国立国会図書館から引用

石炭鉱業の合理化に伴う失業対策について

昭和31年10月19日 閣議了解

一 石炭鉱業合理化臨時措置法の実施に伴い、五年間に多数の離職者の発生が予想されるので、その実情に応じこれに対処するため、政府においてつぎの措置を講ずるものとする。
 (一)炭鉱地帯において各種の建設的事業(河川改修事業、道路事業、水道事業、鉄道建設、改良事業)等を実施し、これに離職者の積極的な配置転換を図ること。
 (二)住宅建設、電源開発等の事業に計画的に配置転換を行うこととし、必要な職業補導事業を実施すること。
 (三)製塩事業その他炭鉱離職者の吸収に適切な事業を育成助長すること。
二 右の施策を実施するため、所要の資金的措置を講ずるものとする。
三 右の措置のほか、炭鉱地帯における失業の現状に鑑み、従来の鉱害復旧事業、失業対策事業等を炭鉱地帯において重点的かつ計画的に実施し、失業者の吸収に万全を期するものとする。
石炭鉱業の合理化に伴う失業対策について(昭和31.10.19 閣議了解)
 石炭鉱業合理化臨時措置法(昭和三〇年八月一〇日法律第一五六号)の実施に伴う失業対策については、昭和三〇年五月二四日の閣議においてその要綱が決定されたのであるが、昭和三一年度石炭鉱業合理化実施計画の実行に伴い当該地域において発生する失業者の就職を促進するため政府においてさしあたりつぎの措置を講ずるものとする。
一 関係機関および雇用主の積極的な協力により、炭鉱間、特に同系炭鉱間の配置転換を極力推進するに努める。
二 (一)前項の配置転換が困難であつた離職者に対しては、既存の職業安定機関を充実して職業相談を積極的に行い、当該道県のみならず広域の労働市場にわたつて就職の促進を図る。併せて他産業への就労転換を容易ならしめるため職業補導の強化について特別な考慮をする。
  (二) 離職金またほ賃金の未払が離職者の再就職に障害となつているので、石炭鉱業整備事業団による離職金の早期支払または未払賃金の代位弁済を促進するよう特に考慮する。
  (三) 自営業への転換を希望する者に対して必要がある場合には、国民金融公庫等の資金の融通を円滑ならしめるものとする。
三 前二項の措置によるも就業することができない離職者に対しては、当該地域において公共事業および鉱害復旧事業をできる限り集中して実施し、その雇用吸収に努める。その際、近年における関係地方公共団体の財政の実情に鑑み、当該団体の財政の具体的な検討に基き特別な考慮を払うとともに関係地方公共団体の積極的な協力を求める。
四 当該地域における地方経済を振興するために、鉄道建設その他産業立地条件の整備に努め、これによつて雇用吸収を図るものとする。その一還として北九州における油須原線建設事業については、その早期着工を図り、失業者の吸収に努めるものとする。
五 以上の措置によるもなお就業できない離職者に対しては、一般失業対策事業の施行に万全を期し、また、その経費補助については財政状況に応じた高率補助の適用を図る。
 これら諸施策によつてもなお完全に吸収し得ない離職者で、もし生活に困窮する者があれば、生活保護法その他の公的扶助制度の時宜に即した運用により、とくにその最低生活保障に考慮を払うものとする。
六 炭鉱離職者の就職促進のため関係道県において関係各省の地方支分部局、当該道県の関係部局、石炭鉱業整備事業団、使用者団体および労働組合等を構成員とする炭鉱離職者対策協議会を設置する。炭鉱離職者対策協議会においては、本措置の趣旨に従い当該地域の実情に即した離職者対策を強力に推進する。
備考
 (一)当該地域における離職者の発生状況によつては、将来さらに協議の上必要な措置を講ずるものとする。
 (二) 三、四および五については、おおむね別表のとおり実施するものとする。


別表
      北九州地区における事業および失業者吸収計画(昭和三一年度)
一 石炭鉱業合理化に伴う離職者中の要対策者見込数
 八月以降一○月まで 一、四八〇人(一日当り平均人員。人数について以下同じ。)
 一一月以降三月まで 三、三四七人
二 対策事業および吸収人員
 1 一般失業対策事業
(八月一六日以降一〇月まで)
事業費追加額     二七、〇〇〇千円
  うち国費     二〇、〇〇〇千円
吸収人員        一、四八〇人
(一一月以降三月まで)
事業費追加額     三三、〇〇〇千円
  うち国費     二五、〇〇〇千円
吸収人員          七七四人
 2 鉱害復旧事業
(一一月以降三月まで)
実行見込総事業費   七二一、〇〇〇千円
    うち国費   三六四、〇〇〇千円
吸収実績の向上による
増加吸収人員         七〇〇人
 3 特別失業対策事業
(一一月以降三月まで)
事業費追加額      五五、〇〇〇千円
  うち国費      三〇、〇〇〇千円
吸収人員           二七三人
 4 油須原線建設事業
(一一月以降三月まで)
実行見込総事業    二〇八、〇〇〇千円
吸収人員            五〇人
  (注)実際の吸収人員は二月および三月においてそれぞれ一二五人とする。
 5 公共事業
(一一月以降三月まで)
事業費追加     約三〇〇、〇〇〇千円
吸収人員         一、五一〇人
  (注)事業費追加額の内訳については一、五一〇人を吸収するに足るよう決定するものとする。
 6 北九州有料道路建設事業
(一一月以降三月まで)
実行見込総事業費    二八四、〇〇〇千円
吸収人員             四〇人
  (注)実際の吸収人員は二月および三月においてそれぞれ一〇〇人とする。
以上の一一月以降三月までにおける増加吸収人員
   計          三、三四七人