国鉄改革に際して、公企レポートで語られていた、国鉄改革について当時の資料を元に、blackcatが語ります。

公企業レポートに見る国鉄改革

序章
国鉄改革とはなんだったのか?
日本国有鉄道が、民営化されて20年以上の年月が経過、昨年の民主党政権誕生で、国鉄改革で最期まで残っていたJR不採用事件は一定の解決が図られることとなったが、あまりにも時間がかかりすぎたことは否めない。
と思う反面、底まで追いかける必要のあることだったのかと言う考え方もあるのも事実。
そこで、ここでは当時の公企業レポートと呼ばれる冊子に書かれた記事を参考に当国鉄の状況を追いかけてみたい。
ただし、一部散逸した部分もあるので完全ではないことを了承願いたい。
なお、blogで原稿執筆した上で、こちらに反映したいと思うのでそちらもあわせて参照して欲しい。
blog 「国鉄があった時代」で執筆中

第3章 運輸大臣との会談・一企業一組合(概要)

昭和61年6月20日付 公企業レポートに見る国鉄
国鉄改革は、国鉄改革関連9法案が国会に提出され、そのうち「国鉄経営改善緊急措置法案(日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために昭和六十一年度に緊急に講ずべき特別措置に関する法律)」については、5月30日に成立し、法律という形で一歩進みました。
また、当局もこれに呼応し、今まで手をつけられていなかった職員の働きによる期末賞与の査定を導入するなど、民営化に向けた取り組みが始まっていきました。
国鉄当局と、労働組合は対立する存在ではなく、ビジネスのパートナーとしての役割を再認識させるそんな動きがみえてきたのもこのころからです。
6月10日には、三塚運輸大臣【当時】と、労使共同宣言を結んだ4組合(動労・鉄労・全施労・真国労)幹部との会談がもたれるなど、少し前の国鉄では考えられないことが起こりつつありました。
三塚大臣は、会合の席上で、「鉄道の新生、再生を図る大事な時期であり、4組合一体となり協議会を作り、改革問題に取り組んで欲しい」と要望しました。
しかし、組合側はそれぞれの組合が抱える歴史や、方針の違いもあるが重大な時期でもあることから検討したいとの考えを示すなど、確実に歴史は民営化に向けて動きつつあるようです。
ただし、動労と鉄労のようにかっては対立する組合として、組合員との確執があったりするのですんなりとは行かないかもしれないが、4組合とも多数派形成のための最大課題であり、ここでイニシアチブを取ることが組織拡大につながることとなるので、一朝一夕には解決できないであろうが、62年4月1日という大きな方向は固まりつつあるので、課題は大きいとはいえ早期に克服されるのではないかと考えています。
さらに、この時期の国鉄の動きを見てみますと、6月13日に国鉄職員局が6月1日現在の労働組合組織概要を発表 これによると、組合別構成員では国労が第1組合であるのは変わりませんが、2ヶ月ほどの間に、国労の組合員が4400人も減少と発表。
職員の間に動揺が広がっていることというよりも、真国労の結成などによる脱退もあると思われるが国労という国鉄最大組織が音を立てて崩れ始める序章に過ぎなかったのかもしれません。
6月23日には、6月30日からの、早期希望退職者に向けて、再就職の斡旋などを行う「職業相談室」を全国88ヶ所に開設するなどの動きが出ています。
さらに、管理者クラスでも国鉄改革に対する意識が高まってきており、そのあたりを公企労レポートから引用させていただきますと。
国鉄改革を実現することによって新しい鉄道に生まれ変わろうという国鉄職員の意欲が全国的に盛り上がっている。東京三管理局の現場管理者による「東京三局国鉄改革を推進する会」が6月10日に発会し、国鉄改革推進のためには職員の意識改革が必要であり、管理者も自らの意思で団結し、力を合わせて国鉄改革に具体的な行動をもって取り組む必要があるとしている。それに対して、本発会式に出席した杉浦総裁も国鉄改革の方向ははっきりとレールが敷かれそれに向かってまっしぐらに進んでいる。こうした動きが、明るい立派な鉄道を再生させるものと信じているとあいさつした。
このような集まりは管理者だけでなく若手の非現業の職員等にも拡がりを見せており、職員有志一同が来る6月29日に集まり、「国鉄改革に取り組む職員の集い」が開催されることとなっている。この流れは、次第に大きくなっており、鉄道再生を目指す国鉄改革はいよいよ正念場を迎えた。
引用終了
ということで、管理者がまず息を吹き返してきたということ、さらに、非現業部門(鉄道管理局、本社部門)のスタッフクラスが国鉄改革に向けて動き出したことは、国鉄自体が改革を受け入れ自ら変化していくことを受け入れたと言えるでしょう。

運輸大臣との会談・一企業一組合(国鉄当局)

労働組合の代表と運輸大臣が会談を行ったということについて、国鉄の見解はどうだったのでしょうか。
現、JR東海会長 葛西職員局次長【当時】の談話を公企労レポートから引用します。
【三塚運輸大臣が国労を除く組合が一緒になってほしいと要望したと新聞報道がなされましたが】
それは動労、鉄労、全施労、真国労が大臣に会いたいということで会ったわけです。4組合の主張は次期国会で必ず国鉄改革法案を成立させてもらいたいということ、労使関係が国会審議の中で取り上げられて国会が労使関係に介入する、あるいは国会が団交の場に化するようでは困るということ、大臣は責任を持って最後まで続投して国鉄改革を仕上げてもらいたいということでした。また、雇用問題につきましてもキチッと確保してもらいたいという要請が4組合からありました。それを受けて大臣から4組合が一本になって労働運動をリードし、労使関係の推進役になってもらいたい、正常な労使関係を築き、国鉄の分割、民営化に賛成・協力してもらいたいという話がされたものです。したがって、これからの課題として4組合が一歩進めて何らかの具体的な形をとっていくことになるのではないかとみています。4組合がそれぞれの主権を確保しながら新しい協議会を作っていくという方向も出てくるのではないかと思っています。
引用終了
ということで、労使協調宣言を行った4組合は、国鉄改革が成功するようにということを申し入れたわけですが、注目したいのは、「国会が労使関係に介入する、あるいは国会が団交の場に化するようでは困る」という部分です。
すなわち、総評(というか、国労の意向)の意向を汲んだ社会党(現・社民党)が、民営化は容認するが7割以上の株式を国が保有、全国一元民営化の対案を出しており、今回の優勢の際見直しとよく似た点があるのはある意味興味深いところである。
すなわち、社会党案でいくと、なしくずし的に現状維持となり国鉄改革が失敗することを危惧していたのかもしれない。
また、三塚大臣からは、4組合が一体となって労働運動をリードして労使関係の推進役になってもらいたいといわれています、またそのためには4組合が一体となって改革に当たってほしいと言う申し出を受けています。
さらに、公企労レポートから引用します。
【期末手当を最高5%幅で査定するなど着々と新事業体への移行に向けて施策を打ち出されていますが、管理者は全体としてそれにふさわしい意識改革ができているのでしょうか】
昨日、東京3局の管理職が旗上げをやりました。
従来現場管理者というと上からの命令を忠実に実行するための集団という意識が強かったのですが、今回はこれだけで不十分であり、改革に向けて、自らをアクティブな主体とし、自分たちが能動的にこの改革に取り組むのだといういう強い意識を持つことを決意したものだと思います。この現象は全国各地でいろいろな形で出てきていまして、例えば新生会とか未来を拓く会、あるいは行政改革完遂のため考える会、これは東京北、東京南、東京西の会名です。その他にも名古屋で昨日、管理職の会が出来たと聞いています。そこで、現在現場管理者が3万人位いますが、この3万人と動労の3万人、鉄労の3万人、併せて9万人が改革の方向に向かって結集するのではという話も聞こえてくる状況になっています。
ということで、上意下達の中間機関としか機能していなかった管理職が自ら考え行動する集団に変わりつつあるということであり、これに鉄労、動労の組合員を加えると約9万人が改革に向けて進むこととなりということを大変歓迎していると見て取れます。
この点について、全文公企労レポートから引用しますと。
【国労を除く組合と現場管理者、一般職員の結集を目指した具体的な動きですが・・・・】
聞くところでは6月29日に国鉄改革の大集会があるようです。この集会は3千人くらいの人が日比谷公会堂に集まるということです。この集会には職員からの盛り上がりで動労、鉄労、全施労、真国労の四組合、それに都内の有志組合である新生鉄道を作る会、活力ある新会社を作る会、有隣会、六和会、睦会、見習いの人達、東京北局の現場管理者の会である新生会、東京南局の管理者の会である未来を拓く会、東京西局管理者の行政改革完遂のための考える会の人達が一堂に会して決意表明など国鉄改革に向けて鉄道精神を新たにしようということのようです。このような気運が出てきています。
【これから本当に汗をかき、協力をしなければならない時期になるので共同宣言組合からは国労が今になって共同宣言の仲間に入ってきてもらっては困るということが一方にはあるのではないですか】
それは勿論、今までの実績が違うということは事実ですね。組合間の違いは職場規律の問題から始まっていますし、さらにその前から鉄労は合理化推進と言ってきましたね。
少なくともそういう鉄労、動労、全施労という組合はこれまでの蓄積を持ってきていますね。そういうものが評価されなくて、かりに今入ってきたから皆同じだということになるのかと言うと、それは違うのでしょうね。やはり人間は傷もありますし、勲章の数、傷の数というのは早く目覚めたところに所属している人達はより幸せな選択をしたんだと言うことがしみじ判るようなことにならなければいけないのではないでしょうか。
【共同宣言をしているということは、合理化にも希望退職にも協力する、そして国鉄労使が一体となって鉄道のサバイバルのための努力をするということですが、国労とのこの辺のところは・・・】
ただ、雇用安定協約を国労とは絶対に結ばないと今の段階で言えるかとなりますと、必ずしもそうはいえないわけで共同宣言を結べば雇用安定協約を結ぶと国労に言っている訳です。ところが共同宣言を結ばないで何だかんだと言いますからおかしい訳ですね。もう手遅れではないかという気はします。
 労使共同宣言は国鉄改革を労使が一緒になって取り組もうということですから一緒になってやっている労働組合に疑心暗鬼があったり、不信感があったりしてはいけない訳です。このことは十分考えなければならないことだと思います。 ですから我々は不信感を除くようにフェアな態度でものごとを処し、事実に即して考えてもらうということが大切ですし、話はいくらでもして信頼関係をより強固なものとしていくと。それが国鉄改革あるいは雇用問題を解決するための大事な条件だと思っています。
引用終了
当局としては、管理者を含めて改革に向けて新たな動きがある一方で、国労に対しては共同宣言を結べば雇用安定協約を結ぶことを約束しているのですが、国労自身が共同宣言を拒否しているため、雇用の安定という点では手遅れではないかと感じている人のことであり、「組合潰しが、国鉄改革の目的であった」という見方が大勢ではありますが、こういった内容を見る限りでは、国労自身の体制の問題が、当局との距離を置かせる結果になったのではないかという気もします。

運輸大臣との会談・一企業一組合(動労)

国鉄経営改善緊急措置法案が成立し、管理職を含む職員たちの間にも国鉄改革がより現実となってきたことに鑑み、三塚運輸大臣【当時】と会談した動労の見解を公企労レポートを引用しながら述べていきます。
この点については、動労。福原書記長は以下のような談話を発表しています。
動労としては、新事業体ができるまでには、それに対応出来る組織を作る必要があり、特に分割民営化により7つの会社(6旅客鉄道と貨物会社に分離)になるわけですから、動労の組織について7つの会社がどのように対応すべきかを考える必要があるのだが、その際に動労としては、職能組合(運転士だけの職能組合)としての連合体構想を考えていたのだが鉄労も国労も実際にはデパートメントであり、職能総連合の構想では一企業一組合の基本に沿わなくなってくるため、その場合は職能連合構想も自体は取下げ、基本に適合できるようにしたいと考えている。
以下公企労レポートを引用します。
【新事業体に移行し、民間企業体となるにあたりどのような労働組合の組織体になることがより良いとお考えですか】
新事業体ができるそれに対応出来る組織を作り上げていくことが基本ですね。新事業体は六つの旅客会社と貨物会社といわれておりますから全部で7つの会社になります。
 動労組織についていえば7つの会社についてどのように対応するのかとのことになると思いますが7つの分割のことでなく全体としてのことについて申し上げます。7つの会社について組合が一本化することは企業にとっても組合、職員にとっても良いことですから一企業一労働組合の原則を追求することは重要だと考えています。
 第一二九回中央委員会の中で組織展望について動労組織を強化していこう、その中で職能連合を追求し、それを基礎に一企業一組合を作っていこうということを組織展望として明確にしたわけです。そうなりますと一企業一組合の基本に適合しにくい事になりますから、その場合は職能総連合は取り下げ基本に連合できるようにしたいと考えています。整理しますと、まず、動労を強化していこう、この強化の中身は綱領改正だとかいったものを整備して、四組合の共闘部分を拡大していくそれと同時に組織と組織の信頼関係を強めていきたい。
引用終了
また、動労の過去の運動とし克服していかなければならない問題については次のように述べています。
以下、公企労レポートから再び引用しますと。
ご存知のように動労はかって鉄労解体を掲げて来た訳で、鉄労の人に言わせると、そのような組織と一緒にやるわけには行かないは当たり前の話です。そうなりますと一企業一組合という活性化した組織を作り上げるためには、歴史的経緯については自生し、克服して行かねばならないと考えております。それによって鉄労の皆さんとの信頼関係を回復し、共同行動をやっていこうと思っております。
引用終了
ということで、かって動労は、鉄労の解体を活動目標に激しい運動を展開してきたという経緯がありますので、鉄労としても中々受け入れられないということを動労も十分理解しているようです、実際昭和50年代の国労との共闘を行っていた頃は、その過激な闘争は国労を凌ぐものとして語り草となっていた経緯があります、実際にJR発足後動労系の流れを汲むJR総連と、鉄労系のJR連合に分離した経緯があるように、この努力は最終的には埋められなかったのですが、当時はそれなりの努力がされたようです。
さらに、引用を続けます。
【新事業体発足の来年4月1日までに今いわれました構想がどこまで踏み込まれることになりますか】
政治的なスケージュールからすると来年の4月ということですね、それから一企業一組合となるというより出来るだけ早いということが必要だと思います。国労から脱退していろいろの組合に加入しておりますが、これも整理していかねばなりませんね。ということは鉄労をとるか動労をとるかは一般論で言えば組織組合の問題ですから。一企業一組合という目的に水を差すことになります。どこの組合に入っても良い訳で。要は国労の運動について否定しておりますから、国労から組合員が目覚めて、脱却することが第一義で、これらの人達がどこの組合に入ってもらうかを整理していけば、一企業一組合の道が開けていくのではないかと思っております。来年4月を待たず、四組合の共同行為から、一つの組織体を作り上げることは一日も早くあるべきだと思います。
引用終了
ということで、動労としては一企業一組合を目指すのですから、国労からの脱退が第一義であり、これらの人達が国労以外の組合に加入するのであればどこでも構わないといいスタンスを取っており、組合潰しは当局というよりも動労を中心とした組合による覇権争いから発生していたのではないかと推測されます。
また、民営化されると管理職と呼ばれる助役以上の職制も組合員になることから、管理職も集まりを作っており、6月二九日に集会を持つといわれているがこの点はどういうふうに考えているかについては、以下のとおり回答しています。
公企労レポートから引用
【最近、新事業体になれば組合員になる管理職が集まりを作っており、6月29日集会を持つという話ですが、どのように見ておられますか】
〇〇会といったものが作られ新事業体に向けて、国鉄改革を話しあわれていることは事実で、しかもその人達は労組法上の組合員になれない人より組合員になる資格のある若い人が中心になっていると把握しています。既に本社前でビラ配りをしたり、国労のいる非現業の組合員との討議をやっており、その人達といろいろ話をし、動労に入ることを勧めた経緯もあります。
 その集約として6月29日集会をやりましょうということになっています。内部での意思統一をさらに図る必要がありますが、最大の課題である雇用を守るかが一つ、それと新事業体に移って飯が食べられるようになることが大切です。新事業体に移ればバラ色の展望があるかといえばそうでなく、むしろ今より苦しい時期が数年続くであろうと思います。しかし、労働運動の基本は雇用を守ることであり、そのため一生懸命努力すれば自ずと道が開けるんだという理念に立って話しあうのが6月29日の集会で国鉄の新生、再生を心より願っている者にとってはきわめて重要なものであるという考えに立っております。
引用終了
ということであり、組合の基本である、「雇用の確保」大切でありと位置づけています。

運輸大臣との会談・一企業一組合(鉄労)

鉄労は、設立当初から労使協調路線を標榜していた組合ですが、動労との確執はやはり大きいようです。 三塚運輸大臣から、組合統一の要請を受けたのですがこれに対して、鉄労の志摩書記長は現時点では組織の合同を考えておらず、努力はするが具体的に動くつもりはないと言っています。
以下、公企労レポートから引用しますと。
【運輸大臣から四組合統一の要請があったようですが、どう対応されますか。】
いろいろ言われているようですが、いまのところ組織合同を目指すことは全く考えていません。また、将来についても模索している段階で、運輸大臣から要請はあったけれど、結論は出ていません。
 その方向で努力してほしいということですから、努力するということだけです。今でも四組合連絡協議会というものがあるわけですから、それを深度かしていくことは考えられるが、新しい連合体を作ることは考えられない。
引用終了
ということで、一応の検討はするが検討するだけ・・・ということで、動労が積極的に過去の過ちを謙虚に反省し合同を結ぼうということに対し大きな温度差があるように感じます。さらに、とに角連合体を作るべきではないのかという質問に対しては、以下のように答えています。
【統一はとに角、連合体を作ることは考えられるのでは】
組合には歴史もあるし、組合員の感情もあります。それを大事にしないと、ご時世がそうだからといっても、組織と組織の関係は、組合執行部や第3者の考えるほど簡単にはいかないわけです。
特に動労との関係では、過去にいろいろあり、難しい点があります。今後同じ方向に向かって運動を進めていくことについては当然そうあるべきと思うが、やはり運動方針、綱領をきちっとした上でなければなかなかできないと思う。
引用終了
ということで、鉄労にとっては動労との協調路線が組合執行部や第三者が考えるほど簡単なものではなく、現場では、動労との過去の確執をぬぐう事は簡単なことではない。
この点を考慮しないと、うまくいくこともうまくいかないであろうといったことを述べています。
これは、鉄労が国労と同じく職能組合ではなくデパートメント組合【あらゆる職種から構成される】ことに起因しているためであり、その辺は動労と比して難しいことがあり、次節のように綱領すら変更に着手できる動労と異なり舵取りをするのはなかなか厳しいようです。
以下再び、公企労レポートから引用しますと。
【動労は、統一をさまたげるものがあれば大胆に変えていくということで、綱領の改正に着手したわけですが】
幹部の主張だけで組織の合同や連合をやると、かって四組合共闘が崩れたようにうまくいかないと思う。したがって今年の大会での方針、議論の中からそういうものが生まれるかどうか注目しているところです。動労の現実的対応については歓迎しますし、仲良くやっていける問題に限って共同歩調をとっていく。うちの方からどうするということは考えないし、大臣から言われたから、誰から言われたからというような単純な問題ではありません。
ということからもわかるように、動労との共同戦線は分割民営化による雇用確保についてのためであり、合同することは全く考えていないことがここからも読み取れると思います。
さらに、記者は、動労が綱領を改正してきちんとした形で統一を求めた場合の考え方についても、動労との統一は考えていない、民営化された4月1日以降の組織体について考えることであり動労との統一は別問題であると切り捨てています。
以下、公企労レポートから再び引用しますと。
【動労が、綱領を改正し、方針を改めて、きちっとした形で統一を求めた場合はどうなりますか】
われわれの運動の基軸は30年前と変わってはいないわけで、うちがどうこうするとは考えない。考えなければならないのは、62年4月からの運動のあり方です。
 動労が大きく変わった時点で、新たな運動を展開するためにどうするかということがそのときに始まるわけで、今の問題ではありません。
【国鉄当局も統一を期待しているようですが】
民間になるわけですから、経営者がこれからの労働運動をどうあるべきか考えるのは結構ですし、そうあるべきです。しかしわれわれは労働組合ですから、経営者がそれを望んだからといってそのとおりいくものではない。国労指向型の労政から新たな展開を図ることは歓迎するが、それによって労組がどうかわるかということは関係のないことです。
引用終了
というように、動労との統一は考えられないこと、また当局側が仮にそれを望んだとしてもそれは難しいものであることであり、当局が国労よりの労政から決別することは評価するがそれ以外はあくまで労組は労組であると主張しています。
さらに、62年4月からの運動を考えるということは、62年4月までに統一された新しい組織が始まるのかという質問に対しては難しいであろうと述べています。
以下公企労レポートから引用しますと。
【62・4の段階ですべての垣根が取り払われて新しい関係が始まるということにならないわけですか】
それは、無理ですね。3月31日まで既成の組織であって、4月から大同団結といっても、それを目指すことはできても、たちまち新しいものができるということは不可能に近い。
そんな簡単なものではありません。
4月1日以降のスタンスが問題になりますね。民間になったという事実に即してどう運動を展開するかがポイントです。それぞれの組合が同じ運動をする場合、それなら一緒にやろうということがそこで始めてでてくると思います。
また、6月29日に管理者たちを中心とした大集会については、以下のとおり見解を述べています。
【6月29日の大集会はどうみていますか】
誰が言い出したか知らないが、われわれとしては全く関知していない。職員がやるのは自由ですがわれわれをかくれみのにして前に出ないというのはナンセンスです。ここまでできてなぜ総裁が腰を引いているのか。国鉄の改革は労組が主導権を持つのではなく、経営者側がもつべきです。
総裁が提起して、現場長が職員に対して意識改革を求めて集会に参加させるという方針をとり、そのもとに職員が国鉄改革のために頑張ろうというのが、今の状況にふさわしい経営の姿勢だと思います。
引用終了
ということで、経営者側が少し腰砕けというか、責任逃れともいえるように写ることに多少なりとも苛立ちを感じているようです。

運輸大臣との会談・一企業一組合(全施労)

今回は、国鉄改革についての意見として、全施労の滝口書記長の意見を聞いてみたいと思います。
全施労の場合はその成り立ちからしてどちらかといえば、動労に近い物があるため、職能組合ありきという考え方があるようだが、動労や鉄労ほども偏っておらず比較的柔軟に対応できる姿勢を見せています。
公企労レポートから引用しますと。
【新事業体移行にあたり、一企業一組合という意見があるようですが、どのような対応を考えておられますか】
先日、運輸大臣と会見したおり労使共同宣言四組合が一緒になったらという話が出たわけです。どの組合も新事業体に移行した場合、複数の組合では民間企業として対応しきれないだろうという認識は持っているようです。
その席上、大臣に申し上げてことは私どもは国鉄の労働組合再構築のためには職能総連合でいくべきだと提言してきたが、多数派を形成するためには大臣の言われたことは正しいと思う。しかし、労働組合にはそれぞれの生い立ち、歴史があり、右のものをすぐに左に持ってくるわけにはいかない。たとえば、動労が鉄労解体ということを運動方針からはずすとしても鉄労の下部の人たちのしがらみは強く、そう簡単にいくで、ものではない。
 しかし、将来にわたってこのことは十分に検討しなければならないことで、私の考えは四組合の総連合というものを作り、多数派を形成した上で将来に向け統一の検討をしていくことで、これであれば四組合とも反対することはないだろう。性急に統一することは難しいでしょう、とおよそ以上のようなことを申し上げてきたわけです。
引用終了
ということで、動労の立場もわかるし、鉄労の立場もわかるというある意味優等生的な発言とも感じられるが、全施労と言う組合自体が技術者を中心とする組合であり、職能組合としてスタートしていることから動労と同じように職能連合でいくべきと考えていましたが分割民営化で横断的な職能連合もむずかしくなると判断したようです。
それが、「四組合の総連合というものを作り、多数派を形成した上で将来に向け統一の検討をしていく」という言葉に集約されていると思います。
さらに、総連合といったもので対応するのか、それ以前に一企業一組合の体制を作るのかという質問に対しては、新事業体では職能別組合での対応が困難になるので、現行の組合を震度化させた連合体を作る必要があると考えていると答えています。
以下、公企労レポートを引用いたしますと。
【4月1日を迎えるにあたり、総連合体といったもので対応するのか、それ以前に一企業一組合の体制をつくるのか、どちらになりますか】
それについては四組合の意思は統一されていません。選挙が終われば特別国会が召集され、政治的スケジュールからすれば11月中には国鉄関連法案は全て成立するでしょう。そうしなければ来年4月に間に合いません。私どもは、これに対応するためには四組合の連絡協議会を深度化し、今秋までに四組合が意思統一したうえで連合体を作っていくべきだと思っています。動労、全施労は職能別組合ですが、これから新事業体に移っていくとすれば、職能別組合では対応が困難になるだろうと思います。とすれば、将来に向けて現在の労使関係を維持していくという立場からすれば、四組合が多数派を形成して現在の労使関係を維持する必要があるわけで、その前提として今の連絡会議から、四組合の連合機関をもうけていかなければならない。その機関のもとに、動労、鉄労、全施労といったものがそれぞれ位置する。コントロールタワーというものをもつ必要があると思います。
【それは、将来の一企業一組合へ向けての課程ということですね】
そういうことです。いま国労は13万人、四組合全部合わせてもそこまでいきません。良識派が多数派を形成しようとすれば、積極的に統一といっても不可能です。その一つのステップとして連合協議会というワンクッションが必要です。そうして全体の理解を深めることをやっていきながら、加入した組合は主体的な運動をそれぞれやっていく、このコースが一番正しいと思います。
今すぐ、統一した組合を作るのは困難ですから、4月1日の新事業体に向けて現在の組合を深度化した連合体を作りその中での職能別のコア部分として現在の動労、鉄労、全施労のポジションであるべきだという考え方を堅持しており、組合としては当然のことながら統一に関しては慎重な姿勢を貫いています。
さらに、動労が綱領の改正を含めた大胆な変更に対してはどう考えているかの質問に対しては、次のように回答しています。
公企労レポートから再び引用しますと。
【動労は先の中央委で職能総連合を決めましたが、これが障害になれば直すといっていますが】
動労はそれでよいでしょう。私どもは技術者の団体ですから、多数は形成を図ったうえで、総連合などの方向をさぐりたい。私どもとして今規約を改正する考えはありません。
ということで、規約の改正などの大胆な変更は望んでいないとしています。
また、管理者が中心となって行われる予定の6・29集会に対し、歓迎の意向を示しています。
【6月29日の大集会についてはどういう意味合いのものと考えておられますか】
国鉄の改革推進という立場に立てば、国民的課題となっている国鉄改革を、企業の中で働いている職員が横を向いて言るようでは国民の期待に反するわけですから、こういう人たちが一堂に会して決意を新たにすることは極めて意義のあることで一つの大きな成果だと思います。
ということで、あくまでも管理者を中心とした人たちが国鉄改革に向けて意識付けを行うことを歓迎しています。

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