国立国会図書館から引用

国民精神総動員新展開の基本方針

昭和14年4月11日 閣議決定

一、趣旨
 支那事変ハ今ヤ東亜ノ新秩序建設ニ展開シツツアル。而カモ国際間ノ情勢ハ世界ヲ挙ゲテ前途真ニ容易ナラザルモノガアル。国民ノ一大覚悟ヲ要スルコト実ニ此ノ秋ニ於ケルガ如キハナイ。
 先ニ事変ノ勃発スルヤ、国民夙ニ尽忠報国ノ誠ヲ効シ、克ク挙国一致ノ戦時態勢ヲ確立シ来タツタガ、更ニ今後ノ重大ナル新局面ニ即応スルニハ国民精神総動員運動ヲ一層強化シ、物心一如ノ実践運動ニ推シ進メネバナラヌ。
 今ヤ我国ノ急務ハ、肇国ノ大理想ニ鑑ミ興亜ノ聖業ヲ達成シ、世界的国際難局ノ前途ヲ打開スルガ為、全国民ノ伝統的精神力ヲ結束シテ国家総力ノ飛躍的増強ヲ図ルノ一事ニアル。茲ニ全国民ハ一大覚醒ノ下ニ其ノ決意ヲ新タニシ、打ツテ一丸トナリ所期ノ目的貫徹ニ驀進スベキデアル。
二、綱領
(一)肇国ノ大理想ヲ顕揚シ東亜新秩序ノ建設ヲ期ス
(二)大ニ国民精神ヲ昂揚シ国家総力ノ充実発揮ヲ期ス
(三)一億一心各々其ノ業務ニ精励シ奉公ノ誠ヲ効サムコトヲ期ス
三、実施要項
(一)時局ノ真相ヲ明ニシテソノ世界的重大性ノ認識ヲ深メ、皇国臣民トシテ精神的団結ヲ一層強固ニシ、新東亜建設ノ担当者タルベキ横溢セル精神力ト卓絶セル国民道徳トノ振起涵養ヲ図ルコト。
(二)生産力拡充並ニ物資動員、物価調整等ノ経済国策ヘノ積極的協力ニ努メ、特ニ物資ノ活用、消費ノ節約、貯蓄ノ実行、勤労ノ増進、体力ノ向上ニ主力ヲ注ギ業務並ニ生活ノ間ニ於テ刷新ヲ図ルコト。
(三)事変ノ進展ニ伴ヒ、益々銃後後援ノ実ヲ挙グルコト。
四、実施上特ニ留意スベキ事項
 イ、真ニ官民一体ノ実ヲ挙ゲ明朗潤達ナル国民運動タラシムべキデアル。
 ロ、政府諸機関ハ自ラ率先シテ一致協力ノ実ヲ挙ゲ、本運動ノ趣旨ヲ絶エズ積極的ニ庶政ノ上ニ具現スベキデアル。
 ハ、各種団体ハ相共ニ国民精神総動員中央連盟ヲ中軸トシテ、緊密ナル連絡ノ下ニ充分ナル機能ヲ発揮スベキデアル。特ニ経済団体ニ在リテハ、団体員ヲシテソノ業務遂行ニ当リ本運動ノ効果ヲ一層適切ナラシムル様工夫実施スベキデアル。
 ニ、官民共ニ指導的地位ニアル者ハ率先実行ヲ期セネバナラヌ。
 ホ、次代ノ中堅タルベキ青年並ニ家庭生活ニ於テ重要ナル役割ヲ担フ婦人ノ一段ノ奮起協力ガ必要デアル。
 ヘ、日常生活ニ於ケル実践ト修練トヲ第一義トシ、週間運動等ハナルベク統制シ徒ラニ形式ニ堕スルコトヲ排スベキデアル。
 ト、従来ノ経験ニ鑑ミ都市ニツイテハ格別ノ考慮ヲ払ヒ、特ニ殷賑産業関係者ノ自粛自戒ヲ徹底スベキデアル。
 チ、本運動ノ展開ニ当ツテハ、努メテ地方ノ実情、運動ノ対象ニ即シ主力ヲ注グベキ点ヲ定メテ集中的ニ之ヲ行ヒ、各方面ニ於テ来ルベキ紀元二千六百年ヲ期トシ、今後一年間ニ実現スベキ具体目標ヲ掲ゲテ之ニ全力ヲ注グベキデアル。

昭和14年前半

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