公企業レポートに見る国鉄改革
序章
国鉄改革とはなんだったのか?
日本国有鉄道が、民営化されて20年以上の年月が経過、昨年の民主党政権誕生で、国鉄改革で最期まで残っていたJR不採用事件は一定の解決が図られることとなったが、あまりにも時間がかかりすぎたことは否めない。
と思う反面、底まで追いかける必要のあることだったのかと言う考え方もあるのも事実。
そこで、ここでは当時の公企業レポートと呼ばれる冊子に書かれた記事を参考に当国鉄の状況を追いかけてみたい。
ただし、一部散逸した部分もあるので完全ではないことを了承願いたい。
なお、blogで原稿執筆した上で、こちらに反映したいと思うのでそちらもあわせて参照して欲しい。
blog 「国鉄があった時代」で執筆中
第2章 賞与査定(概要)
昭和61年6月5日付 公企業レポートに見る国鉄
昭和61年は、国鉄改革の最終年として組合は組織の生き残りをかけたいましたが、国鉄では初めての試みとして、職員の賞与について査定を行うこととなりました。
この方式は、後年郵政にも導入されましたが、査定自体に不透明な部分があり、そういった点では問題が多かった制度では無かったかと思います。
さて、当時の公企労レポートから引用してみますと。
国鉄は分割民営化を控え、この程、夏・冬の期末手当支給の際、民間企業並に職員の勤務成績、出勤状況を査定して支払う制度を初めて導入するとし、国労・動労・鉄労・全施労・真国労などの各組合に提案した。
となっており、国労から分離したメンバー【国労右派系】が真国労を結成(新国労と言う名称は以前に使われてていたため)、労使協調宣言を当局と締結しています。
この制度は、これまでの悪平等を是正し、信賞必罰を適時適切に反映させることで、事業運営の活性化に役立てようというもので動労など共同宣言の4組合は肯定的であったが、国労は以下のように回答し、導入には反対の意向を示したのだがこれは結果的には国労をさらに窮地に追い込むこととなりました。
国労の見解、以下は公企業レポートから
「今職場では雇用の確保と選別が最大の感心事で、提案は選別の不安をよりかきたてる。この時期に夏季手当まで信賞必罰の体制を導入するのは反対だ、まさに選別である。」としている。
また、管理者についても同様の査定を導入するとしており、査定内容は一般職よりもさらに厳しいものとなる。
国鉄当局では、この制度導入によりこれまで八次に渡って実施した職場総点検の総仕上げと位置づけている。
参考
第一次労使協調宣言
昭和六一年は国鉄改革が国民課題となる重要な年だが、なかでも余剰人員間題の解決は今年度の最大のテーマとなる。
これは同時に、職員一人ひとりの生活の場を確保するという問題でもある。回鉄改革にあたり、まじめに働く意思のある職員が生活の基盤を失うことがあってはならないという点について、労使の認識は全く共通である。十分な雇用の場を確保するためには、労使一致した雇用確保の努力に加えて、政府・一般産業界の積極的な支援が不可欠であリ、これは経営全般にわたる労使の自助努力に対する国民各層の信頼と共感を得て初めて可能になるものでおる。このような共通認識に立ち、雇用安定の基盤を守るという立場から、国鉄改革が成し遂げられるまでの間、労使は以下の項目について一致協力して取り組むことを宣言する。
労使はその立場をこえて、以下の課題について最善の努力をつくす。
(1)安定輪送の確保、安全輸送の推持が国鉄労使に対する国民の信頼の基盤であリ、労使は緒法規を追遵守し、全力をあげてこれを実現する。
(2)一人ひとりのお客様に明るく笑顔で誠意のこもった対応をしていくことが輸送サービスに従事する者としての基本であり、そのためには、まず第一にリポン・ワッペンの不着用、氏名札の着用等定められた服装を整え、お客様に不快感を与えない、折り目正しいサービスの提供に努めることとする。
(3)飲酒・酒気帯ぴ勤務、点呼妨害等企業人としてのモラルにもとる行為の根絶に努める。
鉄道事業の再生を図るに不可欠なことは、康しい競争場裏において将来を展望し得る企業体質を作ることであり、そのために必要な合理化は労使が一致協力して積極的に推進し、新しい事業経営の体制を確立することとする。
余剰人員対策について労使は決の点に具体的に取り組むこととする。
(1)派遺制度等を積極的に推進する。
(2)従来の特退協定に基づいて、退職勧奨を積極的に推進する。
(3)新たな希望退職制度の法的な措置がなされたのちには労使はその円滑な運用により目標の逮成に向けて積極的に取り組む。
(4)職員の将来の雇用の場の確保・拡充について労使が一致協力する。 4上記の事柄を積極的に推道していくために「再建問題等懇談会」等労使間のルールに則った話し合いの場を従来にも増して活性化し、活用していくこととする。
賞与査定制度(まとめ)
第一次労使協調宣言
昭和六一年は国鉄改革が国民課題となる重要な年だが、なかでも余剰人員間題の解決は今年度の最大のテーマとなる。これは同時に、職員一人ひとりの生活の場を確保するという問題でもある。
国鉄改革にあたり、まじめに働く意思のある職員が生活の基盤を失うことがあってはならないという点について、労使の認識は全く共通である。
十分な雇用の場を確保するためには、労使一致した雇用確保の努力に加えて、政府・一般産業界の積極的な支援が不可欠であリ、これは経営全般にわたる労使の自助努力に対する国民各層の信頼と共感を得て初めて可能になるものでおる。このような共通認識に立ち、雇用安定の基盤を守るという立場から、国鉄改革が成し遂げられるまでの間、労使は以下の項目について一致協力して取り組むことを宣言する。
労使はその立場をこえて、以下の課題について最善の努力をつくす。
(1)安定輪送の確保、安全輸送の推持が国鉄労使に対する国民の信頼の基盤であリ、労使は緒法規を追遵守し、全力をあげてこれを実現する。
(2)一人ひとりのお客様に明るく笑顔で誠意のこもった対応をしていくことが輸送サービスに従事する者としての基本であり、そのためには、まず第一にリポン・ワッペンの不着用、氏名札の着用等定められた服装を整え、お客様に不快感を与えない、折り目正しいサービスの提供に努めることとする。
(3)飲酒・酒気帯ぴ勤務、点呼妨害等企業人としてのモラルにもとる行為の根絶に努める。 鉄道事業の再生を図るに不可欠なことは、康しい競争場裏において将来を展望し得る企業体質を作ることであり、そのために必要な合理化は労使が一致協力して積極的に推進し、新しい事業経営の体制を確立することとする。 余剰人員対策について労使は決の点に具体的に取り組むこととする。(1)派遺制度等を積極的に推進する。このように、今まで導入したくてもできなかった期末手当の査定制度は、当然のことながら各労組間で大きな温度差がありました。
(2)従来の特退協定に基づいて、退職勧奨を積極的に推進する。
(3)新たな希望退職制度の法的な措置がなされたのちには労使はその円滑な運用により目標の逮成に向けて積極的に取り組む。
(4)職員の将来の雇用の場の確保・拡充について労使が一致協力する。
4上記の事柄を積極的に推道していくために「再建問題等懇談会」等労使間のルールに則った話し合いの場を従来にも増して活性化し、活用していくこととする。
今回の期末手当査定に危機感を持っているのは国労であることは前回お話したとおりですが、今回の目的が単なる「給与の査定」に留まらず、将来の職員の選別に連なるところが最も注目すべきところではあります。
そんな中、国労は、以前からの三無い運動「辞めない、休まない、出向しない」の運動方針を堅持しており、一人の職員も選別させないとして頑張ってきました。
実際に、この時点では国労は国鉄における最大組織であり、国労の意向を無視して労務管理はできないルール(コミュルール)があったこともあり、当局としてもそれを無視して進めることはできなかったのです。
実際に、先に妥結した昇給協定(この資料がありませんのでご存じの方フォローよろしく)では、当局と先行妥結した組合を待たせて、国労との間の仲裁裁定が出されるまで支払いを停止するなど一定の配慮をしてきたのだが、今回の場合は国労が強く反対しても実行される可能性が出てきました。
というのが、労使共同宣言を行った組合が、動労・鉄労・全施労に加えて、国労から脱退した真国労(国労右派が分離したもの)と言う4つの組合があり、仮にこの件で妥結すればこの四組合で過半数を超えていることから、当局側は、これら組合に対して責任を負う形となるわけなのです。
国労とすれば、仮にこの制度が実行されると、国労の方針である「選別させない」を反故にしたこととなるため、何としても阻止したいと思うのですが、そのためには国労による他の組合への妨害工作が必要となってきます。
いわば、国労VS当局の知恵比べとなるわけですが、国労組合員の中からも動揺が広がりつつあるなか、方針を貫き通せるかは難しい状況と予測されました。
なお、仮にこの制度が実行されると減額の対象となるのは、約一割の2万4千人であり、その対象者の多くは当局と協調してきた職員ではなく国労所属の組合員となる公算が強いと考えられます。
この時点では国労は、当局案に対してどのように反論するかを決めかねているようであるが、希望退職者の優遇措置法案(日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために昭和六十一年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律)が5月30日に国鉄改革法案の第1陣として可決成立したこともあり、当局としても国鉄分割民営化は既定の路線として進めていく必要が生じたことは間違いない。
というのは、この法案だけを通して他の法案を通さないと今回の法案自体も意味をなさなくなるため政府としても他の法案を必ず通す必要があるからです。
国労にしてみれば、四面楚歌の状況であり、当局の提案を受け入れれば今までの運動方針を撤回したことになるし、拒否したとすればさらに厳しい現実が待っていることを覚悟しなくてはならないわけで、拒否すれば、民営化の際の職員選別をも認めることとなり、さらに厳しい舵取りを迫られることになるのですが、国労は後述のとおりその方針を変更させる事は出来ませんでした。
当局の賞与査定制度に関する見解
国鉄民営化を目前にして、国鉄では期末手当の査定を行うことを決定しましたが、当局の考え方を述べていきたいと思います。
国鉄当局、門野 雄策給与課長の見解を公企労レポートから要約しますと。
現在の国鉄は、職員一丸となって改革に向けて努力を行うべき時であり、そのためには職員一人ひとりの能力、意欲の向上と意識の改革を図ることが必要となっていますし世間でも職員の意識向上を期待していると思います。
そういった時期だけに、信賞必罰を基本とした職員管理を徹底することは、民間企業では賞与への勤務成績等は何らかの形で行われていることに鑑み、今回は職員個人の勤務成績を適時適切に反映させることで、ひいては企業運営の活性化にも役立てることができるように、新たな支払い方法を定めようと言うものです。
以下に、公企労レポートから引用しますと。
先の第八次総点検の中でも、まだ職員の意識、意欲が不十分である。あるいは職員に対する個人指導を強化する必要があるという指摘がされているわけで本制度の導入は、勤務成績を適時適切に反映する人事管理の手法としての効果も期待できる訳で、いわば総点検の総仕上げというような機能も果たす事になるというふうに考えています。このような制度というのは、民間では当然のこととして行われている訳でして、いわゆるボーナスと言うものについては、その期間における成績とか出勤状況等が反映されるのが当たり前であり、むしろボーナスというのはそういう性格を持っていると言うふうに理解されて一般的に行われている訳です。また、公務員等においても、何らかの形で同様の目的の制度が既に導入されている訳です。また、公務員等においても、何らかの形で同様の目的の制度が既に導入されている訳です。ところが国鉄においては、これまでそのようなことがほとんど行われていなかったというのが実態でありましたので、今回提案する事になったということです。引用終了
というように、国鉄では、民間ではあたり前であって公務員でも一部導入されていた(郵政に関しては殆ど機能していなかったように思います。)賞与制度ですが、何故国鉄では導入できなかったというと、組合との話し合いの中で、「支払い方法」の問題として「引き続き協議」となっていたわけですが、国会で国鉄法案が審議され、民営という方向が示されたことや、労使協調宣言による組合との話し合いができる環境になったことなどの要因が重なり、将来の民営化に向けての準備として導入したいと考えたわけです。
もちろん、この制度が民営化の準備としての導入ではなく、今までこの制度を導入できなかったことを反省しないといけないと考えていおり、職員の意識・意欲、あるいは能力のさらなる向上と、信賞必罰を基本とした職員管理の徹底は必要と考えています。
以下に具体的な支給方法を再び、公企労レポートから引用しますと。
【そうしますと、今まで格差というものはないということですか】引用終了
現在も、厳密な言い方をすれば、ボーンすも基準内賃金の何ヶ月分を支給するということになっておりまして、基準内賃金の中には、一年に一回の定期昇給時において勤務成績を多少加味していますので、昇給額も違うということになっています。
それを基にボーナスを計算するということにおいては、きわめてわずかながら、間接的に反映されているということは言えなくもないのですが、勤務成績を適時適切に反映する手法として、また世間でもボーナスというものが、個人ごとの勤務成績等を一般的にどの程度反映させているのかという比較すれば不十分です。また、定期昇給は、年に1かいですし、そもそも昇給の結果というのは、退職時に到るまで影響を持つ、柔軟性を欠いた永続的なものです。ボーナスに一定期間の勤務成績を反映させるということは、まさにボーナスというのは、その都度決めていくものですから、ある時期にマイナスの評価を受けても頑張ればリカバリーもできるということですから、弾力的に運用していける訳です。
ということで、今までは定期昇給時に多少の色を付けていたのですが、この辺は多少説明が必要と思われます。
基本的には、公務員(国鉄は正確には公務員ではないが公共企業体は国家公務員法に準じた給与体系であったため、郵政の経験を加味して書いています)の場合は定期昇給【一般的には四号俸】の昇給、ただし、一年に訓告二回【四回?】もしくは、戒告以上で二号俸の昇給停止となるため、組合運動などで処分を何度も受けていると同じ年齢、同じ経験年数でも号俸に差が出るということはありました。
ただし、公務員の場合、特別昇給制度というのもあり、仮に処分等で号俸昇給が停止した場合でも、四年以上優良な成績(いわゆる処分を受けない状態)の場合は、昇給停止分が臨時に昇給する救済措置もありました。もちろん、処分を受けず、特別昇給のみを受ける職員も居るわけでそうなってくると、さらに給与体系に差が出ることになります) また、退職時の退職金の計算も在籍時の4月1日時点での俸給月額に対する計算ですから、幹部級は退職が6月30日付で、一般職員は3月31日付というのが郵便局の場合は不文律となっていました。
いささかお話が脱線しますが、3月31日で退職だと、4号俸昇給させずに退職金が計算されるのに対し、6月30日で退職させると、4月1日時点で4号俸昇給させたうえ、6月1日に職員として在籍しているため、退職金+夏季手当を支給させることができるということで、郵便局の課長以上は6月末退職、課長代理以下は3月末退職が一般的でした。
話が大きくそれていしまいましたが、少なくとも国鉄では組合の力【主に国労】による悪平等の影響で、阻害されてきたのが、分割民営化という国の大方針が決まったことで進めやすくなったということが言えると思います。
さらに、今回の導入に際してのポイントは下記のとおりです。
一つは、一定期間の勤務成績を反映させること。
二つには、一定期間における期間率【いわゆる出勤率】を反映させるということです。
ということで、出勤率を反映させるというところに、国鉄の抱えていた病巣を見る思いがします。
この二つの側面を、個人ごとの支払額を算定する際の要素にすると書かれています。
なお、具体的な内容については、再び公企労レポートから引用したいと思います。
内容として、期間率とというのは、夏期手当の場合は6月1日、年末手当の場合は12月1日という年二回の基準日を起点にこの基準日以前の6ヶ月間を調査期間としているわけです。この期間内において、欠勤期間が4日以上30日以内の場合には、百分の10、同様に31日以上90日以内の場合には、百分の40、91日以上の場合には百分の70をカットするということです。逆に言いますとその全期間を休んでも、3割は支給すると言うことにしている訳です。引用終了
これは、初めての導入であるということと、ボーナスそのものが一定の生活給といいますか月例賃金をカバーする要素もあることを考慮し、カット率を百分の70で止めているということです。なお、欠勤の理由には、色いろある訳で、いわゆる私傷病による欠勤の場合には、この原則に対して大幅な緩和条項といいますか、職員の病気療養中の生活も考慮して、最高で2割の減にとどめるよう配慮しています。この点は国家公務員の制度の場合にも同様の配慮がされていることも参考にいたしました。
案としましては、私傷病による欠勤期間が4に以上30日以内の場合百分の5、31日以上60日以内で百分の10、61日以上90日以内は百分の15、それ以上は百分の20のカットとしております。
また、これの例外として、期間率では、余剰人員対策の一環としていわゆる三本柱として進めています退職前提休職、復職前提休職による休職者の場合には、今回の期間については勤務したものとして取扱うこととしています。
それから、もう一つの大きなテーマである成績率ですが、これも調査期間における職員の勤務成績に応じて、勤務成績の優秀な職員には基準の5%増とし、一方、勤務成績の良好でない職員に対しては、基準の5%減としています。
つまり、勤務成績の優秀な者とは、例えば、職務上功績があると認められる者、他の模範と認められるということから当然に判断出来る訳で、また、勤務成績が良好でない者とは、平素職員としての自覚に欠ける者、勤労意欲、執務態度、知識、技能、適格性、協調性等について遜色のる者ということで判断したいと思っています。
なお、この対象となる人員は、管理局等の単位を分母にしてその一割を基本にしたいと考えています。
ということで、長期の欠勤者よりも、組合として問題としたのは、勤務不良職員のうち、管理局単位で10%の職員は5%の減額を行うことが問題となるわけですが、この辺は次回以降の各組合の意見の中で明らかにしていきたいと思います。
国鉄当局としては、この制度を導入させることで、職員の意識改革及び分割民営化の準備としての前例を作りたいということで、労使交渉をすすめることとしています。
国労の賞与査定制度に関する見解
昨日は、国鉄改革に伴う一環として、職員の給与査定を遅ればせながら導入する方針を決めた国鉄当局の話でしたが、今回は国鉄でも最大派閥の国労の見解について述べて見たいと思います。
国労、酒井副委員長(当時の肩書き)の談話を公企労レポートから引用しますと。
【今回、この時期に期末手当の査定という提案があった背景をどう見ていますか】引用終り
国鉄のいわゆる分割・民営化に向けて労務管理を強化するための差別支配政策の一つとしてこの問題は出されたのではないかと思います。
しかし、現実には公務員ならびに公労協の各組合にも査定は行われているわけですから、われわれとしては時期も時期であるし、内容的に差別支配は基本的に認められないことであっても、周囲の状況から考えて管理者の心情的行為により勤務成績をうんぬんして差別をつけることを阻止することを前提に、具体的な要求を提示して当局側と早急に交渉をつめたいと考えています。
というように、国労らしい回答といえば回答なのですが、あくまでも今回の取組は労務管理の強化であることを前面的に出していることが伺えますが、全て反対というわけではなく、条件闘争的になるであろうということを以下の記者との質問の中で答えている点は注目されます。【国労は最終的には、左派がイニシアチブを取り、さらに先鋭化していくところがあり結局大局を見誤るのですがまだ、この時点ではある程度右派的な抑止力が働いているようにも思えます。
再び引用しますと。
【基本的には了承ということですか】とあるように、欠勤期間に対して夏期手当を調整するのはやむを得ないであろうが、成績率の方は基準が曖昧なためということが述べられています。
いや、査定の方法として二つの方法があるわけですね。期間率については、議論はあっても客観的にわかるものです。 成績率の方は勤労意欲とか、態度とかいろいろあるわけで、自分では一生懸命やっているつもりでも客観的な基準はない。だからこういうことはやめて他の企業体のように期間率でやるべきだという要求を中心に、早急に自主解決を求めて交渉をつめるという方針です。
実際に、郵政でも郵政公社の頃に新給与体系が実施され、成績率による査定が導入されましたが、複雑になりすぎて結局うまく機能しない部分が多々ありました。
民営化された郵政では、どのような給与査定体系になっているのかはわかりませんが、郵政公社時代の方針を踏襲しているのであればかなりややこしい物になっているような気がしてなりません。
ただ、ここで注目しなくてはいけないのが、「勤労意欲とか、態度とかいろいろあるわけで、自分では一生懸命やっているつもりでも客観的な基準はない。」という部分です。
少なくとも、こういった基準は現場管理者による裁量権が大きくなる可能性があるのですが、これに関しては、おそらく下記のような職員管理調書に基づくさてが行われたのではないかと思われます。
国鉄再建監理委答申_経営形態から引用
職員管理調書(抄)おそらく、こういった調書に基づく査定をということは聞いていたと思うのですが、それに対して国労としては反対の立場をとらざるを得なかったのでしょうが、成績率の査定は所属長が行うとされているが実際には現場長が行うことになるであろうから、現場長が手心を加える可能性が高いと指摘しています。
基本事項(略)
特記事項 1、一般処分 停職の処分通告を受けた回数は何回か。
停職の処分通告を受けたのは何年度か。
減給の処分通告を受けた回数は何回か。
減給の処分通告を受けたのは何年度か。
戒告の処分通告を受けた回数は何回か。
戒告の処分通告を受けたのは何年度か。
訓告を受けた回数は何回か。
訓告を受けたのは何年度か。
厳重注意を受けた回数は何回か。
厳重注意を受けたのは何年度か。 2、労働処分 停職の処分通告を受けた回数は何回か。
停織の処分通告を受けたのは何年度か。
減給の処分通告を受けた回数は何回か。
減給の処分通告を受けたのは何年度か。
戒告の処分通告を受けた回数は何回か。
戒告の処分通告を受けたのは何年度か。
訓告を受けた回数は何回か。
訓告を受けたのは何年度か。
厳重注意を受けた回数は何回か。
厳重注意を受けたのは何年度か。 3、昇給 3項8号を適用されたことがあるか。
3項8号を適用されたのは何年度か。
注意昇給を受けたことがあるか。
注意昇給を受けたのは何年度か。
抜てき昇給を受けたことがあるか。
抜てき昇給を受けたのは何年度か。 4、昇格 基準昇格において短縮があったか。
基準昇格において延伸があったか。 5、行賞(個人及びグループに対する行賞を対象とし、職場単位の行賞は除く) 本社からの行賞回数(功績章を除く)
地方機関長、部・次長クラスからの行賞回数
運輪長、現場長からの行賞回数
業務に関連して部外団体からの行賞回数 6、派遣 派追実績の有無
派遺の期間(内定を含む)
派遺先からの中途復帰の有無及ぴ中途復帰の理由 7、復職前提休職 復職前提休職中でおるか。
評定事項(注意事項)
現職に就いて日の浅い職員については、その者が相当期間を経過した場合を想定し判断すること。その際、前職での状態をも参考にすること。
業務知識・・・業務連行に必要な知識はあるか。
技能・・・・・・・業務連行に必要な技能はあるか。
計画性・・・・・業務連行に必要な計画性はあるか。
業務処理の速さ、手際良さ・・・業務連行に当たっての速さ、手際良さはどうか。
業務処理の正確さ・・・業務遂行に当たっての正確さはどの程度か。
判断能力・・・業務運行に当たって、状況に応した適切な判断ができるか。
責任感・・・・・業務連行に当たっての責任感はあるか。
自発性・・・・・自発的に業務に取り組んでいるか。
協調性・・・・・業務連行に当たり、周囲の職員と協調しているか。
業務改善・・・自らの仕事に対し問題意織を持ち、改善・改良等を提起する意欲と能力があるか。
職場の秩序椎持・・・職場の秩序を乱すことはあるか。
服装の乱れ・・・・・・・リポン、ワッペン、氏名札、安全帽、安全靴、あご紐、ネククイ等について、指導された通りの服装をしているか。
@指導された服装をしていないことがあリ、指導しても従わない。指示・命今・・・作業指示・命令を真剣に受け止めているか。
A指導された服装をしていないことがあるが、指導されれば従う。
B常に指導された通りの服装をしている。
C常に指導された通りの服装をしており、その上清潔、端正を保つよう努力している。
態度・言葉使い・・・態度・言葉使いは適切か。
勤務時間中の組合活動・・・勤務時間中の組合活動を行っているか。
@勤務時間中の組合活動を、時々行っている。勤務に対する自覚、責任感・・・勤務に対する自覚、責任感があるか。
A勘務時間中の組合活動を行ったことがある。
B勘務時問中の組合活動を行ったことはない。
C勤務時間中の組合活動を行ったことはなく、見かければ他の人にも注意している。(注意事項)「勘務時間中の組合活動」とは、「職員の組合活動に関する協約」に基づくもの以外である。ワッペン着用、氏名札未着用については12項で回答すること。
出退勤・・・出退勤特刻に対し、自ら厳しく律しているか。
信頼・・・・・上司、同僚、部下から信頼されているか。
増収活動・・・増収活動に対して積極的か。
現状認織・・・国鉄の厳しい現状を認織し、業務に取り組んでいるか。
総合評定・・・総合的にみて、次の@〜Dのどのランクに該当すると評価するか。
以下は不明
というのが、過去に昇給に際して、口実をつけて昇給を遅らせた例など、やはりはっきりしない問題があり、極端な話、顔が気に入らない、顔つきが悪いなどを理由にならない理由をつけた例がなかったわけではないと言われており、そういったことが今回も行われることがあるので反対といっているのですが、ちょっと情けない話と感じてしまうのは私だけでしょうか。
以下、公企労レポートから全文引用させていただきます。
【他の組合は、基本的には賛成のようで、査定にも自信を持っているようですが】引用終了
そうは言っても、10人の7人は国労の組合員です。その人たちがまじめに働かなかったら列車はまともに動きません。
したがって自分たちだけがいい子のつもりであっても、客観的には証明されないでしょう。皆同じ仕事をして、列車を動かしているのです。まじめに働いている労働者を、それが国労の組合員だからと言って差別することがあれば、これは明らかに不当労働行為です。そういうことは、なんとしても排除したいと思います。いずれにしても、初めてのことですから実施されないと何も言えませんが、過去の昇給の場合を見ても多少その傾向はさけられませんから昨日の中央委員会でもいままで述べた内容で方針を決定、これから交渉に入ります。
【現場の組合員はどう受け止めていますか】
かなり反発があるのは事実です。しかし、期末手当は、ローンの支払とか、生活の重要な一部になっていますから、伸ばすわけにはいきません。
一定の時期には最終的な判断をせざるを得ないと思っていますが、公平にやらせるいうことにつきます。
ということで、国労の執行部は、今回の査定が組合員を直撃するのではないかとかなり危惧していることが行間から読み取れるとともに、組合員が国鉄職員の7割を占めており、まじめに働かなかったら列車自体まともに動かないといった驕りとも言える発言が見受けられます。
ただ、これ以後国鉄当局は労使協調宣言を締結した組合との協力関係を強めるとともに国労に対しては対決姿勢を見せたことから、国労組合員の減少などから国鉄分割民営化前には最大労組であった国労は第2・第3組合に転落するのですが、それは後ほど語りたいと思います。
動労の賞与査定制度に関する見解
公企労レポートによりますと。
動労の佐藤武副委員長は、今回の期末手当の支給について勤務成績を反映する事に対して、下記のとおり答えています。
今回国鉄が、ボーナスの査定制度を導入したことは、国鉄の今おかれている状況を抜きにしては考えられません。 つまり、雇用問題で労使が苦労している中で出されたわけであり、動労としてもこの間に、共同宣言、広域移動、派遣問題などを積極的に取り組んできました。
ですから、動労の組合員を正しく当局からの評価を受けることになると信じており、今回の提案も積極的に受け止めたいと考えております。
今までは、悪平等がはびこっており、苦労しているものとしていないものとの差をはっきりさせて苦労しているものには報いるべきだと思います。
今回当局に特に申し上げたいのは、動労の組合員は今までも、余剰人員解決のための企業人教育、派遣問題、広域移動などを受け入れてきました、そしてこれは良い人を選ぶものでしたが、今回の提案は悪い者を選び出すという意味がありますので、動労としてはそれを重視しているのです。
また、今回の制度は当局が今回の制度を導入する背景として、われわれ組合側からいう立場ではありませんが受け止める側として、今回の制度は「選別」であると捉えています。
われわれとしては、それを意識して対応してきたわけです。
今回の査定では、基準年齢で見た場合に、プラス・マイナス3万円の開きがあるのですが、個人的にはもっと差をつけてもよいと考えています。
つまり努力している人にはもっと報いるべきだということです、そういった意味では動労の組合員は全員がプラスであると信じています、ただし、当局は組合を査定するのではありませんが、動労の組合員は家族を含めてこの事態を認識して努力してきたわけですからこの点では、正しく評価をしていただけるものと信じています。
成績率の査定について々考えるかとの問に対しては、下記のように答えています。
公企労レポートの内容を引用しますと。
【成績率の判定は所属長ということですが、それに対する意見は】引用終了
提案内容を見ますと所属長、つまり管理局長と言うことになっていますが、材料を提供するのは現場の長です。現場の長だけで決めるわけではありませんがその評価が重くなるのは事実です。いっぽう所属長が査定するとなれば、そこでの判断がかりに1mm狂えば、下の方では10cmの狂いにもなるわけですから、慎重の上にも慎重にやってもらいたいと思います。
その辺これらの交渉の中で確認しながら、慎重な交渉をしたいと思います。いずれにしても、これは方法、手段の問題ですから、これを決めなければ金額の要求ができないし交渉に入れないわけで、じっくり交渉したいけどれど時間的な余裕が無いので、ここを抑えてなるべく早く解決したいと思います。
ということで、動労としては今までの悪平等を断ち切るいい機会であり、当局にはそういった点を踏まえた上で、取り扱いには慎重を期してもらいたいと言う事でかっては鬼の動労と呼ばれた頃と比べると本来の労働者を守る組織としてして機能しているように思えます。
再び公企労レポートから引用しますと、
【一般の組合員はどう受け止めていますか】引用終了
内容はとにかくとして、こういうものはとうぜんでてくるものと予期していたものと思います。
動労のこれまでの取り組みは、こういうことを予測してやっていましたから、来るべきものが来たということです。いいか悪いかの議論ではない、こういう状況では当然と受けとめ、動揺はないと思います。
【特定の組合が妥結を拒否した場合、結果はどうなると見ておられますか】
国労も提案は受け多様です。しかし交渉がどうなるかということですね。他組合はとにかくわれわれは、早急にかつ慎重に交渉したい。当局とは人事協議会を130回やるなかで、こういう動きが見られたので早くから用意はしていました。23日のフォーラムで解明を求め、27日には明らかになるということ、内容もある程度知ったので24日の臨時中央委員会で全体の状況を報告、われわれの態度を確認しました。
【このことは、今後にも影響すると思いますが】
提案を見ますと、夏冬のことだけで、年度末のことにはふれていません。年度末は全く出ないのか、出てもわずかで差がついても2〜300円ということだと思いますが、われわれは、いただくものはいただきたい。
いずれにしても、今回の提案の影響は大きいと思います。とにかくカットされる人には大きな意味があり。当局のきわめて巧妙なやり方と思います。
ということで、動労としては、今までの交渉を経たなかで当然の帰結として受け止めており、旧態然とした国労とはその温度差が鮮明になってきていることを感じることが出来る対応だと思われます。
注:年度末手当【別名、業績賞与と呼ばれるもので年度末に支給される賞与、郵政の場合は一般的には基準内賃金の0.5か月分が支給されていた。国鉄も動揺程度が支給されていたものと推測される。余談ではあるが、郵政の場合年度末賞与のみ現金支給であったため、家族に知られないへそくりにする人も多かったと記憶している。】
鉄労の賞与査定制度に関する見解
鉄労の志摩好達書記長と記者の対話を要約しますと以下のとおりとなります。
鉄労としては、今回の当局の提案を大変前向きに受け止めており、真面目に働いているものとそうでないものを分けて評価することは当然であり以前から主張していたことが認められたと認識しているといい、この制度の導入を積極的に受け入れる方向を示しています。
民間レベルでは当然のことであり、今までできなかったことに対して今回はそれが導入されたことを評価すると述べています。
以下、公企労レポートから引用します。
・・・・信賞必罰は当然のことです。皆同じではなく、成績の良い者が正しく評価されたほうが意欲がわき、職場も活性化するでしょう。」したがって今回の施策については、当然のこととして平静に受け止めています。特にボーナスについては業績配分の意味合いを持っているわけで、民間の企業においては査定は当然のこととされており、また公務員の殆ども程度の差はあれ成績を反映しているわ毛ですから、ひとり国鉄だけが今の厳しい状況の中で画一的に本俸×支給率であっていいわけにはいかないと思います。私どもは本日提案を受けたのですが、査定の基準に若干の注文をつけましたが基本的には了承ということでわかれてきました。この背景については組合攻撃とか差別政策とかいろいろいわれていますが、私どもはそういううがった見方はしません。民間会社になれば当然のことであり、当局もようやく民間的企業意識を持ってきたのだなと受けとめています。また、雇用問題など厳しい状況の中で、国鉄の規律問題などがうんぬんされているとき、世論に対してもはっきりした姿勢を示したものと思っています。引用終了
ということで、鉄労の考え方をむしろ当局が取り入れたものであり、新国労時代からの労使協調路線はここに極まれりということでしょうか。
さらに、今回の査定制度の導入は、新会社への選別のためのステップではないかという質問に対しては「無関係とは言えない」と発言し、結果的には今回の査定が今後の新会社の採用で参考にされるであろうと考えていると述べています。
以下公企労レポートから再び引用しますと。
【今回この時期におけるボーナス査定と、新会社への選別とは、裏腹の関係にあるのではないでしょうか】ということで、国労に対して強い不満を述べています。
やはり、結果的には関係が出てくるでしょう。新会社へ採用する基準はまじめで勤務成績が優秀なものになるのは当然のことです。国労のようにやりたい放題、文句ばかりいって内部をかき回し、ろくに仕事をしない人でも新事業体にいけるのであれば、何も分割民営にする必要もなく、私ども骨身を削って苦労する必要はないわけです。したがって今回の査定で大幅なカットを受けた人は、はっきりいって成績不良者ということになり新会社への採用はむずかしいということになるのではないでしょうか。
実際に、国労はこの年の8月以降、新会社採用の疑心暗鬼もあって、脱退者が多数を数えあっというまに第2勢力・第3勢力にと転落していきました。
また、今回の査定制度は新会社への採用のいわば「踏み絵」みたいなものであると位置づけている点は興味深いものがあります。
また、鉄労は国鉄改革に早くから真剣に取り組み、当局の施策にも積極的に協力してきたのですから悪い評価を受けることはないと信じていると結んだ上で。
記者は、【その問題について、書記長の地方集会での発言が国会で否定されたという報道がありましたが・・・】という質問をしており、それに対して組合側の見解として下記のように答えています。
再び公企労レポートから引用しますと。
【その問題について、書記長の地方集会での発言が国会で否定されたという報道がありましたが・・・】引用終了
マスコミは、前後の関係を抜きにして、面白おかしく取り上げるから、ああいう表現になるわけで、真意が伝わっているとは思いません。私どもは、何度もいうように、必死に国鉄再建に取り組んできましたし、当局との間には、はっきりと雇用安定協約を結んでいます。私どもが、自信を持っているのは当然のことです。それよりも、そのもんだいを国会でとりあげることにより、国労との間のなれ合い的に雇用安定協約を結ばせようとしている社会党のきたないやり方にははげしい怒りをかんじています。全く許せないやりかたです。
となっており、この辺はもう少し調べてみる必要がありそうですが、社会党【現・社民党】が国労のために鉄労を陥れるための工作を図ったそうで、そんな政党が与党として政治の表舞台で暴れているわけです。
また、鉄労の志摩書記長は、「成績の評価は所属長の判断による」という考え方に対しては、問題があると指摘しています。
以下再び引用しますと。
【成績の評価は、所属長の判断によるということになっていますが、これについてどう考えていますか】引用終了
たしかにここには問題があると思います。私どもとしては、第一にこの査定を管理職にも同じようにやってもらいたい、それだけシビアにやるべきで、これが公正な査定の第一歩と思っています。また、所属長が査定するとしても、現実にそのデータを提供するのは現場の管理職ですからきびしくすべきところはきびしくする。なれ合いでやっては困るということです。
これまで国労の組合が強いところ、鉄労の組織の弱いところで、古い管理体制が根強く残って体質化しているところでは、国労との話し合いでナアナアでやってきたわけです。
それでは困るわけで、その点私どもは、あくまで勤務成績を中心に公正にやってもらいたいと思います。今度の交渉ではこの点特に強調してやっていきたい。
というように、鉄労としては、現場の管理者によるシビアな査定こそ必要と訴えています。
特に、国労の強い職場では過去の団体交渉時代のイメージを助役が持っていて穏便にすませるために、国労に有利な条件を出したりということがあったのですが、そういった事を行わない事を強く求めています。
全施労の賞与査定制度に関する見解
全施労の、滝口書記長【当時】は、全施労も、動労・鉄労と同様当初から労使協調宣言を行うなど国鉄改革に積極的に取り組んできた組合ですが、他の労使協調宣言を行っている組合同様、真面目に働いている職員に正当な評価を受けられる労務管理を望んでいることが述べられています。index
以下、公企労レポートから引用します。
【今回、期末手当の支給について勤務成績を反映するとの提案があったようですが、その背景をどうみておられますか】引用終了
今国会で9法案のうち、退職制度法案が通りました。
それが改革の第一歩という前提に立てば、当局としてはさらにそれを進めるという決意で、民間の手法を取り入れ、民営への方向性を期末手当に求めたのだと思います。同時に、国鉄の職場規律の問題がとかくいわれていただけに、ここでケジメをつけ、労使が世論に対して応える方法はこれしかないだろうとしてこれを出したという背景があると思います。
【従来は悪平等というか、画一的なものでした。勤務成績を評価して、職員の意欲を起こさせるという狙いもあったと思いますが、同時にこれは新会社への選別とは裏腹な関係があるのではないでしょうか】
ある意味では無関係ではないでしょう。たとえば国鉄改革についてお互いに努力、協力するという立場で、真面目に取り組んだものが報われるという姿勢をこのなかでキチンと出したわけですから。改革に対する努力のひょうかというものが、個人的に適用されるわけですから、選別につながることはあると思います。
われわれの場合は国鉄改革に積極的に取り組み、労組が社会の一構成員であるという立場を貫いてきたわけですから、我々の中では全員が選別されることはないと確信しています。しかし、当局にはそういう選別の意図はあると思いますから、われわれとしてはそういう立場で取り組まなければならないと思います。
ということで、当局が導入した今回の査定制度は、いわば職員の選別であり、組合としてはそういったことを十分に踏まえて対応していく事を強く強調しています。
なお、ここで、書かれている、「退職制度法案」とは、法律第七十六号(昭六一・五・三〇)日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために昭和六十一年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律
と呼ばれる法律で、55歳以上の職員に対しては積極的に退職を求めるという趣旨の法案である。
末尾に、法案の抜粋を入れておいたので参考にして欲しい。
さらに、今回の当局が示した基準に対しては、特に不満はなくむしろ、「正直者が馬鹿を見ることのない労務管理」を望んできたわけですから、ケジメを付ける意味でも公いった制度は当然あってしかるべきだと思っています。 ただ、当局が提案している内容のうち、「勤務意欲・態度・知識・技能・適格性・協調性」のうち、「技能・知識」については当然のことながら個人差があるのでこれをどう判断するのかは疑問のあるところであり、勤労意欲をもちまじめに働いている職員の場合、仮のこの二つが多少劣っていたとしても成績が悪いというような判定をくだすべきでないと考えていますがそれ以外の部分は当局の考え方を批判するものではないという趣旨の発言をしており、運用に多少の幅を持たせて欲しいが概ね賛成という立場を貫いています。
また、実際の判定は現場長ではなく所属長の判断となっていることに対して々考えるかという点については下記の通り答えています。
以下、公企労レポートから再び引用します。
【提案では、判断を下すのが現場長ではなく、所属長ということになっていますが、これに対する意見は】全施労は、鉄労や動労と比べても穏和な印象を受け、現場裁量についても所属長が現場長からの意見を正しく汲んでくれることを期待するとともに、他の労使協調宣言を行っている組合とともに、共通の問題点を洗い出していきたいとするなどかなり積極的に調整役に廻っている印象を受けます。
率直にいって現場長の中には、適格・不適格な人もいるわけです。ですから管理者の感情だけで判定するのは許してはいけない。その意味では、われわれが労使共同宣言の立場でやってきたことを報告されているはずですから、所属長はそれを公正な目で判断してほしいということです。
【現場長は、一人ひとりの職員を知っているが、所属長は知らないでしょう】
所属長は、いま労務管理が強化されて、毎日現場長から逐一報告を受けているはずです。もちろん基本的には現場長がデータを出すでしょうが、公正な立場で経営の将来を展望しながら所属長が整理するのは正しいと思います。 【これに対して今後どう対応されますか】
共同宣言を締結した四組合は、今回の期末手当の支払制度に基本的には賛成だと思っていますから、個々に各組合のもった問題点を、できれば今月いっぱいにここの交渉で整理し、その上に立って共通の問題点を、できれば今月いっぱいの交渉で整理し、その上にたって共通の問題を一つにまとめて、同一テーブルでまとめたい。共同歩調をとって妥結し、協定を結ぶようにしたいと思っています。
また、今回の民営化方針が固まったことで、旧態然の労使関係から、共同宣言を締結した四組合を中心とした新しい労使関係に生まれ変わってきており、この流れは民営化されたとしても変わることはないと思われると述べており。 国労中心の、現場協議主義・悪平等主義は姿を消すべきだと述べています。
最後に、法律第七十六号、抜粋を載せておきます。
法律第七十六号(昭六一・五・三〇)
◎日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために昭和六十一年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律
(特別給付金の支給)
第四条 日本国有鉄道総裁は、職員(日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)第二十六条第一項に規定する日本国有鉄道の職員をいう。次項第三号及び第七条を除き、以下同じ。)が業務量に照らし著しく過剰である状態を緊急に解消するため、退職を希望する職員の募集を行う場合において、五十五歳未満の職員がこれに応じて退職を申し出たときは、その者が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、その者について退職を希望する職員である旨の認定を行うことができる。
一 昭和六十二年三月三十一日までに五十五歳となる者
二 日本国有鉄道総裁(その委任を受けて任命権を行う者を含む。)に対しその休職期間の満了する日において退職することを書面により申し出て休職していた者
三 前二号に掲げるもののほか運輸省令で定める要件に該当する者
2 日本国有鉄道は、前項の認定を受けた職員が退職したときは、その者が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、その者に対し、特別の給付金(以下「特別給付金」という。)を支給するものとする。
一 国家公務員等退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)第五条第一項の規定の適用を受けないで退職した者
二 公務上の傷病又は死亡により退職した者
三 退職の日又はその翌日に、常勤の国家公務員若しくは地方公務員又は特別の法律により特別の設立行為をもつて設立される法人その他これに準ずるものとして政令で定める法人の常勤の職員(以下「特殊法人等職員」という。)となつた者
3 特別給付金は、昭和六十二年三月三十一日までに退職した者に対し支給するものとする。
(特別給付金の額)
第五条 特別給付金の額は、退職の日におけるその者の給与のうち一般職の職員の給与等に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)に規定する俸給、扶養手当及び調整手当に相当するものの月額の合計額に十を乗じて得た金額とする。
全文は、下記のURLを参照
日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために昭和六十一年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律
国鉄改革は、国鉄改革関連9法案が国会に提出され、そのうち「国鉄経営改善緊急措置法案(日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために昭和六十一年度に緊急に講ずべき特別措置に関する法律)」については、5月30日に成立し、法律という形で一歩進みました。
また、当局もこれに呼応し、今まで手をつけられていなかった職員の働きによる期末賞与の査定を導入するなど、民営化に向けた取り組みが始まっていきました。
国鉄当局と、労働組合は対立する存在ではなく、ビジネスのパートナーとしての役割を再認識させるそんな動きがみえてきたのもこのころからです。
6月10日には、三塚運輸大臣【当時】と、労使共同宣言を結んだ4組合(動労・鉄労・全施労・真国労)幹部との会談がもたれるなど、少し前の国鉄では考えられないことが起こりつつありました。
三塚大臣は、会合の席上で、「鉄道の新生、再生を図る大事な時期であり、4組合一体となり協議会を作り、改革問題に取り組んで欲しい」と要望しました。
しかし、組合側はそれぞれの組合が抱える歴史や、方針の違いもあるが重大な時期でもあることから検討したいとの考えを示すなど、確実に歴史は民営化に向けて動きつつあるようであるようです。
ただし、動労と鉄労のようにかっては対立する組合として、組合員との確執があったりするのですんなりとは行かないかもしれないが、4組合とも多数は形成のための最大課題であり、ここでイニシアチブを取ることが組織拡大につながることとなるので、一朝一夕には解決できないであろうが、62年4月1日という大きな方向は固まりつつあるので、課題は大きいとはいえ早期に克服されるのではないかと考えられます。
さらに、この時期の国鉄の動きを見てみますと、6月13日に国鉄職員局が6月1日現在の労働組合組織概要を発表 これによると、組合別構成員では国労が第1組合であるのは変わりませんが、2ヶ月ほどの間に、国労の組合員が4400人も減少と発表。
職員の間に動揺が広がっていることというよりも、真国労の結成などによる脱退もあると思われるが国労という国鉄最大組織が音を立てて崩れ始める序章に過ぎなかったのかもしれません。
6月23日には、6月30日からの、早期希望退職者に向けて、再就職の斡旋などを行う「職業相談室」を全国88ヶ所に開設するなどの動きが出ています。
さらに、管理者クラスでも国鉄改革に対する意識が高まってきており、そのあたりを公企労レポートから引用します。
国鉄改革を実現することによって新しい鉄道に生まれ変わろうという国鉄職員の意欲が全国的に盛り上がっている。東京三管理局の現場管理者による「東京三局国鉄改革を推進する会」が6月10日に発会し、国鉄改革推進のためには職員の意識改革が必要であり、管理者も自らの意思で団結し、力を合わせて国鉄改革に具体的な行動をもって取り組む必要があるとしている。それに対して、本発会式に出席した杉浦総裁も国鉄改革の方向ははっきりとレールが敷かれそれに向かってまっしぐらに進んでいる。こうした動きが、明るい立派な鉄道を再生させるものと信じているとあいさつした。引用終了
このような集まりは管理者だけでなく若手の非現業の職員等にも拡がりを見せており、職員有志一同が来る6月29日に集まり、「国鉄改革に取り組む職員の集い」が開催されることとなっている。この流れは、次第に大きくなっており、鉄道再生を目指す国鉄改革はいよいよ正念場を迎えた。
ということで、管理者がまず息を吹き返してきたということ、さらに、非現業部門(鉄道管理局、本社部門)のスタッフクラスが国鉄改革に向けて動き出したことは、国鉄自体が改革を受け入れ自ら変化していくことを受け入れたと言えるでしょう。