電気通信回線による登記情報の提供に関する法律

法律第二百二十六号(平一一・一二・二二)

 (目的)

第一条 この法律は、登記情報を電気通信回線を使用して提供する制度を設けることにより、登記情報をより簡易かつ迅速に利用することができるようにし、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。

 (定義等)

第二条 この法律において「登記情報」とは、法務大臣が指定する登記所における不動産登記、商業登記その他政令で定める登記についての磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。)をもって調製された登記簿に記録されている情報で次に掲げるものをいう。ただし、電気通信回線を使用して提供することに適しないものとして法務省令で定めるものを除く。

 一 当該登記簿に記録されている事項の全部についての情報

 二 当該登記簿に記録されている事項の一部についての情報で法務省令で定めるもの

2 前項の指定は、告示してしなければならない。

 (指定等)

第三条 法務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その者の同意を得て、全国に一を限って、次条第一項に規定する業務(以下「登記情報提供業務」という。)を行う者として指定することができる。

 一 登記情報提供業務を適確かつ円滑に行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有する者であること。

 二 民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された法人であって、その役員又は職員の構成が登記情報提供業務の公正な遂行に支障を及ぼすおそれがないものであること。

 三 登記情報提供業務以外の業務を行っているときは、その業務を行うことによって登記情報提供業務が不公正になるおそれがない者であること。

 四 第十三条第一項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者でないこと。

 五 役員のうちに次のいずれかに該当する者がないこと。

  イ 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者

  ロ この法律又は不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)の規定に違反したことにより罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者

  ハ 第十条第二項の規定による命令により解任され、解任の日から五年を経過しない者

2 法務大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者(以下「指定法人」という。)の名称及び主たる事務所の所在地並びに当該指定をした日を公示しなければならない。

3 指定法人は、その名称又は主たる事務所の所在地を変更しようとするときは、変更しようとする日の二週間前までに、その旨を法務大臣に届け出なければならない。

4 法務大臣は、前項の規定による届出があったときは、その旨を公示しなければならない。

 (業務等)

第四条 指定法人は、登記情報の電気通信回線による閲覧をしようとする者の委託を受けて、その者に対し、次項の規定により提供を受けた登記情報を電気通信回線を使用して送信することを業務とする。

2 指定法人は、前項の業務を行うため、当該委託に係る登記情報の提供を電気通信回線を使用して請求することができる。

3 指定法人は、前項の規定による請求に係る登記情報の提供を受けたときは、法務省令で定めるところにより、手数料を納付しなければならない。

4 前項の手数料の額は、物価の状況、登記情報の提供に要する実費その他一切の事情を考慮して、政令で定める。

 (業務規程)

第五条 指定法人は、登記情報提供業務に関する規程(以下「業務規程」という。)を定め、法務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 業務規程には、登記情報提供業務の実施方法、登記情報提供業務に関する料金その他の法務省令で定める事項を定めておかなければならない。

3 法務大臣は、第一項の認可をした業務規程が登記情報提供業務の適確かつ円滑な実施上不適当となったと認めるときは、指定法人に対し、その業務規程を変更すべきことを命ずることができる。

 (事業計画等)

第六条 指定法人は、毎事業年度、事業計画及び収支予算を作成し、当該事業年度の開始前に(第三条第一項の規定による指定を受けた日の属する事業年度にあっては、その指定を受けた後遅滞なく)、法務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 指定法人は、毎事業年度、事業報告書及び収支決算書を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に、法務大臣に提出しなければならない。

 (業務の休廃止)

第七条 指定法人は、法務大臣の認可を受けなければ、登記情報提供業務の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない。

 (契約の締結及び解除)

第八条 指定法人は、第四条第一項の委託に係る契約(以下「情報提供契約」という。)の申込者が情報提供契約を締結していたことがある者である場合においてその者につき支払期限を超えてまだ支払われていない登記情報提供業務に関する料金があるとき、その他法務省令で定める正当な理由があるときを除き、情報提供契約の締結を拒絶してはならない。

2 指定法人は、情報提供契約を締結した者が支払期限後二月以内に登記情報提供業務に関する料金を支払わなかったとき、その他法務省令で定める正当な理由があるときを除き、情報提供契約を解除してはならない。

 (登記情報提供業務に関する情報の目的外使用の禁止)

第九条 指定法人の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、登記情報提供業務に関して得られた情報を、登記情報提供業務の用に供する目的以外に使用してはならない。

 (役員の選任及び解任)

第十条 指定法人の役員の選任及び解任は、法務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

2 法務大臣は、指定法人の役員が、この法律の規定(この法律に基づく命令又は処分を含む。)若しくは第五条第一項の規定により認可を受けた業務規程に違反する行為をしたときは、指定法人に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。

 (監督命令)

第十一条 法務大臣は、登記情報提供業務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定法人に対し、当該業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (報告及び検査)

第十二条 法務大臣は、登記情報提供業務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定法人に対し、当該業務の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、指定法人の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは設備、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (指定の取消し等)

第十三条 法務大臣は、指定法人が次の各号のいずれかに該当するときは、その指定を取り消し、又は期間を定めて登記情報提供業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。

 一 登記情報提供業務を適確かつ円滑に実施することができないと認められるとき。

 二 この法律の規定又は当該規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。

 三 第五条第一項の規定により認可を受けた業務規程によらないで登記情報提供業務を行ったとき。

2 法務大臣は、前項の規定による処分をしたときは、その旨を公示しなければならない。

 (法務省令への委任)

第十四条 この法律に定めるもののほか、登記情報提供業務に関し必要な事項は、法務省令で定める。

 (罰則)

第十五条 次の各号の一に該当するときは、その違反行為をした指定法人の役員又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 第七条の許可を受けないで登記情報提供業務の全部を廃止したとき。

 二 第十二条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をしたとき。

2 指定法人の役員又は職員が指定法人の業務に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、指定法人に対しても、同項の刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (登記特別会計法の一部改正)

第二条 登記特別会計法(昭和六十年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  第三条第一項中「受入金」の下に「、電気通信回線による登記情報の提供に関する法律(平成十一年法律第二百二十六号)第四条第三項の規定による手数料」を加える。

(法務・大蔵・内閣総理大臣署名) 

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