国立国会図書館から引用

電気事業の基本対策について

昭和33年3月28日 閣議了解

政府は最近の電力問題の趨勢にかんがみ、電気事業の基本対策について昨年来七名の有識者より成る電力問題懇談会にその検討を依頼してきたのであるが、今般別紙(一)(前記七人委員会の結論に同じ)の如き結論が申達されるに至った。
 審議の経過並びにその本旨とするところは、合併その他の所謂電気事業の再々編成については、なお慎重に検討を要するが、さし当り別紙(二)の広域運営案により早急に問題の処理に当ることを認めるものとしている。
 政府においては右の結論を了とし、電力会社と電源開発会社との協力の下に各社協同体制を確立し、なお中央給電指令の強化等所要の補正を行うことによって広域運営方式がその効果を発揮し、将来における電力原価上昇の抑制、料金の地域差の調整、需給の円滑化等に貢献することを強く要請する。
 電気事業者が右の方向に邁進することを期待して、政府としても、右の結論の線に沿って電源開発調整審義会の機能の活用等による電源開発の積極的調整、電力融通に対する指導等、広域運営の実施をさらに効果的にするため必要な措置をとることに努めるものとする。

 別紙(一)
  1、広域運営案については実行上なお検討すべき問題点を残していると思われるが、四月一日よりの発足は、これを認め、その効果を期待する。
  2、電源開発会社を中央及び地方協議会機構に参加せしめ、九電力と電源開発会社の全面的協調を期待する。
  3、広域運営方式を円滑敏速にするため協議会機構の運営を技術的に統括する中央給電指令機構を確立すること。
  4、広域運営に関し今後新規電源開発について意見の相違がある場合は、電源開発調整審議会において、これを審議決定すること。
  5、広域運営の実施を効果的かつ完璧にするよう、政府は必要な助長措置をとること。

 別紙(二) 
  広域運営方式
一、電気事業の問題点とその対策
 電気事業の当面とする問題は、毎年顕著な増加を示しつつある電力需用に対応して供給力を確保し、高騰する電力原価を抑制すると共に現実に発生する地域的需給及び経理の不均衡等に対して如何に円滑に対処すべきかということである。
 これに対しては現下の政治経済状勢を勘案し、各電力会社の合併等による不必要の摩擦を避け、その実質的効果を追求するために、自主的経営責任体制の下に、事業運営方式を根本的に再検討し供給区域にこだわることなく電源開発計画、設備の運営方針、地区間電力融通等に関し最も合理的かつ能率的な広域運営方式の実施を可とする。
 この運営方式を具体的かつ円滑に展開するため、九地区電力会社及び電源開発株式会社の新たなる協力組織を確立し、給電指令機構について整備強化を図る必要がある。
二、広域運営の組織とその方針
 (1)、全国を次の四地域に分けて、それぞれの地域に各社間の地域協議会を設ける。
 北海道地域・・・・・・電源開発株式会社
        北海道電力株式会社
 東部地域・・・・・・・・・電源開発株式会社
        東北電力株式会社
        東京電力株式会社
 中部地域・・・・・・・・・電源開発株式会社
        中部電力株式会社
        北陸電力株式会社
        関西電力株式会社
 西部地域・・・・・・・・・電源開発株式会社
        中国電力株式会社
        四国電力株式会社
        九州電力株式会社
 (2)、地域相互の電源開発計画並びに設備運用計画を総合調整するため東京に中央協議会を設け、地域協議会と同様に、電源開発株式会社及び九電力株式会社の代表者をもって組織する。
  中央協議会の下部機構として中央給電連絡会議、中央給電連絡指令所を、また地域協議会の下には地域給電連絡会議、地域給電連絡指令所を設ける。
  中央協議会には関係官庁より参与を委嘱するものとする。
 (3)、協力機構の基本方針
  (イ)、電源開発計画、需給計画、送電連繋等は各地区、各地域における電力需用電源立地条件を総合的に考慮し、広域経済的見地に立ち、経済効果を最大ならしめると共に、需用家に対するサービスに万全を期し得るものであること。
  (ロ)、設備運用は発送電設備が広域における電力需給に最も適合する経済的運用が行われることにより経費を最低ならしめるものであること。
  (ハ)、電力融通は前述の方針に基づき各地区、各地域間の融通の強化をはかるほか、諸般の変化に対応して、電力需給の安定を期するための電力融通について円滑化をはかるものであること。
  (ニ)、以上に基づく原価節減の効果は公正に各社に帰属させるものであること。
 (4)、広域運営の効果
  上記の機構と方針により開発計画の合理化、各地区間の負荷調整、予備設備の共用、高能率火力の集中運転、貯水池の最高度利用、電力潮流の改善等により、資本費の節減、燃料費の節約、送電損失の低減、余剰電力の消化等の効果を期待し、以て現下の電気事業の諸問題に対処せんとするものである。