昭和36年度予算編成方針
昭和35年12月27日 閣議決定
昭和36年度における財政運営の基本は、閣議了解にかかる「昭和35、36年度の経済見通しおよび36年度経済運営の基本的態度」にのっとり
(1)国際経済の動向に即応しつつ、通貨価値の安定と国際収支の均衡を確保し、経済の適正な成長に資することを目途とし、
(2)財政の健全性を保持する方針の下に、国民所得の倍増を達成するため緊要とされる施策の推進を図るにある。
昭和36年度予算及び財政投融資計画は、この基本方針に基づき既定の政策を更に推進実施するとともに、減税、社会保障及び公共投資等の重要施策を重点的に実施するものとし左記により編成する。
記
1 税制については減税を中心として次のような改正を行う。
(1)中小所得者の負担を軽減するとともに、企業基盤の強化に資するため、所得税及び法人税を中心として平年度1130億円程度の減税を行う。
なお地方税についても国鋭の減税に対応して一部の減税を行うとともに、その自主性の強化及び負担の均衡化を図る。
(2)最近の経済情勢に応じ、租税特別措置について租税負担の公平を図るための整理合理化その他所要の改正を行なう。
(3)産業構造の高度化と貿易為替の自由化に対処するため関税率の全面的改正を行なう。
2 (1)生活保護の改善、結核及び精神衛生の拡充、国民年金制度の充実等、社会保障関係施策を拡充するとともに、生活環境施設の整備を推進する。
(2)また産業構造の変化に即応して労働の流動性の向上と規模別産業別格差の縮小につとめる。
(3)消費者行政の機動的展開を図る。
3 道路整備について新5ヵ年計画を策定してその推進を図るとともに、港湾、国有鉄道、電信電話等の交通通信施設を拡充強化する。
また、治山治水長期計画の着実な実行と災害復旧事業の推進により、国土保全施設の強化を図る。
さらに産業用地及び用水の確保については計画的にこれが推進を図る。
4 後進地域の開発を推進して、地域格差の是正に努める。
5 (1)文教の刷新充実を図り、特に科学技術の振興に努め、あわせて産業の発展に対処しうる人的能力の向上に努める。
(2)オリンピック準備体制の整備と育英奨学制度の拡充を図る。
6 貿易替為自由化の傾向に即応し、国際収支の均衡を確保するため、外交の精力的展開と貿易の積極的振興を図るとともに対外経済協力の推進に努める。
7 農林漁業に関する基本政策を確立して農林漁業の振興を図る。
8 中小企業の体質強化と経営の安定を図る。
9 行政運営の簡素能率化を図り、人員の増加は原則としてこれを行わない。
また欠員についても極力その補充を抑制する。補助金等の整理合理化を推進する。
10 地方財政についても国の財政と同一の基調により行財政水準の向上を図る。