国立国会図書館から引用

昭和15年度予算編成ニ関スル件

昭和14年7月4日 閣議決定

国際情勢ニ対応シ大亜ノ新秩序ヲ建設スルカ為ニハ国家ノ施設スヘキ事項尠カラスト雖我国財政経済ノ現状ニ於テ一面臨時軍事費ノ追加ニ備へ此ノ際普通歳入ノ増加ヲ図ルト共ニ総テノ経費ニ付一層厳正ナル較量ヲ加ヘ節用ヲ旨トシ以テ適正ナル戦時予算ノ編成ニ努ムルコト緊要ナリ仍チ各省共所管事務ノ立場ニ偏スルコトナク国務ノ全般ニ稽ヘ概ネ左記方針ニ準拠スルコトトシ昭和十五年度予算ノ成立ニ協力スルモノトス


一、新規経費ノ要求ニ付テハ此ノ際特ニ事項ヲ厳選シ真ニ緊急已ムヲ得サルモノニ限ルコトトシ且其ノ金額ハ之ヲ最小限度ニ止ムルコト
 (イ)新規経費ノ所要財源ハ出来得ル限リ之ヲ既定経費ノ節約ニ求ムルコト
 (ロ)官吏定員ノ増加ハ原則トシテ之ヲ差控フルコト
二、既定経費ニ付テモ鋭意検討ヲ加ヘ事業ノ繰延ヲ行フト共ニ規格ノ低下、能率ノ増進等各般ノ措置ヲ工夫シ努メテ節約ヲ行フコト
三、物資、労力、資金及物価等ニ関スル経済諸方策トノ調和ヲ図リ戦時経済ノ運営ニ支障ヲ及ホスコトナキ様留意スルコト
 (イ)土木、営繕ノ事業等物資、労力及資金ヲ要スルコト多キモノ及外国出張旅費海外物資購入費等海外払トナルモノニ付テハ努メテ之カ要求ヲ見合ハスコト
 (ロ)重要物資ノ需要ハ成ルヘク之ヲ少量ニ止ムルト共ニ別ニ定ムル所ニ依リ物資需要調書ヲ作製提出スルコト
 (ハ)新規要求ニ伴フ物資ノ単価ニ付テハ昭和十四年度予算単価ノ範囲内ニ於テ極力其ノ引下ニ努ムルコト
 (ニ)労務需要ノ増加ハ成ルヘク之ヲ避タルト共ニ別ニ定ムル所ニ依リ労務需要調書ヲ作製提出スルコト
四、概算閣議当時迄ニ既ニ予期シ得タル経費ノ追加予算計上ハ特別ナル事情ナキ限リ之ヲ認メサルコト
五、各特別会計ニ於テモ右各項ニ準シ予算ノ編成ニ当ルヘキコト
六、税制ヲ改正シ租税収入ノ増加ヲ図ルノ要アル情況ナルニ顧ミ各省ニ於テモ普通歳入ノ増加ニ努メ又各特別会計ニ於テハ臨時軍事費特別会計又ハ一般会計ニ対シ出来得ル限リ多額ノ繰入ヲ為ス等ノ方法ヲ講スルコト
七、各省概算書ハ昭和十四年八月十日限リ各特別会計概計書ハ同年八月三十一日限リ之ヲ大蔵省ニ送付スルコトトシ昭和十五年度予算ノ帝国議会提出ハ之ヲ昭和十五年一月十一日トシタキ計画ナルヲ以テ右送付期限ハ必ス之ヲ厳守スルコト
  了解事項(部外秘)
一、公債発行ノ連年巨額ニ上ルハ財政経済上戒慎ヲ要スルモノアルニ依リ各省一致努メテ公債発行ノ減少ニ協力スルコト
二、経費ノ要求ニ際シテハ重点主義及節用主義ノ徹底的励行ヲ期シ苟モ時局便乗ノ嫌アルモノハ之ヲ要求セサルコト
三、他省所管ノ事務ニ関聯アル事項ニシテ関係省トノ連絡協定調ハサルモノ又ハ具体的計画ノ熟セサル事項ニ付其ノ経費ヲ要求スルカ如キコトハ之ヲ避クヘキコト
四、概算閣議決定前ニ事項、内容、金額等ノ外部ニ漏洩スルトキハ種々ナル不都合ヲ生スル虞アルヲ以テ各省共秘密ヲ厳守スルコト

昭和14年後半

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