国立国会図書館から引用

昭和33年度の経済目標と経済運営の基本的態度

昭和33年12月17日 閣議決定

 昭和33年度の経済目標と経済運営の基本的態度は、次のとおりとする。
 1 経済目標
 (1) 長期にわたつてわが国経済の安定的発展を期するためには、健全な国際収支に立脚した経済水準を実現し、これを維持することが基本的要件である。
   これがため、先ず国際収支の目標として、33年度においては実質1億5千万ドルの受取超過の確保を期するものとする。
 (2) 31・32年度において国際収支の犠牲のもとになしとげられた過大成長のあとをうける33年度においては、経済の成長は控え目なものにならざるをえないが、可及的に国内経済上の要請をみたすため、実質3%程度の経済成長を目途として、その実現をはかるものとする。
 (3) これがためには、31億5千万ドルの輸出が不可欠の要件であることにかんがみ、世界経済その他の観点から予想される幾多の困難にかかわらず、あらゆる努力を集中してこの輸出目標の達成を期するものとする。
 2 経済運営の基本的態度
  33年度における経済運営の基本的態度としては、1に掲げる目標に合致するよう経済活動の基準を律することに全力を注がなければならないが、とくに
 (1) 輸出の伸長をはかるため、可及的に国内需要を抑制する方針を堅持し、
 (2) ようやく適正化の方向に進みつつある民間経済に悪影響をもたらすような財政需要の増大は極力これを避け、
 (3) 消費需要の抑制につとめるとともに、通貨価価の安定を根幹として資本蓄積の増大をうながし、資本供給の円滑化をはかり、
 (4) 他方適正規模における民間投資を最高限に効率化するよう、経済発展上不急と目される部門への資金の流入を排除することによつて、重要部門への資金を確保し、
 (5) 長期的発展の要請に対しては、33年度の経済が如上の制約を伴うものであることを考慮し、新長期計画の達成上とくに緊要と認められるものに重点をしぼつて所要の施策を講じ、併せて雇用面における過渡的摩擦を最小限に止めるよう措置するものとする。