国立国会図書館から引用

華北連合銀行(仮称)設立要綱

昭和12年11月26日 閣議決定

北支ニ於ケル通貨金融ニ関スル応急対策ハ先ニ決定セル北支金融対策要綱ニ基キ実行中ノ処其後ニ於ケル北支ノ情勢ノ進展ニ鑑ミ右要綱ニ定メラレタル根本対策ノ急速実現ヲ図ル為左記要領ニ従ヒ速ニ華北連合銀行(仮称)設立工作ヲ進ムルモノトス
一、資本及構成
 (イ) 資本金ハ五千万円(半額払込)トス(出資ニ付テハ北支政権及支那側主要銀行ノ折半出資ヲ予定シ速ニ支那側主要銀行ノ態度ヲ決定セシムルモノトス支那側主要銀行不参加ノ場合ハ政権ノ出資ニ依ルモノトシ此場合支那側主要銀行ノ処置ニ付テハ別途考究スルモノトス
 (ロ) 政権ノ出資ニ必要ナル資金ハ日本側金融機関ニ於テ適当ナル方法ヲ以テ之ヲ融通スルモノトシ日本側金融機関ノ資金調達ニ関シテハ之ヲ援助スルモノトス(其ノ具体的方法ハ別ニ之ヲ定ム)
二、機能
 (イ) 連合銀行ハ速カニ連合銀行券ヲ発行スルモノトス
 (ロ) 連合銀行券ハ北支ニ於ケル唯一ノ法貨トシ連合銀行券以外ノ銀行券(朝鮮銀行券及正金銀行券ヲ含ム)ノ発行ヲ廃止スルモノトス
 (ハ) 本銀行券ノ対外価値ハ金円ニ「リンク」セシムルコトトシ其ノ比率ハ等価ヲ目途トシ円滑且迅速ナル実現ヲ期スルモノトス
 (ニ) 支那側銀行ヲシテ可及的短期間ニ其ノ既発銀行券ヲ連合銀行券ニ引換ヘシムルモノトス(支那側銀行不参加ノ場合ニ於ケル其ノ既発銀行券ノ処置ニ付テハ別途考究スルモノトス
   引換相場ハ現地ノ事情ニ応ジ適当ニ之ヲ定ムルモノトス
   支那側銀行ガ右引換ノ為ニ要スル連合銀行券ハ先ヅ其ノ所有現金及外貨資金ト引換ニ連合銀行之ヲ交付スルモノトシ不足額ハ適当ナル担保ヲ提供セシメ長期年賦低利息ヲ以テ連合銀行之ヲ貸付クルモノトス
 (ホ) 日本側銀行券ハ連合銀行及日本側銀行ニ於テ連合銀行券ニ引換シムルモノトス
 (ヘ) 連合銀行ノ発行準備タル外貨資金ハ原則トシテ日本側銀行ニ預入セシムルモノトス
   連合銀行保有現金銀ハ連合銀行券ノ対外価値維持ニ資スル為必要ニ応ジ之ヲ外貨資金ニ換フルモノトス
 (ト) 日本側銀行ヲシテ本銀行ノ為一億円程度ノ「クレヂット」ヲ供与セシメ対日為替決済ニ備フルモノトス
   右「クレヂット」ノ使用ニ付テハ予メ日本側銀行ノ承認ヲ受ケシムルモノトス
 (チ) 連合銀行ハ発行業務以外ノ一般銀行業務ヲモ営ミ得ル立前トスルモ政府関係以外ノ業務ニ付テハ既存各銀行ノ営業利益ヲ侵害スルコト無キ様考慮ス但外国為替業務ニ付テハ連合銀行及日本側銀行ニ集中スル如ク措置スルモノトス
三、経営
 連合銀行ノ経営ニ関シテハ我方ノ強力ナル内面指導ノ下ニ支那側ノ自主的立場ヲ尊重スルモノトシ人的要素其他ニ付慎重ナル考慮ヲ払フモノトス
四、準備ノ充実
 連合銀行ノ準備ノ充実ヲ図ル為市場ニ於ケル金銀塊ノ買上、支那側銀行ノ外貨資金ノ連合銀行ヘノ集中、外国投資(中南支ヨリノ投資ヲ含ム)ノ存続、外資ノ新規流入等ヲ図ルモノトス
 尚冀東地区ニ於テ採掘セラレタル金ハ連合銀行ニ之ヲ集中スル如ク措置スルモノトス
五、其他
 (イ) 各銀行ニ対スル政権ノ監督ヲ強化シテ金融統制ノ確立ヲ期スルモノトス
 (ロ) 冀東銀行ハ之ヲ連合銀行ニ統合スルモノトス
 (ハ) 河北省銀行ハ将来主トシテ農民ヲ対象トスル金融機関トシテ其ノ機能ヲ発揮セシムル等其ノ利用更生ノ途ヲ講ズルモノトス(支那側主要銀行不参加ノ場合ハ河北省銀行ハ之ヲ連合銀行ニ統合スルモノトス)
 (ニ) 中華匯業銀行ニ対スル措置ハ別途考究スルモノトシ連合銀行ノ設立ニハ関与セシメザルモノトス
 (ホ) 中央銀行ハ連合銀行ノ設立ニハ関与セシメザルモノトス

了解事項
河北連合銀行(仮称)設立要綱二ノ(ト)ニ関シ北支ノ為替資金ハ物資ノ輸出入及投資ノ方面ヨリ之ガ調整ヲ図ルモノトシ「クレヂット」ノ使用ハ之ヲ避クル如ク措置スルモノトス

昭和12年後半

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