国鉄があった時代
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国立国会図書館から引用

公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の施行について

昭和37年6月29日 閣議了解

第1 要綱の適正な実施を確保する措置について
 各省庁は、その所管に係る事業に必要な公共用地の取得に伴う損失の補償について、この要綱に定めるところにより、すみやかにその基準を制定し、若しくは改正し、又は政府関係機関、地方公共団体その他の公益事業者等に対し、その行なう事業に必要な公共用地の取得に伴う損失の補償について、この要綱に定めるところに準じ、すみやかにその基準を制定し、若しくは改正するよう指導する等この要綱の適正な実施を確保するため所要の措置を講ずるものとする。また、この要綱は、収用委員会の裁決の場合においても基準となるものと認められる。
第2 精神損失に対する補償等の取扱いについて
 土地等の取得及び使用に対する損失補償並びにこれらに伴う通常損失の補償については、この要綱の定めるところにより適正に行なうものとし、従来一部において行なわれてきた精神損失に対する補償、協力奨励金その他これらに類する不明確な名目による補償等の措置は、行なわないものとする。ただし、現に土地の権利者等と補償について協議中のものについては、従前の例により得るものとする。
 なお、この要綱に基づき補償が適正に行なわれるならば、いわゆる「生活権補償」のような補償項目を別に設ける必要は認められず、公共の利益となる事業の施行に伴い生活の基礎を失うこととなる者がある場合には、必要により、生活再建のため土地又は建物の取得のあつせん及び職業の紹介又は指導の措置を講ずるよう努めるものとする。また、建物等の移転に伴い、建築基準法その他の法令の規定に基づき施設の改善を要する場合の費用については、融資のあつせん等の措置を講ずるよう努めるものとする。
第3 事業施行に伴う損害等の賠償について
 事業施行中又は事業施行後における日陰、臭気、騒音、水質の汚濁等により生ずる損害等については、この要綱においては損失補償として取り扱うべきでないものとされている。
 しかしながら、これらの損害等が社会生活上受忍すべき範囲をこえるものである場合には、別途、損害賠償の請求が認められることもあるので、これらの損害等の発生が確実に予見されるような場合には、あらかじめこれらについて賠償することは差し支えないものとする。
第4 公共補償について
 公共施設については、基本的には、私人の財産に対する損失補償と同一の原則により補償するものとし、財産的価値の補償をもつてしてはその公共目的にてらして必要とされる機能の回復が困難と認められる場合には、公共施設としての機能を合理的な形で回復するために必要な費用を補償するものとする。この場合において、公共施設の改良をあわせて実施することが合理的と認められる場合においても、従来の機能の復旧としての合理的な範囲をこえるものと認められるものについてまで起業者に負担させることは妥当でない。なお公共補償に関する具体的基準については、今後なお検討するものとするが、各省庁は、以上の基本的原則を遵守するよう政府関係機関、地方公共団体その他の公益事業者等に対し指導する等公共補償の適正な実施を確保するため必要な措置を講ずるものとする。
第5 鑑定評価制度について
 公共用地の取得に伴う損失の補償を適正かつ円滑に行なうためには、鑑定評価制度の確立が必要と認められるが、鑑定評価制度は、単に公共用地の取得に伴う損失補償を定めるについて必要とするばかりでなく、さらに、私人間の土地等の適正かつ円滑な流通を確保し、地価の安定を図るための措置としても重要な意義を有するものであるので、宅地制度審議会において調査審議するものとする。

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