国立国会図書館から引用

産業資金等の供給調整に関する措置要綱

昭和22年2月28日 閣議決定

一、方針
(一)石炭鉱業、鉄鋼業及び肥料工業等現下の最重点産業の所要資金を優先的に確保し、一方不急産業への資金の融通は極力これを抑制して生産の均衡的発展を図り産業の復興を促進する。
(二)現下の資金蓄積及び資金需要特に財政需要の状況等を勘案して産業資金総額について凡その目標を樹て原則として産業資金の供給をその範囲内に止めインフレーションの防止に努める。
(三)資金の吸収を促進し日本銀行借入れへの依存を排すると共にシンヂケートの結成、金融機関相互間の資金疏通を行わしめ金融秩序の回復と金融の正常化とを図る。
(四)資金の運用については一定の準則の下になるべく金融機関の自主的調整を為さしめると共に日本銀行の貸出操作に依つて実質的に調整する。
 なお金融の実施状況の監査を重視して徹底的にこれを行う。
一、要領
(一)産業資金の供給につき産業資金供給総額の目標を定めその範囲内において最重点産業(差当り石炭鉱業、鉄鋼業及び肥料工業)資金、重要産業設備資金、その他資金(一般産業運転資金等)のそれぞれの供給計画を概定する。
(二)前項の計画を基礎として主要金融機関について融資限度を設け融資額を調整する。
 右の融資限度は差当り各金融機関の一般自由預金(公金預金及び金融機関預金を除いたもの)増加見込額の五〇%とし、日本銀行の指導の下に各金融機関の自主的申合せによりこれを設定せしめる。
 金融機関の自己資金が融資限度以下である場合においてはその資金の限度内において融資するものとし原則として日本銀行よりの借入れに依存せしめない。
(三)金融機関は前項の融資限度内において別に定める資金融通準則及び産業資金貸出優先順位表に従い融資するものとし、前記最重点産業資金、その他緊要な資金を優先的に取扱わしめる。
(四)特に重要産業資金についてはなるべく多くの金融機関を参加せしめてシンヂケート又は特別の融資機構を設け計画金融を行う。
(五)日本銀行の指導斡旋の下にシンヂケートの結成、融資金融機関の配置転換、金融債券等に依る余裕資金の吸収、スタンプ手形及び商業手形の売買の奨励等に依り金融機関相互間の資金の疏通を図る。
(六)金融機関の資金に余剰あるときは日本銀行借入金の返済、国債の消化、復興金融債券の買入れ等に充てしめる。
(七)復興金融金庫の融資は経済復興の為必要な重要産業の資金で一般金融機関より融資し難い特別の事情のある場合に限ることとする。但し運転資金は極力一般金融機関より融資せしめる。
(八)大蔵省及び日本銀行は本措置の実施状況を常時厳に監査する。
 監査の結果不当な取扱があると認めた場合には大蔵省及び日本銀行において適当の措置を講ずる。
(備考)
(一)本措置は昭和二十二年三月より実施する。
(二)金融機関資金融通準則は金融緊急措置令に基き制定する。
(三)本措置は直接銀行、信託会社、保険会社、農林中央金庫及び商工組合中央金庫について適用するものとし、その他の金融機関については本措置に準じ融資するように指導する。