関税暫定措置法の一部を改正する法律

法律第百四十二号(平一六・一一・二五)

 関税暫定措置法(昭和三十五年法律第三十六号)の一部を次のように改正する。

 第七条の八第一項第二号イ中「第六項」の下に「並びに次条第一項第二号イ及びロ、第六項並びに第十項第二号イ及びロ」を加え、同条の次に次の一条を加える。

 (メキシコの特定の貨物に係る関税の緊急措置)

第七条の九 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定(以下「メキシコ協定」という。)に基づく関税の譲許(以下この条において単に「譲許」という。)による特定の種類の貨物(メキシコ協定第五条1の規定に基づき譲許の便益の適用を受けるものに限る。)の輸入の増加の事実(第八項及び第十項において「メキシコ特定貨物の輸入増加の事実」という。)があり、当該貨物の輸入の増加が重要な原因となつて、これと同種の貨物その他用途が直接競合する貨物の生産に関する本邦の産業に重大な損害を与え、又は与えるおそれがある事実(第八項及び第十項において「本邦の産業に与える重大な損害等の事実」という。)がある場合において、国民経済上緊急に必要があると認められるときは、メキシコ協定第五十三条1及び2の規定に基づき、政令で定めるところにより、貨物及び期間(第十項の規定により指定された期間と通算して三年以内に限る。)を指定し、次の措置をとることができる。

 一 指定された貨物についてメキシコ協定附属書一の日本国の表に基づき更なる関税率の引下げを行うものとされている場合において、指定された期間内に輸入される当該指定された貨物の全部につき、又は当該貨物のうち一定の数量若しくは額を超えるものにつき、更なる関税率の引下げを行わないものとすること。

 二 指定された期間内に輸入される指定された貨物の全部につき、又は当該貨物のうち一定の数量若しくは額を超えるものにつき、次のうちいずれか低い税率の範囲内において関税率を引き上げること。

  イ 実行税率

  ロ メキシコ協定の効力発生の日の前日における実行税率

2 前項の規定による措置をとる場合において、特別の理由により必要があると認められるときは、メキシコ協定第五十三条5の規定に基づき、当該措置につき第十項の規定により指定された期間と通算して三年を超え四年以内の期間を指定することができる。この場合においては、当該措置は、当該指定しようとする期間内において段階的に緩和されたものでなければならない。

3 第一項の規定による措置がとられている場合において、特別の理由により必要があると認められるときは、メキシコ協定第五十三条5の規定に基づき、政令で定めるところにより、同項の規定により指定された期間を第十項の規定により指定された期間と通算して四年以内に限り延長することができる。

4 政府は、前項の規定に基づき、第一項の規定により指定された期間を第十項の規定により指定された期間と通算して三年を超えて延長する場合には、メキシコ協定第五十三条5の規定に基づき、当該措置を段階的に緩和するものとする。

5 特定の貨物につき第一項の規定による措置をとる場合又はとつた場合には、メキシコ協定第五十三条9に規定する協議により、政令で定めるところにより、当該貨物以外の貨物で譲許がされているものにつきその譲許を修正し、又は譲許がされていないものにつき新たに譲許をし、その修正又は譲許をした後の税率を適用することができる。

6 メキシコにおいてメキシコ協定第五十三条1及び2の規定による措置(次項において「メキシコの緊急措置」という。)がとられた場合には、メキシコ協定第五十三条11の規定に基づき、政令で定めるところにより、譲許がされている貨物を指定し、その貨物の全部又は一部につき譲許の適用を停止し、実行税率の範囲内の税率による関税を課することができる。

7 前二項の規定による措置は、それぞれその効果が第一項の規定による措置の補償又はメキシコの緊急措置に対する対抗措置として必要な限度を超えず、かつ、その国民経済に対する影響ができるだけ少ないものとするような配慮のもとに行わなければならない。

8 政府は、メキシコ特定貨物の輸入増加の事実及びこれによる本邦の産業に与える重大な損害等の事実についての十分な証拠がある場合において、必要があると認めるときは、これらの事実の有無につき調査を行うものとする。

9 前項の調査は、当該調査を開始した日から一年以内に終了するものとする。ただし、特別の理由により必要があると認められる場合には、その期間を六月以内に限り延長することができる。

10 政府は、第八項の調査が開始された場合において、その調査の完了前においても、十分な証拠により、メキシコ特定貨物の輸入増加の事実及びこれによる本邦の産業に与える重大な損害等の事実を推定することができ、国民経済上特に緊急に必要があると認められるときは、メキシコ協定第五十四条1及び4の規定に基づき、政令で定めるところにより、貨物及び期間(二百日以内に限る。)を指定し、次の措置をとることができる。

 一 指定された貨物についてメキシコ協定附属書一の日本国の表に基づき更なる関税率の引下げを行うものとされている場合において、指定された期間内に輸入される当該指定された貨物の全部につき、又は当該貨物のうち一定の数量若しくは額を超えるものにつき、更なる関税率の引下げを行わないものとすること。

 二 指定された期間内に輸入される指定された貨物の全部につき、又は当該貨物のうち一定の数量若しくは額を超えるものにつき、次のうちいずれか低い税率の範囲内において関税率を引き上げること。

  イ 実行税率

  ロ メキシコ協定の効力発生の日の前日における実行税率

11 政府は、第八項の調査が終了したときは、第一項の規定による措置をとる場合を除き、前項の規定により課された関税を当該調査が終了した日から六十日以内に還付しなければならない。同項の規定により課された関税の額が、同項の規定による措置がとられていた期間内に輸入される同項の規定により指定された貨物につき、第一項の規定により関税が課されるものとした場合に課される関税の額を超える場合における当該超える部分の関税についても、同様とする。

12 第一項の規定による措置がとられていた貨物については、これらの措置が終了した日からこれらの措置がとられていた期間に相当する期間又は一年間のいずれか長い期間を経過した日以後でなければ、同項又は第十項の規定による措置をとることができない。

13 政府は、メキシコ協定の効力発生の日から起算して十年を経過する日までの間に限り、第一項又は第十項の規定による措置をとることができる。

14 第八条の七第一項、第二項及び第四項並びに第八条の八第一項に規定する譲許の便益の適用を受ける物品については、第一項又は第十項の規定は、適用しない。

15 前各項に定めるもののほか、これらの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 第八条の四第一項中「この項」の下に「及び第八条の七第四項」を加える。

 第八条の七の見出しを「(軽減税率等の適用手続)」に改め、同条に次の一項を加え、同条を第八条の九とする。

2 メキシコ協定附属書一の日本国の表において関税の譲許が特定の用途に供するものであることを要件としている物品で政令で定めるものについて、その譲許の便益の適用を受けようとする者は、政令で定める手続をしなければならない。

 第八条の六の次に次の二条を加える。

 (メキシコ協定に基づく関税割当制度等)

第八条の七 メキシコ協定附属書一の日本国の表において関税の譲許が一定の数量を限度として定められている物品(次項及び次条に規定する物品を除く。)については、その譲許の便益は、当該一定の数量の範囲内において、当該物品の使用の実績及び見込みその他国民経済上の必要な考慮に基づいて政府が行う割当てを受けた者がその受けた数量の範囲内で平成二十二年三月三十一日までに輸入するものに適用する。

2 メキシコ協定附属書一の日本国の表において関税の譲許が一定の数量を限度として定められている物品のうち輸出国が発給する証明書に基づき輸入国が割当てを行うこととされているもの(次条に規定する物品を除く。)については、その譲許の便益は、当該一定の数量の範囲内において、メキシコが発給する証明書に基づいて政府が行う割当てを受けた者がその受けた数量の範囲内で平成二十二年三月三十一日までに輸入するものに適用する。

3 前二項の割当ての方法、割当てを受ける手続その他前二項の規定の適用に関して必要な事項は、政令で定める。

4 平成二十三年度までの各年度において、メキシコ協定附属書一の日本国の表において関税の譲許が一定の額を限度の基準として定められている物品について、その輸入額が、当該一定の額を超えることとなつたときは、財務大臣は、その超えることとなつた物品及びその超えることとなつた月を告示するものとし、当該月の翌々月の初日から当該年度の末日までに輸入申告(当該譲許の便益の適用を受けることができるものとされていた期間中に蔵入れ申請等がされた物品に係るものを除くものとし、関税法第七十六条第三項(郵便物を受け取つた旨の通知)の規定による通知を含む。)又は蔵入れ申請等がされるものについては、当該譲許の便益は、適用しない。

5 前項の輸入額は、関税法第百二条第一項第一号の統計の数値又は当該統計の作成方法に準じて、メキシコ協定附属書一の日本国の表において同一の注釈番号が付されている物品ごとに毎月集計し、これを順次加算して算出するものとする。

 (メキシコ協定に基づく市場の開拓等を目的とした関税割当制度)

第八条の八 メキシコ協定附属書一の日本国の表において関税の譲許が一定の数量を限度として定められている物品のうち輸出国が市場の開拓及び販売の促進を目的として発給する証明書に基づき輸入国が市場の開拓及び販売の促進を目的として割当てを行うこととされているものについては、その譲許の便益は、当該一定の数量の範囲内において、当該物品の使用の実績及び見込みその他国民経済上の必要な考慮並びにメキシコが発給する証明書に基づいて政府が行う割当てを受けた者がその受けた数量の範囲内で平成十九年三月三十一日までに輸入するものに適用する。

2 前項の割当ての方法、割当てを受ける手続その他同項の規定の適用に関して必要な事項は、政令で定める。

 第九条中「前条の軽減税率」を「前条第一項の軽減税率若しくは同条第二項の譲許の便益」に、「又は軽減税率」を「若しくは軽減税率若しくは譲許の便益」に改める。

 第十条第二号中「第八条の七の軽減税率」を「第八条の九第一項の軽減税率又は同条第二項の譲許の便益」に改め、「当該軽減税率」の下に「又は当該譲許の便益による税率」を加える。

 第十条の二中「第八条の七の軽減税率」を「第八条の九第一項の軽減税率若しくは同条第二項の譲許の便益」に改め、「若しくは軽減税率」の下に「若しくは譲許の便益」を加える。

 第十一条第一項中「第八条の七の軽減税率」を「第八条の九第一項の軽減税率若しくは同条第二項の譲許の便益」に、「第七条第一項又は第八条の七」を「第七条第一項、第八条の九第一項又は同条第二項」に、「又は「軽減税率の適用を受けた貨物」」を「、「軽減税率の適用を受けた貨物」又は「関税の譲許の便益の適用を受けた貨物」」に改める。

 別表第一中「第八条の七」を「第八条の九」に改める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定の効力発生の日から施行する。

 (輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律の一部改正)

第二条 輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律(昭和三十年法律第三十七号)の一部を次のように改正する。

  第十四条第一項に次の一号を加える。

  五 関税暫定措置法第七条の九第十一項(メキシコの特定の貨物に係る暫定緊急措置に係る関税の還付)

  第十四条第二項中「、第三号及び第四号」を「及び第三号から第五号まで」に改める。

(財務・内閣総理大臣署名) 

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