国立国会図書館から引用

連合軍関係設営工事費の適正化に関する件

昭和20年10月11日 閣議決定

 連合軍関係設営工事費は従来極めて巨額に上りその財政に及ぼす影響は軽視を許さぬものがあるに拘わらず、工事の査定は必ずしも適正を期し得ない実情にある。これがためこのまま推移すれば徒に国費を乱費して連合軍関係の工事請負に不当の利得を生ぜしめ、延いては財政上過重の負担をもたらすと共に経済の安定に著しい障碍を及ぼすに至るものと見られるので、この際是等の点を是正するため左記の措置を講ずるものとする。
   記
一 連合軍関係設営工事費の支払は凡て戦災復興院の責任に於てこれを行うものとし、左の方法により極力支払の適正を期すること。
 (1) 復興院は連合軍司令部の了解の下に各種工事の基準単価及び適正利潤を定め、これを各地方庁に示達し全国的に工事費の調整を図ること。 
 (2) 復興院は資材の全面的官給につとめ、極力資材費の節減を図ること。
 (3) 資材の生産、輸送、労務者の確保等に関しては関係各省はその責任によつて復興院に協力すること。
 (4) 大規模の設営工事に関する契約の締結に際しては復興院は必ず現場を査察すること。
 (5) 本件の実施のため復興院の機構を拡充し優秀技官の増員を図ること。
 (6) 復興院の監督の下に各地方庁の機構を整備し、特に現場監督陣を強化すること。
 (7) 各地方庁に工事費査定に関する委員会を設け、復興院の定める単価に基き個々の工事につき概算及び精算額を決定すること。但し大規模の設営工事については契約締結前復興院の承認を受けるものとする。
 (8) 設営の指令があつたときは各地方庁において自ら業者の選定を行い、工事開始前工事単価を内示し、且、なるべく速やかに概算契約を締結すること。
 (9) 現に工事の全部又は一部が完了し、なお精算を完了しない工事費の支払いについてはその精算を急ぐとともに、前各項に従い、極力経費の節減に務めること。
二 連合軍関係設営工事より生ずる各業者の利潤についてはその適正を期するため、左の方法により随時これを調査監督すること。
 (1) 支払を担当する地方庁と財務当局との関係を緊密ならしめるため、各地方庁における工事査定委員会委員に財務当局関係官を加えること。
 (2) 財務当局関係官は地方庁関係官に協力し、随時総合的請負業者又は下請負業者の帳簿書類等を検査し、業者の要求を適正ならしめる様措置すること。之がため財務当局の機構を拡充すること。
 (3) 特に不正又は不当の利得を得た疑のある業者について、適当な調査機関を動員し、之に対し、適当な措置を講ずること。
三 適当の機会において左の事項につき具体的事例を具して連合国軍の善処方を要望すること。
 (1) 一定期間内における設営工事計画(所要資材量を含む)の大体の枠を予め地方別に示し、工事指令は右範囲内に止める様措置せられたいこと。
 (2) 工事指令の権限を有する担当官を定め、工事着工前にその署名ある正式の指令書を政府に手交されたいこと。
 (3) 業者においても見積書を作成し得る程度の詳細な計画書を工事指令と同時に示されたいこと。
 (4) 業者の選定を政府に一任されたいこと。
 (5) 現場における個々の指令は地方庁より派遺する現場監督を通じてなされること。 
 (6) 予め連合軍司令官の諒解を得た適正単価によつて契約の締結が不可能な事情のあるときは、政府並びに業者側の意見を徴した上、資材および運輸に関する援助並びに竣工期限の緩和につき考慮を払われたいこと。

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