参議院 第72回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第10号 昭和49年3月15日

第072回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第10号
昭和四十九年三月十五日(金曜日)
   午前十時三十四分開議
 出席委員
   委員長 角屋堅次郎君
   理事 坂本三十次君 理事 登坂重次郎君
   理事 林  義郎君 理事 島本 虎三君
   理事 土井たか子君
      大石 千八君    田中  覚君
      戸井田三郎君    羽田野忠文君
      渡辺 栄一君    岩垂寿喜男君
      小林 信一君    佐野 憲治君
      米原  昶君    岡本 富夫君
      坂口  力君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (総理府総務長
        官)      小坂徳三郎君
 出席政府委員
        環境政務次官  藤本 孝雄君
        環境庁長官官房
        長       信澤  清君
        環境庁長官官房
        審議官     橋本 道夫君
        環境庁企画調整
        局長      城戸 謙次君
        環境庁大気保全
        局長      春日  斉君
        運輸省鉄道監督
        局国有鉄道部長 住田 正二君
 委員外の出席者
        日本国有鉄道常
        務理事     内田 隆滋君
        参  考  人
        (名古屋新幹線
        公害対策同盟連
        合会会長)   干草 恒男君
        参  考  人
        (名古屋市公害
        対策局長)   山田 _一君
        特別委員会調査
        室長      綿貫 敏行君
    ―――――――――――――
三月十四日
 自然保護の見地より山梨県の自然公園道路計画
 中止に関する請願(金丸徳重君紹介)(第二六
 六三号)
 同外二件(清水徳松君紹介)(第二六六四号)
 同(金丸徳重君紹介)(第二六八九号)
 同(清水徳松君紹介)(第二六九〇号)
 同(瀬野栄次郎君紹介)(第二六九一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 公害紛争処理法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第七二号)
 公害対策並びに環境保全に関する件(新幹線騒
 音問題)
     ――――◇―――――
○角屋委員長 これより会議を開きます。
 公害対策並びに環境保全に関する件、特に新幹線騒音問題について調査を進めます。
 本日は、参考人として、名古屋新幹線公害対策同盟連合会会長干草恒男君及び名古屋市公害対策局長山田_一君が御出席になっております。
 この際、委員会を代表いたしまして、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、また遠路にもかかわらず、本委員会に御出席していただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。
 本委員会といたしましては、公害に関する苦情の中で、最も件数の多い騒音、振動対策樹立のため鋭意努力を重ねておるところでありますが、御存じのとおり新幹線による騒音、振動等による公害が深刻な社会問題となっている現状にかんがみ、去る三月九日には、委員を派遣し、名古屋市内において現地の実情調査を行ないました。本日は、同地域において、日ごろこの問題解決のために努力されている御両人の御意見を承り、もってその対策に万全を期したい所存であります。何とぞ両参考人におかれましては、それぞれのお立場から、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 なお、議事の整理上、御意見の開陳は、おのおの二十分以内といたしまして、あとは委員の質疑にお答えいただくようお願いいたします。
 それでは、干草参考人からお願いいたします。干草参考人。
○干草参考人 私が、ただいま御紹介にあずかりました名古屋新幹線公害対策同盟連合会会長の干草恒男と申すものでございます。会長というと、えらいりっぱな名前なんですが、実はビラ配りが本職なんであります。会員は、すわっておって、文句を言うが、会長は毎日ビラを印刷して配っている、こういうのが会長の仕事であります。本日は、こういうたいへんりっぱな席にお招きあずかりまして、ただいまは、また御丁寧に委員長さんのおことばをいただきまして、ありがとうございました。
 私たち、新幹線公害の、いわゆる高架橋の下で十年も住んでおりまして、今日に至っては死にもの狂いであります。私のからだもちょっといかれている。これは新幹線病といっております。家内も去年の五月十三日には、新幹線をのろって、なくなりました。こんなことが十年も日本の国はへっちゃらとして行なわれているのだ。しかし、幸いにして、きょうは、衆議院の公害環境特別委員会の席に呼ばれまして、この苦衷をお訴えできることは、ほんとうにうれしいです。もう死んでもいい。これはおそらく東海道新幹線、山陽新幹線の沿線住民、少なくも三十メートル以内に住んでいる人たちは、ほとんど同じでありまして、きょうのこの喜びを知るなら、おそらく随喜の涙を流すと思います。
 最初に、私たちの運動は、純然たる住民運動でありまして、特定のイデオロギーとか思想とかというものに関係ありません。ほんとうに利害関係に立脚した運動でありまして、誤解のないようにお願いしたいと思います。まあ最近やかましく言われまする総合開発法とか日本列島改造論とか、そんなものはてんで関係がない。特に最近、私どもの住民運動に国鉄の労組が非常に同情してくれまして、名古屋地区においては、スピードダウンなんかやっておりますが、これは、彼らは彼らの自主性に基づいてやっておる行動であって、私どもは、これに感謝の意を表しました。これも、われわれのうれしいという気持ちをあらわしたので、この間に別に頼んだとか頼まれたとかいう関係は毛頭ありません。住民運動が何だか労組の運動になっているんじゃないかというような誤解を招く節もありますので、この際、特に御理解を得たいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、短い時間でありまするので、大体要領だけを簡単に申し上げて、皆さまの御理解を得たいと思いますが、大体十年間も苦しめられて、恨みつらみを一日ぐらいしゃべったって尽くせるものじゃない。だが、きょうは二十分ということでありますので、簡単に新幹線からどんな被害があるかということを申し上げますが、私の個人の体験に基づく話が多いと思いますが、これはおそらく三十メートル地内にあるうちはみな同じでありますから、そのようにお聞き取り願いたいと思います。
 大体、私のうちは高架下といっておりますが、かわらの屋根の端と新幹線のスラブの端がすれすれで、土地の境界は国鉄の土地と私の土地が敷地一本であります。こういうのを称して、いわゆるゼロメートル地帯といっております。朝六時半にびゅうっと新幹線が来ると、まず強烈な風圧で私のうちの横っつらをばんとたたきます。これが大体時速二百キロでありますと、秒速に換算してみると五十五メートル。御承知のように台風で三十五メートルという台風は相当に力を持っている。これが秒速五十五メートルの風圧だ。今日まで計算してみると、私のうちはすでに五十何万年もこれでたたきつけられておる。力というものには法則というものがあって、一定の力ではあるが年々これは大きくなる、これは原則だ。最近はごうっと来ると家がみしみしといいます。なれておる私たちでも不安がつのってきて何とも言いようない心配が起きてきます。これは風圧です。便所の戸、応接の開き戸なんか、ひとりでにぎいっとあいてしまう。
 その次に騒音、振動が来ます。騒音は大体八十五ホン、大体八十五ホンとか八十、こんな数字はぼくは気に入らないんだ、こんな数字みたいなもの。音には圧力というものがある。ピアノの高音部をたたいたって、ぽんとあれは百ホンくらいになるんだ。ところが、私のうち八十ホンか八十五ホンでも非常に圧迫感がある。何とも言えぬ不安を感じる。振動が三・五ミリ、これは一秒間にゆれる幅ということであります。この間、中部地方にはちょっとした地震がありました。これはだれも知らなかった。テレビを見ておったら地震だ、震度四なんという地震か、あああれは地震だったな、そのぐらい私たちはなれているのです。
 この風圧が来ると、まず勝手わきのたなの上に茶わんかごを置いてある。それが、がちゃんと落ちる。毎日ではありませんが、三日に一回ぐらい落ちる。コップや茶わんを割ったことは数知れず、水屋の上に茶かんやびんが置いてある、これが振動で前のほうへ出てくる。三日に一ぺんくらい直してやらぬと、ほうっておくと落ちるんだ。二階の壁なんかひどいものです。みんな柱のすきが割れちゃって、そこが見える。冬ともなれば寒い風がびゅうっと入ってくる。
 うちの近所には、浜洲国義さんといって、りっぱなうちがある。そこの二階に上がってみると、柱がこうなっちゃって建具がこうなって、六センチぐらい下がすいている。二階の廊下、こんなになっている。まだそのうちは建ててから九年くらいしかたってないです。
 ひどいところは基礎が下がって、横がぶらぶらしている。ふろ場にタイルを張ってあるところは、おおむねタイルが割れてお湯が漏ります。何度直してもだめだ。みんなポリの容器を入れたり、木製の浴槽を入れて使用しております。それでもこういう財産的な被害は金を出しゃ直る、国鉄は時価で補償すると言っている。金をもらえば直る。
 ところが、最近私たちはからだのほうがどうもいかれだした。みんなからだの不調を訴えています。これは毎日やはり八十ホンから八十五ホンという騒音、三・五ミリというような振動で朝から晩まで、終列車は十一時半です。大体十時ごろに床の中に入りますが、もう寝るといかぬですね。まだ起きて立ったりしているうちはいい、寝るといけない。からだ全体が電気あんまにかかったように、こうゆすれる。どうしてもいけない。十一時半までは寝ることはできません。朝は六時半に起こされます。
 大体現在一日に二百本、六時半から十一時半まで時間帯にすると十七時間、分にしてみると千二十分、これを二百で割ると、五分半という間隔だ。五分半ごとにごうっという騒音とびりびりという振動が家じゅうをゆさぶる。これが十年間続いているのだ。新幹線というものは便利がよくて、大げさだが、これは拍手かっさいで迎える。これは私どもも認めております。たいへんなメリットがある。だけれども、この高架下で十年も住んでおる私たちは、どうもこれは納得できない。腹に据えかねるところがある。この面を私たちは今日まで気違いのようになって訴えておるのであります。
 大体いまの振動、騒音だけではなくて、北側のうちは、日照権があります、日が全然当たらない、一日に四十分くらいしか当たらない。冬などは、ほんまに行ってみると寒々として、こんなところではとても人間が住めるものじゃないという、そういう感じを痛切に思う。
 それにもかかわらず、国鉄は防音壁をつくると言っている。現在四段のブロックが積んである。その上に一メートルのスレートで、こうまたかさ上げしている。北側の人は全然日が当たらなくなるからいけないと言っているが、そういう要求を無視して、国鉄は防音壁をつくるのだ。しかもあれは一メートルに十数万円かかるということであります。膨大な金です。で、効果があるのならいいです。大体、ほとんど効果はない。やっても、二ホンか三ホンは下がる。八十五ホンが八十二ホンになっても、住民の感情はちっとも変わらない、そんなものは。そんなばく大な金を、どぶの中に捨てるような金だ、そんな金を使って国鉄が防音壁をやると言っておる。まだガラスか何かでやってくれればいい。そんなものは、とてもないからスレートでやる。われわれ住民は理解に苦しむのです、ばかなことをやりやがると。
 それから、この私たちの運動にこういうことを聞きました。これは国鉄のやはりえらい人からの話ですが、鉄道は明治時代から走っておるのに、なぜ新幹線ばかり騒ぐのだろう、こう言われると、私ども実はちょっと反省をしたことがあるのです。これは個人エゴか、地域エゴか、そういえばそうだと。しかし、いろいろ調べてみると、明治時代の鉄道は時速二十五キロ、こんなものは問題にならぬ。昭和三十七年の一番速い超特急こだまが平均時速八十二・七キロ、そこへもってきて新幹線が、突如として時速二百十キロというおそろしいものが出現した。しかも、これが徳川時代から何のへんてつもない木造家屋の軒先をすれすれに走っておる。
 あれは幅は三メートル五十で、高さが四メートル。ひかりなどは長さが四百メートル、幅も広い。いままでの汽車より幅も広い、大きい。そうして乗車定員も多くて、一千人乗せると総重量が一千トン近くになる。そういう巨大な物体が何のへんてつもない人家の木造家屋の軒先を空気の抵抗を排して時速二百キロで走ったら、これは公害が起きるのはあたりまえだ。いままでの列車に見られなかった新しい公害が生まれたんだ。それに対して私たち沿線住民は悲鳴をあげだした、これが最近の私たちの偽らざる心境であります。
 新幹線はたいへん便利がいいのですが、あれをほんとうに走らせるのなら、私どもの素朴な考えなんですが、新幹線が都市と都市とを結ぶ最も早い時間にするために必要なものなら、何もそんなものは人家のまん中を走る必要はない。郊外を走ればいい。家のないところを走らせればいいじゃないですか。駅をなるべく一つにしたいというから、あんなことになるかもしれませんが、駅みたいのは二つつくればいい。駅を二つつくって郊外を走らせるべきです。それができないというなら、少なくとも五十メートルの緩衝地帯は絶対にとらなくちゃいけない。それもできないというなら、せめて時速を八十キロ以下に制限すべきだ。人間はあんまり便利のよさを要求して自分の生活環境を破壊しておる、そう思うのです。
 私は別にこういう小むずかしいことを言わないのですが、これが十年間新幹線の高架下に住んで、ほんとうににじみ出た体験だ。昔の人間です。明治時代に生を受けて、ほんとうに恥ずかしいが教育勅語で大きくなった人間だ。むずかしいことを知らない。だけれども、どうも頭の中が狂ってきまして、最近は過激思想になりつつある。こんな老人がたいへん過激な思想を持つようになった。極端ですが、ときにはほんまに新幹線をひっくり返してやろうと何ぼ思ったかわからぬ。かろうじてそれを自制して、今日までがまんしておる。
 幸いにして、今度名古屋では裁判をやろうじゃないかということになりまして、若い先生方が大ぜい味方になってくれまして、一応この問題も爼上に乗りました。こんなことが合法的なのか。私どもは初めは国のやることだから、あんな国民の困るようなことはやらないだろう、合法的に違いないと思ってあきらめておったのです。ところが、だんだん自分のからだがいかれ、家が傾き、どうも変だということからいろいろ勉強もして、事新幹線の振動、騒音に対しては、どなたにも負けません。そうして人間は、健康な青年の体力のある人間でも、騒音に対して耐え得る生活というものは、せいぜい六十五ホンまでだ、こういう確信を持つに至っております。振動は〇・五ミリ、これ以上になったら、もう絶対にだめだという確信を持つに至った。夜間は騒音は少なくとも四十五ホン、振動は〇・三ミリ、これでなければ人間は安眠できないぞ。いま新幹線が全国的に通ったら、寝台車が走るといっている。この状態で寝台車が走れるのか。
 いま名古屋は、ちょっとおこがましいですが、新幹線公害のメッカみたいなもので、日本じゅうから名古屋へ来ます。東北新幹線、山陽新幹線、上越新幹線、日本じゅうから名古屋へ来ます。そうしてあの沿線を連れて歩きますと、みんなびっくりぎょうてんして帰っていって、反対運動をみんなやっています。失礼ですが、この運動はいま日本全国手をつないでおります。国鉄がこの公害対策を検討しないと絶対に通りません。
 どうかひとつ委員の皆さまにおかれましても、この苦しい私たちの状況をとくとおくみ下さいまして、今後何とか助けていただきますようにひとつお願いいたします。きょうは、ほんとうにこういう席上でこういう訴えをさしていただきまして、ほんとうにうれし涙でむせぶような次第であります。ほんとうにありがとうございました。何とかしてひとつ助けてください。お願いいたします。(拍手)
○角屋委員長 ありがとうございました。
 次に、山田参考人にお願いいたします。山田参考人。
○山田参考人 私は、名古屋市公害対策局長の山田でございます。
 去る三月九日には、諸先生方が国会中でありながら、わざわざ御来名賜わりまして、現地視察をしていただきまして厚く御礼を申し上げます。また本日は貴委員会で私どもの話を聞く機会を得させていただいたことを、重ねて御礼を申し上げる次第でございます。
 それでは時間をおかりしまして、名古屋市における状況を申し上げたいと思います。
 東海道新幹線は昭和三十九年の十月に開通以来、現在その運行本数が名古屋市内で一日二百八本に達しておるわけでございます。
 この新幹線の計画でございますけれども、昭和三十五年の五月に国鉄から路線決定の通知を受けまして、種々協議をいたしたわけでございます。そのうち、公害防止につきましては鋼げた橋、すなわち鉄橋でございますが、これの廃止、それから側道の設置を申し入れたわけでございます。しかしその当時、オリンピックなど国家的な要請の問題、国家的な事業であるというようなこともございまして、種々の事情によりまして申し入れどおりの実現を見なかったわけでございます。
 こうした状況下で建設されたわけでございますが、現在の新幹線の概況を申し上げますと、市内の中央部の建物の密集地を縦断しておりまして、その延長は約十八・九キロ、そのうちの三分の一が住宅地域を通っておりまして、あとの三分の二は工場地域を通っておるわけでございます。
 この構造でございますけれども、一部掘り割りがございますが、ほとんどがスラブ高架と盛り土高架になっておるわけでございまして、その中に八つの鋼げた橋と申しますか鉄橋があるわけでございます。
 列車速度につきましては、すべての列車が名古屋駅に停車いたしますけれども、市内の約十キロの部分は上下線とも二百キロのスピードで走行いたしておる現状でございます。
 次に、本市に寄せられました公害関係の苦情の内容でございますけれども、一番多いのは騒音、振動でございまして、騒音につきましては、先ほどのお話にございましたように、列車の通過時の騒音、それから夜間に保線工事を行ないますこれの騒音の二つがございます。被害の訴えとしましては、電話が聞こえないとか、あるいは安眠できないとか、あるいは乳児が乳を飲まないとか、あるいは病気になっても療養ができぬとか、ノイローゼになるとかいったものまでございまして、日常の生活に相当の阻害があるということが寄せられておるわけでございます。
 振動につきましては、列車が通過しておるところが、ほとんどが地質的に申しますと沖積層でございますので、非常に軟弱でございます。振動がそれだけにまた激しいわけでございまして、初めは振動があるというので精神的な被害として訴えられておったわけでございますけれども、開通後七、八年たちまして、壁が落ちるとか、あるいは物が落ちるなどの物的被害の訴えが加わってきておるわけでございます。
 そのほか、テレビ障害でございますとか高架の下の衛生問題、蚊とかハエとか雑草があるとかいうような問題でございます。それから漏水、上から水が漏るとか、あるいは落石、石が落ちる、あるいは日照権の問題、あるいは風圧により戸がびりびりいう、あるいは雪のかたまりなどが飛散するとかいったものがございまして、精神的な被害の訴えもございますが、日照など生活環境に対する被害の訴えがございまして、非常に多種多様になっておるわけでございます。
 次に、公害に対します住民の動きでございますが、昭和三十九年十月に新幹線の開通の時点から、列車が通過するときの騒音、振動につきましては沿線住民から苦情があったわけでございますが、正式に名古屋市に陳情されましたのは昭和四十年の六月からでございまして、当時いずれも限られた地点において問題があったわけでございます。代表的なものとしましては、古新町、これは鉄橋でございます。六番町、忠治町などの鉄橋付近からでございました。その後四十五年の十月に、南区の豊代町で新幹線によりますテレビの映像が乱れる、これは列車の通過のときに約七秒ばかり映像がゆれるわけでございますが、このテレビ障害に抗議する会が発足いたしました。そしてNHKのテレビ受信料の不払い運動が始まりまして、これが反響を呼びまして、大部分の地区に波及いたしまして、地区のつながりを持ち始めたということでございます。
 その結果、これらの沿線住民が、テレビ障害ばかりでなしに、さらに騒音、振動による被害も長年月にわたって受けた、苦痛に悩まされて受忍の限度を越えたということで、昭和四十六年十月に、名古屋新幹線公害対策同盟連合会が結成されたわけでございます。それから新幹線公害に対します活動が非常に激しくなりまして、今後また、ますますエスカレートするだろうというふうに考えるわけでございますが、この新幹線の住民の動きといいますのは、初め点でございましたのが線になり、さらに面になってきたというふうに考えるわけでございます。
 先ほども干草会長からのお話にありましたように、本年の二月三日には、沿線の住民五百八十九名が、今後は裁判で決着をつけるんだということで、それ以外に解決の道がないというふうに考えられまして原告団を結成して、三月の末ごろを目標に訴訟の準備を進められておられるわけでございます。
 次に、名古屋市と国鉄との折衝経過でございますけれども、名古屋市としましては、新幹線の騒音の実態をまずつかむことが必要であろうということで、昭和四十二年の二月に実態調査をいたしたわけでございます。これをまとめまして、その結果、鋼げた橋をはじめ騒音レベルが全般的に高いということもございまして、この調査結果を添えまして、国鉄に対しまして騒音防止についての善処方を要望したわけでございます。
 御承知のように、当時といたしましては、新幹線の公共性というものと、新幹線の問題が法の対象外になっておったということもございまして、折衝するにもなかなか進展を見なかったわけでございます。その後四十五年から四十六年にかけまして、学校とか病院などのいわゆる公共施設、それから鉄橋二カ所についての防音対策が国鉄側において講ぜられたわけでございます。しかし、その結果は、鋼げた橋におきましては十ホン程度下がったわけでございますが、さらに学校とか病院のところでは二、三ホン程度の減音を見たわけでございますけれども、全体として騒音レベルが高いということから期待をした効果がないということで、とうていこれは住民の納得を得られるものではなかったわけでございます。
 この新幹線対策の同盟ができまして運動が活発になりまして、市にも陳情とか請願がその後相次ぎましたので、国鉄と折衝を続けまして、四十七年の七月には、第一にスピード制限の問題、二番目には鉄橋の対策、三番目に防音壁の設置、それから四番目には振動の実態調査、五番目に緩衝地帯の設置、六番目にテレビ障害の対策、七番目に高架下の環境対策、八番目に深夜運行の禁止、九番目に日照妨害の対策、十番目に被害補償の十項目にわたりまして、国鉄に対しまして善処方を要望して、さらに八月には、市長みずから国鉄本社に出向きまして、いま申しましたような内容について要望したわけでございます。
 この要望に対しまして国鉄からは、スピード制限については、都市間を高速で結ぶという新幹線の使命を失うので、社会的影響も大きいから実施が非常に困難であるという御回答を賜わっております。緩衝地帯の設置につきましては、国鉄だけでは実施しかねるので、市側において行政上特段の配慮をしてほしいということでございます。深夜運行の禁止につきましては、社会の輸送要請上、深夜運行を規制することは国鉄に課せられた公共的な使命を果たすことが著しく困難になるということで、いま申し上げましたような三項目については、きわめて困難であるという回答を得たわけでございます。その他、鉄橋の対策でありますとか、防音壁の設置、テレビ障害の対策、日照妨害対策などにつきましては、一応検討するとか、あるいは逐次実施していく、あるいは研究するなどの前向きの回答をいただいておるわけでございます。
 なお、この間におきまして、名古屋市議会におきましても、新幹線公害につきまして、まず第一に、沿線騒音は道路に面する地域の環境基準内にしてくれ、二番目には、効果的な措置がなされないときにはスピードダウンをされたい旨の意見書を関係大臣並びに国鉄総裁あてに提出されておるわけでございます。
 九月の回答では、住民の納得する対策が見られないので、市では暫定措置としてのスピード制限と、それから根本対策であります緩衝地帯の設置、また博多までの延長に対する深夜運行の住民の不安を除くということで深夜運転の禁止、この三点にしぼりまして、四十八年三月に、市の助役が国鉄本社に出向きまして要請したところでございますけれども、この要請に対しまして回答が寄せられておりますが、前の回答より前進がしていないということでございます。
 その後、振動に対します物的補償の問題について一応実施をするというような回答を得たわけでございますけれども、国鉄と住民との間の補償条件に若干の相違がありますし、住民は適切な補償を求めておったので、四十八年の五月に再び市長が国鉄本社に出向きまして、前のスピードダウン、バッファーゾーン、それからもう一つ、深夜運行の禁止と、これに物的補償を加えて四つを要望したわけでございます。この結果、国鉄側におかれては、緩衝地帯の必要性は認めると同時に、また深夜運行についても慎重に検討する旨の前進した回答は得られた次第でございます。
 東海道新幹線について、その概要を述べさしていただいたわけでございますが、現在問題になっております点は、小さい問題でございますが、国鉄から打ち出された措置として延べ二キロにわたる防音壁の工事があったわけでございますが、先ほどもちょっと干草会長が触れられたわけですけれども、距離が相当離れて三ホン程度の減音がある。しかし高架に接する部分、いわゆる高架の直下ではその効果がほとんど見られないということで、沿線住民の反対がございまして、現在工事があまり進捗されていないという問題がございます。
 それから、テレビ障害の問題でございますけれども、これは個人のアンテナ方式は解決しておりますけれども、共同アンテナ方式は維持費の負担などの問題で未解決のところが残されておるわけでございます。
 さらに、物的補償の問題でございますけれども、補償金額とか、あるいは認定方法に国鉄と住民との間に相違がございまして、まだ被害調査すらできない状態でございます。
 重ねて申し上げるわけでございますけれども、当面の暫定対策としてのスピードダウンにつきましても、都市間を高速で結ぶという新幹線の使命を失うとして、これは譲られておらないわけでございますが、その上また博多までの新幹線の延長計画が打ち出されておりまして、運行が開始されれば深夜運行が必至だということで、沿線住民が現状の公害を解決せずに延長計画を強行する国鉄側の不誠意に対する怒りとか、あるいは行政に対する不信を高めるのではないかというふうに心配をいたしておるところでございます。
 国鉄は、公共的な使命感、それからまた他の影響も考慮して、スピードダウンや緩衝地帯の設置ということを除いての音源対策については、鉄橋の改善でございますとか防音壁で対処するとか、いろいろな努力を払われて、一応認めるわけでございますけれども、従来とられてまいりましたその対策では、とうてい住民の期待に沿えないということがわかった現在では、国鉄はその加害者であるという認識の上に立って、汚染者負担の原則に基づいて抜本的な対策を考えていただかなければならない時期だというふうに考えておるわけでございます。
 ここで、市としてお願いを申し上げたいことは、まず第一に、新幹線騒音などの環境基準を早急にきめていただきたいということでございます。
 これは、新幹線公害がこのような大きな社会問題に発展してまいったことは、いまでは公共性が先に優先して通用しなくなったということは言うまでもございませんけれども、新幹線騒音に対する環境基準がなかったことが原因と思われるわけで、昭和四十七年の十二月に環境庁長官から運輸大臣に対しまして、環境保全上緊急を要する新幹線鉄道騒音などについての勧告をされておりますが、この鉄道の騒音基準は八十から八十五ホンという内容でございまして、私どもとしては住民の受忍限度を越えるものというふうに考えておるわけでございます。早急に、これから環境基準をきめていただきたいと思うわけでございます。
 また振動につきましても、先ほど干草会長のほうからもいろいろお話がございましたけれども、これは実は典型七公害の中の一つにもかかわらず、いまだに振動規制法というものが制定されておりませんので、これも早期に制定をお願いをいたすと同時に、環境基準とともにお願いできればというふうに考えておるわけでございます。
 それから、私、二番目に思いますのは、新幹線公害の解決のためには、国鉄だけじゃなくて、国の関係機関が総力をあげて、側面からもこれに当たっていただきたいということを申し上げたいと思うわけでございます。
 新幹線は、すべての交通機関がそうでございますけれども、高速で大量輸送をするということの要請が実はあるわけでございます。しかも新幹線の場合は国民に欠かせない交通機関となっておりまして、国においても全国新幹線網の計画が推進されておるように聞いておるわけであります。こうしたことから、新幹線は日本における大動脈だという国家的な事業だということでございます。したがって、新幹線公害については国鉄のみならず、オリンピックのときに、オリンピックの国家要請ということと同時に、国家的な事業であったということからいいましても、やはり国の関係機関が総力をあげて側面から援助をして、対策の実現をはかっていただきたいと私は思うわけでありますが、諸先生方にはこうした面にお力添えをお願いをいたしまして、一日も早く新幹線公害が解決いたしまして、公害を発生させない新幹線網というものが建設されるならば、この上もない喜びと考える次第であります。
 以上、失礼を申し上げました。(拍手)
○角屋委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
    ―――――――――――――
○角屋委員長 引き続きまして、参考人に対する質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中覚君。
○田中(覚)委員 私は、去る三月九日行なわれました当委員会の新幹線騒音問題の実態調査に参加いたしました一人として、現地で見聞をいたしましたことの重複を避けながら、若干の点についてお二人の参考人並びに関係官庁にお伺いをいたしたいと思います。
 お伺いをする前に、私のこの実地調査の所感を一言だけ簡単に御披瀝申し上げまするならば、これまでの日本の公害問題は、どれ一つとりましても、その対策が後手後手になってきております。強力な住民運動が展開されたり、あるいは裁判ざたにならなければ対策の端緒が開かれない、あるいは軌道に乗らないといったようなことが大体のパターンになっておるようでございますが、新幹線公害問題につきましても、もちろんこの騒音、振動の問題は、その影響の正確な把握がなかなかむずかしい、また騒音対策についての技術開発もおくれておるというような問題がございますけれども、これにつきましても、従来の日本の公害問題と同じ轍を踏んできておるということをまことに遺憾に思うものであります。
 ことに国鉄は巨大な公共企業体として、この事業を経営しておられるわけであり、しかもこの新幹線というのは世界に誇るに足る事業である、そういうものであればあるだけに、この新幹線公害については建設の当初から綿密な調査もやり、また沿線住民からこれについての苦情が出た場合には、訴訟運動などを展開されないうちにもっと的確に、迅速に対応してほしかった、こういう気持ちがたいへん強いことを、まず最初に申し上げておきたいと思います。
 そこで具体的に伺うわけでありますが、ただいまお二人の参考人から、私どもが先般現地で伺ったことと大体軌を一にいたしましたお話を伺いましたので、これらを前提にいたしまして、まず私は国鉄にお尋ねをいたしたいと思います。数点の問題につきまして、時間がございませんので、ちょっと質問の要点だけまとめて簡単に申し上げますから、一括してひとつお答えをいただきたいと思います。
 第一は、先ほど来干草参考人あるいは山田参考人も強調されておりましたが、国鉄の対策が非常におくれておる。新幹線が開通してから、すでに十年もたっておる。にもかかわらず、いまだにこれといった目ぼしい対策がとられておらない、こういう実感を沿線住民の方は強く持っておられるようでありますが、なぜ対策がこのように一体おくれてきたのか、その理由をひとつ伺いたいと思います。
 第二は、しかしながら、これまでいろいろ対策もやっておられることを私ども現地で確認をいたしております。こういった対策がはたしてどのような効果をあげておると評価をしておられるのか。ただいまお話がございましたけれども、たとえばブロックの上に高さ一メートルの防音壁を設置されておりますけれども、これについてはせいぜい三ホン程度の減音にしかならない。あるいはまた数字の上では、その程度の減音になっても、感じではちっとも変わりはないという、いまお話がございました。
 私どもこの間現地で伺ったところでは、こういった防音壁は、ときには日照権の問題なども生じて、むしろじゃまになるといったようなお話も聞いております。市のほうの御所見によりましても、ただいまもお話がございましたが、どうもあまり目立った効果がない。ことに線路から二十五メートル以内のところでは、ほとんど効果がないというようなことを調査でもいわれておるのでありますが、こういったことについての評価を一体どういうふうに考えておられるのか。
 なお、私が先般現地でいただいた刷りものの中で、これは住民代表からいただいたものでございますが、その中に、ゴム製のバラストマットなんかもあまり効果はないんじゃないかということで、それを敷いてもらうことを住民が断わっておるというような話も実は聞いたのでございますが、こういったことも含めまして、従来国鉄がおとりになった対策について、国鉄自身として一体どのような効果があるというふうに確信しておられるのか、その点を伺いたいと思います。
 それから第三は、従来の対策の実績の上に立ちまして、これからの対策をどのように考えておられるか。ことにただいま干草参考人からは、新幹線は人家のないところを通ったらどうだ、それができないのなら五十メートルの緩衝地帯を設けるべきである、あるいはそれができないのなら時速八十キロぐらいに落としたらどうだ、こういうふうなお話がございました。
 この緩衝地帯の問題につきましては、ただいま山田参考人からもその要望が強くなされておるというお話がございましたし、この新幹線のスピードダウンの問題につきましては、私どもも現地調査の際に実際に測定などもいたしました。ところが場所によりまして、かなりばらつきが出ております。現に動労などが意識的にスピードダウンをやっておるというようなお話も聞いております。ことに、いま干草参考人のお話にはございませんでしたけれども、干草参考人が書かれておる書きものなどを見ますと、かりに二百キロのスピードを九十キロに落としても、名古屋市内では五分ぐらいしか時間はおくれないはずだというようなことを実は書いておられますが、その程度のことであれば、スピードダウンできなくはないのじゃないかというような感じもいたしますので、そういった点も含めて、ひとつお答えをいただきたいと思います。
 なお、山田参考人からいまもお話がございましたが、鉄橋の問題、ことに無道床の鉄げたの騒音レベルが一番高い、こういう調査結果が出ております。したがいまして、これについて今後一体どういう対策を進められるのか。北海道の地下鉄のようにドームで包んでしまうというようなことができないものかということも含めてお答えをいただきたいと思います。
 それから振動については、これもいまお話がございましたが、これはもう構造よりは、むしろ地盤の問題だ。特に南方貨物線と並行しているところは軟弱地盤であるというようなことでございまして、これは防音壁などでは対処できる問題ではございませんが、これについて一体今後どういうふうな対処をされるおつもりであるか、そういったことをぜひお伺いをいたしたいと思います。
 われわれが現地で聞いたところでは、沿線の住民の方々はむしろ移転をしたい、移転をしたいけれども、わずかばかりの補償金をもらったって、きょうびの物価高で新しい家はできない。そういう意味で、むしろ新築の家ができるだけの長期低利の融資をひとつ考えてもらいたい、こういうような話も実はございましたが、国鉄としては、これに対してどういうふうに考えておられるか。そういったこれからの音源対策といいますか、そういうものをひとつお示しいただきたいと思います。
 その次に伺いたいのは、南方貨物線の問題でございます。いまお触れがございませんでしたが、これは新幹線公害をさらに増大せしめるものなのかどうなのか。地元は非常に警戒をされまして、これについての新しい運動も展開されようとしておられますが、国鉄としての御所見を伺いたいと思います。
 それから最後に、健康被害の問題でございますが、ただいま干草参考人は新幹線病だというようなお話もございました。われわれも現地でこれについてのお話を深刻に承ってきておりますが、これは大阪空港の判決もありましたけれども、この問題についての医療救済というものを国鉄としてどのようにお考えになっておるか、こういったことをひとつ中心にしてお答えをいただければ、たいへんありがたいと思います。
 時間がございませんので、ひとつできるだけ簡潔にお願いいたします、ほかにまだ参考人等に伺いたいことがございますので。
○内田説明員 ただいま名古屋の干草さんから、いろいろと新幹線の騒音あるいは振動についての実情のお話がございました。国鉄といたしましても、非常に申しわけないというふうに考えている次第でございまして、ここに深くおわびをいたします。
 それで、国鉄といたしましては、いまの許された範囲内でできるだけのことを、騒音防止あるいはその他の振動の実害補償というような点につきまして努力をしておるわけでございますが、なかなか沿線の皆さんの御満足のいくところまでまだ至ってないというのが実情でございます。
 田中先生のまず第一問の、なぜおくれたかということでございますが、われわれとしては、前からこの問題につきましては心を痛めておるわけでございますが、やはりいろいろと各省間の申し合わせ事項その他がございまして、国鉄だけがいい子になるわけにいかない。したがって、取りきめ事項の中でできることは誠意をもってやるということで、いままでまいったわけでございますが、御承知のように一昨年の十二月に環境庁から新幹線の問題につきましての暫定基準が出まして、国鉄といたしましては、この基準に沿いまして、できるだけのことをやっていくということで、いままでやってまいったわけでございます。
  〔委員長退席、登坂委員長代理着席〕
 なお、今後の防止対策に対しましては、国鉄の総力をあげまして、この問題に対処していく所存でございます。
 二番目の、ブロックは効果がないじゃないかというお話でございますが、これは御承知のように新幹線開業当時にある程度の、いわゆる防音壁でございませんで、その当時は手すりとして約一メートルぐらいのものをつくっておるところと、そうでないところがございます。いわゆるそういう壁が全然ないところに新しく二メートル程度の防音壁をつくりますと、約七ホンの音の低減がございます。したがって、七ホン下がるということは、線路の高架橋の中心から約二十五メートルぐらい離れたところで、そのくらいの効果がございますので、非常に効果があるというふうにわれわれは考えておりますし、また実測の結果もそうなっております。ただ一メートルぐらいの防音壁がございますところは、これに約一メートル継ぎ足しをいたしましても三ホンぐらいしか下がらない。そういうところに、たまたま当たっておりますと、あまり効果がないのじゃないかということもございますけれども、実際には非常に効果があるわけでございます。
 それから干草さんも申されましたように、日照権の問題との関連、これはなかなかむずかしい問題でございまして、今後いわゆる公共用地取得に伴う損失補償の中で日照権の問題を解決してもらうように協議を進めておりますので、それがまとまりましたならば、われわれも積極的に考えてまいりたいというふうに思います。
 それから三番目に、ゴム製のバラストマットは効果がない、こういうようなお話がございました。騒音の問題は、一番の発生源はレールと車輪がぶつかって、そこから音が出てくるわけでございますが、これは高架橋の上から沿線に伝わる音と、それから高架橋そのものが振動をいたしまして音を出すわけでございます。その辺の寄与度というものが測定いたしましても、なかなかむずかしいわけでございますが、いわゆる高架橋にくっついている人家の場合には、その高架橋から出る音の被害のほうが上を回って出る音よりも大きいというふうに考えられております。この音を消すのにはゴム製のバラストマット、ゴム製のマットでございますが、これをバラストの下に敷きますと非常に効果がある。現実には七ホン程度の高架橋の音が下がってくるということでございまして、ただ、これは離れたところは上からの音のほうが非常に大きく聞こえてまいりますので効果がございませんけれども、近いところは常非に効果があるということでございますので、われわれとしては、できるだけこれを進めてまいりたいというふうに考えております。
 それから、新幹線の将来の対策として、人家のないところを通ったらどうか、それから人家の密集地帯を通るならば緩衝地帯を設けろ、あるいはスピードダウンをしろというお話しでございます。われわれとしてはこの辺は、今後の新幹線の計画の中で考慮をしてまいりたいというふうに考えております。
 ただ大都市の場合には、地元からも、現在の駅に張りつけてくれという御要望が非常に熾烈でございます。その場合に人家密集地帯を通らざるを得ない、これに対する緩衝地帯の問題、これに対しましては今後なかなか国鉄だけでは――相当の用地を買収せざるを得ない。したがって都市の機能、あるいは土地利用計画というものに非常に大きな影響が出てまいりますので、今後の新幹線につきましては、政府並びに関係の自治団体と、建設前によく御相談申し上げまして、自治団体の力もお借りいたしまして、十分な緩衝地帯をとっていくというようなことを考えてまいりたいと思います。
 それからスピードダウンの問題は、四番目の問題としてお話しがございましたが、これは確かに名古屋だけをスピードダウンいたしますと、四、五分程度のおくれということでございますけれども、御承知のように東海道新幹線は、東京から大阪まで相当の人家密集地帯を通っておりますので、もし国鉄がこれをやるとするならば、類似のところは全部やらざるを得ないということになります。
  〔登坂委員長代理退席、委員長着席〕
それで、大体人家の密集地帯が沿線に百三十五キロ、そのほかに鉄げたの防音工事をやりましても、なかなか現在の基準に達しないような鉄げたがございますので、そういうところもスピードダウンをせざるを得ないといたしますと、現在の三時間十分が約一時間半ぐらい延びるであろう、これは現在の新幹線の機能から申しますと、車両その他をふやさなければ輸送力として六割の減になるということになりまして、日本の経済そのものに非常に大混乱を巻き起こすのではないかというふうに考えられます。したがって、われわれとしては、いま進めております新幹線の騒音防止対策というようなものを極力推し進めてまいりたいということで善処をいたしたいと思う次第でございます。
 それから無道床鉄げたについての対策はいかん、ドームにしたらどうだというお話がございました。これは御承知の方もあるかと思いますが、現在小田原のちょっと手前でトラスを全部ドームでおおうという実験をやっております。これをやりますと、二十ホンないし三十ホン下がるという結論も出ておるわけでございます。ただ、これは非常に特殊な構造でございまして、どの鉄げたにもやるというわけにはまいりません。また工事をやる場合に、両側に相当の工事用の仮設の設備が要りますので、そういうようなことを考えますと、やはり防音工事を無道床鉄げたにやっても、なおかつ規定の音域を越えるような場所については、環境庁の勧告にもありますとおり民家の移転ということをせざるを得ないというふうに考えておる次第でございます。
 それから最後に振動の問題でございますが、振動につきましては、これは環境庁の基準では考慮をすることというふうになっておりまして、いまのところ振動に対して、どういう場合にどうしろという具体的な明示がございません。したがって、われわれのほうとしては、なかなか処理がしにくいのでございますが、しかし明らかに相当の振動があるというようなところにつきましては、今後申し出によって民家の買い取り請求に応ずるということで考えたいということで案を練っておりまして、ただいま関係の諸官庁と御相談をしている最中でございますので、具体的にまとまりましたら、できるだけ早くこれを実施に移してまいりたいというふうに考えております。
 なお、その場合の補償の問題のお話がございましたが、われわれのほうといたしましては新幹線の用地買収をたくさんやっております。そのときもお立ちのきになる方々の実情をよくお聞きいたしまして、お話し合いを進めて、皆さん移転に応じていただいているわけでございますので、これに準じまして誠意をもってやってまいりたいと思います。
 なお、地方自治団体その他からの融資ができるような方法も、地方自治団体等のほうに特にお願いしてまいりたいと思います。
 それから事柄が違いますけれども南方貨物線の問題、これは確かに約三キロの区間におきまして新幹線と並行して、いま工事を進めております。これが新幹線の騒音にさらに倍加するのではないかというお話でございますが、まず第一番に申し上げたいことは、御承知のように東海道新幹線というのは非常な反対の中で、しかも資金が非常に少ない中で建設をしていったという事情もございまして、その建設に対しまして、いろいろと工事費の節約をしたということでございまして、名古屋の場合も軟弱地盤であるにもかかわらず、くいがいわゆるしっかりした地盤までついていないという事情がございます。
 今度の南方貨物線につきましては、そういうようなことを考慮いたしまして構造物をマッシブながっちりしたものにすると同時に、基礎も強固な地盤までつけるというようなことでございますので、騒音、振動については特段の配慮をしておる次第でございまして、ただそう申しましても、騒音、振動の問題というのはゼロにはならないわけでございますので、今後新幹線の騒音、振動と同じように、この問題についても前向きに検討して住民の皆さんの理解を得るようにしてまいりたいというふうに考えます。
 それから健康の問題でございますが、これは前に国会でもお話し申し上げましたように、新幹線の騒音、振動と病気との因果関係というものの判定が非常にむずかしいということで、なかなかお支払いできないような状態にあったわけでございますが、この三月中には国鉄の中に医療の審査委員会、これは中立のお医者さんを十二名ですか、委嘱いたしまして、いまお申し出になっている方々に対しまして、その病気の状態あるいは騒音、振動との因果関係等を詳細に調査いたしまして、その判定に基づいて善処をしてまいりたいというふうに考える次第でございます。
○田中(覚)委員 ただいまお答えいただきました中で、どうもこの対策がいろいろ、おくれおくれになってきたのは、国鉄が新幹線を新しくやるというこの使命感の上にあぐらをかいて、公害対策に対する対応がおくれたということがなければ幸いだと私は思っております。
 それからこの南方貨物線の問題につきまして私がお尋ねしたのは、新しく並行して南方貨物線が新幹線に近接してつくられるわけですね。お聞きしたのは、現在の新幹線だけのときと、この南方貨物線が五十年になると開通をしますね、開通をして、そして両者が同時に同一地点を通過する場合、そのときには騒音公害は結局プラスされるというふうに考えていいのかどうか。その点はどうですか。
○内田説明員 貨物列車は、あそこに八田という貨物駅がございまして、そこに入る列車だけでございますので、数は非常に少ない。しかも新幹線と違いまして、もう停車する貨物列車でございますので、スピードも非常におそいということでございますので、同時に走りましても、おそらく倍加するというようなことはないと思います。なお、新幹線が通る南側につきましては、この南方貨物線がいわゆる騒音に対しては、むしろ防音の役目を果たすのではないかというふうに考える次第でございます。
○田中(覚)委員 時間がありませんので、実はまだお伺いしたいこともあるのですが、次に干草参考人に伺いたいと思います。
 ただいま国鉄のほうからお聞きのような答弁があったわけですが、従来のあり方に比べると、かなり前向きに今後の対処策が示されておるところも相当あったように私は受けとめたわけでございますけれども、いまこれをお聞きになっておりまして、やはりこれは訴訟に訴えなければ新幹線公害問題は解決しないと、いまでもお考えかどうか、その点を一つ。
 それからもう一つは、この同盟会に入っていらっしゃる方は、先ほど山田参考人のお話では五百八十九人ということでございました。先般現地でいただいた資料によりますと、この新幹線の開通後、騒音公害に耐えられなくて、よそへ転出していった、そういう方々の被害家屋の補償について国鉄のほうへ所見を求めておられますね。一体何人転出をされたのか。また逆に新幹線開通後、皆さま方の地域へほかの地域からどれだけ入ってこられたか。それをちょっとお教えを願いたいと思います。その二点だけ伺います。
○干草参考人 それでは、南方貨物線のことでちょっと申し上げますが、ただいまの国鉄の人の話を聞いていると、何も知らないと思います。あれは大ばか者だ。東海道新幹線で現在一日二百本も走って、振動、騒音でわあわあ言っている。その横に並んで南方貨物線ができている。名古屋の戸部下、明治に行ってごらんなさい。家の軒の屋根の上に南方貨物線ができている。私たちは新幹線で五十メートルの緩衝地帯をとれと言っている。それを全然無視して、いまできつつある南方貨物線がまた同じことをやっている。
 南方貨物線は特に夜間が本命だという。昼間よりも深夜が多いという。南方貨物線で二百本、東海道新幹線で二百本、四百本通ったらどうなります。朝から晩までひっきりなしじゃないか。しかも夜中に二百本も百五十本も通ったら、幾ら振動、騒音がないといったって――ゼロならいいです、ゼロなら。いま私たちは南方貨物線で岐阜工事局と交渉をやっている。目標値を入れてもらっても六十五ホン以下にはならないといっている。それなら七十か八十で走るんだなということだ。そんなものが夜の夜中にまくら元を走られたら、どうなるんだ。とんでもない話だ。
 それからもう一つ、私たちは現在の日本の国の公害をかろうじて食いとめているのは裁判よりほかにないと思っております。裁判の前に、何が解決したものがあるか。全部裁判で解決しているじゃないか。新幹線公害も、私たちはいまのこんなような答弁では、とてもじゃないが、防音壁で七ホン下がる――名古屋市でそんなところがあったら一ぺんやってみろ。どこだ七ホン下がるのは。そんなことを言って得々としておる。これが国鉄のえらいさまだ。それだから十年たっても何十年たっても、何とも改善されないのだ。ここに原因があるんだ。
 沿線住民は、五百八十九人は大体結束しておりますが、いま現在行った人はないのです。それからいま来る人も、最近はいかぬということがあまり表面化して、なくなりました。この数は動きません。ただ、病気でなくなった人は六人あります。
 以上であります。
○田中(覚)委員 もうちょっと参考人に伺いたいのですが、時間がありませんので環境庁にちょっと三点だけ伺いたいと思います。
 一つは、先ほど環境基準を、新幹線公害についても早くきめてもらいたい、こういう要望が山田参考人のほうから述べられました。従来環境庁は、この問題については大臣勧告という処理をしておられますが、将来環境基準として、いわゆる法的規制をこれに加えるお考えがあるのかどうか。
 それから第二番目は、勧告の中で取り上げられておる八十ないし八十五ホンというこの基準は、東海道新幹線の騒音から地域住民の健康を守る上でのこれは受忍限度を越えている。あまりに甘過ぎる。せいぜい六十五ホンくらいでなければいかぬということを、これは干草さんも言っておられましたし、現地でたびたび聞いたのですが、八十ないし八十五ホンにされた環境庁の所見を伺いたいと思います。
 最後に、この騒音による健康被害というものを健康被害補償法の対象に将来取り上げるお考えがあるかどうか。これはむずかしい問題と思いますが、もしお示しをいただければありがたいと思います。
 以上、三点だけお尋ねします。
○藤本政府委員 環境基準の設定につきましては、現在審議会で御審議をいただいておりますので、その答申が出次第設定をする考えでございます。
 第二点の大臣勧告の暫定基準につきましては、おっしゃるとおり、あくまで暫定だという考えに立っておりますので、今後、昨日の予算委員会での大臣の答弁にもございましたが、環境基準の設定の場合には、もっときびしいものにいたす考えでございます。
○橋本(道)政府委員 いま先生から御質問のありました最後の、前国会において通過いたしました健康被害補償法というのがあるので、その中で騒音被害をどういうぐあいに扱う考えであるかという御質問でございますが、健康被害補償法におきましては、大気と水質というものを取り上げておりまして、これは健康被害としての疾病が非常に明らかで、補償というような形での処理ができるということで、この問題を取り上げたわけでございます。
 現在の騒音、振動ということの生活妨害、あるいは健康な生活が悲惨に破壊されているということは、全く私はそうだと思いますが、補償という形で健康被害を特定し得るかということになりますと、これも非常にむずかしい問題がございまして、そのようなことで、まず非常な困難があるということが一点と、もう一つは、この音を出しておりますのが国鉄という明白な原因者があるわけでございますから、国鉄において、これをまず救済として扱うということが最も至当だというように考えております。
○田中(覚)委員 実はまだいろいろ伺いたいことがあったのですが、所定の時間が参りましたので、いささか中途はんぱでございますけれども、私の質問はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
○角屋委員長 この際、暫時休憩いたします。
   午前十一時五十七分休憩
     ――――◇―――――
   午後零時三十九分開議
○角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出の公害紛争処理法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。小坂総理府総務長官。
    ―――――――――――――
○小坂国務大臣 ただいま議題となりました公害紛争処理法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 公害紛争処理法は、公害紛争を迅速、簡易かつ適正に解決することを目的として制定されたものであり、この目的を達成するために現在では和解の仲介、調停、仲裁及び裁定の制度が設けられ、いずれも紛争当事者の申請に基づいて、中央においては公害等調整委員会、地方においては都道府県公害審査会等がその処理に当たっておりますことは、御承知のとおりであります。本法が施行されましてから昨年末まで約三年の間において、公害等調整委員会及び都道府県公害審査会等に係属した事件は、百二十件であり、そのうち、すでに解決されたものは六十三件、その解決に要した期間は平均十カ月となっておりまして、おおむね所期の目的は達せられていると考えられるのであります。
 しかしながら、最近における公害紛争の実態を見ますと、その規模が一そう拡大するとともに、当事者間の対立が激化し、かつ紛争が長期化する様相が顕著にうかがえるのでありまして、これを放置するときは、緊急を要する被害者の救済が遅延する等の社会的に重大な影響が生ずることが憂えられるのであります。このような事態に対処するためには、紛争当事者の申請を待って紛争処理機関が解決に乗り出す現行の諸制度のみで十分であるとは、とうていいえないのでありまして、当事者からの申請を待つことなく、できるだけ早い機会に紛争処理機関があっせんに乗り出し、紛争の解決に力をかすことができる制度を設ける必要があると考えられるのであります。これが本法を改正する理由の第一点であります。
 次に、今日までの本法の運用の経験等にかんがみますと、本法に定められている公害紛争解決のための主要な手段であります調停、仲裁または裁定の手続中に紛争処理機関が紛争解決のために機に応じて当事者に必要な事項の勧告を行なうことができる制度を設ける等、これらの手続について制度の整備充実をはかるため規定の整備を行なう必要が痛感されるのであります。これが本法を改正する理由の第二点であります。
 さらに、住民から申し出される公害苦情につきましては、地方公共団体に置かれております公害苦情相談員が中心となってその処理に当たっておりますが、当該業務の重要性にかんがみ、その活動の一そうの活発化に資するため、公害苦情相談員の職務を一段と明確にする等の措置を講じて苦情処理体制の整備をはかる必要があるのであります。これが本法を改正する理由の第三点であります。
 以下、改正の概要について御説明申し上げます。
 改正点の第一は、申請を待たずに行なうあっせんの制度を設けることでございます。公害に係る被害の程度が著しく、かつ、その範囲が広い紛争が生じ、当事者間の交渉も円滑には進行しておらず、これを放置するときは、多数の被害者の生活の困窮等社会的に重大な影響があると認められる場合には、当事者からの申請を待たずに、公害等調整委員会または都道府県公害審査会は、当事者の意見を聞いて紛争のあっせんを行なうことができることといたしますとともに、あっせん手続に入った後で、あっせんでの紛争の解決は困難であるが、調停なら解決の見込みがある等の場合には、当事者の意見を聞いて調停に移行することができる道も開くことといたしております。
 なお、これに関連いたしまして、現行の和解の仲介の制度は、あっせんの制度に吸収することとし、現行では和解の仲介を行なっていなかった公害等調整委員会におきましても申請に係るあっせんを行なうことができることといたしております。
 改正点の第二は、現行の調停、仲裁及び裁定の制度について、その整備充実をはかったことであります。
 その一は、調停委員会、仲裁委員会または裁定委員会は、それぞれ、調停、仲裁または裁定の手続中において、仮の措置として、当事者に対し、調停、仲裁または裁定のために必要と認められる措置をとることを勧告することができることといたしております。
 その二は、現行制度におきましては、調停委員会は相当と認めるときは当事者に対し調停案の受諾を勧告することができることになっておりますが、今回、この受諾勧告を行なった場合に必要があるときは、その調停案を公表することができることといたしております。
 その三は、義務履行の確保のための措置でございますが、公害等調整委員会または都道府県公害審査会等は、権利者の申し出に基づき、義務者に対し、調停、仲裁または責任裁定で定められた義務の履行に関し、必要な勧告を行なうことができることとし、確実かつ円滑な義務の履行を確保することといたしております。
 なお、右のほか、事件処理の円滑化と迅速化をはかるため、調停事件の引き継ぎに関する規定の整備を行なうことといたしております。
 改正点の第三は、公害に関する苦情の処理体制を整備するための措置を講じたことでございます。住民から申し出される公害に関する苦情を処理するため全国の都道府県及び多くの市町村には、公害苦情相談員が置かれておりますが、その苦情処理活動の活発化に資するため、苦情相談員の職務を明確にいたしますとともに、地方公共団体における公害に関する苦情の処理状況を常時的確に把握しておくため、公害等調整委員会は地方公共団体の長に対し、都道府県知事は市町村長に対し、これらについての報告を求めることができることといたしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して六カ月をこえない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。
 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
○角屋委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。
 本案の質疑は後日に譲ることといたします。
     ――――◇―――――
○角屋委員長 公害対策並びに環境保全に関する件、特に新幹線騒音問題につき調査を進めます。
 午前中に引き続き参考人に対する質疑を続行いたします。島本虎三君。
○島本委員 当委員会としても、この九日に現地へ行って、その実情について詳しく調査してまいりました。本日は、なお干草参考人、山田参考人からもいろいろ事情を聴取いたしまして、国鉄当局からも意見の開陳があったのでありますが、私、そのうちで若干疑問な点一、二を先に聞かしてもらって、そのあと本題に入らせてもらいます。
 干草参考人に伺いますが、先ほど国鉄当局のいろいろな意見の開陳によりますと、振動はその強度を考えて買収を行ないたいと考えておる。その補償についても同様な意見の開陳があったわけであります。ことに現在名古屋地区で、干草参考人をはじめとして多数の人が訴訟にまで決意されていると伺っているのであります。国鉄当局は、振動はその強度を考えて買収を進めたい、こういうような意向のようでありますが、国鉄当局の意見を聞いて、干草参考人はこの振動、騒音の問題についてどうお考えです。
○干草参考人 国鉄当局のいまのお話を聞いておりますと、振動、騒音というものについて頭の中ではわかっておるが、からだではどうもわかってない。どうも騒音については環境庁から暫定基準であるが八十、八十五ホンというあれが出たから、それに極力いま合わせるべくやっているんだ、私どもはこんなものはナンセンスだと思っている。ばかな、八十、八十五ホンが人間の住める世界じゃない。あれは御承知のように進行中の地下鉄の電車の中の騒音と一緒である。そんなところで一日働いてきた人間が夜寝れるか、そんなものを基準にきめるようなことはナンセンスだと思う。
 それから振動は、まだ基準がない。ないから何ともならない。全く仰せのように文献も少ないようでありますが、私どもはからだに異状を来たすのは騒音でなくて振動であります。家がいたむのも振動、雨が漏ったり、壁が落ちるのも振動、それからこういうふうにちょっと健康を害するのも振動であります。したがって、この重大な振動はどうもなおざりにされて、いまの答弁を聞いておっても、どうやらかすみの向こうのほうへぼやっと薄れてしまうようでありますが、それの対策としては、最近新聞なんかで十五メートルないし二十メートルとったらいいのだろうというような、やみの中の模索みたいなことだと思うのですが、ただいまの答弁に対しては非常に住民としては不満でございます。
○島本委員 住民としては不満である、こういうことであります。
 なるほどいろいろ見てみますと、鉄道騒音、新幹線を含めてこの国鉄騒音については、騒音規制法から除外されたままになって十年経過しているわけであります。しかし住民の生活環境、これはいま干草参考人や山田参考人が言ったとおりに、これは極端に健康と生命が脅かされているわけであります。そうすると、軍事基地関係の場合には特損法または基地周辺法、その他の騒音は、これは全部騒音規制法関係によって行なわれる、規制されるのであります。
 国鉄振動、騒音、これだけは全然これがないのであります。そうすると、いま言ったような立場からして振動防止法、こういうようなものに対しては国鉄当局が、現行からすると考えなければならないはずであります。騒音防止も新幹線に限っては国鉄が考えなければならないわけであります。特別立法すべきであります。まだしないで十年間もおいたというのは怠慢そのものであります。当局はどのようにお考えでしょうか。
○住田(正)政府委員 新幹線の騒音、振動につきましては現在法的規制はないわけでありますけれども、環境庁のほうから一昨年十二月に勧告いただいております。また先ほど話が出ておりますが、現在審議会で恒久的な基準の検討をいたしているわけでございまして、その勧告を待って処置をしたいというように考えております。
 法律をつくる場合に、法律事項があればもちろん法律をつくらなければいけないわけでございますけれども、現在の民家の防音工事をやるとか、あるいは移転補償をするというような事項であれば、特に法律がなくても実施が可能であるというように考えております。
○島本委員 この振動と騒音、これは特にいま言ったように、すべて環境庁が所管している騒音規制法並びに公害関係の規制立法からはずされているんです。したがって、きちっとこれはやらないと、国鉄だけが殿さま官庁になってしまう。防衛庁でも米軍の演習の場合には、特損法によってこれは見るようになっております。自衛隊の場合には基地周辺法で見ます。なぜ国鉄だけは立法を講じないのですか。ほかのほうはやっているのです。そうでなければ、これは完全に騒音規制法、こういうようなものにはっきり適用させるようにしておかないと、これは片手落ちです。それを言っているのです。
 環境庁の指示を待ってやりたい、こういうようなのですが、なぜ環境庁は、こういうような場合はぼさぼさしているのですか。なぜこれは指示しないのですか。十年間もやって健康と生命が、このようにおかされているじゃありませんか。いままで立法の促進や環境の基準をはっきり守るように、環境庁はどのようにして指導していたのですか、この際、はっきりしておいてもらいます。
○春日政府委員 新幹線騒音につきまして法で規制しないで、なぜいままで勧告という形で対処してきたかという第一のお尋ねでございますが、御承知のごとく新幹線騒音につきましては、音源対策その他各種の障害防止対策を総合的に推進する必要がございました。
 もちろん、音源対策に関しましては、騒音低減のための防止技術について、なお研究を要する面が残されておりますことが第一。また鉄道という特殊性もございまして、工場建設及び自動車騒音と同一の規則には必ずしもなじまない面があるわけでございまして、また他方沿線住民の騒音被害を軽減するための対策を早急に実施することの必要性、こういったことも勘案いたしまして、運輸省に対しまして勧告方式をとったものでございます。
 しかしながら、今後規制につきましては、障害防止対策のあり方等を含めて、さらに関係各省と検討してまいるつもりでございます。
 また、先生が第二に御指摘のように、航空機騒音等につきまして民間空港あるいは基地周辺の場合におきましては、それぞれの立法がなされているのに、新幹線についてはないのではないか、こういうお話でございますが、まさにそのとおりであろうと思います。一昨年の新幹線対策の実施につきまして私どもが勧告を行ないまして、その勧告に基づいて、運輸省におかれましては障害防止措置に関する制度を整備することをお考えになっておると存じております。
 また当面は、公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱というようなものもございます。その措置によってまかなっていく、このようなお考えでございますが、御指摘のように当面はともかくとして、基本的には法的な制度を制定する方向でもちろん検討する必要があるのではなかろうかと考えておる次第でございます。
○島本委員 いまこういうような被害の報告を受け、現地をわれわれが視察してまいりました。いわゆる法の欠陥、そういうようなものが指摘された以上、健康と生命を救うためにも、やはり早急に準備に着手すべきである、こう思うのであります。
 したがって、この新幹線の場合には振動、これがまだ全然触れられておらないという。しかし、これも特別立法または新規立法によって新幹線の振動防止法の早急な制定、それと同時に騒音については騒音規制法からはずされていますから、もし特に立法するのでなければ、この騒音については騒音規制法に含む、こういうように当然すべきである、そう思うのです。このことなんです。これをしないと、新幹線に関して、また鉄道騒音に関しては、手落ちが生ずるわけです。これははっきりそうしなければなりません。事務的な段階だけではありませんが、政府の態度として、これははっきりここで表明しておいてもらいたいのです。せっかく政務次官も来ておりますから、政務次官、三木環境庁長官にかわって、はっきり言明してもらいたい。
○藤本政府委員 先生の御指摘の振動に関しての問題につきましては、現在審議会へ諮問をいたしまして、その答申を得ました上で十分に検討してまいりたいと考えております。
○島本委員 これはやはりまだ不十分です。環境庁わかったでしょう、いま私の言っておることは。これはやはり不十分なんです。特に国鉄関係は不十分です。他のほうが騒音規制法その他からはずされておる分に対しては特に立法があるのだ、鉄道だけないのだ、ないからこれをつくるべきだ。騒音の場合には、特につくらなければ――現在ある騒音規制法の中にこれを含めなさい、当然じゃありませんか。それと同時に、いま言うようにして振動音についての被害が多い。これはもうはっきりと立法がない。これは準備中であるとするならば、これを急ぎなさいというのです、当然じゃありませんか。当然であるかないかだけでいいのです。
○春日政府委員 新幹線の振動規制についてでございますが、新幹線につきましては、沿線地域において振動が非常に大きな問題になっておることは私どもも十分認識いたしておるつもりでございます。したがいまして、その有効な防止手法を早急に検討する必要に迫られておるわけでございます。ただ新幹線の振動につきましては、防止技術の開発、車両や線路構造の改善というような技術的な問題が非常に残っておる。また鉄道交通という特殊性もございまして、工場建設及び道路交通振動と同一手法の規制には必ずしもなじまない点も多々あるわけでございます。
 したがいまして環境庁といたしましては、現在中央公害対策審議会に新幹線振動対策を講ずる場合のよるべき指針はいかにという諮問をいたしておるわけでございまして、その答申を得た上で、その規制方法も含めて有効な防止手法の確立について努力してまいる、こういう段取りでまいりたいと考えております。
○島本委員 おそきに過ぎるのです。もっと急がないといけません。
 それと同時に、先ほど答弁ございました中で不可解な点があります。新幹線の騒音の中で、名古屋を走る南方貨物線、これは新幹線の騒音をやわらげるのに役立つのだ、こういうような答弁が国鉄当局からあったわけであります。これは干草参考人、現地で皆さんの場合、この問題で一番苦労しているはずであります。また、この問題等で山田参考人のほうにも、名古屋新幹線公害対策同盟の会長として、干草参考人のほうからいろいろ意見の具申や陳情があったはずであります。それを通して見ますと、新幹線の騒音については南方貨物線をつくることによって騒音を防ぐことに役立つのだということは、私としてまことに不可解なんであります。この実態はどうでしょうか。
○干草参考人 私のところはちょうど南方貨物線と新幹線が並行して通る真下にあります。現在新幹線の騒音と振動で、われわれは裁判までやると言って騒いでおりますが、その横にできる南方貨物線は、われわれしろうとが考えても、これは必ず新幹線の騒音、振動プラス南方貨物線の振動、騒音になると思います。これがかえって新幹線の騒音を防ぐなどということは、とんでもない、幼稚園の子供でもそんなことは信用しません。
 六十五ホンプラス六十五ホンは百三十ホンにはならぬが、百ホンぐらいにはなる。振動は特に大きい。しかも貨物は夜間走る。こういうことが前提になっておって、こんな答弁をして得々としている。たいへん、とんでもないことであると思います。
○島本委員 われわれも現地で調査してまいりました際に、新幹線について、山陽新幹線が延長して博多まで運行されるようになると、当然名古屋周辺は夜間運転が実施されることになる、これはもうとんでもないことであるということに対して、国鉄当局では夜間は運転しないということを現地で言明されました。私もそれは当然だと思っておりますが、この点、国鉄当局いかがでございますか。
○内田説明員 新幹線の夜行列車運転につきましては、その需要からいいますと、われわれとしては当然いつかの時期にはやらなければいけないというふうに考えております。東京―博多間が六時間半というのは、いわゆるお客さんとして、やはり夜行を選ぶ距離だというふうに考えております。ただその時期につきましては、先生御指摘のとおり、現在の新幹線の施設が騒音、振動等に対して十分な対策が講じられてないということでございますので、博多の開業時にこれを直ちに行なうということは、これは至難だと思います。今後国鉄といたしましては、誠意をもって新幹線の公害防止対策を行ない、住民の納得を得た上で、あらためてこの問題を検討してまいりたいというふうに考えております。
○島本委員 そうすると当然南方貨物線の場合にも――貨物線の場合には、これは夜間運行がよけいであります。先ほどの参考人の意見によって、これはもう東海道線が二百本、南方貨物線が二百本、それも深夜に通られては、これは何ら公害対策にならぬじゃないかという激しい憤りを込めた参考意見の開陳があったわけです。南方貨物線の場合は深夜は通させないという、この意味での騒音の防止に役立つ、先ほどの答弁はそういうように理解してよろしゅうございますか。これは国鉄当局です。
○内田説明員 貨物列車の性格上、貨物というのは夕方までに集荷をして夜走るということがございますので、夜間貨物列車を通さないというのは、貨物輸送の非常に重大な支障になろうかと思います。私が申し上げましたのは、たとえば新幹線の場合に、上下線で――いわゆる上下線がございますが、反対側を新幹線が通りますと、約十ホン、近いほうを通る新幹線の音に対して低いわけでございます。そういう意味で、新幹線の音に対しては、その横に高架橋が並んでできれば、騒音防止に役立つということを申し上げたわけでございまして、貨物列車の音は新幹線ほど激しくはございませんが、その音はやはり起こるということでございます。
 ただ先ほども申し上げましたように、貨物列車は八田の貨物駅に到着するものだけを、この南方貨物線を通すわけでございますので、もうすでに速度もおそくなっておりますし、騒音防止対策、振動防止対策を十分構造物の上でやっておりますので、私は住民の皆さんに対して、いま新幹線が及ぼしているような御迷惑はおかけしないという確信を持っておるわけでございます。
○島本委員 ただいまの答弁で深夜走らせても全然これは騒音、振動がないという意見の開陳があったわけですが、それに対して市当局のほうでは、どのようにこの問題を解釈してございますか。
○山田参考人 いまの南方貨物線につきましては、先ほど内田理事さんがおっしゃいましたように、現在の新幹線につきましては非常に基礎が浅いというふうにいわれております。南方貨物線につきましては、あの沖積層の中でその底まで基礎が打ってあるというふうに聞いておるわけでございまして、その振動につきましては非常に少ないものであろう。同時に新幹線の振動の伝わるのが、その南方貨物線の橋脚によりまして減るのではないかということも考えておるわけでございます。騒音につきましては、新幹線よりも低い音であれば、同時に走った場合は確かに音はプラスされないわけでございます。同じ六十五ホン同士のものが走った場合は、先ほど干草さんがおっしゃったように、プラスの作用はありますけれども、正確な計算はしておりませんが、それは三ホンか五ホンぐらいふえるだけだというふうに考えておる次第でございます。
 ただし、南方貨物線につきましては、夜間についての運行は、人が安眠する時間でございますので、これらについては極度に下げる必要、あるいはその構造物のほうで、あるいは住居側のほうにおいて何らかの施設をしなければならないというふうに考えておるわけでございます。
○島本委員 干草参考人、両者の答弁を聞いておりまして、どのようにお考えですか。
○干草参考人 どうも答弁を聞いておりましても、たいへん甘いようでありますが、この間、大阪国際空港で十時から七時までの飛行は禁止するという判決が出ております。したがって、私どもは、南方貨物線も現在の状態であったら禁止してもらうよりしかたがないと思っております。屋根の上を通っておりますから、こんな状態で深夜走るということは、絶対法律で禁止されるという自信を持っております。いまの振動、騒音について何らかの対策という答弁でありましたが、五十メートルぐらいとってもらうなら、なおかつ騒音が四十五ホン、振動が〇・三ミリなら、夜通し走ってもらってもけっこうでございます。
 以上であります。
○島本委員 わかりました。
 次に、これは現地で干草参考人から切々と訴えられたことが一つ私の脳裏にあるのです。この事実を確かめたいと思います。
 それは、あなたが明治小学校に関係人が集められて、国鉄からこの新幹線の建設について説明を聞いたことがある。その際に参考人は、国鉄に対して新幹線には振動、騒音はないかと尋ねられた。そうすると国鉄の説明員からは、十四メートルも高いところを弾丸のように走る列車だから、そんな心配はないという返事が返ってきた。それ以来、干草参考人は新幹線の建設に協力的な態度をとってきた。しかし、そのお返しがこんなひどいものであるとは全然想像もしなかった。すなわち、あなたの奥さんが去年の五月十三日に、ついに地獄の生活に耐えかねて、五十八歳を一期にしてこの世を去った。三年越しの睡眠不足でノイローゼぎみとなって、自律神経失調症と消化不良であった。そして最後のお医者さんに、新幹線の振動、騒音で命を縮めたのだから証明書を書いてくれ、このように頼んだが、医師は書けないといって断わられた、こういうふうにあなたはおっしゃいました。
 私は、それを見て、これはたいへんだと思ったのです。そして同時に「新幹線の振動騒音が原因で病気になったという因果関係が証明できれば、転地療養費も含めて医者の治療代を負担してもよい」というふうに国鉄から申し込みがあった、こういうようなこともいわれておるわけです。問題は因果関係だ、こういうふうに私ども思うわけであります。
 それで新幹線のこの騒音の健康被害によって難聴、ノイローゼ、こういうような訴えをしている人がいま何人くらいございますか。その人たちに対して、どういうふうに国鉄当局はめんどうを見ておりますか。
○干草参考人 新幹線の振動、騒音で沿線の住民が病気になったからという申告を現在十二名やってあります。たまたま去年の夏時分に国鉄の谷田部という課長補佐の方が来られました。松原さんという方も来られまして、新幹線沿線の住人の病気は国鉄としても何か扶助するというような話がありまして、即座に申告をしたりしたことがあるのです。
 その後、直接ではありませんで新聞等で拝見したのですが、国鉄の本部では、公立の病院五カ所くらいの証明書を持ってくればよい、最後に鉄道病院の証明書を持ってくればよいというようなことが新聞等で発表されておりました。私が家内がなくなったときに証明書を書けといっても、どうしても書かない。口では言うのです。これはたいへん、新幹線のために悪いのだという常識の程度なら言えるのですが、証明書を書けというと書きません。これはそこにもおりますが、八十二歳の老人が何とかして証明をとろうと思って名古屋じゅうの医者を歩いています。どこへ行っても証明を書きません。したがって、この問題はいかに国鉄がりっぱなことを言ってくれても、医者の証明書を持ってこいというのでは、おそらく解決できない。絵にかいたもちにひとしい。食うことができないなと思っております。
 最近の新聞等で見ますと、何か十人ばかりの偉い先生を集めて審議会をつくるというようなことを発表せられておりますが、それでもその先生方が、この病気は確かに新幹線の振動、騒音で病気になったのだから証明書を持っていらっしゃい、こんなことを言うておったのでは何年たってもだめである。私どもは少なくとも三十メートル地内の人は蓋然性というものを認めてもらって、こういう振動、騒音地帯におれば病気になるのだ、なったらなおりにくい、むしろ死につながることがある、だからこれは蓋然性というものを認めて無条件で救わなくちゃいけない、こういう観点に立ってもらいたいと思うのであります。ただし、それは足が折れたとか犬にかまれたとか、こんなことまで救えというのではありませんが、高血圧だとか消化不良だとか、大体そういう自律神経失調に関連した病気は無条件で助けてもらいたい、こういうことを妻をなくして痛切に感じております。
 以上であります。
○島本委員 なるほどそういうふうにしてみます場合には、これはいよいよ重大だということになってまいります。
 国鉄当局にちょっとお伺いしますが、この健康被害、難聴やノイローゼ、こういうような訴えが意外に多いわけであります。これの因果関係というと、お医者さんの場合は直ちにこの因果関係の究明はできない。ことに公害の場合は、それがいままでの一つの難問題だったのであります。したがって、推定であるとか、または原因者負担の原則であるとか無過失賠償責任法、こういうような法律さえもできたわけであります。しかし、新幹線だけは全部これからはずされているのであります。したがって、新幹線といえども難聴、ノイローゼの訴え、ことに干草参考人の場合には協力して自分の奥さんまで犠牲にしてしまった。奥さんが犠牲になってさえも、まだ何ら手当ても受けておられない。そういうような人が十人を上回っておる、こういうような報告であります。
 そうだとするならば、これはもうすみやかに健康調査を行なって実態を把握するとともに、これは医療救済という意味でやはり何か手を打つべきじゃないか、こう思います。いままでかつて見舞い金その他によって救済に準ずるような方法を講じ、または考えられたことございましょうか、国鉄当局。
○内田説明員 私のほうとしては何らかの方法を講じたいというふうに考えておりますけれども、何ぶんそのほうはしろうとでございまして、やはりお医者さんの判断というものが、どうしても必要であるということでございます。それで、昨年の夏ごろからこの問題は、このままではいかぬということで準備を進めてまいりまして、なかなかお医者さんのほうもいままでこういうような問題に取り組んだお医者さんがおりませんので、委嘱するお医者さんの人選にも非常に手間どったというような関係がございますが、先ほど申し上げましたように、今月中には医療審査委員会を国鉄の中で発足いたしまして、ただいま干草さんのほうから申されました十二人の方々につきましては、私のほうで全部わかっておりますので、それらの方々の病状を診察されたお医者さんも入れて、逐一審査といいますか病状につきまして調べまして、そして今後処置をしてまいりたいというふうに考えております。
○島本委員 私はまことに国鉄当局は怠慢だと思います。こういうような事件が起きてからもう十年近くになっても立法措置を講じないまま救済を怠っていた。見舞いさえしてない。これからも救済ということばではなしに、ただもうそれを診察してみたいとか、こういうことばです。なぜ一歩出て、救済ということばが先に出ないのですか。どうもそういうような点では、まだまだ私はとろいと思って残念です。国鉄当局にこれから強く要請しなければなりません。
 同時に、山田参考人のほうから先ほど重大な提言がありました。
 これは名古屋でも、住民にかわって国鉄当局に市長なり、あるいは議会なりがいろいろ要請をしております。あるものは今後実施に移され、あるいは逐次実施する、あるいは努力する、こういうような回答があるようでありますが、ここでどうしても回答のできないスピードの制限、それと同時に緩衝地帯の設置、深夜運行の禁止、物的補償、この点についてははっきり回答をしておらないわけであります。
 しかし、環境庁その他の意見によっても明らかに加害者は国鉄当局です。したがって、PPPの原則によって、すべてこれは加害者負担である。この原則はくずされない。山田参考人のほうからは抜本的対策を講じてもらいたい、この要請が先ほど出されました。経過の中で述べられました。加害者である国鉄当局、いまの四つに対してなぜ責任者としてはっきりした態度をとらないのですか。
○内田説明員 スピードダウンの問題につきましては、先ほど田中先生に御説明したとおりの理由で、国鉄は確かに沿線の皆さんには御迷惑をかけておるわけでございますが、逆に一方では東海道新幹線を年間に一億二千万ぐらいのお客さんが御利用になっておりますので、それらの皆さんの御利用に対して大混乱を巻き起こすという結果になっては、これまたはなはだ申しわけないということでございますので、今後対策をしてまいりたいということでございます。
 それから補償の問題でございますが、これはわれわれもいわゆる規定その他の運用によって仕事をしているわけでございまして、国鉄だけがいい子になりますと、他の関連する公害問題に非常な影響を及ぼすというようなこともございますので、できるだけ現在きまっている範囲内でやることはやるという誠意をもって技術開発なり補償の問題に取り組んでいるわけでございまして、その点は今後法規制なり何なりが改善されれば、われわれとしては、それに向かって邁進してまいりたいと思うわけでございます。
○島本委員 何ら答弁になっておらぬじゃないですか。そうすると、技術開発に取り組んでいるから開発されるまでの間はがまんせよ、こういうことなんですか。治外法権ですか、特権があるのですか。
 「週刊文春」の去年の九月二十日号で、あなたのほうの新幹線総局の環境室長の松原弘和、おりますね。この人が「新幹線の振動については、先進国の欧米諸国にも前例がなく、まったくどうしてよいかわからず、お手上げの状態である」と言っている。お手あげの状態であると言いながらも、将来技術開発されたならば措置を講ずる、それまでの間はもう何でもやっていくのだ、こういう大それた考え方でいいんですか、これは。国民を犠牲にして国鉄だけ生きる、こういうことは許されないはずじゃありませんか。
 いまや公害によって、人の命や健康がいかに大事であるか、これがはっきりしてきているわけです。これを侵害するような場合には、どのような計画でも工事でも打ち切る、これが環境庁の態度じゃありませんか。いまのような答弁を聞いて環境庁は、技術開発まで国鉄がどのような騒音対策を講じないままでもやってもいい、私はそういうふうに受け取って、はなはだ心外なんですが、環境庁、完全に環境を無視されるようなこの発言、これでいいのですか。
○春日政府委員 先般、環境庁長官が新幹線の騒音にかかわる勧告をいたしました。干草参考人の御指摘によれば、それはまことにゆる過ぎるということでございますが、八十ホンというものをとりあえず達成するように、私どもは勧告いたしておるわけでございます。しかも八十ホンという音源対策をいたしましても、なおかつ不可能なところにおいては、それぞれの防音装置なり家屋の立ちのき、移転等に至るまで考えてもらいたいという勧告をいたしておるわけでございまして、まず第一に、その勧告の達成というところをわれわれは要望をいたしておるわけでございます。それが第一段でございます。
○島本委員 急ぎます。そうすると、いま八十ホン以上ということであります。八十ホンでは、これは全然問題にならないという干草参考人からの意見が出たのです。八十ホンでこれは今後指導していくという。これで干草参考人、実際にいま公害の被害に悩んでいる皆さん、いまのことばでよろしゅうございますか。今後これによって完全に救われるとお考えですか。
○干草参考人 八十ホンというような騒音は、私ども人間生活にとってとんでもないことで、全然これは不服であります。なお国鉄が八十ホンに従うために、たいへんな金を使っていまやっておるという、これに従わせるのだと言っておりましたが、もし環境庁が本基準を出したら、あとどうなるのだ、そういうことを考えております。
○島本委員 なお、環境庁長官がきのう参議院で、新幹線には新基準を考え、騒音対策で積極的な姿勢を示したということが報ぜられておりますが、どのような方策をお持ちなんですか。
○春日政府委員 環境庁におきましては、さきに新幹線騒音にかかわる緊急対策として、音源対策で、先ほど申しましたように、八十ホン以下とするように運輸省に勧告してまいったところでございまして、現在それに基づいて対策が実施されておることは、先ほどからの国鉄の御答弁のとおりでございます。
 しかし、たびたび申し上げますが、この八十ホンは既設の東海道新幹線及び新大阪―岡山間のいわゆる山陽新幹線について当面のさしあたっての対策を行なう上での基準をお示ししたということでございまして、今後開通するものにつきましては、特に被害の未然防止のために、現在すでに効果の認められている諸種の技術を積極的に取り入れていただいて、可能な限り騒音の低減につとめる必要があることは当然だと思っております。したがいまして、昨日の参議院の予算委員会で長官が申しましたとおり、具体的にいえば、暫定基準の八十ホンをさらに強化するかっこうで新しく新幹線の騒音にかかわる環境基準を決定するつもりでございます。
○島本委員 もう時間が来たので簡単に答弁してもらいますが、いま名古屋の例で、はっきりわれわれまのあたりに見てまいりましたが、民家と新幹線の高架の柱との間には距離がほとんどない。場合によってははっきりくっついている点もある。都市の稠密地帯へ新幹線を通せば、どうしてもそういうような状態になっておる。私としては、今後新幹線の場合には、特に都市の稠密地帯を避けるということ、それは先ほどから住民からの陳情がありました。しかし、どうしても通さなければならない場合には、地下をもぐるなり、また他にいろいろ方法も考えられるんじゃないかと思う。路面に並行して、あくまでも民家と一緒に走らせなければならない、こういうような特権的な考え方はもう捨ててもいいはずであります。
 私は、こういうような点から国鉄当局に、騒音と振動防止のために抜本的な対策――こういうようなものは抜本、抜本といっている間にじんぜん日を過ごしますから、早くこういうような点を確立して、通さなければ通さないでいいじゃありませんか。地下をもぐったらいいじゃありませんか。そういうようにしてはっきりやるべきです。十年間もたっても、いまだに規制法からはずされたままです。そして同時に、特別立法もなされておらないままです。国鉄新幹線のほうは黒字でぬくぬくとされても、困っている住民の立場を考えた場合には、このままでは済まされないはずであります。
 したがって、ここに抜本的な対策というか、これに対して緊急に早く措置しなければならないと思います。八十五ホン以上のものに対しては移転するというけれども、八十五や八十じゃないんだ。あの爆発的な音、それが二百回も四百回も通った場合には、健康にも生命にも重大な影響を与える、このことも住民からいっておるわけであります。八十五ホンなんていわないで、これを七十なりに下げて住民を完全に保護してやるという立場で国鉄は考える必要がいまあると思います。最後に、その決意を伺っておきたいと思います。
○内田説明員 国鉄としては、国鉄技術の総力をあげて、誠意をもってこの問題に取っ組んでおるわけでございまして、環境庁から八十ホンの基準を示されたから、八十ホンでいいんだというようなことは考えておりません。技術開発によって八十ホン以下にできるだけ下げ得るようなことを考えております。また、今後の新幹線につきましては、いろいろと陳情、請願もございます。しかし地域の皆さんとよく話し合って、環境にマッチした新幹線をつくっていくという決意を持っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
○島本委員 これで私はもう終わるわけであります。しかし、まだ笑いしままの笑い顔で、与えられたままの答弁、きれいな日本語になっておりますが、内容は全然ない。このことを私は国鉄当局の答弁の中で、はなはだ遺憾に思います。同時に環境庁、こういうような問題に対しては、十年この方苦しんでいる住民、こういうようなものをそのままにしてきた。法的ないろいろな欠陥もあった。このことを反省して、可及的すみやかにこの対策を練られるように心から私は要望して、私の質問を終わらせてもらいます。どうもありがとうございました。
○角屋委員長 岩垂寿喜男君。
○岩垂委員 最初に干草参考人にお尋ねをいたしたいと思うのですが、最初のことばの中で、動力車労働組合の減速行動の効果についてお話をいただきました。たとえば、皆さんが自主測定をしたところによれば、八十五ないし九十ホンが減速で七十四ホンに落ちたということを承っております。あるいは昨年の二月に、実はこれは国鉄労働組合が――私は非常にこまかい資料を持っているのですが、やはり順法闘争の中で減速の効果を騒音との関係で調べております。
 これによりますと、約十ホンほど減少しているし、振動も二分の一以下になっている。その他振動に起因する騒音の減少、風圧の減少などの効果も大きいという調査結果が実はこまかくあるわけです。これは一々お尋ねする時間がないのですが、国鉄労働組合の場合には、名古屋大学医学部の公衆衛生学教室を含めて御検討願ったわけであります。そういう意味で、この減速というものがどんな効果をもたらしたか、そのことをぜひお聞かせをいただきたいと思っております。
○干草参考人 私どもは、別に新幹線を減速してくれといって、国鉄がああそうかといって減速をやってくれたことがないのですが、たまたま故障等がありまして、たいへんおそいことがある。そういう体験があるのです。どこか沼津のほうで、たいへん故障があって、夜どおし走ったことがあります。しかし、スピードがないために寝ておっても、あまり苦にならない。ああ、これはおそいといいなあということを体験したわけでありまして、それからというものはスピードダウンというようなことを言うようになったわけであります。それまでは新幹線がスピードを落としたからといって、あまり振動、騒音はなくならないのです。なくなるというようなことは根本的に持っておったわけではないのですが、そういう体験が二、三度重なりまして、おそく走ればいいんだなということを体験したわけであります。
 したがって、いま動労がやってくれておる百キロ以下というのは、振動は確実に半分になります。一・二ミリという振動が〇・五ミリないし六ミリになります。これははかったのだから。それから騒音は、残念ですが七十二、三ホン、私どもの要求しておる六十五ホンにはなりません。それにもかかわらず、家の中におりますと、あまり苦にならない。テレビもあまりこうなりません。ふしぎなものです。電波もあまり狂わない。しかし、住民としては不満足です。六十五ホンにしてもらいたい。だが、そこまで動労に要求するのは無理ですから、黙っております。そういうわけでございます。
○岩垂委員 これは山田公害対策局長にお尋ねいたしたいのですが、たしか昨年ですか、公害研究所で防音壁の問題について調査をしたデータを拝見したことがあるわけであります。この名古屋の公害研究所が、四十八年五月ですか、防音壁というものの効果が二十五メートル地点では一ホン、百メートル地点で二ないし三ホンしか下がらない、こういうデータを実は承りました。いま国鉄の内田常務理事のお話をお伺いすると、まことにこれは効果があって、防音壁でたいへん下がるのだということを承ったわけですが、名古屋の公害研究所の調査の結果を、ぜひここでお聞かせをいただきたいと思うのであります。
○山田参考人 先ほど国鉄のほうから七ホン落ちるというようなお話がありました。これは場所によって違うわけでございまして、現在、問題になっております新幹線が東西に通っておるわけでありまして、その高さは非常に高いわけでございます。
  〔委員長退席、坂本(三)委員長代理着席〕
十二、三メートルありますから、三階建て以上の高架でございまして、そういう場合の防音壁というのは、私どもが調べたところによりますと、遠くで二、三ホン下がるだけで、その鉄道高架の直下においてはほとんど下がらないという結果が出ておるわけでございます。
 先ほどの国鉄のおっしゃるのは、たとえば六メートル以下ぐらいの高架で、低いところで、しかも全然ないのとあるのということで、一メートルぐらいの高さのそういった壁を建てられた場合には、やはり六、七ホンの差は出てくるわけでございます。
 以上でございます。
○岩垂委員 干草さんに、もう一ぺんお尋ねをしたいんですが、防音壁というものが特に皆さんの場合には何の手だてにもなってないんだということをいま山田さんも言われたわけですけれども、科学的にも調査の結果としての数字で明らかにされておるわけですが、防音壁と騒音の関係をもう一ぺんお尋ねをしておきたいと思います。
○干草参考人 現在、名古屋の高架橋はすでに四段ブロックを積んであります。上へ上がって見ると、レールの高さと平らで、下から見ると四段積んであるようだが、実はあれは砂利どめであって、その上へ今度は一メートルの波型のスレートの、このぐらいの厚みのものをやってくれましたが、私どもはあれを夜間工事で三カ月やられたんです。十二時から五時まで、かんかんかんかんと夜通しやるんです。寝られるものじゃないんです。だけれども、防音効果があがるといったから賛成したんです。協力したんです。それでつくってもらった。ところが、はかってみると二ホンないし三ホン。しかも業者は下請であって、仕事をやるのはみんな下請で、季節労務者。何のきさまら、寝てるのか、おれら商売にならねえわなんて言って夜通しばんばんやる。その結果が二ホンか三ホン。たいへんな、一億近い金を使ったそうでありますが、とてもこれはもったいないと思います。これがせめて十ホンぐらい下がるのなら、まだいいんですけれども、だからそういうものをつくってもらっても、深夜三カ月も寝ないでおるという苦痛と引きかえますなら、とてもじゃないがお断わりということでございます。
○岩垂委員 いま参考人のお二人の御意見が明らかにされたように、実は防音壁というのは、本質的な問題の解決にはならぬわけであります。しかも効果は近所では一ホン。そういうことであるのに、現実には国鉄が対応しているのは、防音壁が言ってしまえば、あたかもすべてであるがごとき対応を実はやってきておるわけであります。私は防音壁ではなくて、これもいま干草さんが言ったように、抜本的な解決ではないけれども、せめて減速で振動や騒音をコントロールしていく、住民に少しでも安穏な生活ができるような体制を組んでいくということ以外には、この問題の解決の手だてはないと思うのでありますが、その点を国鉄の内田常務理事に伺いたいと思うのであります。
○内田説明員 いま、名古屋の公害局長のほうからお話がございました。確かに高架橋の高さその他によって、ある地点における防音効果は非常に異なるわけです。ことに干草さんのように高架橋に接している場合、この場合には上からの音ではなくて、高架橋そのものが発する音でございますので、これは防音壁をやりましても、ほとんど効果がない。こういうような場合に、もし音だけの問題であるとすれば、高架橋にはかまをはかすということをいたしますと効果が出てくるわけなんでございまして、そういう意味で、私の申し上げたことは標準的な場合のことを申し上げたので、ほとんどの高架橋はそうなっているということでございます。
 なお、防音壁は意味がないじゃないかというお話でございますが、まず新幹線からいわゆる用地の外に出す音を基本的には押える、これが一番大切なことでありまして、それに全力を注ぐことが、外へ音を出さないということが、われわれは一番大事なことで、そのためにはあらゆる手段を講じるんだということでございます。
 ただ、そういうようなことを考え、また今後の技術開発の見通しを考えても、なおかつ音がどうしても防ぎようもないというようなところにつきましては、障害防止対策としていわゆる家屋に対する防音工事、あるいは非常に高いような場合には、それでもだめだというような場合には、移転をしていただくというようなことでいままで考えてきたわけでございます。
 ただ、この対応は何ぶん初めてのことでございますし、一昨年の十二月に環境庁から勧告をいただきましてから、私のほうで一体防音工事というのは、どういうふうにすれば効果があるのかというような点、あるいはその実施の面についてどういうような基準をつくったらいいのかというようなことを真剣に勉強してまいりまして、それに一年かかったということでございます。ただいまはそういうような実験の結果も出ましたので、基準をつくりまして、関係の官庁とその方策についていま協議中で、この協議が進みましたら、できるだけ早くそういうものを実施してまいりたいというふうに考えております。
  〔坂本(三)委員長代理退席、委員長着席〕
○岩垂委員 それじゃ伺いますけれども、あとでスピードの話はもう一ぺんお尋ねをしたいと思うのですが、新幹線鉄道の騒音対策などについてというものが去年、四十八年の二月に出ていますよ。その中でいろいろな手だてが書いてあります。しかし現実には、問題になっているスピードのことなどは全然入っていないのですけれども、それらの手だてがこういうふうになっていて、その中で建物の移転補償措置というのが入っていますね。つまり、国鉄は非常に解決がつかないところはその土地を買い上げる、そして立ちのいていただくということを考えているように思いますけれども、たとえばいまの予算で、国鉄はどことどことどこを、どのくらいの予算でいわば立ちのきといいましょうか、市街地の買い上げのことを予算化なさろうとしていらっしゃるか、そのことを明らかにしていただきたいと思います。もう一年たっているのですから、しかも予算編成期ですから……。
○内田説明員 四十九年度の予算といたしましては大体二百億を考えております。そのうち音源対策を含めて百五十億、補償その他を五十億というようなことで予算を組んでおります。
○岩垂委員 またちょっともとへ戻りますが、いまの八十ホンという環境庁から提示された目標というのは、たとえばことし一年の間に、大阪までの新幹線の場合と岡山までの新幹線の場合にどの程度その順応性を保証することができるか、そのことについてのプログラムをお聞かせいただきたい。
○内田説明員 国鉄は御承知のように十カ年計画を立てておるわけでございますが、いわゆる既設の新幹線に対して音源対策その他を含めて八百億ということでやっております。なお、運輸省からの勧告もございまして、音源対策については、これを三年でやりなさいということで勧告を受けております。したがって、四十八年度においては百三十五億の予算をもちまして、防音壁につきましては、人家の存するところで対策を立てなければいけないのが二百四十キロでございますが、その約半分を四十八年度にすでに実施をする予定でございます。
 なお、その他一番音の高いのは無道床の鉄げたでございます。これらにつきましては、できる防音工事はやっておりますが、基本的なことは、先ほども申し上げましたように、ことし一年間かかりまして葛川で実験をやっておりまして、その成果を見て今後進めてまいりたいというふうに考えております。
○岩垂委員 さっきの買い上げる予定地というのは名古屋、浜松、大阪などが中心だというふうに承知をしていますが、それでよろしゅうございますか。
○内田説明員 名古屋地区につきましては、非常に軟弱地盤でございますので、これは早急に実施をしてまいらなければいけないというふうに考えております。その他の地区につきましては、これに準じて逐次進めてまいりたい……。(岩垂委員「いま予定をしているところ、あなたのところで」と呼ぶ)いま現実の問題としては、それらの問題について関係官庁とも相談をしておりますので、最終決定には至っておりません。(岩垂委員「国鉄としては、大阪は名古屋と同じような条件だと見ていますね」と呼ぶ)その点につきましては、今後政府並びに関係官庁と御相談をして決定をしてまいりたいというふうに考えております。
○角屋委員長 委員長の許可をとって質疑の展開をしていただきたいと思います。
○岩垂委員 はい。いまのお話ですけれども、名古屋の買い上げというのは予定をしている、どのくらいの面積を予定しておられるか伺いたいということが一つ。
 それから、たとえば浜松だとか大阪だとかいう問題が巷間伝えられているわけですけれども、国鉄内部でもそのことは検討なさっているはずだし、もうすでにその一つのプログラムは出されておるはずであります。この辺で国鉄の気持ちというか方針を明らかにしていただきたいと思います。
○内田説明員 たびたび申し上げますように、これらの問題は建設省の高速道路あるいは飛行場の買い上げの問題等とも非常に関連がございますので、国鉄だけできめるわけにまいりません。したがって、今後関係官庁とよく協議をしてきめてまいりたいというふうに考えております。
○岩垂委員 では、ちょっと伺いますが、いま動力車労働組合が減速行動を組織しております。これで現実に新幹線がおくれているかどうか。新幹線総局の発表によれば、おくれを取り戻しておる、つまり実際には遅延はないという立場を明らかにしておられますが、そのとおりに理解をしてよろしゅうございますか。
○内田説明員 新幹線のダイヤは御承知のようにいろいろの保線工事あるいは改良工事等がございまして、速度制限をしなければいけないという余裕時分というものをとっております。したがって、ただいまのところは冬季でございまして、冬季に線路をいじるということは非常に危険でございますので、工事がそうたくさんございません。したがって、いま名古屋で減速をしておる三、四分程度のおくれは、その余裕時分の中で吸収されますので、東京、大阪に着くときには、定時に着いておるというのは間違いございません。
○岩垂委員 現実に実害がないわけであります。したがって、これだけ世論というか、特に被害者の方々の御支援があるわけですから、動労がそういう態度をとっていることについても、当局の十分な御理解をぜひいただきたいと思うのであります。と申し上げますのは、御存じのとおり、三月十九日に国鉄労働組合のほうも実は安全問題で事故防止対策委員会というのを国鉄当局と持つことになっております。もし三月十九日に国鉄のほうが誠意のある回答をこの新幹線問題で示さないとすれば、国鉄労働組合も動力車労働組合と呼応して、この減速行動をとることをやらざるを得ないということを実は明らかにしているわけであります。
 そうした意味で、国鉄に働く労働組合が、ともに住民の立場、特に被害者の立場を取り上げて、企業のいわばいろんな問題点を告発をしながら、労働組合としての社会的な責任を果たそうとしているわけですから、その点についてぜひ理解のある態度をとってほしいと思うのですが、その点について伺いたいと思います。
○内田説明員 国鉄労働組合から安全の問題についていろいろと白書が出ております。これらの問題につきましては、国鉄としては誠意をもって対処するつもりでございます。
○岩垂委員 誠意をもって対処するということばを聞きましたので、それ以上言うつもりはありません。ただ私は、名古屋での減速を国鉄として認めてほしいと思うのです。干草さんが非常に強く言っていらっしゃる気持ちを私はここで皆さんにもう一ぺん要請をしたいと思うのです。
 というのは、御理解のとおりに現在新幹線というのは東京―新大阪間において上り四カ所、下り四カ所、線路事情により減速を実施しているわけであります。そしてその余裕時間というのは、上りひかり十二分三十秒、こだま十四分、下りひかり十三分十五秒、そしてこだま十五分、これだけの余裕時間を見ているわけでありますから、名古屋で国労と動労が、そういう住民の要請にこたえて減速の行動をやったとしても、実は現実には実害はないわけであります。のみならず名古屋だけでなくて、たとえば大阪であるとか東京であるとかいうところで減速をしてみても、この余裕時間というものを考慮するならば、あまり遅延をしないで済ませることができるわけでありますので、私はもう一ぺん国鉄当局に、名古屋でやっているこの実績を見て――何も労働組合がやったから当局がということを言わなくてもいいと思うのですが、当局が積極的に住民の意思にこたえて、当面名古屋だけせめて減速をするという態度をとれないかどうか承りたいと思います。
○内田説明員 先ほども御説明いたしたとおり、国鉄が名古屋で百キロ運転を認めるということは、いま、まだ三年かかってやるいわゆる音源対策、障害防止対策が完成しておりませんので、ほかの地区においてもこれを認めざるを得ない。そうなりますと、先ほど申し上げましたように約一時間半新幹線がおくれる。これは詳しく申し上げますと非常に長くなりますけれども、現時点の車両事情では約六割の輸送力減になる。ただいま御承知のように、新幹線は非常に御利用が多いわけでございまして、今度は御利用される皆さんに非常な御迷惑がかかるということもございますので、われわれは誠意をもって公害防止対策を今後国鉄の総力をあげてやるということで、ひとつスピードダウンの問題につきましては、それを条件にスピードダウンはしないということで御了承願いたいと思うわけでございます。
○岩垂委員 国鉄は、その結論が出るまでは、どうしてもスピードダウンは認めないという立場ですか。その点をもう一ぺん確かめさせてほしいと思うのです。
○内田説明員 沿線の皆さまにはまことに申しわけないのでございますが、もう一つの面を考えると、どうしてもできないというのが国鉄の立場でございます。
○岩垂委員 これは大阪の空港の公害判決の中でも示されましたように、これは藤本環境庁政務次官に伺いたいと思うのですが、あなたは裁判の結論が出たときに政務次官会議で、この判決というのは、要するに人格権というものを財産権と同じように見るという立場が確立されたのだ、そして同時に、そういう立場というものが、たとえばそれは、あらゆる意味で公害問題の中に認められなきゃいかぬということを裁判は示している、つまり、人格権の侵害排除の権限を認めて、人格権に基づく差しとめ請求ができるものと解しているというふうに言っておられます。これはあなたのことばとして理解してよろしゅうございますか。
○藤本政府委員 政務次官会議での発言をすべて新聞で報道しているわけではないわけでございまして、私が発言いたしました趣旨は、あの判決は人格権に基づいて差しとめ請求が認められたということである、そういうことでありますから、将来の問題としては、たとえて言えば飛行場の問題であるとか、新幹線の問題であるとか、高速道路であるとか、そういう問題については、環境保全をするために今後の建設については十分に配慮をしていかなければならないという趣旨のことを申し上げたわけでございます。
○岩垂委員 もう一度伺いますが、それは今後の問題ですか。現実にいま起きている、つまり人格権に侵害を受けている、それらの人たちに対する排除の権能というものを今度の公害裁判では認めているのです。その点をはっきりさせていただきたいと思います。
○藤本政府委員 今後の問題については、特にと申したわけでございます。
○岩垂委員 それでは、私はいままで聞いてまいりました。新幹線といえば、確かに世界に誇るべき日本の技術として実は宣伝をされてきたわけであります。しかしそれが、いま地元さんの切々たる訴えの中にあるように、沿線住民の犠牲と切り捨てを前提とした技術であることが明らかにされているわけです。そうした意味では、いますぐ何かの手だてを政府としてとらなきゃならぬと私は思うのです。そして、しかも科学的に、一定の地域で減速をすれば、スピードが落ちれば、騒音も振動も落ちる。そして住民が喜ぶ。しかもその結果として、たとえば名古屋だけでいえば、全体の運行計画の中で遅延がない、ここまで実は明らかにされたわけであります。そういう意味では、私はやはり、たとえば当面新しい技術が開発されるまでの間は、せめて可能な、ベターな手だてというものを講ずるべきだと思うのです。
 その意味で、名古屋で減速を国鉄労働組合もやることになるでしょう。そういう場合に私は、政府として、環境庁をあずかる政務次官として、ぜひこれらの立場、つまりいま減速をすることが、名古屋についていえば、非常に住民の要求、気持ちというものにこたえる道だと思うのでありますが、国鉄はかなり固執をしておるようですけれども、環境庁として、つまり住民の立場に立たなければならぬ環境庁として見解を承っておきたいと思います。
○藤本政府委員 新幹線の騒音から生ずる被害を軽減する手段として、減速という問題は確かに一つの方法であるとは思います。ただ、新幹線が建設されました社会的要請といいますか、それにはやはり長距離を短時間で結ぶ、そういう社会的な要請から新幹線というものの建設があったと思うわけでございます。しかしながら、だからといって、いま見過ごすことのできないほど被害を受けておる沿線の方々をそのまま放置していいというわけでは、もちろんないわけでございまして、両方を同時に議論をしていかなければならないと私は思うわけでございます。
 その意味で私ども環境庁といたしましても、当面の対策としては、なるほど減速も一つの方法だと思いますけれども、その前に、国鉄が約一年前に環境庁長官が運輸大臣に緊急対策の指針として勧告いたしまして以来、非常に御努力をされている防音壁の問題であるとか、その他の対策並びにそれだけでは十分でないかと思いますので、住居の改造の問題とか、それから移転の問題とか、そういう問題に大いに力を入れていただいて、そういう対策をまず進めていくのが、私どもといたしましても適当であろうと考えておるわけでございます。
○岩垂委員 いま藤本さんのお話の中でも――これは藤本さんにお願いをしたいのですが、航空騒音の問題を、新幹線を含めて新しい法律をつくるということを三木さんおっしゃっていらっしゃるのです。これは例の大阪空港の裁判のあった直後に関係閣僚会議でかねてから三木さんが言っていらっしゃったことであるということを含めて言われているわけです。それらの見解を承りたいと思うのです。
○春日政府委員 三木長官がおっしゃったことでございますが、新しい騒音に対する法律をつくると申しますよりは、新総合交通体系というものを見直そうということが長官が言われた一つであり、それから環境アセスメントをやって、新しく空港をつくる、あるいは新幹線をつくる、あるいは高速道路をつくるようなときに、土地の買い上げの問題とか、それから一たん空港を設置することがきまりましても、都市計画に基づかない地域におきましては、どんどん新しいうちが入ってくるというような問題がございますので、そういったことを、もっと総合的に考え直す必要があるのではないか、このような御発言であったように存じております。
○岩垂委員 経済社会基本計画の中にも示されていますけれども、新幹線を全国に千九百キロメートルを供用する、昭和六十年までには七千キロメートルの建設を目標とするということになっているわけであります。これはやはりいまの名古屋の実態だけじゃなくて、新幹線の公害に悩んでいる人々にとっては深刻な問題だし、当然全国でいろいろな問題が起こってこざるを得ないと思うのであります。そうした意味で、この経済社会基本計画を見直すということになっているわけですが、その中で新幹線計画をどのように考えているか、運輸省に承りたい。
○住田(正)政府委員 現在、経済社会基本計画についての見直しが必要ではないかといわれておりますが、具体的にどういうふうに見直すかという作業を行なっているわけではございませんので、現在の段階で、いまきまっております新幹線計画をどうするかということについて、お答えはできないわけでございます。ただ、今後つくります新幹線につきましては、これまでの経験に基づきまして、公害のない新幹線をつくるということを考えているわけでございます。
 先ほどから問題になっておりますが、今後の新幹線をつくる場合には、四十七年の十二月に環境庁からいただいております勧告の線を満足すればよろしいということではなくて、本年じゅうに新しい恒久的な基準が環境庁から示される。現在中央公害対策審議会で審議をしていただいておりますので、本年じゅうには、おそらく新しい勧告が示されると考えておりますが、そういう新しい基準に適応できるような新幹線をつくるということで今後の計画を進めたいと考えております。
○藤本政府委員 大阪空港の裁判のあとで大臣が言われましたのは、二つの事情に基づいて見直しをしなければならない、こういうことであったわけでございます。
 二つの事情と申しますのは、一つはエネルギー問題、エネルギー事情でございまして、一人を一キロ運ぶエネルギーを輸送機関で計算いたしますと、飛行機が一番たくさんのエネルギーを使うわけでありまして、そういうエネルギー問題と、もう一つは環境問題、この二つの問題から情勢が変わったわけでございますから、見直しをするべきである、こういうお考えで、総合交通体系の見直しをすべきであるという、ああいう御発言になったわけでございまして、私が承知いたしております範囲では、現在、経済企画庁内におきまして事務的にその問題に取り組むチームをつくりつつある、こういうことを聞いております。
○岩垂委員 春日さんに伺いたいのですけれども、いまの中公審で答申を受けようと思っている目標は、大体夏までには答申を予定しているかどうか。ぼくはできるだけ早い機会にそれを示しながら、そして現実に進んでいるいろんな計画を早目に対応させていかなければ、どうにもならぬと思うのでありますが、その答申の時期は、どの辺をめどに置いているか承りたいと思います。
○春日政府委員 もちろん急いでおるわけでございますが、予算委員会でも長官が申しておりましたが、本年じゅうに、こういう表現でございます。可及的すみやかにと申しますか、できるだけ急いでまいりたいと思いますが、夏までということには多少問題があろうと思います。
○岩垂委員 夏までにはぜひ答申をするという、はっきりした御返答をいただいて――いまの新幹線の問題というのは全国の問題なんであります。もちろん一つの問題点は名古屋でありましたけれども――違いますか。
○春日政府委員 申しわけございません、語尾がはっきりいたしませんで。
 夏までは、ちょっと無理であろう、こう申しました。
○岩垂委員 中公審の作業というのは、できるだけ早くしてもらわぬと、現実に悩んでいる人たちの気持ちにこたえることにはならぬと思うのであります。ぜひその点は、夏まではということは、夏が過ぎればすぐということだろうと思うのですが、早目にやっていただきたいものだ、こんなふうに思います。
 それで最後に国鉄に、これは内田さんに伺いたいと思うのですが、いま干草さんがお出しになっている訴訟はどういうものであるか御存じですね。それに対して国鉄が、いま答えられる答えを干草さんの前で答えていただきたいと私は思っております。
○内田説明員 まだ訴訟が始まっておりませんので、どういう訴状になるのかわかりませんけれども、新聞等で伝えられるところではスピードダウン、スピードに対する差しとめ請求と、それから過去十年間に対する慰謝料、その二つだというふうに了解しております。
 スピードダウンの問題につきましては、先ほどから申し上げたとおりでございます。
 それから慰謝料の問題につきましては、これは伊丹空港の問題等もございますし、それらの関連の中で今後処置をしてまいらなければならない問題だというふうに考えております。
○岩垂委員 先ほどから内田さんがおっしゃっておられるように、新大阪までの新幹線というのは、オリンピックを目ざして急につくったのだ、したがって実はいろいろな問題がある、公害対策がきわめて不備であるということも、あなたは認めていらっしゃるわけです。とりわけ名古屋の問題については地盤が弱い、その意味で迷惑をよそと比べても、かなり深刻に受けざるを得ないということになっているわけでありまます。
 私は最後に重ねて申し上げたいことは、動力車労働組合や国鉄労働組合が、いうところの国民春闘という立場で、いわばそれぞれの犠牲を考えながらも、国民の世論、そういうものを背景にして減速の戦いをやっている、やろうとしているわけであります。これについて国鉄が理解ある態度を示せるかどうか、この点について承っておきたいと思います。
○内田説明員 われわれ建設屋の立場といたしましては、当時の予算等の事情あるいは公害問題が、これだけ激しくなかったというか予期し得なかったというような、これは弁解になるかもしれませんけれども、そういうような事情もありまして、ああいう問題を惹起したということは、確かに不明の至りということで、心より深くおわびをするわけでございますが、ただ、国鉄のスピードダウンに対する考え方は、私が先ほど申し上げたとおりでございまして、そういう意味では、われわれは一つかまのめしを食う仲間でございますので、やはりわれわれの言うことに同調していただきたいというのが、私の偽らざる気持ちでございます。
○岩垂委員 結果的に住民の理解を得、支援を得、そして国鉄の同じかまのめしを食っている働く仲間が、国鉄がやっている現実に対して、企業の中から住民との連帯を強めようとしているわけですから、当然処分などということはおっしゃらないと思うし、そうであってほしいというふうに私は思います。
 いずれにせよ、私が最後に申し上げたいのは、こんなに「狭い日本」ですわ、ほんとうに。「そんなに急いでどこへ行く」という実はスローガンがあるわけでありますが、まさにスピードと日本経済ということを基本的に問い直してもいい時期がいまきているように思うのであります。そうした意味で名古屋で起きている事態というのは、まさに日本人の生活のスタイルそれ自体考えてみる必要のある時期であろうと思うのであります。そうした意味で、たとえばスピードを出さなければ、何か住民に迷惑をかけるという考え方がひっくり返る、逆だと思うのであります。
 国鉄法の第一条によれば「公共の福祉」ということにきちんとなっておる。公共の福祉とは一体何かということです。沿線住民を切り捨てて、とにかくスピードに奉仕する、産業活動に奉仕するということだけが、公共の福祉ではないと私は思うのです。いな、むしろそれは公共の福祉を裏切るものだと思うのであります。そうした意味では、国鉄はこの新幹線問題について、これは運輸省もそうでありますし、環境庁もそうでありますが、ここで基本的に干草さんたちが提起している問題に対して誠実に、そして住民の立場に立つ回答をぜひ示していただきたい、このことを最後に要望いたしまして、終わりたいと思います。
○角屋委員長 米原昶君。
○米原委員 本日は新幹線の公害問題について干草、山田両参考人にわざわざ来ていただきまして、貴重な意見を聞かせていただいて、心から感謝しております。
 いままでの質疑の中で多くの委員が質問したので、もうあまり重複することを避けまして、ごく簡単な質問にいたします。
 私、参考人の意見、ことに干草さんの意見を聞いておりまして、新幹線問題について、当面どうしてもあれをしなくちゃならぬという問題と同時に、やはり新幹線に対する将来の方向、これを痛感したのです。
 私たち先日名古屋市に行きました。そして、あの大都会のまん中を通しているというところに、そもそも問題があるのだということを痛感したのです。名古屋の経験からしましても――名古屋だけじゃなくて、私の住んでいる東京の南部のほうも新幹線が通っておるわけで、そこも私、経験しておりますが、とにかく大都会、ことに人口の密集地帯、ここに新幹線を通すのが、そもそも誤っていたんだということを痛感したのです。今後新社会発展計画を見直されるという話でありますが、国鉄当局としても、今後新幹線を方々につけていかれるわけですが、いままでの経験からしても、干草参考人が言われましたように、大都会や、ことに人口の密集地帯は原則として通さないようにする、通さざるを得ないときは地下鉄にする、地下鉄もできないような部分も一部あると思いますが、短い部分なら完全な騒音防止、振動防止の措置だってとれなくないと思うのですが、そういう方向にするのだということを、むしろいま、はっきりきめていただきたい。それでこそ名古屋の方たちが、この問題で立ち上がっておられることに対して、ある意味でその意思にこたえることにもなる。
 そういう点について、国鉄当局のほうは今後の方針として、そういう面を考えておられるのかどうか、その点をひとつ最初に伺っておきたい。
○内田説明員 そのとおりだと思います。ただ、いろいろの地形の問題、あるいは地質の問題、あるいは地方の都市の御意見、要するに停車場をどこへ持っていくかというような熾烈な陳情もございますので、それらのものを勘案して、地域と調和のとれた新幹線を今後つくっていくということでまいりたいというふうに考えます。
○米原委員 現実の問題としては、この東京都内でも成田新幹線、それから新潟に向かう新幹線、それから東北新幹線の問題が、どれもこれも、やはり地上を通るということで紛争が続いているわけであります。もちろん地下を通すということは、いまの東京駅のところから出るとなると、実際技術的な問題としても――いまある道路の下なら地下を通すことは簡単だけれども、必ずしもそうでないとすると、確かに技術的にむずかしいことはわかっています。しかし、そのあたりを根本的に考え直して、必ずしも東京駅から出なくちゃならぬということじゃないと思う。根本的にひとつ考え直していかないと、むしろこの問題は、いつまでたっても解決しない。新しい公害を引き起こすことになると思うのです。そういう点で、ほんとうにそういうかっこうでやれるのかどうかということを聞きたいのです。
○内田説明員 現在の東北並びに上越新幹線が東京駅から出る、そのためにどうしても東京の秋葉原ぐらいまでは高架で行かざるを得ない、これはお客さんの面あるいは東北、新潟方面の皆さんの御意見等もございますし、あるいは輸送の状況から言いましても、東京を通過するお客さんというのは、現在の新幹線でも一割二分ぐらいあるということを考えますと、どうしても東京駅で相互乗り入れをせざるを得ないという問題がございますので、これに対しましては騒音の防止、振動の問題、あるいは環境とマッチするというようなことに十分注意して、なおかつ地域の住民の御納得を得て工事を進めてまいりたいと思います。
 先生も御承知のように、ただいまいろいろの地点で反対運動というものが起こっておることも事実でございまして、ただその反対運動というのが、現在既設の東海道新幹線と同じものをつくるのだ、したがって反対だという方が非常に多いわけでございまして、そういう意味でも、われわれは東海道新幹線について早急に環境改善をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございますが、今後つくる新幹線につきましても、禍根のないような仕事をしてまいりたいというふうに考えております。
○米原委員 いままでと違った、今後つくる新幹線と言われますけれども、実際には名古屋に行って聞きますと、新幹線をつくるときには話はまるで違っているんですね。干草さんもおっしゃいましたけれども、とにかく二百キロのスピードで瞬間的に通るだけで騒音なんて問題にならないのだということで、みんなそう思い込んでいたんです。事実国鉄当局も最初に予想されたときに、こんな公害が起こるとはおそらく思っていなかったんじゃないか。だから新しいのをやるといいましても、あまり信用できないのですよ。ほんとうにそれはできるのかどうか。相当思い切って構造を変えませんと――先日、私は東京湾の埋め立てをしている大井の埠頭のところですが、例のいま品鶴線といっている、あの貨物線を、横浜のほうからあっちに回すというのですね。確かにああいうところを通すというなら、現在のところは全然人家のない埋め立て地ですから、ああいうところを通していくというなら、最初からそこには人家はあまり建てないという計画でいきますから、それはできると思うのですね。そういう点を考慮していかないと、ほんとうの解決にならないじゃないか、そういう点を考えてもらいたいのです。
 もう一つ。いま言いました新しくつくる貨物線と関連して言うのですが、先ほどの話では、名古屋で今度できる南方貨物線ですね。これがダブることになっても、騒音が一面で消される効果があるのだというような発言がありまして、干草参考人は非常にそれを憤慨されたんです。私もそれは当然だと思うのです。いまある新幹線に、さらに新しい貨物線が並行して走ることになって騒音が低くなるなんということは、およそ考えられませんよ。貨物線が並行して走って騒音が低くなるというようなことが、一体何か理論的な根拠でもあるのでしょうか。
 品川のところは、現にそういうふうに走っておるわけです。品鶴線の貨物線が新幹線と上下を走ったり、並行したりしてずうっとあそこのところ走っています。あそこのところの騒音を私、はかりにも行きましたし、品川区や大田区、それから東京都の公害研究所の人たちと一緒に何回も立ち会って新幹線と並行して走っている貨物線、この二つが走っているときにどういう被害を与えているかということを、いままでの資料でも詳しいものがあります。決して減っていないのです。どういうわけでああいうことを言われたのか、何か理論的根拠があるのか、説明していただきたい。
○内田説明員 音の回数としては、列車回数がふえるわけでございますから、ふえるわけです。ただ、新幹線に対しては、高架橋ができれば、構造物ができますので、いわゆる防音壁の役目をなすわけですね。新幹線の音に関しては、要するに高架橋の側については音が低くなるということでございます。なお、貨物列車の音は、新幹線の騒音に比べれば非常に低いわけでございますから、そういう意味では、全体として、現在いわゆる貨物線ができたほうの側の騒音は非常に減るだろうと思います。
 なお、これにつきましては、先ほども申しましたように、新幹線と総合的に、両側の振動、騒音防止に対して、名古屋地区については、買い取り請求には応ずるということで、今後進めてまいりたいということでございます。
○米原委員 東京の実際で、はかったところでは、これはむしろこうです。たとえば新幹線が八十五ホン、それから貨物線のほうが七十五ホンとなったときに、これが両方走ってプラスしただけの音になるということじゃない、プラスしたよりも少し低いということは事実です。しかし二つダブれば、騒音としては、いままでよりもふえているのは間違いないのです。
 もう一つ問題になるのは、貨物の騒音というのは、若干新幹線の場合とは性質が違います。スピードは確かにおそい。しかし貨物というのは、いろいろな種類の荷物が入っているわけで、この音が新幹線のように一律の騒音でなくて、いろいろな複雑な騒音になってくるわけです。このほうが、むしろ周辺の住民たちに耐えられないようなものになっております。
 そういう点からいいますと、さっきの発言は、大問題だと思います。そんなふうに考えておられるとすると、名古屋の問題は、南方貨物線が通ることによって、いまよりももっとひどくなるというのは、私たちも東京都でこりごりしておりますから、何とか貨物線のほうでも撤去してもらいたいという運動が起こっているのは、そのためなんですから、この点はもう一度考え直してもらわなければならぬ。おそらく計画としては、やることになっているのでしょう。それを考え直すぐらいのことをやらないと、これはたいへんなことになる、こう思うわけです。どうでしょうか。
○内田説明員 貨物列車の音が、たまたま新幹線と一緒に走れば、ある程度重複的な効果はあると思います。ただ相殺する効果もあるわけでございまして、品川の場合には、先生御承知のように、貨物列車が地平を走っておりまして、その上を新幹線が走っておるわけでございます。あるいはまた、大森の付近では、多摩川のほうに行きますと、並行して地上を――地上といいますか、カットの中を走っておるわけでございまして、そういう意味で、多少違うかと思います。しかし先生の御忠告もございますので、今後そういう点にも十分注意して、騒音防止並びに振動の問題について進めてまいりたいと思います。
○米原委員 そこで私、干草参考人にお聞きしたいのです。
 実は先日、名古屋に調査に行きまして、最初のあれは何町でしたか、調査に行って、騒音を測定したり、いろいろなことをしたのですが、最初に行ったところの測定の場所で、婦人の方からこういう話が出ております。振動の問題ですが、私、実はあれほど名古屋は振動がひどいのだということは知らなかったのです。そのときにつくづくわかったわけですが、動労がスピードダウンをやった、これがどういう影響を与えているでしょうかという問題なんです。これを質問したのです。
 ところが、騒音のほうは低くなったけれども、振動はもっとひどかった。あれでは振動のほうが解決にならない、こういうことを言われたので、ちょっとがく然としたのです。さっきもお話があった、振動のほうは、確かにいままでの測定では半分ぐらいに減る、あのようなスピードダウンをすれば。こういう報告を受けているわけです。ところが、そこに住んでおられる方々の測定ではなくて、感じ方なんですが、ゆっくりと走られると、逆に振動がひどくなったということで、この前の地震のとき、地震はほとんどわからなくてというような話も、そのときに出たわけでありますが、この点は住民の方々の、これはその人だけの感じ方かもしれませんが、住民全体としては、その点、どうなんだか、聞きたいのです。
○干草参考人 スピードダウンをやってくれますと、確かに平地のところでは振動が半分になり、騒音は約十五ホンぐらい下がりますが、残念なことに、無道床鉄橋、いまお話の出ました古新町です。六番町の鉄橋、それから忠治橋の鉄橋、こういう鉄橋の上に、じかにまくら木が取りつけてある。砂利のないところは、これは残念ですが、スピードダウンをやっても、振動も騒音も下がりません。むしろ、早いときには、七秒か八秒でぴゅうっと行きます。これがスピードダウンをやったがために、長い時間ごとんごとんとやるのです。
 したがって、鉄橋付近の住民は悲鳴をあげております。私たちは万歳なんですが、鉄橋付近の住民はちっともありがたくない、抗議を受けております。したがって、この無道床鉄橋は、現在百八十キロぐらいで走りますと、大体九十七ホンぐらいあります。これを百キロ以下に落としても九十ホンぐらい、これでは効果がないのです。それで苦情が出ておりまして、私どもも困っておるようなわけであります。
○米原委員 そうだとしますと、これも一つの重要な問題なんです。私たち、いままでの委員の質問の経過からでも、とにかくスピードダウンが、もしできさえすれば――国鉄当局は、そのことはまだ認めておりませんが、しかしスピードダウンをしさえすれば、とにかく一定の効果があがるのじゃないか。当面の対策として、根本的な対策とはいえないけれども、とにかくこれが一つの手だ、こう思っておると、いまお話しになったような事情があるわけですね。鉄橋のところは、それはだめなんだ。そうだとしますと、そういう場合に、鉄橋のところは、どういう措置をとったらい
 いとお思いでしょうか、わかりますか。
○干草参考人 私の経験では、鉄橋は、残念ですが、鋼材というものは音に敏感であるのにかかわらず、こういう常識を無視したようなことをやってしまった。だから、これは取りかえてもらわなければいかぬ。新幹線を走らせるならば、これを取りかえてもらわなければならぬ。取りかえることができないんなら、これを特殊な構造のトンネルにするよりしようがない。下からずうっと包んで、上に穴でもあけて、それ以外に方法は――幾ら金がかかっても、そうしなければいけないと思います。
 いま六番町の鉄橋は下を鉄板で包んであります。あれは聞くところによれば六千万円かかった。ところが百十五ホンが百ホンになっただけで、とてもじゃないが話になりません。だから完全に、あの鉄橋から人間がしんぼうできるという音にするのには、やはりトンネルにするよりしようがないじゃないかと思っておりますが、つくってしまったから、しかたがないというような考え方ではどうも困ると思うのだが、実際あれにはわれわれもどうするのだろうかと思っております。
○米原委員 いまおっしゃったように、私も同感なんです。つくってしまったから、どうしようもないんだという考えでいく限り、この問題は解決つきません。もう思い切った手を打つ必要がある。防音壁の問題についても、ほとんど効果がないという話が出ましたが、けさの新聞でしたか、新幹線、福岡市の例の団地の中を通るということで紛争が起こっていて、それで話し合いがついて協定ができたということが新聞に出ておりました。協定ができたことですから、それにああこう言うわけじゃありませんけれども、協定ができたにしても、ただ、それが防音壁で解決がついたというようなことなので、はたして防音壁だけで団地のようなところが、ほんとうの解決になるだろうか。いままでの経験ではおそらくやったあとで、また苦情が出るのじゃないかという感じがしてならないのです。やるとしても、いまおっしゃったような、ぐるっと包むトンネルのようなやつですね。さっきも話がありました札幌の地下鉄は、地上に出たところはぐるっと取り囲んであるわけですね。これが確かに防音の点では、かなり大きな成果をあげていると聞きました。
 この問題について、先日は名古屋でその点どうだろうかという意見を聞いたわけですが、国鉄の方からは、何か日照上の問題もありますのでというような返事があったので、ちょっと驚いたのです。新幹線が通るとすれば、確かに日照上の問題は若干あるわけでしょうけれども、それこそそこを通るのは瞬間ですから、そんなに問題じゃない。完全な騒音と振動の防止がやれさえすれば、むしろそのくらいはがまんできるのじゃないかと思うわけですが、そういう方法でやるということはいかがなものか。この点について国鉄の方に説明をお願いします。
○内田説明員 ただいま博多の手前の吉塚のお話がございました。これはいわゆる防音壁を主としてやるわけでございますが、これは防音壁というのは、高架橋よりも低い建物に対して有効なのであって、アパートのような高いものに対しましては効果がないわけでございます。したがって、それらの問題については今後試運転等の時間がございますので、その間にいわゆるアパートそのものの防音工事をあわせてやるということでございまして、これは東海道沿線でもそういうようなところがたくさんございますので、そういうものをあわせ考えるということでございます。
 それから先ほども申しましたように、新幹線をいわゆるドームでくるむという問題、これはただいま無道床のトラス、弓のようになっているトラスで実験をしております。橋梁につきましては、道路のけた下の問題、あるいは橋梁そのものの構造、強度等がございまして、全部そういうことでくるむということは、実質的には不可能だと思います。したがって、いま干草さんからおっしゃられましたように、けたの防音工事をしても、なおかつ音をコントロールできないというような場合には、民家に防音工事をする、あるいはそれでも耐えられないというようなことであれば、申し出によって立ちのき補償をしていくということで考えるよりほかしようがないというふうに考えております。
 なお、ドームにいたしますと、とにかく架線の高さが約六メートルございまして、複線式でございますので、相当高いものになります。したがって新幹線が通る日照の問題ではなくて、北側の民家が日照の問題でとても不可能だ。どうせそれで解決するならば、やはり両側をある程度緩衝地帯を設けるというほうがよろしいのではないかということで今後まいりたいと思っております。
○米原委員 結局、私は現実の手としては、やはりスピード制限ということが一つのかぎだと思います。スピード制限と、それから、いまおっしゃった緩衝地帯の問題、これはいろいろな複雑な問題がありますから、簡単には言えませんが、しかし、とにかく住民が希望するなら、もう別問題です。緩衝地帯、スピード制限の問題というのが、おそらくその点で裁判の結果も注目されるわけですが、大阪のあの空港裁判とはまた違った意味で、しかし基本的には、ああいう判決が下された。あの考え方を押し進めていけば、当然一定のスピード制限ということも出てくるのじゃないかと思うのです。その場合に、さっきのお話では、どういう計算のしかたか知りませんが、何か時間が一時間半長くかかるとかいうふうにおっしゃるけれども、非常に限られた区間を最低限ここだけはスピードを落とすという区間をもっと厳密に検討していただけば、スピード制限という問題は、もっと実際的な問題として解決のほうに持っていく一つの糸口になるじゃないかと思います。
 私は根本的な考え方としては、大体大都会を通さないで新幹線を別のところにつくる方向に将来持っていくということで解決しなくてはなりませんが、さしあたっての問題としては、どうしてもスピード制限を中心にして、何とか公害を防ぐべきではないか。実は、この点について二人の参考人の御見解を聞いておきたいのです。山田さんからひとつスピード制限について……。
○山田参考人 スピード制限と緩衝地帯の問題でございますけれども、やはりこれはうらはらの関係にありますが、スピード制限がどうしてもできないという場合は、緩衝地帯をうんととらなければならぬという問題もございます。両者相合わせれば、緩衝地帯は少なくて済むというような問題だと思うわけでございます。
 スピード制限の問題につきましては、国鉄の従来のわれわれに対するいろいろな御意見としては、半分の速度にすれば確かに輸送力は半分になる。現在新幹線は非常に満員でございまして、その輸送力が需要にこたえられないではないかというようなお話もあったわけでございます。しかしながら、それは航空機であれば、また空港の問題も起きるというような問題もございますけれども、要するにスピード制限がどうしてもそういう事情でできなければ、緩衝地帯をうんととるより手がないのだというふうに思うわけでございます。
 緩衝地帯につきましては、これは多ければ多いほどいいわけでありますけれども、その辺の音と振動と、両方からこれを勘案して考えていかなければならぬというふうに考えております。
○米原委員 スピード制限の問題について、干草さんの見解を聞いておきたいと思います。
○干草参考人 さっきもちょっと裁判の訴訟のことで、何かこちらの人がスピード制限というようなことを言われたが、私たちこの裁判でスピード制限は求めておりません。これはちょっと訂正しておきます。ただ騒音を六十五ホン以下にしてくれ、振動を〇・五ミリにしてくれと言っているだけです。スピードを制限しようが、緩衝地帯をとろうが、それはこちらのごかってだ。ただ、スピード制限をしてくれなんということは、ここから先も言っておりませんから、誤解のないようにお願いします。
 いまの山田局長の話で、案分すればいいだろうというようなことですが、私たちは公害をなくしてくれと言っているんで、スピードを制限してくれと言っているんじゃない。ただ、この苦しいのがなければいいんであって、たまたまちょっとした経験から、そんなことを言っているんです。いま動労がやっているのは、たいへん楽だから、いいなと言っているんですけれども、それがたまたまスピード制限ということになっておりますが、確かにゆっくり走ってくれるといいことは間違いないが、またその一面で輸送機関に故障ができて、金がもうからぬと。実際言うと金もうからぬわけだ。だからスピード制限はできぬと言っているんじゃないかと思うのですが、私は、スピード制限はしようがすまいが、ただ六十五ホンで〇・五ミリにしてくれたら、何にも言うことありません。
○米原委員 質問を終わります。
○角屋委員長 岡本富夫君。
○岡本委員 参考人のお二人の方には、たいへん長時間御苦労さまでございます。
 最初に、山田参考人にお聞きいたしますけれども、東海道新幹線ができましたときに、つくる前に名古屋市と国鉄のほうで何か取りきめと申しますか、そういうものがございますか。これを一応お聞きしたいと思います。
○山田参考人 先ほども申し上げましたように、昭和三十五年の十月、いまから十五年ぐらい前でございますが、そのときに種々設計協議という形で話がございました。その協議の中で、実は申し上げましたように、鋼げた橋を廃止してくれ、それから側道をつくってくれという要望を出したわけでございます。しかしながら、それがいろいろな事情で受け入れられないということになりまして、現在の状況になりました。仰せのようなそういう協定というものは、実は存在しておりません。
 しかしながら、その当時、昭和三十五年ごろの、実を申せば、いまの側道というものをつくってくれというその市の要望の中には、公害防止というような頭はあまりなかったんじゃないかと私は思います。いろいろ聞きますと、やはりその当時鉄道あたりの事故だとか、あるいは火災などのときに側道がないと救出ができないとか、そんなような意味の側道であったかとも考えられるわけですけれども、十五年前の書類をいろいろ出してみて私ども調べたわけでございますけれども、まあその中では、そのようなやりとりが幾分出てきたという程度でございます。
○岡本委員 そうしますと、その当時は、これという目新しい要求はなかった、ただ側道をつくってくれ、そういうことであったわけですね。――そうですか。
 そうしますと、そこで次に運輸省にお聞きしますけれども、この騒音問題については鉄道営業法、これは明治三十三年の施行で、その中に新幹線鉄道構造規則、これは運輸省令ですか、昭和三十九年九月三十日、この第一章の第五条に「施設及び車両は、列車の走行に伴い発生する著しい騒音の防止について特に配慮がなされた構造としなければならない。」こういうふうにあるわけですから、先ほどから、全然法律がない、法律がないと言いますけれども、ちゃんとあなたのほうの省令の中には、こういうのがあるわけですね。ただ、この中にないのは振動が入ってないだけのことであって、一々騒音についての防止という項目があるんじゃないですか。運輸省のほうから……。
○住田(正)政府委員 いま御指摘のございました新幹線鉄道構造規則というのは、昭和三十九年、新幹線ができたときに制定されたものでございます。ただいまお読みいただきました条文は、この省令の五条の三でございますが、これは昭和四十六年に騒音防止法ができましたときの附帯決議に基づいて、この規定が挿入されたわけでございます。
○岡本委員 そこで運輸省、この規定に基づいて新幹線の騒音公害について、どういうようにあなたのほうでは国鉄のほうに指導をしておるのか、これを聞きたいと思います。
○住田(正)政府委員 騒音の問題について、どういうような基準が妥当であるかということにつきましては、環境庁のほうが主管でございますし、運輸省といたしましては、環境庁の勧告をいただいて、その基準に従って国鉄を指導するという態度で今日まできているわけでございます。
○岡本委員 環境庁ができたのは、いつですか。
○春日政府委員 四十六年七月一日であります。
○岡本委員 この省令ができたのは、三十九年の九月です。環境庁ができたのは四十六年だったですね。そうしますと約七年間、あなたのほうは環境庁ができるまで待っていたのですか。
○住田(正)政府委員 先ほど申し上げましたように、この省令自体ができましたのは三十九年でございますが、五条の三が入りましたのは昭和四十六年十月でございます。
○岡本委員 そこで、あなたのほうで環境庁から基準が出るまで、いつもぼくはこれをよく聞くのだけれども、環境庁ができてからと、環境庁の基準が示されなかったからと、そういうようなことで、いつも逃げているのですね、これ省令の中にきちっとあるのに。
 そこで先ほどから話がありますところのスピードダウンの件ですが、運輸省としては、この点についてどういうようにお考えですか。
○住田(正)政府委員 新幹線の公害防止のためにスピードダウンしろというお話は、これまでたびたびあったわけでございますが、先ほど来、国鉄のほうから御答弁申し上げておりますように、現在の新幹線のダイヤを変更しないで、東京―大阪間の公害問題をスピードダウンで解決することができればよろしいわけでございますけれども、スピードダウンをしなければならない個所は名古屋だけではなくて、その他各都市にあるわけでございまして、そういう都市の付近におきましてスピードダウンをいたしますと、一時間半程度のおくれが生ずる。そういうことになりますと、新幹線の輸送力というものは大体四割ぐらい減ってしまう。のみならず、車両も多く必要といたしますし、それに伴って運転士の養成をしなければいかぬ、あるいは操車場をつくらなければいかぬということで、実際上そういう点の解決は不可能ではないか。したがって、新幹線のダイヤを改正しない範囲におけるスピードダウンならともかくとして、輸送力を大幅に減らすようなスピードダウンというものは、現状では不可能ではないかというふうに考えております。
○岡本委員 いま聞いておりますと、輸送力、輸送力という話ですが、これは山陽新幹線が四十七年三月十五日にできましたときに――その前には、百キロぐらいの程度で走っているときは非常に静かだった。これが二百キロになって、とたんに、たいへんなことになったということで、スピードが落ちれば騒音も振動もうんと落ちる、もとに戻してもらいたいというようなことで、私はたびたび現地の人たちとも陳情したことがある。あなたのいまの答弁では、国鉄のほうでは、そういうことはできないと言うておるからできない、こういうわけですか。
 いま聞いておると、現在の回数ではできない。では回数を制限したらいいじゃないですか。そうすると、お客さんが多いからできない、こういうようなことを言いますけれども、ちょっときょうは持ってこなかったのですが、国鉄は、いまパンフレットで「快適な新幹線」、片一方でどんどん新幹線に乗りなさいという宣伝をして、そうしてお客さんをぎゅうぎゅう詰めて、そして今度はお客が多いから――要するに、私は輸送の既得権というものをどんどん取っていったのじゃないかと思うのです。
 ちなみに東京―大阪間の東海道新幹線にしましても、三十九年十月一日ごろは一日に三十往復六十本だった。翌四十年の改定では百十本、四十一年には百二十本、四十七年には二百二十本、またその十月には二百三十本、こういうように、公害なんて考えなくて、付近の人の迷惑を考えなくてどんどんふやしているわけでしょう。ちょうど大阪空港と同じなんです。もうとにかく運輸省のやり方というのは、どんどん輸送さえすればいいのだ、そういうところに今日の、このどうしようもない事態が来たのじゃないか。
 あなたのいまの答弁と――佐々木運輸大臣はこう言っていますよ。これは四十七年八月十日、私の当委員会での質問に対して、佐々木運輸大臣は「それができないということを申し上げているのじゃないのです。」ということは、スピードダウンができないと言っているのではないのです。「それが、それだけ落とせば確実に騒音がそれだけ減って地元住民も了承いたしますということであれば、最善の方法だと思いますから、直ちにそれを採用することもやぶさかではありません。」そのあと、だけれども、あなたが一ぺん来いというから、私、行くというようなことで、また向こうに調査に来てもらったのですけれども、こういうこともあっております。
 あなたのほうでは絶対スピードダウンはだめなんだ、佐々木運輸大臣は、スピードダウンは住民が了承するなら、これは最善の方法だから、直ちに採用することはやぶさかではありませんと、こう言っている。運輸大臣とあなたと、どっちの答弁がほんとうですか、どっちがうそか教えてください。
○住田(正)政府委員 スピードダウンによって公害が減るという点につきまして、いろいろ資料があるようでございますが、現在の二百キロのスピードを百十キロぐらいに落としたのでは、それほど大きな騒音の減少は期待できないのではないかというような国鉄の調査の結果を聞いております。したがって、スピードダウンによりまして減少される公害と、一方スピードダウンによりまして失われる輸送力の減少という点を考えますと、現在一年に一億二千万人ぐらいの新幹線の旅客がいるわけでございますので、その輸送力が三割とか四割減って、三千万、四千万の方の輸送する手段を失うわけでございますので、それに伴います影響というものも非常に大きなものではないかというように考えております。
○岡本委員 あなたは新幹線に乗る人は多いし、乗る人が便利だから――ここにおいでになっている方、干草参考人ですか、私たちも現実に見に行った、あるいはまた私も山陽新幹線のそばにおる、三月十五日前のあの試運転のスピードを百キロぐらいで走っているときは、これなら全然振動も音もないし、非常にいい。それが二百キロになってから、たいへんなことになったというわけですよ。あなたのは公害を考えなくてもいいというのではないでしょう。だから先ほどの運輸省令で、著しい騒音の防止について、新幹線鉄道構造規則という中にもちゃんと出ているわけですからね。運輸省は、もう公害は何ぼ出してもいいという考え方ですか。
 そうすると、あなたと運輸大臣との考え方は違うじゃないですか。もう一度御答弁を……。
○住田(正)政府委員 新幹線公害問題につきましては、環境庁の勧告に基づきまして公害対策を実施するというのが現在の方針でございます。したがって、公害問題については運輸省としても、十分国鉄のほうを指導いたしているわけでございます。特に先ほど来、話が出ておりますが、現在の環境庁の勧告は騒音だけに限られておりますけれども、現在一番問題になっております振動につきましても、民家の立ちのき、あるいはあと地の買い入れ等の措置を講ずるように、現在国鉄を指導いたしておるわけでございます。
○岡本委員 そういうことをあなたは指導して――住民の皆さんが毎日もう生活で困っている、先ほどからあなたも聞いていた話です。環境庁の指示に従って、環境庁の勧告に従って、こう言いますけれども、一ぺんぐらいあなたも住民の皆さんの困っている現状を視察しなさい。あなたが一ぺん洗脳されなければいかぬよ。
 とにかく国鉄は、列車が走ることばかり考えているじゃないですか。そういう考え方で指導しておるから、それではいつまでたっても解決されない。ここに原因があると私は思うのです。運輸大臣がこういって答えているのですよ。あなたの立場でいますぐに、じゃあ、そうしましょうということは言えないかもわからないから、この程度にしておきますけれども。
 今度の名古屋の新幹線の騒音についての裁判を出されるということで、動労がああしてこの間非常に協力している姿を見まして、私はあそこへ行きまして、いままで絶えず自分で感じ、あるいはまた調べてきましたから――騒音もあれで前よりは非常に少なくなっています。前はもっとひどかった。だから、ただはかって何ホン何ホンというよりも、結局先ほどから参考人の方もおっしゃったように、そこにいる感じですからね。自分の身体に感ずるところの感じが一番大事なんですからね。
 先ほどからもスピードの制限については、そうしますと四時間何十分かかります、そうすると現在の輸送力が減ります、こういう話ですけれども、先ほど私申しましたように、半分にするということは、四十年あるいは四十一年ごろにすることになるわけです。いままでわが国はとにかく経済の発展にばかり力を入れてきた。それがいま今日こうして私たちの生活が脅かされている。ここで発想の転換をしなければならぬというときなんです。
 環境庁に聞きたいのですが、環境庁の新幹線の騒音に対する勧告、これはどうしても回数制限も入れなければだめですよ、これからは。こういうふうに考えるのですが、いかがですか。
○春日政府委員 貴重な御意見だと思います。
○岡本委員 貴重な御意見だけじゃちょっと――ではそういうことを、今度何か年内に新しい基準を示すというのを昨日大臣が答えていますね、七十になるか――私は七十でも高いと思うのです。あくまで落とさなければならぬのですけれども、まあ、これからあなたのほうでいろいろ検討して新しい基準を出すというのですから、その中に飛行機の回数のように回数制限を、あなた貴重な御意見だとおっしゃったのですが、入れるかどうか。これは政治的な配慮ですから、政務次官にひとつお答え願いたい。
○藤本政府委員 いま御承知のように新しい騒音にかかる環境基準が中公審で御審議中でございまして、その結論を得て新しい騒音にかかる環境基準をつくるわけでございますが、先ほど大臣から勧告いたしました騒音にかかる基準につきましては、あくまで暫定基準でございますから、それよりもきびしい内容で基準をつくることは、私どもの大臣が再三言明されておりますので、そのように考えております。
 また先ほどの岡本先生の御意見につきましては、たいへん貴重な御意見だと思いますので、十分に検討させていただきたいと思います。
○岡本委員 これは安全対策にも必要なんです。安全対策については交通安全委員会でやりますから、私は、きょうはあまり言いません。
 それで時間があまりありませんから次に移りますが、環境庁にもう一つ言っておかなければならぬ。それは先ほどのスピードダウンの件ですが、私名古屋に行きましたら、七キロの間だけが百十キロですか。あれも私、見ましたけれども、ほんとうに百十キロかちょっとわからなかったのですが、七キロの区間で、そしてあまりおくれてないということになりますと、山陽新幹線のところは、もっと少ないんですよね。西宮―尼崎は、大体五キロくらいですか、そこも半分に減らしてもらえば非常に助かるわけだ。ですから完全な対策がとれるまでは、スピードダウンを含めて、今度出された七十なら七十の規制にせい、そういった勧告が私は必要であろうと思うのです。
 こう見ますと、あなたのほうでは家の立ちのきとかいろいろなのが出ていますけれども、その大事なスピードダウンについては全然出てないわけだ。そうなると回数の制限も出てきましょう。そういったあらゆる手段を使って騒音をなくし、振動をなくして、そして住民の生活を守っていこうというのが環境庁の姿勢でなければならないと私は思うのです。その点も政務次官から政治的配慮をひとつ……。
○藤本政府委員 新幹線の騒音から生ずる被害を軽減するためにスピードを落とす、減速するということは一つの方法であると思います。ただ、先ほどもお答え申し上げたわけでございますが、一つの交通体系の中で、非常に遠距離は飛行機で運ぶとか、やや遠距離はできるだけ速いスピードで汽車で運ぶとか、近距離は自動車で運ぶとか、一つの骨組みがあると思うわけでございます。新幹線はそういう背景のもとで、遠距離をできるだけ速い時間で結ぶという社会的な要請のもとで建設が行なわれていると思うわけでございますが、そういう一つの社会性も考えなければならぬ。と同時に、社会性が幾ら高いものであっても、それによって被害が生じて、しかもそれが見過ごすことのできない大きな被害である場合、これをそのまま放置するということは、当然これはできないわけでございまして、私は、それを同時に考えていかなければならない問題ではなかろうかと思うわけでございます。
 そのように考えますと、いまのそういう被害を解消するための対策としては、いま国鉄が考えております防音工事であるとかその他の対策に全力をあげる、それが当面の対策としては一番妥当ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
○岡本委員 おかしいね。あなた、環境庁の政務次官ですから、まずそういった、完全なものができるまで、当面それに力を入れていくのはあたりまえです。それは、そういった対策をほうっておくわけにはいきませんよ。しかし、それまで毎日毎日の、こういう訴訟まで起こってこなければならぬようなやり方というものは、国の姿勢として悪いと私は思うのです。
 ですから、たとえばいろいろな許可をおろすについても、いろいろな面から検討して、そうしてこれならだいじょうぶだ、それで初めておろしていくわけですね。それはまず、われわれのほうの公害なら公害の問題、あるいはまた国民の安全から考えて、これは健康の問題も入ってくるわけです。ですから、ものごとというのを、そこへ発想の転換を置きましたら、まずその公害対策についての完全なものを実施する。いろいろ考える前に、まず当面の問題は解決する。それが一番いいのは、スピードダウンですよ。これはもう私は山陽新幹線でいやというほど感じました。だから、運輸大臣も、それがよければ、それが確実にいい、それならば、私は考えることはやぶさかでないというわけですから、ひとつその点はもう一度検討をして、今度の勧告の中には入れていただきたい、これは強く要望しておきます。
 それから、名古屋へ参りまして特にわかりましたのは、この東海道新幹線というものは、名古屋の地盤が軟弱地帯であるのに対して、今度南方貨物線、あれが深いくいを打つ、だから振動がなくなるんだ、あるいはまた、いまの東海道新幹線は下まで行っていないから宙に浮いているんだということになりますと、これは欠陥新幹線だ、どちらかといえば。最近は乗っていると非常にゆれますよ。ゆれるのが全部振動になって付近の住民に迷惑をかけるわけですからね。
 欠陥新幹線ということになりますれば、私は、名古屋のいま参考人においでになっている干草さんを会長にしているところの名古屋新幹線公害対策同盟連合会、ここから出ているところの御要求書、これは一つ一つ全部あなたのほうでこの御要求はいれてあげて、全部このとおり行なっていくことが大事だと思うのです。
 これで見ますと、それはできないとかいろいろなのがたくさんありますよ。ここでひとつ私は、まず最初に手をつけなければならぬことは、この間参りまして、御病気の方ですね、新幹線の騒音あるいは振動によって病気になった。それに対して、因果関係を証明してこいとか、そういう非人道的なことを言っていることに対して非常に怒りを感じました。私は、その人たちの救済、これは何をほうっておいても、まず最初にすべきだと思うのです。いかがですか、その点については国鉄の内田さん、そのぐらいのことは先やりなさいよ。
○内田説明員 先ほども申し上げましたとおり、御病人の方には深く御同情申し上げます。ただ、これはやはり、われわれしろうとでございますので、お医者さんの判定がどうしても要るわけでございます。それで、なかなかこういうような公害、いわゆる振動に対する勉強、ことに、新幹線の振動に対しての勉強というものは進んでおりませんので、これはやはり国鉄で、ある程度そういうようなことを勉強していかなければいけないということで、昨年の夏から準備を進めておりまして、ようやく十二人のお医者さんの委嘱も済みましたので、今月中にはそういう委員会を発足いたしまして、これらの方々から事情をよく聞き、またかかっているお医者さんの御所見なども参考にいたしまして、今後前向きで対処してまいりたいというふうに考えております。
○岡本委員 環境庁の大気保全局長さん、あなたはお医者さんですが、振動や騒音によって病気になったということを証明できる学説はいまあるのですか。
○春日政府委員 ちょっと聞き取れなかったのですが、振動、騒音によって真の病気になったということを確認できるかということでございますか。――これはもう幾らもございます。一番簡単と申しますか、直接的な騒音による疾病は、一時的難聴でございますとか、それが重なっての永久的な難聴、これは非常にはっきりといたしておりまして、労災のほうでも認められておりますし、これは職業病としてちゃんときまっておるわけでございます。(岡本委員「振動は」と呼ぶ)振動につきましては、振動病というものは私、残念ながらよく知りませんけれども、振動によって起こるであろう身体的影響というものは十分に推定できるわけでございます。
 ただし、ある一つの病気、たとえば高血圧という病気がございまして、これが振動によって起こったのか、あるいは騒音によって起こったのか、あるいはほかの理由によって起こったものであるけれども、それが増悪したのか、その判定はきわめてむずかしいであろうと思います。
○岡本委員 内田さん、いまおっしゃったとおりです。この振動によってこういう病気が重くなったとか、あるいはまた、これは軽くなるわけはない。この干草参考人の奥さんもおなくなりになっているわけですけれども、ノイローゼになったとか、いろいろなことは、きわめてその因果関係の解明はむずかしい、私もだいぶあちこち聞いてみましたけれども。それをあなたは、きわめてむずかしいのを国鉄では、そういった医者を集めてこれから研究するというのです。二、三十年かかっても、できないかもわかりません。その間にいまの被害者の人たちはどうなりますか。もうすでになくなっているじゃないですか。だから私は、この欠陥新幹線、まして毎日毎日あなたのほうは相当もうけているドル箱や。片一方でそれだけ大ぜいの人が被害を受け、また、そういうように直ちにもう肉体に影響が出ておる。まずその人たちからでも――先ほど奥の理事会で聞いたのですけれども、まず目立つのは十四、五人だという。あとは一軒一軒聞いてみないとわからないけれどもという話でありますけれども、参考人の干草さんから聞きますと、十四、五人だという。そのぐらいの人をなぜ早くめんどうを見てやらないのですか。こんな無慈悲なことでは私は話にならないと思う。それで、公害対策は一生懸命やっております、やっていることを見たら、そうたいしたことはない。その点について、まずそこから手をつけるか、もう一ぺん御意見を承りたい。
○内田説明員 心情におきましては、まことに先生のおっしゃるとおりだと思います。ただ、われわれといたしましては、やはりある程度の何らかの裏づけがないと、これはただ本人の申し立てだけでお金を支払うというわけにはまいりませんので、その点につきましては確かにむずかしい問題があろうかと思いますけれども、こういうような新しい問題につきまして前向きで検討してまいり、一つの基準を出してもらいたいというふうに考えておる次第でございます。
○岡本委員 あなたでは答弁できないのかね。総裁なら、すぐやりますと言うでしょう。あなたは施設のほうじゃないですか。私はそう言いたくなる。申し出によってお金を払う、そうじゃなくして、まず病院でも入れてあげる。いま困っている人たち、ノイローゼになったり、いろいろな人たち、これはあなたが見るのじゃない、医者が見るのですからね。それの費用だけ払ってやればいいじゃないですか。しかも私は名古屋に行ってよく見ましたが、山陽新幹線よりははるかに悪い、どっちかというと欠陥新幹線。たとえばここに南方貨物線をつくるために一本深いくいを打ったら、それで振動がだいぶ減ったという話もある。そういう対策も何もしなくて、それで病気になって十年間ですよ。山陽新幹線でももう二年余りですからね。それぐらいのことはここでやると、あなた言えないのですか。何でもないのにお金を出せないというのじゃないのです。もう一ぺんはっきり、国鉄が責任をもってやります、そのぐらい答えなさい。
○内田説明員 誠意をもって前向きにやってまいりたい。なお、そういうような判定が出ますれば、過去にさかのぼりまして、いままでの医療費の補償とか、あわせてそういうものもおそらくやることになろうかと思います。
○岡本委員 それからもう一つ。干草さんに、あなたのほうの原田さんという新幹線総局長から回答が出ておる中で、私は特にこれはけしからぬと思ったのですが、「新幹線列車の走行に伴う振動と家屋被害との因果関係につきましては、各戸ごとに多数の違った要因がからんでおりまして画一的な判定は非常に困難であり、ケース・バイ・ケースで処理いたします。」こういうふうに書いてあります。確かに一軒一軒によって違うと思いますけれども、これは山陽新幹線の場合もそうだったのですが、調査に来た人が非常に値切ってしまうのですね、値切るように指導してあるのかわかりませんけれども。この点は、被害を与えたのは国鉄なんです。被害を受けたのは住民なんです。それが官僚的な立場で、おまえにこれだけのことをしてやるのだという態度で望んではいけない。やはり補償をさせていただくのだという立場で検討してあげなければならぬ、こういうふうに思うのですが、この点はひとつはっきりしてもらいたい。
○内田説明員 家屋の実害補償につきましては、先生のおっしゃるとおりだと思います。現地で係の者に、そういう面でそういうような態度がありますならば、今後十分指導いたしまして、皆さんに不快な感じを与えないように今後努力してまいりたいと思います。
○岡本委員 次に、「すでに修復した家屋に対する実害補償は、原則として困難であります。」それから「被害に応じて修復に必要な費用として因果関係を考慮して査定したものでありますから、名目の如何にかかわらず補償金と解釈いたします。」要するに振動あるいは騒音によって、特に振動ですが、家というのは一定でないのですよ。やってもらったけれども、またこわれるのですよ。一ぺんやったのは、もうあとはしないというような、あなたの家は一ぺんやったのだから、こういう態度はいけないと私は思うのです。やはりだめだったら、またもう一度やらしていただく。そして補償をつつしんでさせていただくのだ、そういう態度でなければならないと私は思うのです。その点について。
○内田説明員 これは実害補償でございますので、一ぺん修復したものが、確かにまた残念ながらこわれたという場合には、当然またその分についてお支払いをするということだと思います。
○岡本委員 次に、東海道新幹線の抜本策としましては、やはり新しい新幹線をもう一本入れて、そしてこれはほとんど地下方式にして、いまの新幹線のあれをやり直すというぐらいのことをしなければ、あの万博前の突貫工事でやったのだから、私はなかなか全部の解決はしないのだろうと思うのです。そういう場合の応急措置として、住民の皆さんに何とか手当てをして、転地を希望する人に対しては、その事情に応じて転地をしていただくとか、その補償も出すとか、十分な手厚いところの補償は必要でありますけれども、抜本的にそういう問題が必要であろうと思うのです。
 これは時間ということですから、あれしておきますけれども、最後にこれから起こってくるであろうというのが博多までの開通のことでありますけれども、これは公害問題が全部解決しなければ夜間運転はしないということをいまおっしゃっておる。しかし、将来は夜間運転もしたいということでありますが、それについて環境庁では環境アセスメントができておるのかどうか。見ておりますと、もう来年、五十年の春には新幹線を通そうとしているわけですから、そういう環境アセスメントが全部できておるのかどうか。それをしなくてやりますと、またこれと同じことになると私は思うのです。
 運輸省は、先ほども私、態度を聞いたように、全然公害問題については配慮は考えてないみたいだ。考えているような顔をしているけれども、全部環境庁に依存をしているわけです。そうすると、環境庁としては、ずいぶんこれは責任があるわけです。ですから私は、環境アセスメントについて、いままでどうやったのか、あるいは今後どうするのか、これをひとつお聞きしたいと思うのです。
○橋本(道)政府委員 いま先生の御質問の点につきましては、四十七年六月六日の閣議決定におきまして、国または地方公共団体が、各種の公共事業を実施しようとするときに、計画の立案、工事の実施等に際し、当該公共事業の実施により公害の発生、自然環境の破壊等の環境保全上重大な支障をもたらすことのないよう今後一そう留意するものとする。ということとしまして、二で、所掌の行政機関ということになっております。そういうことで、当然に閣議決定に基づきまして、法律上の拘束力はないということは現在の時点では事実でございますが、運輸省において、この環境アセスメントの資料を全部作成するということが、私どもは当然運輸省のすべきことである、そういうように思っております。
○岡本委員 そうすると、運輸省で環境アセスメントをして、それで環境庁に通報する。どうもその点が、ちょうどボールをあっちへほうったり、こっちへほうったり、それは運輸省、これは環境庁ですというような感じがする。これはあなたのほうはやっているのですか。これだけ大事なことですから、運輸省に聞いておきたい。今度博多までの間のこの新幹線を通すについて、環境アセスメントはできておるのか。同時に、振動はどのくらいまでに、要するに、山陽新幹線をつくるときに、西宮市長あるいは伊丹市長、尻崎市長との間で覚え書きをかわした。〇・三ミリですか、これが国鉄の出したところの目標。そういった面から、環境アセスメントをあなたのほうでしているのかどうか、これをひとつお聞きしたい。そのときの騒音値を何ぼにしておるのか。これは運輸省。――あなた指導するほうだから、そっちに聞いたんじゃ話にならぬじゃないか。何をやっているんだ。
○住田(正)政府委員 山陽新幹線をつくるにあたりまして、いろいろ公害問題について配慮しなければならないわけでございますが、山陽新幹線をつくるにあたりましては、現在開発されております技術によりまして、一昨年環境庁からいただいております勧告の基準をまかなうように工事をするよう指導をいたしております。また、地元とのいろんな問題につきましては、国鉄と地元との間で、騒音防止あるいは振動防止についていろいろ協議をいたしておりまして、地元との話し合いがついた上で工事をいたしているわけでございます。
○岡本委員 時間ですが、こんなことでは話にならないと思うのです。全部地元と、地元とだ。地元と契約をすると、先ほど名古屋では地元と話したけれども、側道と言ったけれども、ついていない。委員長も御存じのように、家のすぐそばに新幹線が通っているのです。それから山陽新幹線の場合は西宮、伊丹あるいは尼崎の市長との契約をしたことも、一カ月以内に補償することがあれば、直ちにそれを実行するというやつもできていないのでしょう。地元というのは非常に国鉄に弱いのですよ。ここにいらっしゃる局長さんも、一番最初行ったときは、参考人の方も、えらい国鉄に遠慮してものを言っていらっしゃった。もっと遠慮せぬとやりなさいよと言うたのですけれどもね。
 運輸省、あなたのほうがこうするのだという基準をきちっと出さなければ。それによって環境アセスメントをして、これなら振動はこの範囲に入る、あるいは騒音はこの範囲に入るからだいじょうぶだ、こうやって、今度環境庁のほうに、だいじょうぶですから、これでと、こうする。いまの環境アセスメントを義務づけられておるじゃないですか。それをあなたが地元へまかしたのでは、地元は運輸省ですか。そんな態度で今度山陽新幹線が博多までいってごらん、またたいへんなことだ。これはあなたでは、ちょっと無理なのか、あるいはまたやる気がないのか、またそんなことをするのを忘れたから知らぬ顔をしているのか、その点、ひとつあなたから最後に答えを聞きましょう。
 同時に、環境庁の政務次官、いまここにおるのはあなたが最高責任者。あなたも政府の一員ですからね。いまのような運輸省の態度で山陽新幹線が博多まで行ったら、たいへん。こんな状態で日本国じゅうにできたら、もうめちゃくちゃですよ。だから、あなたは政府の一員としてどういうふうにするか。
 運輸省からまず答えて、環境庁政務次官からお答えをいただいて、終わりたいと思います。
○住田(正)政府委員 現在新幹線につきましてございます騒音基準というのは、先ほども申し上げましたように、四十七年十二月の環境庁の勧告に基づく基準があるわけでございます。現在つくっております山陽新幹線につきましては、その基準に適合するような工事を行なうよう国鉄を指導いたしておりますし、現在国鉄もその方向で工事をやっているわけでございます。
○藤本政府委員 先ほど橋本審議官からお答えいたしましたように、御承知のような四十七年六月六日の閣議決定がございまして、公共事業につきましては、事前に、その事業が当該地域の環境にどのような影響を与えるか、範囲、程度、内容について十分調査をしなければならないということを義務づけておりますので、運輸省は、それを国鉄当局に指示してやるべきものでございまして、そのように了解をいたしておるわけでございます。
 さらに、新幹線騒音に関するいろいろな問題等につきましては、三木長官も非常に関心を持っておられますし、御自身でも一度名古屋へ参りまして、状況につきましては十分に見たいというようなお考えでもございますので、きょうの委員会での質疑の内容につきましては大臣に十分に報告申し上げまして、早急にできる対策につきましては、懸命の努力を払っていきたい、かように考えております。
○岡本委員 終わります。
○角屋委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 両参考人におかれましては、御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見を述べていただき、まことにありがとうございました。
 本日の両参考人の貴重な御意見の開陳が、今後の新幹線騒音対策等の確立に資すること、まことに大なるものがあると存じ、厚く御礼申し上げます。
 次回は、来たる三月十九日火曜日、午前十時理事会、午前十時半委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後三時五十分散会
国会議事録検索システムより引用

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