国鉄改革に際して、公企レポートで語られていた、国鉄改革について当時の資料を元に、blackcatが語ります。

公企業レポートに見る国鉄改革

序章
国鉄改革とはなんだったのか?
日本国有鉄道が、民営化されて20年以上の年月が経過、昨年の民主党政権誕生で、国鉄改革で最期まで残っていたJR不採用事件は一定の解決が図られることとなったが、あまりにも時間がかかりすぎたことは否めない。
と思う反面、そこまで追いかける必要のあることだったのかと言う考え方もあるのも事実。
そこで、ここでは当時の公企業レポートと呼ばれる冊子に書かれた記事を参考に当国鉄の状況を追いかけてみたい。
ただし、一部散逸した部分もあるので完全ではないことを了承願いたい。
なお、blogで原稿執筆した上で、こちらに反映したいと思うのでそちらもあわせて参照して欲しい。
blog 「国鉄があった時代」で執筆中

最終章 「さよなら国鉄」千変万化、百有余年の歴史に終止符

全役員人事等、3月末の総会で決定へ

4月新会社始動、大詰めの移行準備
概要
4月1日の新会社のスタートまで1ヶ月足らず、国鉄の移行準備は大詰めを迎えているが、これまでに内定した会長(四国を除く)、社長を含む全役員人事、本社所在地、資本金等を定めた定款は、今月中旬の第四回設立委員会を経て、下旬に開かれる創立総会で一斉に正式決定する。新会社に採用された、20万5600余名の配属についても、今月上旬には各社の設立委員が決定。
 これに基づいて国鉄が配属転換計画をつくり、中旬には発令される予定である。幹部職員の異動も2月14日に続き、第2、第3弾として約600名が各地に転出した。また、2月からは各現業機関の業務運営も新会社に合わせた体制に切り替わり、管理局の境界は新会社の営業エリアに合わせて変更される。一方利用者に向けた新生国鉄キャンペーンも開始され、31日の「さよなら国鉄」のイベント、翌日の新会社誕生と一気に進み、同時に国鉄は百十余年の歴史を閉じる。

各社新役員の民間人起用が焦点

▽・・・各新会社のトップ人事は予想以上に難航したが、25日、東日本会社を最後に全て決定した。国鉄改革の狙いは民間の効率的経営の導入にあり、各会社のトップには民間人の起用が強く要請され政府財界は全力をあげて人選に当たった。
 国鉄崩壊の原因が、親方日の丸意識に安住し、思い切った改革が出来なかったかっての国鉄経営陣と、国鉄の収支を悪化させる赤字路線の開設等、政治的要求を退けることができなかった運輸官僚にあるといわれているだけに、より多くの民間の有能な経営者の参加が期待されていたが、結果は民間から会長、運輸省、国鉄から社長という形となった。今後各社別に開かれる設立総会でどれだけの役員が民間から起用されるかが焦点となる。

▽・・・新会社の労働組合は、鉄道労連、国労、鉄産労の三つがてい立する。第二次共同宣言を締結、一貫して改革に協力してきた鉄道労連がほぼ三分の二を占め、今後の労使関係の中軸となるが、鉄産労加入も第一次労使共同宣言を次々に結んでおり、協調路線をとる職員が80%を占め、安定した労使関係の期待は強まっている。民営にあたって最重要視された雇用問題は、政府、一般産業界の協力を得て、当初予想を越えて進展した。北海道・九州では6400余人が不採用となったが設立委員会は4月以降、定員に満たない本州・四国各社に再募集を指示している。
労使関係とからんでこの成り行きも注目される。

▽・・・多くの民間人が、トップ就任をしぶったことに見られるように、新会社の未来は決してバラ色ではない、当分は茨の道は続くだろうが、人材、技術力、隠れた経営資源は決して少なくない。これらを十分に活用すれば将来の発展は不可能ではない。国鉄をさった人達を含め、多くの国民は今、期待をこめて見守っている。

労使一体で鉄道事業の再生活性化を図り円滑な業務進め、与えられた責務果す

国鉄池神常務理事のインタビュー
「新会社での円滑な業務進行へ職員の具体的配置急ぐ」
【国鉄改革もいよいよ総仕上げの段階に入りましたが、今後どのような点に配慮されて新会社への移行を進めていくことになりますか】
 残された時間はあと1ヶ月足らずですが、職員の採用については先の設立委員会で決めていただき、それぞれの職員に対して採用通知も終わりました。
その内容についてはご承知のとおりですが、これからはそれを基にして、新会社において業務が円滑に進むようにそれぞれの職員の具体的な配置箇所の決定を急ぐことになります。鉄道は一日も休みなく走り続けなければならないわけですから、新会社の業務が円滑に進むような職員配置を決めなければなりません。
 ここまで来ますと、今一番頭の中にあるのは、国鉄からそれぞれの新会社で職員配置を含めて全てがスムーズに移行すること、言いかえれば,お客様、国民の皆さんへの輸送サービスの提供にいささかの支障もきたさないように総力をあげていきたいということです。
 このほか、設立委員会から職員の採用の決定はいただいたわけですが、本州・四国の旅客会社及び貨物会社は、基本計画で示されました採用予定人員を割っております。他方、北海道・九州については、全く逆の結果となっております。これについて、先日の設立委員会の中で4月以降できるだけ速やかに、北海道・九州の採用もれの人達を対象として再募集を行うよう指示がありましたので、そのための準備も今行っているところです。

【これは、新会社の手で行われることになるのですか】
 4月からは新会社になりますが、しかしできるだけ速やかに再募集が出来るように、また、多くの人が北海道・九州から本州に移れるように、3月末まで現在の国鉄として最大限の手立てをし、4月から直ちに再募集が出来るようにしていく、ということです。

【国鉄の長い歴史を通じて、これまでいろいろなことが労使の間にあったわけですが、現状から見て。新会社における労使関係は安心だとお考えですか】
 昨年来。国鉄の労使関係も大きな変動がありましたが、その中で国鉄改革に対して積極的に協力する、あるいは改革に理解を示す職員が非常にふえてきました。
その人たちで構成される組合がいわゆる鉄道労連を中心に、2月1日現在で全体のほぼ3分の2を占めています。この傾向は今後も進んでいくものと思いますが、その意味では、各新会社において、言わば安定した、信頼関係のある労使関係の基盤が、次第に出来上がりつつあると考えています。 【いずれにしましても、完全な一本化はならず、労々間、労使間とも複雑なっまで移行することになったわけですが】
 確かにある時期には非常に多くの組合がありましたが、今年に入ってから、それが統合しつつあります。その中で一番大きな流れとして今申し上げた鉄道労連が2月2日発足しました。

【第2次共同宣言を結んだ組合は一本化されましたが、国労が二つに分かれ、一方が鉄産労という形になっており、その間の関係も分かりにくい点があるようですが】
 鉄産労加入の組合については第一次労使共同宣言は締結したところが沢山でてきました。その意味では、大きく分ければいわゆる改革協グループ、鉄産労の流れ、それと現在の国労の三つになります。ただ、組合のウエイトから見ますと、労使共同宣言を締結した組合に所属する人たち、改革に協力するという立場に立った人たちが全体の八割近くを占めることとなり、従来とは全く逆の形になっているということがいえると思います。

【大変な苦労をされてここまで来られたわけですが、一段落した今、ふり返ってどのように評価されておられますか】
 一年前に想定された姿と比べますと、大きく様変わりをしました。職員の雇用対策という面では、政府をはじめとした公的部門、一般産業界等、各界のご協力をいただいて相当に広く展望が開けたのではないかと思います。しかし、雇用先の決まっていない職員が、北海道・九州を中心にまだ残っておりますから、引続き現国鉄として一生懸命やらなければならないと思っています。ここまできた以上、一片の心残りのないようにしたいわけで、今後も各界の一層のご協力もお願いしなければなりませんし、そのためにも自助努力の限りを尽くしていかなければならないと考えています。

【今後の鉄道のあり方、問題点、見通し等についてお伺いしたい】
 これからの新しい旅客会社、貨物会社は、現在国鉄の行っている鉄道事業を中心として、新しい経営形態のもとでスタートするわけです。やはり、民営化された会社ですから、皆が一丸となってそれぞれの会社が、きちんとやっていけるように頑張らなくてはなりませんし、そのことが国鉄改革の過程において、希望退職に応じた人たち、あるいは別の企業に転職されていった人達に対するいわば神聖な義務であろうと考えます。その人たちから、それぞれの会社がちゃんと育っているなというように思ってもらえることが、国鉄を去っていった、また去っていく職員の気持ちに応えることではないかと思います。
 いままで国鉄の労使関係なり、多くのことについてご批判をいただいたことは、労使ともども反省をしなければならないことが多いと思いますが、本当に、今回の改革を鉄道事業の再生、活発化の最後の、唯一のチャンスとして、それぞれの各社において、新しい経営者、組合、または組合員との間で、本当に新しい鉄道事業と、安定した相互信頼に基づく労使関係をつくりあげていきたいと思います。
 もちろん、企業ですから、業績をあげることを中心にしなければならないのは当然のことですが、一面、やはり鉄道事業を運営していく以上。それぞれの地域に対しての、社会的使命があるわけですから、そうしたものにも応えられるよう、それぞれの地域でお役に立てるような会社に育てていかなければなりません。
そのために、その基礎づくりに向けて、残り期間は短いのですが、我々としてもやるべきことは最後まできちんとやっていかなければと考えています。

【春闘シーズンになりましたが、ベースアップ等について、新会社としてはどのようなことになるのでしょうか】
 これにつきましては、新しいそれぞれの会社で、それぞれ労使の立場で考えることだと思っています。新会社が発足した段階で、一定の意見の交換等があると思いますが、いまはお答えする立場ではありません。

「新会社は新しい器を作り新しい経営者を迎えたい」

鉄道労連、志摩会長のインタビュー
【新会社の首脳人事も決まりましたが、どのように見ておられますか】 従来から我々は国鉄改革について国鉄官僚が大半の経営責任を追うべきだと言っており、新会社は新しい器を作り、新しい経営者を迎えることを申し上げてきたので、会長が財界から就任されたことは良かったと思います。四国は会社の規模から見て会長はいらないのではないかとわれわれは主張してきましたが、結果的に相談役ということに落ちついてあれで良かったのではないかという気がします。ただ社長人事が運輸、国鉄官僚の横滑りでは問題です。どんなに優秀な人であっても、運輸官僚と称する人たちが国鉄の事情を知って就任されたのか、国鉄改革に沿った経営をどのようにやっていこうとするのかがはっきりせず、信号待ちでこられたのでは問題です。依然として政治家・政府の介入で人事がなされたとすると、正に国鉄改革としておかしな人事だと言わざるを得ないと思います。国鉄官僚の場合、国鉄経営の責任を問われたのは正にこの人たちですから、社長になっていくことは我々は賛成だというわけにはいきません。現場の職員がこの人事を見て、どのような感情を抱いているか気がかりです。 【新会社が安定した経営を目指すため、首脳部に望むことは】 まず、早く鉄道労連の幹部と意思疎通を図って欲しいですね。トップ人事が決まって、労働組合も一本化されてきたに拘らずそのルートが敷かれていません。第一の注文は姿を見せて欲しいです。 二つめは国鉄総裁と我々が新事業体としてあるべき姿を第二次共同宣言で示したわけですから、これを新しい経営者の方が読んでいただいて第二次共同宣言を守ってもらいたい。 それは反故なんだよという人がいれば、指摘をしなくてはと思います。 三つ目は財界あるいは運輸省、国鉄からこられた人が、なぜ国鉄が今のようになったかを厳しく反省して経営の任に当たっていただく、特に労務対策に意を配して欲しい。東日本は過激派と言われる人たちも含まれていますし、労務対策が再び国鉄時代に戻らないよう、民間であることを弁えてやってもらいたいと思います。 四つ目は国鉄改革で大半の人達が苦労して来た訳です。法律によって国鉄改革が出来たのではなく、具体的に推進して来たのは人、労働者ですから、広域異動、派遣あるいは現場で張りつめた気持ちを持って頑張った人たちの気持ちを察する施策をやってもらいたい。 五つ目は本来採用されない人達を基本計画により採用したわけですから、この人達を絶対に本務につけないということをやってもらわないと、もともと国鉄改革に反対な訳ですから、本務についてドライバーや車掌をやりますといつストライキをやるかわかりません。こんなことをやらせていることは民間ではなじまない訳ですから、絶対の頭の中において経営にあたって欲しいと思います。最後は、どんなことでも従業員の意見に耳を傾ける気持ちを持ってもらいたいし、経営は経営者の責任であると割り切って経営責任をとってもらえるキチッとした基盤づくりをして欲しいと思います。新しい経営者にはそのことを強く望みます。 【新会社の労働組合組織は大別して、鉄道労連、国労、鉄産労。それと労組法下に従来管理体制にあった人たちという、四つのグループに分かれると思いますが、安定した労使関係を目指すにはどのような取り組みをされますか。】 管理者の人たちは全国縦断的組織を作られると思いますが、一本立ちは出来ないと思います。組合の経験がありませんから、結果的には3本立てになると思います。この人達は改革に取組んできた人達ですから、鉄道労連傘下の組合になってもらうよう取組んでいきたいと思います。4月1日以降は明確に残るのは鉄道労連、国労、鉄産労の三つが鼎立(ていりつ)することになります。安定した労使関係を目指すには、事業体を自分達のセクト、イデオロギーで食い物とする集団については徹底して排除していきたい。国労を脱退して一次共同宣言をした人達は早く労連に入って一企業一組合を目指してもらいたいと思っております。この人達は共産党、協会派の運動のあり方を批判して脱退したのですから、共産党、協会派に対決してもらう、これが当然の流れと思います。この流れがなければこの人達はなぜ国労を脱退したのか筋がとおりません。 【賃金要求に対する取り組みは新会社に対して行うということになると思いますが】 具体的には要求額、要求提出日はきめておりません。国労が12.5%の要求をしたそうですが、どこに向けて要求したのか、国鉄総裁に出し、4月から新しい会社に出すのだと言っているようですが、発想として公企体の発想の域を出ていないと思います。我々はゼロでは駄目だと思っておりますし、改革に汗を流して来たうえに、3年も4年も給与抑制をやられた訳ですから、少なくとも人並みの賃金だけは確保したいのが基本です。従って要求の時期が多少ずれ込むことがあっても新しい経営者が決まった時点で、この経営者に対して労連として全国一本の要求をしてみたい。団体交渉は各社別になりますから、各地方連合の中でやっていくことになると思います。要求額は民間の動向とか国鉄の今までの給与のあり方等を十分議論したうえで、あまり世間から批判を受けるような要求はしたくないと思います。これから何十年も自決していく訳ですから、新しい経営者とお会いして賃金のあり方についての考え方を聞いたうえ3月下旬中央委を開き決めようと考えています。 【本州・四国が基本計画の規定人員を下回ったことから、北海道・九州の不採用を対象に再募集が行われる予定とのことですが】 マスコミでいろいろの論評がありますし、基本計画数を下回った本州・四国があるのに、北海道・九州では約七千名位採用通知がもらえなかった人がいる。当然この人達は本州に戻すべきであるという国労の主張もありますが、国鉄改革は会社をいくつに分割するかより、雇用問題がもっとも重要だと言われてきました。従って政府にも雇用対策本部がおかれ、公的部門、民間会社にお願いして受皿作りが行われて来た訳です。九州・北海道といった受皿の少ない地方のために二回に亘って広域異動をやり、調書提出のときにもラストチャンスとして今からでも遅くないから本州を希望すれば採用されますよとやったのですが、それでも反対したのですから、不採用が出たのは当然です。自分達が反対して採用通知がもらえなかった、けしからんというのは理に合いません。不採用者を出さないために広域異動をやった議論を忘れてもらっては困ります。4月以降新しい会社が北海道・九州の人達を再度広域採用することは基本的には理解しますが、労連の組合感情として馴染まないことです。国鉄の改革に反対した人達は清算事業団に入ってもらい、三年間訓練してもらえば良い訳です。今になって当局の施策は失敗であったとか、我々の首を切ったと言っても多くの方々の共感を得ないと思います。 私は新しい会社からそのような提案があったとすれば基本的にもう一度説得して守ることが、本来だと思いますし、これがなければ労働組合ではありません。いずれにしても正直者が馬鹿を見ないようにすることが大事です。 以上

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