昭和14年度予算編成ニ関スル件
昭和13年7月8日 閣議決定
昭和十四年度予算編成ニ当リテハ国家ノ施設ハ専ラ事変目的遂行ヲ目標トシテ之ニ集中シ以テ軍ノ需要ノ充足ニ遺憾ナキヲ期スルト共ニ銃後ニ於ケル国民経済ノ維持ニ留意スル所ナカルヘカラス而シテ之カ為ニハ財政経済ノ現状ニ鑑ミ物資、資金、労力等ノ需給並ニ輸入力ノ関係ヲ較量シ且一般経費ヲ緊縮シテ政府自ラ消費節約ノ実践ニ努ムルコト最モ緊要ナリ依テ各省ハ国家ノ全局ニ稽ヘ所管事務ノ立場ニ偏スルコトナク努メテ左記方針ニ準拠スルモノトス
記
一、各省新規経費ノ要求ハ現在ノ時局ニ顧ミ真ニ緊急已ムヲ得サルモノニ限リ且其ノ金額ヲ出来得ル限リ少額ニ止ムルコト
二、各省新規要求経費ノ財源ハ出来得ル限リ之ヲ既定経費ノ節約ニ求ムルコト
三、官吏定員ノ増加ハ原則トシテ之ヲ差控ヘ其ノ已ムヲ得サル場合ニ於テハ成ル可ク既定予算定員ノ組替ニ依ルヘキコト
四、諸般ノ施設ノ不備不便ハ忍ヒ得ル限リ之ヲ忍フコトトシ現状改善ノ為ニスル積極的施設ニ要スル経費ノ新規計上ハ此ノ際之ヲ差控フルハ勿論既定経費ニ対シテモ出来得ル限リノ削減ヲ加フルコト
五、土木、営繕等物資、資金、労力等ヲ要スルコト多キ事業ニ付テハ新規経費ノ計上ヲ抑制スルト共ニ既定経費ニ付テモ徹底的節約ヲ図ルコト
六、外国出張旅費、海外物資購入費等海外払トナルモノニ付テハ新規経費、既定経費共ニ特ニ必要避ケ難キ場合ヲ除キ之ヲ計上セサルコト
七、補助費助成費其ノ他一般経費ニ付テモ再検討ノ上努メテ節減繰延ヲ図ルコト
八、概算ニ伴フ物資ノ需要量等ニ付テハ別途大蔵省ノ定ムル所ニ従ヒ物資需要調書ヲ提出スルコト
九、各特別会計ニ於テモ右方針ニ準シテ概計ヲ作成スルコト
一〇、各特別会計ニ於テハ現下ノ時局ニ鑑ミ臨時軍事費又ハ一般会計ニ対シ出来得ル限リ多額ノ繰入ヲ為ス等ノ方法ヲ講スルコト
一一、各省概算ハ昭和十三年八月十日限リ各特別会計ノ概計ハ同年八月二十日限リ之ヲ提出スルコト