律に基づく命令に規定する期間の計算については、民法(明治二十九年法律第八十九号)の期間に関する規定を準用する。

 (戸籍事項の無料証明)

第二十六条 市町村長(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市においては、区長とする。)は、社会保険庁長官又は特定障害者に対して、当該市町村の条例で定めるところにより、特定障害者の戸籍に関し、無料で証明を行うことができる。

 (届出)

第二十七条 特別障害給付金の支給を受けている者は、厚生労働省令で定めるところにより、社会保険庁長官に対し、厚生労働省令で定める事項を届け出、かつ、厚生労働省令で定める書類その他の物件を提出しなければならない。

2 特別障害給付金の支給を受けている者が死亡したときは、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の規定による死亡の届出義務者は、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を社会保険庁長官に届け出なければならない。

3 前二項の規定による届出又は提出は、当該届出又は提出をする者の住所地の市町村長を経由して行わなければならない。

 (調査)

第二十八条 社会保険庁長官は、必要があると認めるときは、特定障害者に対して、受給資格の有無及び特別障害給付金の額の決定のために必要な事項に関する書類その他の物件を提出すべきことを命じ、又は当該職員をしてこれらの事項に関し特定障害者その他の関係者に質問させることができる。

2 社会保険庁長官は、必要があると認めるときは、特定障害者に対して、その指定する医師若しくは歯科医師の診断を受けるべきことを命じ、又は当該職員をして特定障害者の障害の状態を診断させることができる。

3 前二項の規定によって質問又は診断を行う当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

 (資料の提供等)

第二十九条 社会保険庁長官は、特別障害給付金の支給に関する処分に関し必要があると認めるときは、特定障害者の資産若しくは収入の状況又は特定障害者に対する国民年金法第五条第一項第二号から第四号までに掲げる法律による年金たる給付の支給状況若しくは第十六条の政令で定める給付の支給状況につき、郵便局その他の官公署、同法第三条第二項に規定する共済組合等若しくは第十六条の政令で定める給付に係る制度の管掌機関に対し必要な書類の閲覧若しくは資料の提供を求め、又は銀行、信託会社その他の機関若しくは特定障害者の雇用主その他の関係者に報告を求めることができる。

 (特別障害給付金の支払の調整)

第三十条 特別障害給付金を支給すべきでないにもかかわらず、特別障害給付金の支給としての支払が行われたときは、その支払われた特別障害給付金は、その後に支払うべき特別障害給付金の内払とみなすことができる。第十条第二項の規定により既に支給を受けた特別障害給付金に相当する金額の全部又は二分の一に相当する部分を返還すべき場合におけるその返還すべき金額及び特別障害給付金の額を減額して改定すべき事由が生じたにもかかわらず、その事由が生じた日の属する月の翌月以降の分として減額しない額の特別障害給付金が支払われた場合における当該特別障害給付金の当該減額すべきであった部分についても、同様とする。

 (市町村長が行う事務)

第三十一条 特別障害給付金の支給に関する事務の一部は、政令で定めるところにより、市町村長が行うこととすることができる。

 (事務の区分)

第三十二条 第六条第三項及び第二十七条第三項の規定により市町村が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

 (命令への委任)

第三十三条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施に関し必要な事項は、命令で定める。

 (経過措置)

第三十四条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要とされる範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

 (罰則)

第三十五条 偽りその他不正の手段により特別障害給付金を受けた者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。

第三十六条 第二十七条第二項の規定に違反して届出をしなかった戸籍法の規定による死亡の届出義務者は、十万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成十七年四月一日から施行する。

 (検討)

第二条 日本国籍を有していなかったため障害基礎年金の受給権を有していない障害者その他の障害を支給事由とする年金たる給付を受けられない特定障害者以外の障害者に対する福祉的措置については、国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情を踏まえ、障害者の福祉に関する施策との整合性等に十分留意しつつ、今後検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする。

 (財源の確保)

第三条 国は、この法律に基づく特別障害給付金の支給に要する費用を賄うための安定した財源の確保に努めるものとする。

 (経過措置)

第四条 この法律の施行の日(以下「施行日」という。)において六十五歳以上の特定障害者は、施行日から五年以内に限り、第六条第一項の規定にかかわらず、同項の規定による認定の請求をすることができる。

第五条 前条に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。

 (地方自治法の一部改正)

第六条 地方自治法の一部を次のように改正する。

  別表第一に次のように加える。

特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(平成十六年法律第百六十六号)

第六条第三項及び第二十七条第三項の規定により市町村が処理することとされている事務

 (国民年金特別会計法の一部改正)

第七条 国民年金特別会計法(昭和三十六年法律第六十三号)の一部を次のように改正する。

  附則に次の一項を加える。

 8 特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(平成十六年法律第百六十六号)による特別障害給付金の支給に関する政府の経理は、当分の間、第一条の規定にかかわらず、この会計において行うものとする。この場合において、第五条中「附則第三十四条第一項第九号」とあるのは「附則第三十四条第一項第九号及び特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(平成十六年法律第百六十六号。以下「特別障害給付金法」という。)第十九条第一項」と、「及び附属雑収入」とあるのは「並びに附属雑収入」と、「及び附属諸費」とあるのは「及び特別障害給付金給付費並びに附属諸費」と、第六条中「第八十五条第二項」とあるのは「第八十五条第二項及び特別障害給付金法第十九条第二項」と、「とし、国民年金事業」とあるのは「とし、国民年金事業及び特別障害給付金」と、第十六条第二項第一号中「附則第三十四条第一項第九号」とあるのは「附則第三十四条第一項第九号若しくは特別障害給付金法第十九条第一項」とする。

 (厚生労働省設置法の一部改正)

第八条 厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。

  附則に次の一項を加える。

 3 社会保険庁は、第二十七条に規定する任務のほか、当分の間、特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(平成十六年法律第百六十六号)に基づく事業を適正に運営することを任務とする。この場合において、第二十八条中「前条」とあるのは「前条及び附則第三項」と、「事務、」とあるのは「事務、同項第八十七号(特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(平成十六年法律第百六十六号)に基づく事業の実施に関する部分に限る。)に掲げる事務、」とする。

(総務・財務・厚生労働・内閣総理大臣署名) 

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