国立国会図書館から引用

地方自治法案要綱

昭和22年3月11日 閣議決定

第一 総括的事項 
一 地方自治法において地方公共団体とは、普通地方公共団体及び特別地方公共団体をいうものとすること。普通地方公共団体は、都道府県及び市町村、特別地方公共団体は、特別市、特別区、地方公共団体の組合及び財産区をいうものとすること。
二 地方公共団体に対する事務の委任は、将来においては、法律又は政令によらなければならないものとすること。
三 都は、基礎的地方公共団体でなく、道府県と同様に基礎的地方公共団体たる市町村を包括する地方公共団体とすること。
四 市を設置し又は町村を市としようとするときは、その地方公共団体は、人口三万以上を有し、且つ、都市的形態を具えていなければならないものとすること。
五 法律又は政令により都道府県に委任された国の事務に関する都道府県の条例及び規則に違反した者に対しては、法律の定めるところにより刑罰を科することがあるものとすること。
第二 選挙に関する事項
一 選挙権及び被選挙権の欠格条項を整理し、禁治産者、準禁冶産者及び懲役又は禁鋼の刑に処せられその執行を終り又はその執行を受けることかなくなるまでの者に限り選挙権及び被選挙権を有しないものとすること。
二 町村においても、市と同様に、その議会の議員の選挙につき、条例で選挙区を設けることができるものとすること。
三 都道府県及び市町村の各種選挙は、これを同時に行うことができるものとすること。
四 普通地方公共団体の議会の議員又は長の任期満了に因る選挙は、任期満了前にこれを行うことができるものとすること。但し、その任期満了の日前三十日前には、これを行うことができないものとすること。
五 投票,開票及び選挙会に関する手続は,なるべく衆議院議員の選挙の手続と同一ならしめること。
六 町村の選挙についても、選挙運動の費用の制限額を決定するものとし、これに伴い費用超過訴訟の制度を設けること。
七 衆議院議員選挙法の選挙運動に関する収入及びその費用の支出の届出及び公開に関する規定は、すべての普通地方公共団体の選挙にこれを準用するものとすること。
八 都道府県知事の選挙には、投票所等における氏名の掲示の公営を行うものとすること。
第三 議会に関する事項
一 都道府県の議会の議員は、衆議院議員の外参議院議員とも兼ねることができないものとすること。
二 議会は、当該普通地方公共団体の長に委任された国、他の地方公共団体その他公共団体の事務に関してその団体の長の説明を求め、又はこれに対して意見を述べることができるものとすること。
三 議会は、当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、関係人の出頭・証言及び記録の提出を請求することができるものとすること。
四 議会が、当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行うため、その区域内の団体等に対し、照会をし又は記録の送付を求めたときは、当該団体等はその求めに応じなければならないものとすること。
五 議会は、条例で常任委員会及び特別委員会を置くことができるものとすること。
都道府県及び市の参事会の制度はこれを廃止すること。
六 議員は、一人でも議会に議案を発案することができるものとすること。
七 普通地方公共団体の議会に対する請願の方法及び議会における請願の処理に関し、規定を設けるものとすること。
八 議院が辞職しようとするときは、議会の許可を得なければならないものとすること。但し、議会の閉会中は、議長の許可を求めることができるものとすること。
九 議会は、議員に対して、出席停止の外、戒告、陳謝及び除名の懲罰を科することができるものとし、その他懲罰に関する規定を整備するものとすること。
一〇 議会に書記長を置くものとすること。但し、市町村においては、これを置かないことができるものとすること。
第四 執行機関に関する事項
一 普通地方公共団体の長が退職しようとするときは、その退職しようとする日前、都道府県知事にあっては三十日、市町村長にあっては二十日までに、当該普通地方公共団体の議会の議長に申し出なければならないものとすること。なお、都道府県知事についても、議会の同意を得たときは、その期日前に退職することができるものとすること。
二 監督官庁は、普通地方公共団体の長が著しく不適任であると認めるときは、公聴会を開いてこれを解職することができるものとすること。
三 都道府県畑事は、当該都道府県の事務の外、部内の行政事務並びに他の地方公共団体その他公共団体の委任事務を管理し及び執行するものとすること。
四 普通地方公共団体の長は、その権限に属する国の事務の処理については、監督宮庁の指揮監督を受けるものとすること。
五 都道府県知事は、法律又は政命の定めるところにより、警察署その他の行政機関を設けるものとすること。
六 都道府県知事は、法律又は政命の定めるところにより、食糧事務所、木炭事務所、社会保険出張所その他の行政機関を指揮監督するものとすること。
七 都道府県知事は、その権限に属する事務を分掌させるため概ね、東京都官制、北海道庁官制及び地方官官制の規定による局部を設けなければならないものとすること。但し、条例でその分合をすることができるものとすること。
八 都道府県に知事を補佐させるため副知事一人を置くものとし、人口二百万以上の都道府県にあっては二人、人口三百万以上の都道府県にあっては三人まで、条例でその定数を増加することができるものとすること。
九 副知事の選任、任期、失職、退職、兼職の禁止、職務権限及び事務引継については、概ね市の助役に準ずるものとすること。
一〇 都道府県に出納長及び副出納長を置くものとし、その選任、任期、失職、兼職の禁止、知事若しくは副知事との間及び出納長若しくは副出納長相互との間における縁故関係の禁止、職務権限並びに事務引継については、概ね、市の収入役又は副収入役に準ずるものとすること。
一一 普通地方公共団体の長の補佐機関たる一般の吏員は、その従事する職務に従い事務吏員、技術吏員、教育吏員及び警察吏員とすること。
一二 市町村の参与は、これを廃止すること。
一三 委員は,専門委員とすること。
一四 選挙管理委貫会は、普通地方公共団体の長の指揮監督の外にある職務上独立の機関たる地位を明かにするとともに選挙及び選挙に関係のある事務を管理するものとすること。なお、都道府県の選挙管理委員会は前項の事務に関して市町村の選挙管理委員会を指揮監督するものとすること。
一五 監査委員は、普通地方公共団体の長の指揮監督の外にある職務上独立の機関たる地位を明らかにし、その補助機関を設置する等監査委員に関する規定を整備すること。
第五 財務に関する事項
一 普通地方公共団体が、その財産又は営造物を宗教上の組織若しくは団体又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業の利用に供し又はこれらの組織若しくは団体又は事業に対しその公金を支出することを禁止するものとすること。
二 市町村の予算についても、都道府県の予算と同じく会計年度の開始前にこれを調製すれば差し支えないものとすること。
第六 監督に関する事項 
一 都道府県に関する事項は内務大臣、市町村に関する事項は第一次において都道府県知事、第二次において内務大臣がこれを所轄するものとするが、これらの団体に対する監督は、一般的には、原則として地方公共団体の事務に関する適当な基準を定め、普通地方公共団体に対してこれを通知し又はその採用を勧告する等の方法によることとし普通地方公共団体の自主性を尊重すること。
二 起債の許可については、政令の定むるところにより内務大臣は大蔵大臣に協議するものとすること。
第七 特別市に関する事項 
一 特別市は、人口五十万以上の市の中から法津で指定するものとすること。
二 特別市は、都道府県の区域外にあるものとすること。
三 特別市には、市長、助役、収入役及び副収入役を置くものとすること。
四 特別市は、行政区を設けるものとすること。
五 行政区に、区長、区助役、区収入役、区副収入役、選挙管理委員会等の機関を置くものとすること。
六 特別市に対しては、法律に特別の定があるものを除く外、都道府県に関する規定を適用するものとすること。
七 東京都の区は、これを特別区と称し、原則として市に関する規定を適用するものとすること。但し、都は条例で特別区について必要な規定を設けることができるものとすること。
第八 地方公共団体の協議会に関する事項
一 地方公共団体は、相互に事務の連絡調整を図るため地方公共団体の協議会を設けることができるものとすること。
二 地方公共団体の協議会は、必要があるときは、関係官庁の長の参加を求め、又関係官庁の長において、必要があると認めるときは、協議会に参加することができるものとすること。
三 地方公共団体の協議会に対しては、法律又は政令で国、地方公共団体その他公共団体の事務を委任することができるものとすること。
第九 その他の事項
一 地方自治法は、日本国憲法施行の日からこれを施行するものとすること。
二 郡並びに市町村内の町及び字の新設若しくはその区域又は名称の変更等に関する規定を設けること。
三 日本国憲法第九十五条の規定に基き、一の地方公共団体のみに適用される法律の一般投票に関する規定を設けること。
四 東京都制、道府県制、市制及び町村制は、これを廃止するものとすること。
五 地方自治法施行の際現に地方長官、市町村長、議会の議員その他の職に在る者は、引き続き当該都道府県の知事、市町村長、議会の議員、その他の相当職にこの法律によって選挙又は選任された者とみなし、その任期があるものについては、従前の規定による選挙又は選任の日からこれを起算すること。
六 地方自治法施行の際、都道府県の地方事務官、地方技官又は待遇官吏である者は、政令で定むる事務に従事する職員を除く外現職のまま、同一の待遇を以て、当該都道府県の吏員となるものとすること。なお、都道府県の吏員に関しては、公務員に関する制度が確立するまでの間は、従前の都道府県(警視庁を除く)の官吏又は待遇官吏に関する規定を準用するものとすること。但し、吏員を事務の都合により休職処分に付する場合は、政令の定める分限委員会の承認を必要とすること。
七 道府県の警察及び消防については、当分の間、従前の規定によるものとすること。
八 警察及び消防関係職員の外学校、勤労署(一部の者を除く。)及び社会保険出張所に勤務する職員も、当分の間官吏とすること。
九 軍人軍属であった者の身上に関する取扱及び遺族に対する給与等に関する事務を掌らせるため、都道府県及び特別市に世話部を置くものとし、これに要する経費は、国庫が負担するものとすること。

昭和21年閣議決定等資料 index

進駐軍による事故のため被害を受けた者に対する見舞金に関する件、閣議決定 1/4
地方制度の改正及び国費地方費の負担区分の調整等並びに北海道拓殖費及び国有林林政の統一に関する昭和22年度予算編成上の措置、閣議決定 1/8
北海道拓殖費に関する昭和22年度予算編成上の措置、閣議決定 1/8
企業再建整備法に基く資産評価基準に関する件、閣議決定 1/17
厳寒期における鉄道貨物輪送緊急事態に対する応急措置について、閣議決定 1/17
昭和22年度予算の編成及び帝国議会提出等に関する各種措置、閣議決定 1/29
中等学校修業年限延長実施ニ関スル件、閣議決定 2/1
中小企業振興対策要綱、閣議決定 2/15
産業資金等の供給調整に関する措置要綱、閣議決定 2/28
昭和21年産米供米対策要綱、閣議決定 2/28
昭和22年度予算の経過に付て、閣議決定 2/28
税制改正に関する法律案要綱、閣議決定 2/28
昭和22年国勢調査施行に関し各省各庁の協力に関する件、閣議決定 3/1
昭和22年国勢調査施行の件、閣議決定 3/1
皇族の身分を離れる者等に対する一時金支出に関する法律案要綱、閣議決定 3/7
地方自治法案要綱、閣議決定 3/11
一般職種別賃金額決定に関する閣議了解事項、閣議決定 3/13
炭鉱従業員賃金値上げに付て、閣議決定 3/29
皇室用財産調査委員会設置要綱、閣議決定 4/11
企業再建整備法における在外資産及び在外負債の取扱に関する件、閣議決定 4/18
公共事業費並に物資及び物価調整事務取扱費の使用について、閣議決定 4/18
戦災復興院特別監理局(仮称)設置要綱、閣議決定 4/18
(北海道林政機構に関する)閣議決定事項 4/22
労働祭の取扱に関する件、閣議決定 4/22
昭和22年度石炭増産対策、閣議決定 4/26
賠償協議会の運営に関する件、閣議決定 4/26
予備費の使用方針について、閣議決定 4/26
配炭公団等各種公団法の施行に伴い、政府職員となつた者の給与の取扱方要綱、閣議決定 5/6
官吏等に対する叙位及び叙勲の取扱に関する件、閣議決定 5/23
今後の知事会議の開催方法について、閣議決定 6/5
昭和22年産麦、馬鈴薯買入対策要綱、閣議決定 6/7
緊急経済対策、閣議決定 6/10
皇室経済法施行法要綱、閣議決定 6/17
北海道開発に関する行政機構等に関する件、閣議決定 6/17
新日本建設国民運動要領、閣議決定 6/20
料理店、飲食店等緊急対策、閣議決定 6/24
予備費使用の特例について、閣議決定 6/27
経済緊急対策に基づく食糧緊急対策(第1次食糧緊急対策)、閣議決定 6/30
新価格体系の確立について、閣議決定 7/5
昭和22年度追加予算について、閣議決定 7/9
地方統計機構整備要綱、閣議決定 7/11
昭和22年度予算追加見込額、閣議決定 7/17
第2次食糧緊急対策、閣議決定 7/19
流通秩序確立対策要綱、閣議決定 7/29
自作農創設特別措置法中未墾地関係部分改正要綱、閣議決定 8/11
人工甘味料専売実施要領、閣議決定 8/12
農地調整法の一部を改正する法律案要綱、閣議決定 8/18
昭和23年度予算の編成に関する手続等について、閣議決定 8/19
官公庁職員組合労働協約に関する件、閣議決定 8/21
輸出入回転基金設置に伴う当面の措置、閣議決定 8/22
農業生産の調整および主要食糧の供出制度要綱、閣議決定 8/26
輸出振興対策要領、閣議決定 8/29
昭和22年産米、甘藷及び雑穀供出対策要綱、閣議決定 9/16
昭和22年産米及び甘藷の供出に対するリンク制実施要領、閣議決定 9/19
企業再建整備法の整備計画についての経理に関する認可基準、閣議決定 9/23
危機突破生産復興運動要綱、閣議決定 9/30
賠償事務の実施要領に関する件、閣議決定 9/30
闇撲滅について、閣議決定 9/30
労働争議の平和解決について、閣議決定 9/30
石炭非常増産対策要綱に関する閣議了解事項、閣議決定 10/1
労務用物資の割当および配給に関する経本部内専務処理要領、閣議決定 10/1
石炭非常増産対策要綱、閣議決定 10/3
昭和22年度予算の節約等について、閣議決定 10/14
牧野の開放に関する件要綱、閣議決定 10/14
企業再建整備法における退職金の取扱等に関する件、閣議決定 10/21
昭和22年10月14日閣議決定「昭和22年度予算の節約等について」の例外に関する件、閣議決定 10/24
政府支払の削減に関する司令部覚書に対して差当り採るべき措置要領、閣議決定 10/24
政府等の請負契約に基く支払の節減に関する法律案要綱、閣議決定 10/24
税制改正に関する法律案要綱及び非戦災者特別税要綱、閣議決定 10/28
租税収入確保に関する措置、閣議決定 10/28
製造煙草の定価決定について、閣議決定 10/31
中小企業対策要綱、閣議決定 11/7
国際貿易憲章案に関する若干の見解、閣議決定 11/11
電力危機突破対策要綱、閣議決定 11/14
生産復興運動について、閣議決定 11/21
闇撲滅運動について、閣議決定 11/21
公団および特別調達庁の性質に関する件、閣議決定 11/25
主要食糧の集荷および配給制度要綱、閣議決定 11/28
補正第10号予算に関する措置等について、閣議決定 11/28
専売収入の確保対策、閣議決定 12/2
特別調達庁の性質等に関する件、閣議決定 12/5
製造煙草の定価決定について、閣議決定 12/12
旧皇室苑地の運営に関する件、閣議決定 12/27
公団役職員の給与取扱要領、閣議決定 12/27