国立国会図書館から引用

満洲国の国幣価値安定及幣制統一に関する件

昭和10年11月4日 閣議決定

 満洲国独立を契機として満蒙に対する我が国策は既に廟議の確定を経て一新せられたる所、満洲国に於ても先に中央銀行を設立し専ら通貨及金融統制の衝に当らしむる制度を採り、鋭意同行の機能の発揮に努力しつゝあるを以て同国領域内に流通する本邦側銀行券の沿革上の使命に就ても自ら変更を来したるものと云ふ可く、其の流通を現状の儘に推移せしむることは国内の通貨を徒らに複雑ならしめ国幣の対外価値安定上却て支障を来さしむるものと認めらる、依て我が方針としては本邦側銀行券は適当なる時機に国幣に統一せしめ以て国幣価値の安定に資するを適当とすべし、然れども右統一に当りては日満経済の連繋殊に本邦よりの投資に対し支障無からしむる様最善の措置を講ずるの必要あるのみならず治外法権の撤廃、附属地行政権の調整乃至移譲、幣制統一後に於ける本邦側銀行に及ぼす影響及之に対する措置等関連攻究すべき事項あるを以て最も周到なる準備を為し漸進的に之が実現を図るの要あり(因に関東州は本方針に依る幣制統一の区域には含まざるものとす)右方針に基き先以て実行すぺき事項としては国幣価値の安定を容易ならしむる為朝鮮銀行の満洲国に於ける営業に関し必要なる統制を加へ中央銀行との間に適当なる業務上の協定を行はしめ、尚ほ同国に於て為替管理を行ふに当りては其の実効を挙ぐる為本邦側の為替管理上適当なる考慮を払ふと共に在満本邦側銀行をして必要なる協力を為さしめ且在満本邦官民は事情の許す限り国幣を使用することゝし殊に軍、満鉄等に於ては能ふ限り国幣を以て支払を為すに努むるものとす