国立国会図書館から引用

航空保安施設整備計画要綱

昭和14年10月13日 閣議決定

 航空保安施設ハ優秀ナル航空機及乗員ト共ニ航空ノ安全性確実性ヲ確保スル為必要欠クベカラザルモノナルコト世人ノ等シク痛感スル所ナリトス
 然ルニ我国ニ於テハ右ニ関スル各般ノ施設極メテ不備ナル実状ニシテ将来益々高性能化サルベキ航空機ノ科学的航法ニ対スル高度ノ要求ニ想到スルトキ誠ニ寒心ニ堪ヘザルモノアリ。
 現下内外ノ情勢ニ照シ航空保安施設ノ整備ハ帝国ノ特ニ急務トスル所ト云フベク其ノ特殊性ニ鑑ミ統一アル意図ノ下ニ之ガ総合的計画ヲ樹立シ以テ東亜制空権把握ノ実現ヲ図ルノ要アリ、計画要綱左ノ如シ
第一 方針
 航空保安施設ハ飛行場、航空路証明施設、航空通信、無線先導施設及気象機関ニ付概ネ五ヶ年計画ヲ以テ整備スルモノトシ国内幹線、日満支連絡船、国際線並ニ陸海軍ノ要望スル航空路線ニ重点ヲ置キ之ガ完成ヲ期スルト共ニ国内視線ノ整備ニ努ムルモノトス。
第二 要領
 一、飛行場ノ整備
  将来ニ於ケル航空機並ニ航法ノ発達ニ付充分検討ヲ加ヘ、国際飛行場、幹線路飛行場、支線路飛行場等各種飛行場ノ重要度ニ応ジテ之ヲ甲乙丙及補助ノ四種ニ区別シ此等四種ノ飛行場ガ夫々具備スベキ施設ノ内容ヲ決定シ以テ整備ノ完璧ヲ期スルモノトス。
 二、航空路照明施設ノ整備
  夜間航空ノ安全確実ヲ期スルガ為ニハ、無線航法施設ト相俟ツテ航空灯台及航空路障碍灯ヲ整備スルノ要アルモノニシテ航空灯台ハ用途ニヨリテ之ヲ甲乙丙特殊ノ四種ニ区別シ適正ナル配置計画ヲ樹ツルモノトス
 三、航空通信及無線先導施設ノ整備
  航空通信中地上通信ニ付テハ有線専用線、対空通信ニ付テハ短波無線ニヨル原則ヲ樹立スルト共ニ地上ニ於ケル無線先導方式ハ方向性及無方向性無線標識ト無線羅針トヲ併用シ彼此相勘案シテ配置ノ計画ヲ定メ以テ施設ノ整備ヲ計ルモノトス。
  尚重要飛行場ニハ航空機ノ着陸用無線羅針装置及着陸用無線標識装置ヲ設置スルモノトス。
 四、気象機関ノ整備
  航空気象ノ観測収集並ニ通報ノ完璧ヲ期スル為気象機関ノ整備拡充ヲ行フト共ニ飛行機、ラヂオゾンデ、ラヂオトラッキング、雲高測定用雲照灯等ヲ含ム観測施設ノ充実ヲ計ルモノトス。
了解事項
 本計画ノ実施ニ際シテハ之ニ要スル経費及資材ニ付財政上及物資動員上ノ見地ニ基キ別途考慮スルモノトス

昭和14年後半

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